60代美佐子さんのケース2

September 06 [Sun], 2015, 20:44





6冊ある切手帳の中から抜き取られていたのはかなりの枚数だ。

およそ2冊分くらいになるのではないかと思われるほどの空きスペースがあったのだ。

「あの時ね(前回の買取業者が訪問した時)、あまりに居座るから面倒くさくなっちゃって、何枚か欲しいのあげるから、そしたら帰ってくれる?って言っちゃったのよね。こんなに抜き取っていったなんて思いもしなかったわ〜。」

「え?だって美佐子さん、目の前で見てたんじゃないんですか?」

「あ〜。そういえばあの時ちょうど電話が鳴ったのよね〜。それでちょっとだけ席を外したのよ〜。」

「え?その電話って…。」

「あ〜〜〜!!!!!!!!!!」

やっぱり。

無言電話だったのである。

多分その買取業者が自分の携帯から美佐子さんの家電にかけていたのだろう。

音声をミュートにしておけばただの無言電話のようになる。

その隙に大量の切手を抜き取ったのだ。

しかも中国切手などの高額で捌けそうなものや、バラでなくシートの切手はファイリングせずただ挟んだだけにしてあったらしいので、それもターゲットになった。





しかし今更証拠もないし、その業者に対して泣き寝入りするしかないのだ。

みなさんも気を付けてください。

じっと見てるのはなんだか気が引けるなどと言っていると、何をされるかわからないのです。

私たち買取業者は、どこの馬の骨かわからないような人種がやっていることがほとんどです。

とにかく目を離すような瞬間を作らないようにしてください。





で、結局その前回の業者が3000円でしか買い取れないと言った切手の束を私は23000円の値を付けてお買取りさせて頂きました。しかも中身3分の2くらいに減っちゃってましたけどね。

買取金額というのは業者によって全然違います。

もしお宅に眠っている不要品を売りたいと思ってるならば、まず一回見積もりを出してもらって、その場では断って、他のところと買取金額を比べた上で、買い取ってもらう業者を決めるというのも一つの手だと思います。

2〜3件回るとだいぶ金額が違ってくるのが分かると思いますよ。

あとCMや広告を打っているような大手は広告費に流れちゃってますから、たいてい買取金額低いので、注意してくださいね。


入口は電話から。

September 04 [Fri], 2015, 21:18





訪問販売、そして訪問買取。

どちらも2年前に法改正があって、アポイントなしで突然「ピンポーン」と

お宅にお邪魔することは出来なくなったのだ。

一度も接触したことのない相手の家に、商業目的でアプローチをかけることは

今の法律では違法とされている。





では、今まで「ピンポーン」とやって稼いでいた人たちは一切仕事が出来なくなって、

みなが失業し路頭に迷っているのか?


いやいや、そうではない。

アポイントさえあれば訪問することは可能なのだ。

それならばまず電話で約束を取りつければいい。




となると、テレアポさんを入口にして、そこから一気になだれ込む。

この方法が今は主流である。






訪問業者とのトラブルに遭わないためにまず最初にやることは・・・

テレアポがまずとっかかりを作ります。なので、テレアポ対策をしましょう。

@ハローページなどの電話帳掲載をやめてもらうこと。

電話帳掲載がなくても個人情報の名簿はあちこちで出回っています。会員証やポイントカードなど自分の住所や電話番号を記載する類のものをむやみやたらに作るのはやめましょう。日頃から注意をすることで随分変わってきます。

A電話に録音機能を取り付け、アナウンスが流れるような応答のものにしてもらうこと。

今は電話会社にお願いすれば、フリーダイヤルからのコールを遮断できるようなシステムや、この会話を録音しますなどのアナウンスが流れるようなシステムへも変更することができます。一度被害に遭った方にこのシステムが活用されているケースが多いようです。

Bナンバーディスプレイの電話機に変えて、知らない番号からの着信には応答しないこと

簡単に誰でもできるのはこの方法ですね。Aよりも手っ取り早くできます。今は黒電話を使っているお宅は少ないですから、だいたいの電話にナンバーディスプレイ機能がついていると思います。知人の番号は全て登録して名前が表示されるようにしておいて、それ以外の番号からは留守番電話で対応し、必要なものだけ出る。テレアポは留守電にまでメッセージを残さないので、留守電に話しかけてくる方からの電話は、自分に用事があって掛けてくる人と理解して受話器を取るという形にすればテレアポ対策になります。

Cもし業者からの電話にうっかり出て対応してしまったら、とにかく会話を続けずすぐに切ること。

「結構です。」ガチャ。これが一番良い方法です。とにかく会話のキャッチボールを続けてはいけません。横柄な応答をすると嫌がらせされるのでは?などという心配は必要ないです。テレアポさんは仕事としてやっているだけなので、どんな対応をされようとお構いなしで次から次へと機械仕掛けのように電話をかけていくだけですから。

D万が一、アポイントを強引に取らされてしまった場合には、ボケたふりをする。もしくは本人がいないふりをする。

痴呆症を患っている方や知能障害等をお持ちの方との売買契約はいかなる場合でも後からクーリングオフで破棄できるので、だいたいの業者は面倒くさがって避けます。なので、わからないふりをするか、もしくは「本人が今いないのでわかりません。」と本人不在の旨をインターホンごしに伝えましょう。アポを取った本人とでなければ、交渉出来ないので、業者はすごすごと帰っていくしかないのです。




