もしも 

November 29 [Wed], 2006, 13:15
見放されたとしたら。
銀色の光がもう、私に向かないとしたら。
世界がもう、暗闇になってしまうのだとしたら。

私はもう、この闇の中に消えて溶けてなくなろう。
銀色の光だけが私の生きるすべてだから。
その光に見放されたのならば、私なんて闇に食われればいい。

わたしとして。 

November 24 [Fri], 2006, 14:49
裏切りたくない、離したくない、守りたいと初めて思った存在。銀色の月。
月は遠くて、とてもじゃないけれど、そんなことはできてるかどうかなんて判別つかない。
それでも、いくら遠くても裏切るわけにはいかない。
その悲しい銀色の光を和らげたいから。
少しでも、月を悲しませるようなことがわたしにあるのなら、その銀色の光を研ぎ澄ませてしまうだけなのだとしたら、わたしの存在はないほうがマシ。
せめて、少しでも悲しい月の光を和らげられるような人間に。

皆既月食。 

September 27 [Wed], 2006, 14:19
見えなくなった、銀色の月。
遠い向こうに、いつも見えていたのに。
真っ暗なこの世の中は、わたしが居ても意味の無い世界。
夜にしか出会えない、銀色の月にわたしはすがって生きながらえてきた。
ならば、この真っ暗な夜、わたしはこの命を手放してもいいですか?

綱渡り。 

September 08 [Fri], 2006, 14:17
銀色の細い糸。
端はどこに張ってあるのかもうわからない…繋がっている向こうは、銀色の月。
弱い風が吹くだけでも、バランスを失って墜落しそう。前に、進めなくなる。
落ちたら、奈落の底。
強風が吹いたら、最期。
銀色の月まではまだ遠い。糸の先を、途中で見失うほど。
歩き出したから、後戻りはできない。暗い、暗い底に落ちてしまうのか、銀色の月までたどり着けるのか。遥か、遠い。

最初の月夜・Last〜mebius 

August 04 [Fri], 2006, 4:07
しかし、とても力強そうな印象はない。
「泥棒猫は何を持っていった…?」
彼の問いに彼女は隙を見せないように答えた。
「さあ?わたしにはなんだかわからないものだわ」
それはうそではなかった。彼女は依頼人の依頼の書類をひとつ、奪っただけでその内容になど興味はなかった。それよりも、この状況で彼に心臓が早く打っている事を悟られない方が大事だった。冷静を装うことの方が。捉えられている彼の方が、冷静に見えた。
「泥棒猫に名前はあるのか?」
何故、彼がそんなことを聞くのか彼女にはわからなかった。これ以上、長居も危険だった。
彼女はサンルームの中に彼を突き飛ばすように解放した。距離感が逆転した。彼女の後ろに退路が確保できた。
「…ジルフィード」
と、名前だけ短く告げ、彼女はもう振り返らずに来た回遊路を走った。
トラップが仕掛けられる様子も、彼が執事を起こす声を上げる様子も、背中には感じられなかった。
ただ、彼という人物とのニアミスだけが今回の仕事のミスだった。高い塀を飛び越えて、館の外に出てそれでもしばらく走って、下町の入り口で彼女はようやく一息ついた。
そして、彼という人物との接触こそが、最大のミス。冷たいアメジストの瞳。
あれで、人を従わせてしまうのだわ…。
彼女は、彼を思い出そうとして振り払った。

