お久しぶりです(笑) 

May 20 [Sat], 2006, 11:06
しばらく無沙汰しておりました。
ここしばらく、なかなか書く時間がとれず、なのに短編よりも長編の続きばかり書いておりました
もう少しすれば時間に余裕が持てるかなと思うので、その時はまた更新します
ので、もう少しお待ち下さいませ

なごり雪A 

March 02 [Thu], 2006, 10:19
 それから約二週間後。
 その日パオロは休息日だったが、自主的に宮殿の裏手にある兵舎の闘技場で稽古をしていた。配属先は宮内警備隊と変わらないが、これから彼が護るのは第二皇女のルナーレ皇女だった。パオロと同じくミフィル皇女付きの他の兵もそれぞれ次の仕事場へ行くが、海上部隊や国境警備隊に異動になるものがほとんどである。これまた、同期達や同僚の羨望と非難を集めたのは言うまでもなかった。
 異動か、もしくは辞職という選択肢もあり、パオロ自身随分迷ったのだが、まだ自分は仕事を始めて一年にも満たない。忙しくとも、その中で新しい目標を探そうと決めて異動を受け入れた。
 昼食後の散歩に裏庭へ出ていたパオロは、三人の侍女達が庭の片隅で声を押し殺して泣いているのを目にした。彼女達は三人ともミフィル皇女のお付女官である。
「どうかされましたか?」
 同僚のよしみで彼女達とは顔見知りである。パオロは静かに声を掛けた。
「パオロ殿……!!」
 そういって三人は腫らした目を向けるが、すぐに顔を伏せて泣いてしまう。只事ではないものを感じ取り、パオロは慌ててしまった。
「ちょ、本当にどうしたんですか!! 皇女殿下に何があったのです!?」
「いいえ、違うの。今朝、皇女殿下がこれを……!!」
「お餞別ですって。手ずから刺繍をされたそうなの……」
 彼女が差し出したのは、一枚のハンカチ。純白の絹地の四隅に、細かい薔薇の紋様が刺繍されていた。
「頂いたら、何だかとても悲しくなって……!!」
 口々に言うなり、今度は声を上げて泣き始めた。
「殿下が……」
 小さくパオロは呟いた。同時に、胸が痛くなった。
 

なごり雪@ 

March 02 [Thu], 2006, 10:14
 雪が舞う中に、一輪の薔薇が咲いていた。
 一面の白い世界に、目にも鮮やかな紅の薔薇。
 この美しい薔薇を、失くしたくないと思うのは自分だけではないはずだ。
 出来るなら、自分のものにしたい。
 例えそれが叶わぬ夢だと分かっていても。
「―――――――誰なの?」
 自分の視線に気付いてこちらを見た薔薇の唇が、鋭い質問を放った。軽く結い上げた、くせのない黒髪がさらりと揺れた。
「ミフィル皇女殿下、お迎えに参りました。国史の講義のお時間です」
 さりげなく礼を取りながら、パオロは内心の動揺を必死に抑えていた。
 姿を見かけたらすぐに声を掛けなければいけなかったのに、雪の中に佇む薔薇の姿にパオロは見とれてしまったのだ。
 彼の動揺に気付いていないのか、皇女は小さく苦笑を向けた。
「ごめんなさい。お出迎えありがとう、パオロ」
「いいえっ! では、お手を。足元が滑りやすくなっております」
「ありがとう」
 自分の手に重ねられたまだ小さな白い手を、パオロは壊さないように握った。
 中庭から屋根付きの回廊に入り、目的の部屋に通じる廊下を、彼女の後ろにつき従いながら、パオロは呟かずにいられなかった。
(名前、覚えていて下さった……)
 しかし、それも後一ヶ月しか続かないと思うと、手放しで喜んでいられなかった。
 『薔薇の皇女』と謳われる目の前の少女――――スフィア国第一皇女ミフィルは、一ヵ月後の花の月(レミ・四月)に、隣国クォールの皇子の下へ嫁ぐ事になっていた。
 

冬の雫 

December 28 [Wed], 2005, 14:15
 クリスマスは逃したけど、年内掲載に何とか間に合った!!(タマシイの叫び)
 
 久しぶりの更新です。冬ストーリー第2弾です。

 これはハロウィンネタのもう一つのネタとして残してあったのを、少しアレンジしました。

 ただ、ラストが少し歯切れ悪いかなぁと思いつつ。

 今回のキャラ、ロヴィとハンナは二人ともイレギュラーです。レギュラー陣が出なかったのは初めてですね。てか、あえて出しませんでした。

 来年はもっとバリエーションに満ちたストーリーを出せることを祈りつつ。
 そして、幸せに満ちた年でありますように!!