とにかく大切なことは・・・

なんと言ってもまともに接触しないことが一番です。


言葉巧みに言い寄ってくるので、お年寄りが一人で対応できるなどと思わないでください。

そして一度でもまともに対応してしまうと、自分の名前や住所などの「カモリスト」が

あちこちの業者間で出回るものと思っておいてください。




世の中の人、すべてが悪人ではないけれど、それでも悪い奴らは身近にもたくさんいます。

自分のことは自分で守らなきゃね。

さらに傷口を深くするのはいつも自分。

September 04 [Fri], 2015, 1:33




もうあの人だ。

あの人に頼るしかない。

今は手段を択んでなんかいられないのだ。

とにかく一目散に横浜市瀬谷区へ向かった。

今日はここでクロージング出来なかったら、私の戻る場所はないだろう。

代表に顔向けできない。

ここで決めないと。

暴利を貪るやり方でなんとか粗利を出して帰らないと…。

追い込まれていた。






そんな中、追い客さま、私が来るのを今か今かと外に出て待ってくれていた。

車を誘導してくれた。

そして特上寿司を用意してくれていたのだ。

どうしよう。顎関節症が心配だ。

今は痛み止めが効いているから大丈夫だけど、ここ最近固形物など食べていないのだ。

とりあえずちっちゃくちっちゃく食べ進めるしかないな〜。

前歯で小さくちぎってはかまずにお茶で流し込む。

また前歯でほんのちょっとを噛み千切り、噛まずにお茶で流し込む。

この繰り返しだ。

思った以上に時間がかかる。

アポに入ってすぐに何かアクションを起こしてることを会社に伝えないといけないと話すと、元技術屋のおじいちゃんは快く時計を出して来てくれた。

「これは自分のものだからいいよ。好きに使いなさい。」

一見、やさしさ溢れる言葉に聞こえるかもしれないが、その奥には「自分のはいいけど、これから商談する奥さんの宝石類に関しては好き勝手にさせないよ。」という意図が込められいるのが分かった。

これは結構難儀しそうだなぁ。






やっと食事が終わる。

さっさと宝石の話に入らないと時間がない。

おじいちゃんは私に「結婚しろ。」だの「お見合いしろ。」だの「いい人を早く見つけなさい。」と延々に話して、一人で盛り上がっている。

私は携帯画面を見ながら、話半分で上の空だ。

おじいちゃんはそれに気が付き、むっとした様子である。




おじいちゃんのその気持ちが伝わったのに、無視して宝石の話を切り出す。

おじいちゃんは「そんなに慌てなさんな。」といい残し、とぼとぼ二階に上がっていく。

私は申し訳ないと思いながらもその階段を上っていく背中に「早くしないと時間がないのです!適当でいいからとにかく早く〜!」とはっぱをかける。

おじいちゃん、ごめんね。

本当にごめんね。

何度も心の中で繰り返すも、おじいちゃんはなかなか降りてこない。

ごそごそ音がしている。

階段の下からもう一度おじいちゃんに向かってはっぱをかける。「もう時間がないよ〜。」

そのあと降りてきたおじいちゃんの表情はかなり硬くなってた。





気にしてたらだめだ。フォローはあとで入れるとして、まずは画像を撮って会社のラインに送らないと…。

え?

携帯の充電がない。

残り15パーセントを切ると画像の撮影ができない。



もうどうしよう。

慌てる。

前回のことが頭に浮かぶ。





「車に行って充電してくる。」

そう言ってその場を出た。

急速充電にするためにナビなどの余計な電源は抜いて。。。

エンジンはつけっぱなしじゃないとダメってことは…。

!!!!

そうしたら車の鍵かけれないじゃん!

掛けれても開けれないじゃん。

うわ〜。どうしよう。





もういいや!

とりあえずエンジンつけっぱで。

でも車が盗難されたらもともこもないし。

まず代表に連絡して聞いてみよう。報告しよう。

そう思って、部屋に戻ると会社の携帯がピロピロ鳴っている。

相当長い間鳴っている。

走って行って電話に出る。

怒鳴られる。それを見ているおじいちゃんの機嫌が悪くなる。




テレビ電話をしろとのこと。

掛けると音声が勝手にスピーカーになってる。

代表の声がおじいちゃんの機嫌をさらに悪くする。

「粗利はいくらだ?」

「買ってこれるんだろうな。」

「どうでもいいから早く買って早く帰ってこい。」

私「あの…、スピーカーで全部聞こえちゃってるんですけど。。。」

「だからなんだよ!粗利品見せろ。ダイヤ見せてみろ。」




・・・・・・・・・おじいちゃんはとうとうキレた。

「こんな高額なものを取引するのに、君の上司は10分やそこらどうして大人しく待っていられないんだ!信頼に値しない!大事な妻のものなんだ。そんな奴らに渡せるか!今回の話はナシだ!」

