01.材料の選別と木取り
2017.04.24 [Mon] 00:30

2017年1月


九十九里の作業場横に保管してある材料の木材

 左下の分厚いものがシキ(敷=船底材)用。
 「あと10パイ作れるくらいある」。

 また、ずいぶん長いこと置いてあったので、「シラタがぜんぶ腐っちゃってアカミばっかりだから、質はいいんだけど硬くてタイヘンなんだよ」だそうだ。
 →【工具・材料】アカミとシラタ


フォークリフトとバンドソー

 フォークリフトで運んで、右のバンドソーで挽く。
 ミヨシ(水押=船首材)を製材中。

 「木取り(きどり)」というのは、木材から必要な部材を切り出すこと。
 船大工は基本的に設計図を書かない。
 主として垂直と水平で構成される建築物と違って、船は曲線ばっかりである。それなのに設計図もなしにどうやって曲線と曲線をくっつけて船のカタチにできるのか、私には不思議でしかたがないが、そういうものなのだそうだ。
 大きな船では「板図(いたず)」と呼ばれる側面図(船の真横から見た図)をつくることもあるが、上面図(真上から見た図)をつくるのは、さらに稀である。側面図だけでは、どれくらい左右にふくらみを持っているのかは分からない。
 ともかく、シキ(敷=船底材)の長さをはじめとする主要部分の寸法だけ決まったら、あとは船大工の頭の中で「ここはこれくらいになる」というのが経験的にはじき出されるらしい。


シキの用材の選定中か


シキとミヨシの木取り

 木取りはまずシキとミヨシから。
 →【和船の部材】シキ・ミヨシ・トダテ

 ミヨシを工作機械にもたせかけているのは、たぶん、材の反り具合と取付の角度を確認しているのだろう。
 このあとミヨシはこのあとカーブに合わせて前後に切って、内ミヨシと外ミヨシに分ける。
 左下の床やシキの上に置かれているのは、選ばれなかったミヨシ候補だろうか。
 

【工具・材料】船釘
2017.04.23 [Sun] 23:11

船釘(ふなくぎ)
 宮大工は釘を一本も使わず継手や仕口などの木組みだけで大きな寺社も作っちゃうからエライということになっているようだが、船大工は大量の鉄釘を使う。しかし表面に釘が出ていると錆びるので、ほとんどの釘の頭は木片で埋めて隠す(一部は飾り金具をつけて装飾とする)。
 明治以降はボルトなども使うようになったが、船板の矧合せ(はぎあわせ)には船釘が必需品である。


船釘のいろいろ

 船釘には、使う場所によっていくつかの種類がある。また、作る船の種類や地域によって、形や大きさが違う。呼び名も違うかもしれない。
 上の図は宝暦十一年(1760)に大坂堂島の船匠・金澤兼光が書いた『和漢船用集』という、船にまつわる言葉を膨大に集めた解説書に収められた船釘。
縫釘(ぬいくぎ):船板を矧ぎ合せるのに使う。
貝折釘(かいおれくぎ):汎用の釘。いろんなところに使う。
通釘(とおりくぎ)/頭釘(かしらくぎ):棚板などの取付に使う。






黒いのは土屋さんが昔使っていた釘、白いのは高知の方から入手した釘

色が白いのは、「ドブ漬けメッキ」なのだとか。

 

【船大工の技術】材木の選定・購入
2017.04.23 [Sun] 22:41

 船の材木を選んで購入するのは、船大工の大事な仕事のひとつ。

「ミヨシに最高の木だ!」と抱きつく土屋徳彦さん
東大駒場キャンパスのケヤキ

 枝下(一番下の枝から根元まで)が長く、カーブが良い具合なのでミヨシに良いのだそうだ。

 船の材木は山に生えている状態で買うという。
土屋さんに聞いた話:
1.製材すると高くなる。
2.ケヤキは特に、中に空洞があることが多いので、中が見えない状態では穴があるのを前提に安く値付けされる。穴がなければラッキー。
3.神社の木は買えない(神様がいるから)が、お寺の木は買える。
4.斜面に生えている木はカーブしている(船にはそういう木も使う)。
5.小さい時から丁寧に下枝を打たないと枝下が長くならないが、最近は手入れが悪いからなかなか良い材料が出ない。

 

【和船の部材】シキ・ミヨシ・トダテ
2017.04.23 [Sun] 21:06

 船底材のシキ(敷)、船首材のミヨシ(水押)、船尾材のトダテ(戸立)
 この3つが和船のもっとも基本となる部材で、まずここから作り始める。
 シキにミヨシとトダテがついたところで「敷据式(しきずえしき)」という儀式を行なう(「敷据祝(しきずえいわい)」ともいう)。