最初の月夜・5〜mebius 

August 04 [Fri], 2006, 3:53
反射で、彼女はその手を払いのけ彼との間に距離をとる。彼の隙をうかがう。
…さっき、右手を取られそうになった時、わたしは完全に油断していたかしら?自問する。よりによって、館の主人に出くわして油断するなんて、ありえない。何…。
彼には、不思議なほど隙がなかった。けれど、彼を越えなければ、出口は閉ざされている。
「どいて…手荒なまねは趣味じゃないの…」
彼女は苦し紛れに言った。とても彼が大人しく人の言うことを聞くような人物ではないことは、そのまとっている空気でわかる。一瞬の隙でよかった。それさえつかめればどうにかなると。でも、それを許す相手でだろうか。
彼が、冷たい表情で少し笑ったようだった。
「わたしの館に侵入しておいて、どいてとは…」
彼女のような、細い女性一人、どうにでもなるといった風情でつぶやく。だからといって、そんなに体格のいい方ではない、むしろ、線の細いと言っていいような館の主人。ただ、彼が声を上げれば、忠実な執事は起きだすだろうし、もしかしたら彼の声に反応するトラップがあってもおかしくない。決していい状況ではない。でも、そこしかない。
彼女はすっと彼の脇を通り抜けようとした。が、彼に左手を取られた。
…やっぱり、簡単には帰してくれない…
ただひとつの武器を抜いて、彼女は軽く、彼の手の甲の皮膚を裂いた。薄く、血がにじむ。一瞬、力が緩んだ。その隙に彼女の手は開放され、逆に彼の両手の自由を奪い、短剣を喉にかざす。
「手荒なこと、本当に趣味じゃないのよ…大人しくして」
知らず、普段より低い声で彼女は言った。
…細い…
彼女を捕らえた手の主は想像以上に細身で、彼女でさえ押さえつけていられるほどだった。ただ、その喉元に細い刃があるから、彼は身動きが出来ないのもある。

最初の月夜・4〜mebius 

August 04 [Fri], 2006, 0:53
無防備すぎる館、長くいていいことがあるとはとても思えなかった。むしろ、最後に何か大きな罠に待ち構えられているような予感が、彼女の足を急がせた。予感は、無視しちゃいけない。
彼女がサンルームに足を入れたのと、ほぼ同時。
さらりと長い、腰ほどもありそうな黒髪を流して、その男が中に入ってきた。この館の主人。
彼は顔色も変えずに彼女を少し見ると、
「やけに樹が騒ぐと思ったら猫の侵入か…」
やれやれという様子で、彼はつぶやいた。
…樹の気配がわかるの?彼女はその言葉に少し気を取られた。その一瞬。利き手を取られそうになった。それで彼女は我に返った。そんなことは今はどうでもいいことだった。この状況からどうやって切り抜けるか、それだけだった。

最初の月夜・3〜mebius 

August 04 [Fri], 2006, 0:52
きぃ…と何か金属がなる音がした。その方向は、サンルームでドアが開け放されていた。
…主人は眠れず、夜の散歩にでも出たのだろうか…。
他に思い当たる人物はいない。
それなら、好都合というものだ。早く、片付けてしまおう。
彼女はためらわずそのドアから身を滑らせた。仄明るいサンルームのテーブルにはさっきまで酒を呑んでいたような跡がある。ということは、主人は外をお散歩中か。
それなら、と彼女は頭の中の見取り図どおり2階の書斎へ足音を立てず、足早に向かう。ドアの前で鍵の解除の魔法の掛かったキューブを取り出す。が、キューブは何の反応も示さない。
「!?」
予想外のことに彼女は若干うろたえた。このキューブの魔法を凌ぐロックが掛かっているのか…それは考えがたかった。彼女は、そっとドアノブに手を掛ける。
かちり、と音を立てていともたやすくそのドアは開いた。
何かの間違いか、罠か、彼女はそう考えた。まさか、その頭脳の全てを結集している部屋に施錠なしだなんて。彼女は警戒を強めたが、そのままためらわずに部屋に滑り込む。ためらったら、失敗する。彼女なりの経験に基づいたセオリーだった。
目的の書類を探索する魔法を掛けた羽をふわりと舞わせる。どこにあるかは、羽が教えてくれる。幽かな光を放った羽が書斎の中を舞い、ふう、と高さを低くする。ひとつの引き出しの前で羽は止まっていた。
「そこね…」
彼女は小さくつぶやいて、もしやと思い、解除の魔法のキューブを使わずに引き出しに手を掛け、引いてみる。いともたやすく、引き出しは開いた。…なんて無防備な…。
彼女は少し、あきれた。
この館の主人は、危機感が薄いのだろうか?それとも、これくらいのことなんでもないことなんだろうか。
ともあれ、その紙切れ1枚手に入れて無事戻れば、彼女の仕事は終わりだ。
羽の示す書類を胸元に隠し、彼女は長居は無用と、書斎を出て、入ってきたサンルームへ急いだ。