当たり前です。

その通りです。

おじいちゃんの言ってることはごもっともで何の反論もできません。

そこへ畳みかけるように代表から電話。

「とにかくそこを出ろ。今すぐ出ろ。」

切ったと思ったらすぐにまたもう一度電話。

「(家を)出たのか?出たら報告!すぐしろ!」





慌てて荷物を両手に抱えて引き上げる。

「おいいちゃん!ごめんなさい。ほんとうにごめんなさい!」

そういいながら靴を鞄に押し込み裸足のまま外へ。

車のエンジンはかかっている。

走って乗り込みそのまま発車。




おじいちゃんが走って駆け寄ってきた。

「これは君に渡そうとおもっていたものだから、持っていきなさい!」

ビニールに入った腕時計2つが車の中へと放り込まれた。

「おじいちゃん!受け取れないよ。こんな高価なもの、受け取るわけにいかないよ!」

「会社に手ぶらで帰れるのか?」

それを言われたらもうどうしようもない…。

「ありがとう。ごめんね。」

「今度は笑顔で来れるときにまた連絡するよ〜。」

おじいちゃんは車を誘導してくれて、最後は笑顔で送ってくれた。











落ちこぼれ、さらに落ちこぼれるの巻。

September 04 [Fri], 2015, 1:31





…無理なのは分かった。

このプラチナ台のブレスレットはよくよく考えてみるとやっぱり手放したくなくなったってことですね。

お客様の気が変わることなんてよくあること。

それを責めても仕方がない。

そりゃそうだ。

だっていくらあやしげなブローカーから買ったものとはいえ、この悪趣味なセンスのブレスレットを購入した時の金額はなんと600万円なのだ。

ぼったくられまくるのもたいがいにしないと…と心配するほどの価格だが、本人たちはそれが適正な価格だと思って購入したのだからしょうがない。

別に騙されたとかそういう類の話ではないわけで…。

自分の中では600万の価値だったものが、一気に10分の1以下の金額まで下がったのだから面喰うのも無理はない。

本人もショックを受けているのだろう。

これ以上、無理に取引を迫るわけにもいかないし、今日のところは一旦落ち着いてもらったほうがいいだろう。

こんな空気感の中、押せ押せにしたら余計頑なになってしまうだろう。

そして今後の希望さえ見えなくなってしまうだろう。

そう思った。




でもその気持ちとは裏腹に、はあ?こっちも無理だし。。。

この状況でここまで引っ張ってよくそんなことが言えるね。と言ってやりたい気持ちも沸々と湧き上がる。

それプラス、自分への怒り。

なんでこんな風になる前に自分で気付けなかったんだろう。

気持ちが揺れ動く。






状況が状況なのだ。

会社での自分の状況、そして毎晩繰り返される私への叱責を思い返し、簡単には引き下がれないと思う気持ちもどんどん強くなる。

こうなったら泣いて情に訴えるか。それとも全く違う話からの最後にもう一度勝負に出るか。

そうこう考えているうちに「ピンポーン」

「診療の患者さんだわ。」と言っておばさんは部屋から出て行ってしまった。





一人になり、冷静になる。

トラの剥製が異様なにおいを放つその部屋で、私は我に返る。

今更「話が違う!」とか「約束したじゃないか。」と、言い寄ったり、このおばさんを責めたところで何にもならないのだ。

とにかくここは今のこの状況を打破しないと。

さっさと方向転換しよう。

他の方法で粗利を出せばいいのだ。

一向に戻ってくる気配のないおばさんを待ち続けても意味がない。

置手紙を残して私はトラのおばさんの家を出た。

「トラのおばさん。」

「どうかお元気で…。」





まずは、代表に連絡を入れる。

「このままでは帰れないので追い客のところへ行かせてください。」

怒っているだろうことは分かっている。

きっと呆れてもいるだろう。

すごい失態だ。

笑ってすまされることではない。

私のためにたくさんのことが動いた。

信じてくれたのに、結果裏切った形になった。




何一つ満足に出来ないできそこないの私を信じてくれて、そして大金を預けてくれて、アポもよそへ振ってくれて、レンタカーまで借りて私の契約の手助けをしてくれた代表と主任に申し訳ない気持ちでいっぱいだった。

自分のことよりもまず、代表が周りに責められている姿が頭に浮かんだ。








このままじゃだめだ。











私はなんと言われようと絶対追い客のところで取り戻さなくちゃいけないと思っていた。

追い客さまの家へ向かう。

途中、変な感覚に襲われた。

自分がどこをどうやって運転しているのかわからなくなった。

変な世界に迷い込んでいるような気がした。

気が付くと本来20分で到着する距離を50分もかけて走っていた。

かなり動揺していた。



私は落ちこぼれ査定士。

September 03 [Thu], 2015, 21:12







買取れない…。

粗利品が出ない。

他の物は出る。でも貴金属が出ない。






お客様のところから貴金属や粗利品を買い取ってこれないのだ・・・。

私のようなのは査定士とは言えない。

ただの人生相談を聞く相談係。

そして頑張っている他の社員の足を引っ張る落ちこぼれ。







最初は貴金属を買い取ることの罪悪感に苛まれ、そしてお客様に言われた

「こんなこと続けてると警察に捕まるよ。」

という一言で一撃必殺K.O…。

それまでは何度か買い取れていた貴金属も、その日を境にピタッと出なくなった。

お客様に「貴金属ありませんか?」という言葉が言えなくなってしまったのだ。





そこからいろいろな人に迷惑をかけ、話を聞いてもらい、散々うだうだして、やっとやっと這い上がって立ち直り、前向きな気持ちになった。



別に悪いことをしているわけではない。

うちの会社は他社とは違って、法外な料金で無理やり買い付けてくるわけではないのだ。

きちんとした手順を踏んで、きちんとした交渉をして、きちんとしたお値段で買い取ってくるので、お客様からのクレームなどもなく、クーリングオフもすこぶる少ないほうなのだという。

何を言われても堂々としていればいいのだ。




今は買い取りたい気持ちはもちろんある。

粗利を出したい。

一つでも多くの粗利品を買い取って、会社に貢献したい。

それは、きちんとした価格できちんとした買取をする!