シキ(敷)
 別名:カワラ(航)・コウラ

 船のもっとも要となる部材。
 シキの長さが船の寸法の基準となる。船の全長は、これにミヨシとトダテを足したもの。ミヨシは曲がった材木で「良い格好」になるように取付角度を決めるので、船の先端がどれくらいまでくるのかは木取りをするまで分からない。

 他の船板とは違い、分厚い板を使う。
 また、幅が1材で取れない時には、複数の材を矧いで使う。

 和船の特徴として、「竜骨(りゅうこつ)を持たない」ことがよく挙げられる。竜骨のように船底中央部を突出させず、平らな板を使うことで、浅瀬への進入・引き揚げが容易になる。明治以降に港湾設備が整えられるまで、大きな港でも遠浅の浜が多かった日本に適したカタチ。

ミヨシ(水押)
 別名:ミオシ(水押)・ニヨシ(子丑・女子)など

 水切りの性能とともに「格好の良さ」を決める重要な部材。
 伝馬船など和船の多くの船種では太い角材を使う「一本水押」だが、幅のある板を使う「箱水押」という形式の和船もある。

 ミヨシはまっすぐではなく、下の方でゆったりと曲線を描く。
 船の棚板(たないた=舷側材)は平らな板を曲げて使うが、ミヨシは木の根元の曲がっているところを製材した「根曲がり材」を使う。
 理想の太さと曲線をもった材料を入手するため、船大工はまだ山に生えている木を選んで買う。
 →【船大工の技術】材木の選定・購入
 

【材料】アカミとシラタ
2017.04.23 [Sun] 16:55

 木は年輪があることからも分かるように、成長するにつれて中心から外へ外へと太っていく。
 中心部は古い死んだ細胞で、外周部分に水や養分が通っている。

 木材では、中心部の心材をアカミ(赤身)、周辺部の辺材をシラタ(白太)と呼ぶ。心材は色が濃く、辺材は色が白いことが多いための呼び名。

 アカミとシラタで強度に差はないが、アカミは腐りにくく美しいため、船に限らず建築でもアカミをなるべく使いたいものなのだそうだ。

 「大田区の船大工・中ベカを復元する」(大森 海苔のふるさと館/DVD)によれば、東京都大田区貴船掘の東造船(屋号:船竹)では、シラタを隠すために古釘や灰などを混ぜた特殊な液を塗っていた。見栄えを整えるための工程。

 →Wikipedia「木材」
 

伝馬船(てんません)建造までの経緯
2017.04.23 [Sun] 15:39

 2016年3月、知り合いの方が“千葉の船大工さん”に会いに行くとおっしゃるので、無理を言って一緒に連れて行っていただいた。
 お会いしたのは船大工の土屋徳彦さん(昭和12年生まれ)。
 私が和船に興味を持っていると話すと面白がっていただいて、「これから伝馬船を作るつもりだから、よかったら見においで」と言っていただいた。

 土屋さんは千葉県の九十九里浜で漁船を作っていたという。

土屋さんが棟梁として作った網繰船(進水式の写真)

 九十九里のイワシを獲る「網繰船(あぐりぶね)」は、2艘1組で網を引く。2艘の性能をそろえるために、こんな大きな船を2艘同時に作るのだそうだ。

 昭和40年代には漁船がFRP(強化プラスチック)製になったため、横浜でダルマ船(動力を持たない運搬船)を作ったりもしたが、タンカー等鋼船の内装など、船大工以外の仕事をするようになったという。

 最近は「船大工は絶滅危惧種だから」と、船大工の技術を後世に残すために模型船などを作ってきた。

海の駅九十九里に展示されている網繰船のジオラマ(土屋さん製作)

 土屋さんが作った網繰船の模型は、海の駅九十九里に展示されている。
 また刺身などを盛り付ける「船盛り」の船も5ハイくらい作ったという。船大工が作るので、水が漏れないとか。

 たいへん研究熱心で、和船に限らず造船関係の資料も収集していて、趣味の旅行で世界各地の船を見て歩いている。


 伝馬船(てんません)は、小型の汎用船。網繰船の操業でも必ず1パイがついて行って、網をさばいたりするのだという。
 その伝馬船を模型でなく本当に作ろいうというのが、今回のプロジェクトである。

【基本データ】
館山市の渚の博物館展示のアバツリテンマの寸法をベースに作成。

館山市立渚の博物館のアバツリテンマ

■全長:3m46cm
■シキ長:2m59cm
■肩幅:1m31cm
■最高丈:66cm
■胴丈:48cm


 材料の木材や工具はあったが、和船作りで大量に必要となる船釘(ふなくぎ)の入手がネックとなった。
 2017年1月、高知県で和船を作っている方から分けていただけることになり、いよいよ建造が始まった。