冬の雫A 

December 28 [Wed], 2005, 14:12
それから、ロヴィは休息日や授業がない頃合を見計らってはハンナの元へ通っていった。
ある程度飴を作り終えると、今度は包装に取り掛かる。透明の袋に入れて、銀のリボンで口を縛る。
しかし、リボンを結ぶのはなかなか上手くいかない。あやうい手つきのロヴィに、ハンナは丁寧に指導した。
「違う。そうじゃなくってこっちから結ぶの。そうしないと綺麗な形にならないでしょ?」
「う、え、こう?」
「そうそう。で、そっちを止めたら……出来たじゃない!!」
 多少歪んでいたが、それでもきっちり結べたリボンを見て、ハンナは手を叩いて喜んだ。
 彼女に褒められて嬉しくなったロヴィは次々に包装を終えていく。
 まけじとハンナも手伝い、やがて綺麗に包装された菓子の入った大きな木箱が部屋の一角に三箱も積み上げられていた。
「あー、何とか間に合った!! ありがとう、ロヴィ」
 片付けをすっかり終え、ハンナは頭を下げた。
「僕は何もやっていないって。それに、これから孤児院に持って行くんだろう?」
「そう。……本当は孤児院でも作れるんだけど、恩返しがしたいから無理言って作らせてもらってるの」
「……それじゃ、ハンナは……」
 言おうとしたロヴィは、慌てて口を閉ざした。
「ごめん、そんなつもりは……!!」
「いいの。じゃ、そろそろ行きましょう。あのね、ロヴィ?」
「何?」
 もう一度箱の中身を数えていたロヴィは、ハンナの声に振り返った。
「これ、着てくれる?」

冬の雫@ 

December 28 [Wed], 2005, 14:09
『急募!! お菓子作りの得意な人、お一人様! 男女問いません。期間は霧の月(ミレク・十二月)十日頃から二十五日まで。お給料はありませんが、あなたのお菓子で子どもたちを喜ばしてくれませんか? 詳細・申し込みは店員にお申し付け下さい! なお、定員になり次第この紙は撤去します。
 砂糖の館 ハンナ=ヴィッツェ』
「あ……」
 その貼り紙の前で、ロヴィは思わず足を止めた。魔術学校の休校日、友人と街中に買い物に出かけた帰り道だった。街の一角にある菓子屋の入り口近くの壁にその貼り紙はあった。まだ書きたてなのか、インクがわずかに濡れている。
「どうした?」
 友人に声を掛けられ、貼り紙を指差して見せる。
「これ、お菓子作りの仕事だって」
「え? 本当だ。お前行ったらどうだよ? 今回の冬休暇は実家に帰らないんだろう?」
「そうなんだよ。あ、でもまだ実技とか天文学の補講とかあるし……」
「仕事時間相談に応じるそうじゃないか。入ってみるか?」
「聞くだけでも聞こうかな」
 友人に薦められ、ロヴィは店の扉を押し入った。
「いらっしゃいませ! どなたへの贈り物でしょか?」
 愛想のいい店員の呼びかけに、ロヴィは一瞬戸惑ってしまった。
「あの、お客じゃないんです。表の貼り紙を見たんですけど……」
「あぁ、成る程。二人とも応募?」
「いえ、俺……僕だけです」
「分かりました。ちょっと待って頂けます? おい、ハンナを呼んでくれ」
 店員に言われた丁稚が、奥の扉の中へ入っていった。
「お待たせいたしました」
姿を見せたのは、小柄な黒い瞳の少女だった。仕事の最中だったらしく、長袖の服を肘までまくり上げて木綿の前掛けをしている。彼女の頬に少し白い粉が付いていた。
「表の貼り紙のお客様だよ」
「本当? ありがとう! 私がハンナ=ヴィッツェです。あなたの名前は?」
「魔術学校七年のロヴィ=ゼーシュです」
「あら、同じ年。ええっと、七年生って言ったけど、授業の方は大丈夫なの?」
「十二、十四と十八、二十三は一日無理で、十一日の夜に観測があります。それ以外は大丈夫です。今回の冬休暇は実家に帰らないので」
「二十五日は夕方過ぎまでかかるけど、他は遅くても夕方までかからないし」
「それなら行けます」
「じゃ、決まりね。といっても、働いてもらうのはここじゃないの。街中には変わりはないんだけど」
「え?」

舞う 

December 02 [Fri], 2005, 10:15
<登場人物>
ユナ
大陸北部にあるナシュアの第一王女にして王位継承者。
舞が得意で、『雪原の蝶姫』と呼ばれている。