お客様にも喜んでもらって、自分も粗利品を持って帰社する。

例え一回の利益額は少なくても、毎回きちんと出せれば、そのうち塵も積もって砂場の山くらいの大きさにはなるだろう。

それを毎日コツコツやっていけば、周囲からの信頼も得られるし、もしかしたら大勢のお客さまの中には、私になら買い取ってもらってもいいと思ってくれる人が現れてくれるかもしれない。





追い客さまを大事に…。

そして自分も潰れないやり方…。

そういう方法が必ずあるはずだし、私にはそういうやり方しか出来ないと思っている。





だけど、この方法ですぐに結果を出すことはなかなか出来ない。

ある程度の日数を要するし、焦ってやり遂げようとするのが無理な話なのだ。






でも、昨日は私にとって再出発してからもう4日目になっていた。

3日間は粗利品を一度も出せていない。

正確には、一度だけ出せたけど買い取れていない。




そのお客様はなんとメレダイヤが合計10カラットもついた234グラムのプラチナ台ブレスレットをお持ちだった。

亡くなった旦那さんの形見の品だという。

整体の診療所を夫婦で営んでいたようで、診療所兼ご自宅のお家にはそれはそれは高価な品がたくさん飾ってあった。



実はちょうど一か月前にも、うちと同じような買取業者が来て、10万円の記念金貨を3枚、喜平含む使用していない貴金属類をすべて、もちろん切れたネックレス、石のとれた指輪、片方だけ失くしてしまったイヤリング等々のもの、それからK18もしくはK14でできた男性用ネクタイピン・カフス等を合計60万円で買い取って行ったというのだ。

そのお客様は買取が初めての経験だったし、8月1日から娘や孫たちとフランス旅行へ行く予定だったこともあって、気前よく一気にその買取業者に買い取ってもらったとのことだった。

そしてもう使っていない亡きご主人の腕時計20本ほどを全てタダで渡してあげたとのこと。

この話が本当かどうかは知る由もないが、確かにネクタイピンやカフスの入ったケースを丸ごと出して来て下さった時には、確かに貴金属系のものは一つも入っておらず、20〜30個のガラクタ同然のものだけが残っていた。




そして、ご主人が生前600万円で知人から購入したもので、大事な形見としてこのブレスレットがあった。

メレダイヤが周りにわんさかついた超派手目なバブリーな品物で、使ってそのままを手入れせず置いておいたのだろう。裏側はもう腐食してきてる。

お世辞にもセンスが良いとは言えないその粗利品は、私にとっては高根の花だと思った。

まさかこれを買い取らせてくれるなんて夢にも思わなかったのだが、その時遊びに来ていた娘さんが

「こんな悪趣味なもの、誰もほしがらないよ〜!売っちゃいな!売っちゃいな!」

そんなことを言ってくれたのだ。

「う〜ん。でも600万なんて数字、どうやっても叩き出せませんよ。

うちではいいとこ55万ですね。55万でとんとん、50万でならありがたいという感じでしょうか。」

そう答えた。

「いいですよ。50万で。でもこれって本物ですか?」

確かに…。

こんなギラギラしたブレスレット、おもちゃだって言っても信じるだろうなあと思った。

しかも腐食が始まって、変色しているように見えるし、本当に大丈夫かなぁ、この商品。

代表に連絡を入れてきく。

そうしたら「一応真贋出そう。預かれそうなら預かってきてね。」

そう言ってくれた。

なので私はいったん預かって帰ることにした。






あの時、50万円即決で購入出来ていれば…と後悔先に立たず。






2日後、真贋はOK。

そのブレスレットを持ってお客様のところへと向かった。

早速交渉だ。

あの時、お預かり証の代わりにと名刺に
「総重量234グラムのブレスレット(PT900×K18×メレダイヤ計10ct)×1本をお預かりさせて頂きます。真贋後、本物ならば50万円で引き取り致します。平成27年8月30日 自分の名前」
と書いて来たのだけれど、考える日にちを数日持たせてしまったし、50万では渋るかもしれない。

なので、私は60万までの中で交渉出来ればいいかなと思っていた。



「こちらのブレスレット、間違いなく本物のプラチナ台でした。まずはお返し致します。

それで、早速ですが、先日のお約束通りの金額でお譲り頂く形でよろしいでしょうか?」

「・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・」

なんか歯切れが悪い返答なのだ。

もういいや!と思い、駆け引きせずに60万円を提示した。

なのに、うんと言わない。

あれ?