最初の月夜・2〜mebius 

August 04 [Fri], 2006, 0:39
回遊路にトラップは仕掛けないだろうと、それだけが彼女の読み。しかし、そこに出れば、たいまつの光にさらされてしまう。見つかるリスクと、植え込みの各所にあるであろうトラップに掛かるリスク。どちらが大きいだろうか、考えた時、恐らく武術などしないであろう主人に気づかれたとて、正面から行ってやすやすと捕まらない、という確率の方が勝った。長い、曲がりくねった回遊路。途中に、白い東屋がある。
さくさくと、手入れの行き届いた芝を彼女は踏みしめていく。トラップは…なさそうだった。
遠くに、ようやく館の全貌が見える。
館の前庭には噴水が夜でも水を噴き上げている。少し、風が出てきて雲が流れた。
三日月が姿を現し、銀色の薄い光を庭園に降り注ぐ。
彼女の身を守るものは、刀身の細い短剣ひとつ。館の様子を伺う。明かりがついているのはほんのいくつかの窓だけ。中には、恐らく、この館の主人と、執事だけ。恐らく、一階の東の端の明かりは執事の部屋だろう。それ以外の明かりは…。
彼女は、もう一度深呼吸をして館へ向かった。館のセキュリティがどうなっているのかまでの情報は入っていない。気にならないでもない。窓ごとにセキュリティの魔法を掛けてあれば、窓を破れば気づかれてしまう。窓の施錠をこの館の主人から信頼を置かれている執事が忘れるとは考えがたかった。
獲物はすぐ近くにあるのに、どこから進入しようか、考えあぐねる感じだった。
獲物は、一枚の書類。その書類がどんな類のものなのか、彼女には興味がなかった。ただ、依頼されただけ。本来ならば、こんなこそ泥のような真似は断る彼女が、その依頼を受けたのは、ただその風変わりな主人に興味を持ったからだった。街でも風変わりと有名な豪商。愛人の噂ひとつ聞かない。公の場で女性を連れることもない。ただ、冷酷に仕事をこなしていくというその主人に興味を持ったからだけだった。
鼓動が、知らず早くなって、静まれと自分に言い聞かす。
獲物は、主人の全ての頭脳が凝縮されている書斎にあるはずだ。館の見取り図は頭に入っている。鍵の魔法を解除する魔法のキューブを彼女は握り締めた。これで、開かない鍵はない。ただ、効力は二度だけ。書斎の鍵を開けるときと、そのしまわれている場所を開けるとき。
まず、その書斎へ。

最初の月夜・1〜mebius 

August 03 [Thu], 2006, 22:46
物語を、書いて行きます。
ぽつぽつと。気まぐれに。だから、矛盾してるところとかもあるかもしれない。その辺は、見逃してね。

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月が、雲に隠れて辺りは暗い。好都合。幽かな星明りも雲の中。あるのは、庭園の各所に掲げられたたいまつの明かりだけ。ぱちぱちと音を立てて、侵入者がいないか警戒して辺りを懸命に照らしてる。
でも、それだけじゃあ、弱い。
特に、警備をする者もいないようだった。庭園はしんと静まっている。庭園の奥に館の薄明かりが見える。事前情報は確かなものだったのか、この広大な館に、警備の者一人いないなんて、なんて無用心。彼女は少し信じがたかった情報が、確かかもしれないと、人の気配の全くない庭園を見渡す。
でも、油断は禁物。どんなトラップが仕掛けてあるかわからない。魔法のトラップばかりは、彼女にも察知できない。掛かったら、多分、さすがにこの館の主人も気づいてしまうだろう。
事前情報では、この館は昼こそ数人の使用人と執事がいるとのことだが、夜になればその風変わりな主人は使用人の全てを帰してしまい、唯一信頼を置いている執事だけを置いて、夜は館には二人しか人はいないという。だからこそ、庭園のトラップには細心の注意を払いたかった。下手をして、捕まるわけにはいかない。
ひとつ、深呼吸をして彼女は植え込みの影から出た。
たいまつに照らされた庭園の回遊路の真ん中に。彼女の細い肢体がたいまつの光に長い陰になる。
どんな仕掛けを掛けて待っているかわからない、その主人に、彼女は裏を読むのを止めた。
正面から行こうじゃない。
P R
2006年11月
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ふゆ。
28歳。一応デザイナー。
ワーカーホリックか仕事がないと不安でしょうがない、ちょっと精神的に病んでしまっている自分がいたりする。そんな自分がキライでしょうがなかったり、最近は許せるようになってきたり。
もうひとつの夢の選択肢であった「物を書くこと」をここで始めようとしていたり。
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