シナール
ユナの1つ上の従兄。端整な顔立ちと柔らかな物腰の青年。

舞う 

December 02 [Fri], 2005, 10:11
 雪原で舞う、藤の蝶。
 大陸の雪国ナシュアでそう評されるのは、次代の王という荷を負った姫君だった。
 今日も王宮の一角の音楽堂で舞の稽古に励んでいる彼女を見つめるのは、憧れと尊敬に満ちた眼差し。
 十数人の踊り子達と教師が見守る中、王女の手にした鈴が最後の音を響かせた。その余韻が収まらない内に拍手が沸き上がった。
 満場の拍手に、王女ユナは静かに終わりの礼を取った。頬を紅潮させ、ラベンダーの瞳を輝かせるユナに、数人の踊り子達が集まってきた。ユナと同年代の若い少女達は、賞賛の声で口々に言った。
「今日も、素晴らしかったですわ、姫様!」
「ええ。まるで鳥のように軽やかで」
「あら、あなたご存知ではないの? 姫様は『雪原の蝶姫(ちょうひめ)』ですわよ」
「それくらい存じ上げておりますわ。それよりも……あの、後でわたくしにご指導して頂けませんか? 途中の振りで、どうしても出来ないところがあるのですが……」
「だめよ。今日はこれからご公務がおありなのよ」
「……そうなのですか?」
 残念そうな少女に、ユナは申し訳なさそうに言った。
「ええ……。ですが、次は必ず。私などでよろしければ」
「はい!!」
 嬉しさで頬を紅潮させる彼女。ユナも笑みを浮かべた。
 話がひと段落したのに、舞の教師が小さく彼女に声を掛けた。
「はい。今すぐに参ります。皆様、失礼致します」
 別れの礼を取るその姿も、舞と同じく優雅なものだった。

図書館 

November 15 [Tue], 2005, 11:22
 スリーシェ=タイラン
 今回の主人公。『司書官』の資格取得を目指している。
 スダクに対しては「お姉さん気分」と思っているが…。

 スダク=T(トイック)=パール
 男の子だがとてつもなく可愛らしい外見と性格の持ち主。毎日図書館に通う読書好き。
 アリア=S(シーク)=パール
 スダクの双子の兄。弟とは正反対の性格。少々人見知りの傾向がある。

図書館D 

November 15 [Tue], 2005, 11:17
「あらっ。珍しい子がいる」
 思わず私が言うと、彼は居心地悪そうに答えた。
「スダクの奴が友達の補講を手伝いに言ったので、代わりに返しに来ました。俺じゃだめですか?」
「どうぞ」
 軽く苦笑気味に返し、私は彼の手から本を受け取った。
 スダクの代わりに『オストー家の宴』を返しに来たのは、彼の双子のお兄さんアリア=S=パール。瞳の色や口調は違うけど、声は同じだから振り返るまで気付かなかった。慌てていたから魔力の気配も読めなかった。
 なぜ私が『珍しい』って言っちゃったのかっていうと、昼休みや放課後は欠かさず図書館に通うスダクとは正反対に、アリアは月に一度来るかこないか。今も少し居心地悪そうにしている。いやもう、ここまで表立って苦手意識出されちゃうと憎めないのよね。スダクほどじゃないけど、結構アリアも可愛い顔立ちしているから、余計に。
 返却作業を終えたところを見届け、アリアは「じゃ」と言ってその場を去りかけた。
 せっかくの機会なのに書架にも目を向けない彼に、私は素早く引き止めた。ここで帰られては司書官候補の名折れよっ。
「ちょっと待ちなさいアリアっ!!」
「! なんですか!?」
 玄関扉の一歩手前でアリアは立ち止まった。猫だったら耳と尻尾をピン!と立てている感じで。他の生徒達の視線が集まっているけど、気にせず私は言い放った。
「あなた、今月に入って一冊も借りていないのよ? 『西寮五年生』で一冊も借りていないのはあなただけ! たまには月に十冊以上借りて見なさい!!」
「……けど、もう試験は終わったから……」
「試験がないからいろいろ読まなきゃ! ねぇ、どうしてそんなに本が嫌いなの?」
「別に、そんなに大した事は……」
 深いワイン・レッドの瞳があちこちに泳いでいる。
 見計らって、私はさっき返却手続きをしたばかりの本と『西寮五年生』のノートをカウンターの上に置いた。
「ほら、これ借りるんでしょう? 早く手続きして頂戴! 次が待っているから!!」
「……」
 観念したのか、カウンターに戻ってきたアリアは本とノートを受け取った。
 そして、ペンを握ると小さく呟いた。
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