おかしいなぁ。

「2〜3日、時間をちょうだい。一回考えるから。娘にも聞いてみたいし。」




まあいっか。それならと、何も言わず大人しく承諾したのは娘さんには初日に会っている。

その時は娘さんのほうがノリノリで、「50万円で!」と向こうから言ってきてた。

ということは、娘さんに聞いてみてNGが出ることもなく、すんなり快諾との返事が来るに違いないと思っていたのだ。




本気でそう思っていたのだ。




バカだね。そんなわけないか。。。

ってか、そうならその時点で目の前で電話して聞いてくれてるわな。

売る気がある人の返答ではないわね。

ただ単に断られただけのことだよね。でもそう思わなかった。理由がある。





きちんと断ってくれれば何の問題もないのに、いいずらかったのだろう。

私は粗利が全然出ずに、会社でも危機的立場にあったので、そういう状況だということは正直に全部伝えていた。

なので、この商談はなんとしてもこけるわけにいかなかった。

「だめならだめではっきりと断ってください。

それが私のためになると思って、言ってください。」とまで言った。

それでも相手は「違うのよ。そうじゃないのよ。私はお願いしたいのだけど

最後に娘に背中を押してもらうために一回聞いてみるのよ。

だってこれは主人がのこしてくれた大切な形見だから。」

と。



「あなたにこんなに良くしてもらって、本当にうれしいわ。

今の仕事をやめてうちで働いてくださらないかしら。」

「うちの娘に性格がそっくりなのよ。ひとの子とは思えないわ。」

そんな風にお話ししてくださっていたのに、

そして私がこの契約のためにどのような思いをしていて

どんな状況を今抱えているのかも知っていて

昨日になって、突然、びっくりするほどの速さで豹変してしまった。






「あなたが勝手に買取できると思いこんじゃったのね。」

「私は最初から手放すつもりはなかったのよ。」

「あなたが一生懸命動いてくれていたのは知ってるけど、それとこれとは話が別だから。」





そんな風に言い残し、「診療があるから。」と逃げるように出て行ってしまった。






私にはそういうことが出来ないから、他の人もそういうことはしないだろうという考え方のもと、自分の中で話を進めてしまうくせがある。

小さいころから競技としてのオセロをやっていたせいで、私特有の変なくせが身についてしまっているのだ。

それはどういうものなのかというと、いつも頭のどこかに黒と白の不規則な整列式があって、誰かと普通に会話している時でさえ、白と黒が交互にひっくり返ったりしている。

その状況下でも何手か先の相手との会話状況を読んでしまい、自分の中でその部分を割愛して返答したり会話を進めてしまうのだ。

以前幼いころに将棋を始めた棋士を目指す友人にこのことを話したら、「あ〜、わかる!」と初めて共感され、私だけじゃないんだというおかしな安心感を覚えたのだが、結局はそれが唯一無二の経験であり、他人には簡単に理解してもらえそうにない障害であることに違いない。

むろん、話していても相手はちんぷんかんぷんというような顔つきになることが多々ある。

私からは大きくずれているわけではないが、だからといって的を得ないような中途半端な答えが返ってくるので困惑しているのだ。

私のその読みがあたっていればそうはならないのかもしれないが、オセロと違って会話の答えは定石はない。

無限大の答えが広がっているので、その答えを読むことなんて不可能なのに、自分の頭の中で勝手に会話を進めてしまうのだ。

これはオセロをやっていたせいだけではなく、ちょっとした脳の障害なのかもしれない。

しかし、小さいころからのくせで、そうしないようにすると答えを口に出すまでに時間がかかる。

自分の中での会話を遡らないといけないので、何テンポか遅れるのだ。

ただ「はい。」というだけにも、そしてうなずくだけの動作にも、間が空いてしまうことになるのだ。

相手はイライラする。

そうすると余計に委縮してしまう。

対人関係はなかなか上手くいかない。

しかし私のことを理解してくれようとする人とはとても長い期間いい形で付き合っていける。

私のことを寛大な気持ちで迎えてくれる人は、初対面でわかる。




この人は最初は、ちょっと変わった人だなあと思われていたに違いなかった。

そいういうのは自分で感じるのだ。

だけど、すごく頭の回転が良い人だった。

私のくせをピタリと言い当てた。

私も素直に心を開いていろいろとおしゃべりをした。

電話でも何時間も世間話をした。

この数日間で距離がかなり近くなっていると思っていた。













でも違った。

ただそれだけのこと。

60代美佐子さんのケース

September 03 [Thu], 2015, 21:06



色々話していくうちに今までにも2社訪問買取の業者が入っていたことを知る。

そしてやはり悪徳な訪問買取業者の被害に遭っていたみたいだ。



美佐子さんいわく「私はね、ルイヴィトンが大好きだったのよ。あの茶色の柄のやつね。(モノグラムのことだ。)
主人の転勤で長い間、香港に住んでいたから、バックだけでも20個以上持ってたし、お財布やその他のものを含めるとかなりの数だったわね。だけど、この歳になるともうそんなの使わないじゃない?今は軽くて使い易いかばんのほうがいいのよ〜。」


「だから何年か前に○○○○屋に電話して買取に来てもらったのね〜。そのときちょうど玄関に象牙の大きい置物が置いてあって、奥さん!これも一緒に譲ってください!っていうから、いいわよ〜って。全部で50000円くらい置いていったのだけど、買い取り屋が帰ったあとで内訳をみてびっくりしたのよ〜。象牙が30000円で、ヴィトンのバックは全部で20000円だって書いてあったから〜。そんなんじゃもったいなからって慌てて電話して象牙はいいけど、ヴィトンは返して欲しいって言ったら、一度契約が成立してしまったものに関してはお返しできないの一点張りで〜。」

実際○○○○屋は訪問買取ではなく、持ち込み買取が主流である。

お客様自身で店頭に持ち込んでの買取の場合には、クーリングオフの制度は適用されない。

一度契約してしまったらそれまでなのだ。

しかし、今回の場合、ルイヴィトンの買取は最初から美佐子さんが希望して、自身で連絡の上、買取にきてもらったのだから店頭持ち込みと同じ法律が適用されてしまう。

象牙に関して言えば、買取業者のほうから訪問後に言い出した契約となるから話は別なのかもしれないが。




被害とはいっても、結局のところ最後はその価格で納得して契約を結んでしまったのは自分自身なわけで、その訪問業者が金やプラチナをメッキ(イミテーション)だと偽って買い漁ったり、脅して出させて無理やり買い取ってくるなどの行為をしてこない限りは、犯罪被害とは言えないんだろうけど…。


もしそれでも皆さんのお宅に買取業者が来て、押せ押せで押し買いをされた場合にはクーリングオフという制度を利用してください。今の法律では訪問販売・訪問買取の売買契約に関しては全て(一部商品を除く)クーリングオフの制度が適用されますので、その場で断り切れず納得のいかない契約をしてしまった場合には、その契約から8日以内にクーリングオフを申し出ましょう。クーリングオフが出来ない業者は消費者センターなり、警察なりにすぐに届を出すべき。業者にもその旨はっきり伝えましょう。
そして、その際には必ず売買取引の明細書を持っていることが条件ですので、まずはどんな小さい金額の明細書でも捨てずに取っておいて下さい。





話を戻します。

うちの会社の粗利がつく商品といえば

@もちろん金・プラチナ製品

A価格はかなり下がるが銀製品

B未使用の切手・はがき・テレホンカードの類

C商品券・お米券・ビール券・株主優待券(一部銘柄のみ)

こんな感じ。

Dブランドバックや時計、酒類、カメラ等についてはオークションなどで売却したのちにその金額が粗利として加算される仕組みだ。

なので、私たちクローザーは@〜Cまでの商品をどれだけ買い取れるかが勝負なのである。

美佐子さんに対しても例外ではなく、私は必死に粗利の出る品物がないかと世間話の中でそのヒントを探す。

やがて、美佐子さんの持っていた貴金属(金プラチナ)に関してはだんなさんが亡くなったあと、下の子が大学に入る際、まとめてコメ兵に持っていき売買し、まとまったお金に換えてしまったのだそうで、今は結婚指輪や冠婚葬祭用のパール等必要なものしか残っていないとのことを知る。

では商品券の類はどうか?

「最近もらったことないわね〜。もらったとしても息子の嫁に渡しちゃうか、孫のものを買っちゃうわね〜。」

なるほど。まあそれが普通だわね。

では切手、書き損じのハガキや、年賀状の残り、未使用のテレホンカードなどの類はどうか?

ビンゴ〜♪

あった。

ご主人と美佐子さんとで切手収集の趣味があったということで、たくさんのアルバムを持ってきて下さいました。

しかもお二人は香港で長い間生活されていたので、中国切手がたくさんあるとのお話。

中国切手は高値で売れるものもまだまだあるので楽しみです。

早速本社にラインで連絡。

「切手が出たので少し時間ください。中国切手もあるそうです。」

切手の場合には枚数を数えるのに時間がかかるので、その旨先に連絡するのです。



「そういえば前に来た業者がなんかないかなんかないかってしつこく聞くから、一回これを見せたことあったのよ〜。で、合計の見積もりを出してもらったら、全部で3000円でしか買い取れないっていうのよ〜。頭にきてそれなら自分で使うわって言って売らなかったのよ〜。」


6冊ほどあるアルバムにはお行儀よくきれいに切手が並んでいる。

外国の珍しい切手なんかも並んでいて、これは中国切手も期待できそうだとわくわくしながらページをめくる。






・・・・・・ん?

あれ?

ここも?

あれ?

あれ?


ところどころ切手がスポーンと抜けている。



ページごとそのままそっくり入ってないところもある。


でも最初から入ってなかったという感じではない。


切手が入っていただろう形跡が確かに残っているのだ。








つづく…

美佐子さん会社員。60代前半未亡人。

September 03 [Thu], 2015, 19:31
昔ながらの日本家屋。

門から玄関までが石畳で続いてる、約15メートルほどもあるだろう。

庭もまあまあ。そして庭師が入っている風だ。松の木や盆栽もきちんと整えられている。

そこに住むおしゃべり好きな小柄の女性。

60代。未亡人。

同じ大学で学生結婚をした最愛のだんなさんが40歳のとき、くも膜下出血で突然この世を去って

専業主婦だった美佐子さんはだんなさんの仕事を引き継ぎ、がむしゃらに働いて

そして家庭では男の子2人を大学を卒業すまで女手一つで立派に育て上げ、

今はたまーに顔を見せてくれるお孫さんの成長が楽しみで仕方ないというそんな素敵な女性だ。





  
美佐子さんとのエピソード。

しょっぱなのアポなのに、ナビの使い方がいまいちだったせいで10分程度の遅刻だ。

気持ちも焦る。遅れる旨を連絡したいが、大きな交差点の信号待ちで電話できない。

そしてそこを超えてもなかなか車が止めれない。

やっと止めた。

バスの停留所のスペースにやっと止めた。

止めてしまった。

バス停でバスが来るのを待っている4〜5人の老若男女の視線が痛い…。

でもまずは電話だ。

「もしもし。今日10時のお約束なんですが、道がわからず10分程度遅れてしまいそうなんです!

申し訳ありません!!」

「…。

…今どこ?」

うわ(泣)

反応がやばそう…。



「たぶんもう近いと思うので、もうちょっとだけ待っててください!!!」

「・・・・・・・・・・・」

「すぐに行きます!!!!!」

「・・・・・・・・・・・」

「あと5分くらい(本当はあと10分は掛かりそうな距離)なんで!!!」






「あはははは。そこからだと5分は無理よう〜。

私は全然大丈夫よう〜。

慌てなくていいから、事故しないように安全運転で来て〜!」




…よかった。助かった。キャンセルされるかと思った。




「私が迎えに行ければいいのだけど、おととい車に乗ったときガス欠しちゃって、そんで今その場所に車止めっぱなしなのよ〜。」

え?

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私みたいな人、見つけた〜www




「だから道がまたわかんなくなったら、その辺歩いてる人に道聞きながら来てね〜」

「今日はね〜、夜の8時から見たいの(多分テレビのこと)があるから、それまでに買取してくれればいいからね〜」




wwwwww





家につくなり、

「どうする〜?  何を買い取りたいの〜?」

「まあ上がって〜!千疋屋のゼリーもらったのがあるから、二人で食べながら考えましょ〜」



なんという人間性。

やさしさの溢れた笑顔、そして室内までもが優しい性格がにじみ出ているかのようなインテリアなのだ。

とげのない性格、おっとりとした立ち振る舞い、そして優雅なゆっくりとしたしゃべり口調…

・・・・・・・・となるかと思いきや、動作はおっとりなのに、しゃべるスピードはまるで機関銃。

次から次へとしゃべる、しゃべる、そしてまたしゃべる。

「私ね〜、早口だから〜。だからね〜、言葉の最後の文字だけ伸ばしてしゃべるようにしてるの〜。

そうすると少しだけ早口感が軽減されるでしょう〜?」




なんだかおもろい…。

そしてなんだか私に似てる…。

興味が沸く。




「暑い中、大変だったわね〜。

クーラーつけておいたからね〜。どうぞ〜。」


・・・・・・・うわっ!さぶっ!

部屋の扉を開けるとそこは初冬の寒さ。

外が暑くて汗だらだらだったので、それらが一気に冷えて、マジで風邪ひきそう。

見ると美佐子さんは長袖を着ているではないか。

そしていつの間にかカーディガンまで羽織っている。

「私のことは気にしないで〜。

私寒がりだから、他の人に(温度)合わせてると冷えちゃって〜。」





当たり前だ。

こんなに寒くしていたら冷えるに決まってる。

ってか具合悪くなる。



「あの〜、私も実は寒がりなんで…。

全然クーラーとかなくても大丈夫なんで…。

一回止めましょうか…。クーラー…。」

「あら〜。そ〜お〜。

電気代の心配なら大丈夫よお〜。私そのために頑張って働いてるのよ〜。」

wwwww

「・・・・・・」

「たくさん汗かいてるし、汗がひくまでこのほうがいいわよ〜。」

「・・・・・・・あ。ありがとうございます…。

お気遣いなく…。」





しばらくすると、あまりの寒さにだんだん頭が痛くなってきた。

「もう大丈夫です。汗も十分ひいたので。

そろそろクーラー止めましょう。

ってか、止めてもいいですか?

お願いです、クーラーを止めて頂きたいです!」

気持ち的にはそんなノリ。

そして極寒だった地は長かった冬を超え、徐々に春先の雪解けくらいの気温になり、

小川がせせらぎ、さくらが咲いた。たんぽぽが咲いた。

卒業式や入学式が終わり、やがて運動会の季節を迎え、そして終わり、

そろそろせみが鳴き出したなぁ〜という流れを感じられるような速度で寒さは和らいでいった。



そしてせみの声を聴く手前くらいの段階で、美佐子さんはカーディガンを脱ぎ、いつの間にか半袖ワンピース+エプロン姿になっていた。w



私は

(ひどい冷え性なわけではなく、美佐子さんに備わる体温調節機能はきっと一般的な値であるに違いない。)

と確信した。









美佐子さんとのエピソードはまだまだ続きます。




そしてこの方。

私の記念すべきお客様となったのである。









88歳ヨネばあちゃんのケース

September 02 [Wed], 2015, 7:59






忘れもしない、私にとってクロージング第一号のお客様。



クロージングというのは、契約を決めるという意味の言葉だそうだ。

買取業者はバイヤーという言葉は使わず、クローザーとかクロージングとか言うのだそうだ。



まだ早いと思ったけれど、せっかく先輩クローザーが私にチャンスをくれたのだ。

真剣に頑張らねば。

そうでなくても他の人より随分進み具合が遅いのだ。

結果を残そう!何といっても第一号のお客様なのだから。






大きな団地のアリの巣のような一角におばあちゃんは一人で住んでいた。


品の良い整った顔立ち、ロマンスグレーに少しパーマをあてている。

腰が曲がっているから余計にちっちゃくて、それはそれは可愛らしい笑顔のヨネちゃん。88歳。








フックは洋服。

フックというのは、とっかかりの商品という意味。

テレアポの段階で「貴金属ありますか?」などというところから詰めるようなことはしない。

一応、貴金属も聞いてはみるが、もっと食らいつきやすい商品から責めるのがテレアポとしては一般的だ。




ヨネちゃんが用意してくれていたフック商品は、かなり年代物の洋服だった。

しかし、手に取ってみると、とても上質な生地だと触った瞬間に分かる。

一枚一枚広げていく。

パフスリーブだったり、プリーツ仕立ての巻きスカートで素敵なピン止めがついていたりと、どのお洋服もその時代に着ていたらちょっと目を引くような代物であったに違いない。中でもバイカラーのツーピースは今時の女の子が着ていても何ら遜色ないものに見えた。

センスの良いものばかり…。

ヨネちゃんも美人さんだっただろうから、きっとよく似合っていたんだろうなぁなどと想像してみたりした。




そして、驚くのはそれらほとんどがヨネちゃん本人が自分で誂えたものだったのだ。


話を聞くとだんなさんは郵政省に努めていたらしい。昔は裕福だったと。

広い宿舎に住んで、幸せな生活だったと。たくさんの良い物に囲まれた豊かな生活ぶりだったそうな。




だんなさんが亡くなって生活は一変する。

「息子がお酒にやられちゃってね…。」

アルコール依存症のことだ。

「いろいろあって、引っ越しも何度かしたのね。それで7年くらい前、ここに引っ越してきたんだけど、ここは狭いから入りきらないでしょ?だから大きな荷物は実家の蔵に預けているのよ。」




そっか…。なるほどね。

だから、こんなに穏やかな話し方で、ボロを着ていても品が漂っていたのか。

でも今の生活はというと・・・・・
年金はすべて息子に吸い上げられちゃってるわけだ…。なるほど・・・。



で、今回のフック商品のこの服。

季節ごとに分けて風呂敷にきれいに包まれている。

若かりし頃に着ていた他の洋服は大概処分したのだろう。

だけどここにあるハンドメイドのものだけは、きっと思い入れが深く、今まで大事にとってあった。


だからといってこのまま持っていても二度と出番がくるわけでもない…。





なんとか満足いく金額で引き取ってあげたい。

でも、実際手作りの衣類は売れない。

素材表示タグなどないものは、トラブルの原因にもなるので、そう簡単に販売できないからである。


ヨネちゃんにとってはプライスレスの価値あるお洋服…。

でもこちらにとっては、悲しいけれど買取してもそのまま処分行となってしまうようなものなのだ。

「こんなの1円でも引き取れないよ。」なんて言えない。

なんとかこのお洋服にもちゃんとした値段がつくよ!ということにして、買い取ってあげたい。






私は抱き合わせで買取をしようと他に値のつく粗利品はないか懸命に辿って行った。





「もう使わないネックレスとか持ってない?」

ヨネちゃんは「必要なのしか残ってないのよ。真珠あるよ。見る?」

そういって宝石類を大事にしまっていたであろうたんすの一番上の左側の引き出しをそのままそっくり引っこ抜いて持ってきてくれた。





「おお!」

引き出しいっぱいにまるでパズルのようにきれいに宝石のケースや箱が並んでいる。



上から順番に取って中を開ける。





空だ…。

また開ける。

空だ…。

また開ける。

また入ってない…。

また開ける。

これも入ってない…。




繰り返し同じ作業。

15個くらい繰り返してやっと一つ。

パールだ。

冠婚葬祭用の立派なパールのネックレス。

きっと買ったときにはいいお値段だったに違いない。





その他の箱も開ける。

ない。

ない。

ない。




「ヨネちゃん、中身は他のとこにしまってあるの?」

聞けば、同業者が私の前に2社入っていて、その時に男性2人が家の中に無断で部屋の中にまで上がり込んで物色していったというではないか。

「なるほどね。」

だからパールは置いてあった。

はっきり言って地金のついていない真珠や水晶、翡翠のネックレス系統のものは販売するにあたり商品価値がほとんどないので、おまとめで引き取ってくることはあっても、それ自体に値がつくことはほどんどない。

だから業者はパールのネックレスのみ置いていったのだ。

ましてや、このヨネちゃんから暴利をむさぼって、しかも一つ残らずまでというのは、彼らも良心が傷んだのだろう。



「これなんだけど。。。」

その買取業者の明細書をヨネちゃんは見せてくれた。



商品名      数量       金額

ネックレス     6本       600円 
リング       9コ      2000円
イヤリング     ×4      100円
こたつ布団    大1      0





まじかよ!

これでまともに明細書切っていくなんて強者だな。

それかヨネちゃんをよっぽどバカにしてなめてかかっているかどっちかだ。

しかもこの書き方だったら「本物じゃなかったよ。メッキだったよ。」と言われてしまえばそれまでというような内容でもあり、そういう金額でもある。



だけど、空になったケースの中にはご丁寧にもその宝石の購入時のレシートが畳んで入っているものが多くあった。

○○貴金属  K18リング  1380000円 ご利用ありがとうございました。などと記載された領収書などである。

しかし鑑定書、鑑別書の類は一枚も残っていない。

やっぱりね。







ん?あれ?



2社入ったといっていたけど、どっちも青い明細書?

もう一枚の小さくたたまれた明細書を開くと…。  

やっぱりね。

そこには一枚目と同じ千葉県のある買取専門業者の名前が記載されていた。

2社ではない。同じ業者が2回来たのだ。

完全にカモられたわけか…。


 


 商品名     数量       金額
アクセサリー   少量       300円
使用済み布団  大1       記載なし






なんだ?

この使用済み布団って???





「あのね、一回目に来た人たちにこの布団も引き取って欲しいってお願いしたのよ。
そしたらね、布団を入れて持ち帰る専用の袋があるから、全部終わったあとに車に戻ってその袋を持ってくるからちょっと待っててって言われて待ってたんだけど、それっきり戻ってこなかったのよ。」

「で、二回目の業者さんにも同じことを頼んだら、処分するのに手数料が3000円掛かるって言われて…。
どうしようか悩んでいたら、代金の300円置いて、そのままさっさと引き上げて行っちゃったから、後日自分で市の職員にお願いして処分することになっちゃったわ。」


 







話を聞いて私は声も出ない…。

なんと言っていいか分からない…。

でもこれが世の常なのだろう。地球上の生物みな弱肉強食で成り立っているのだ。

いじめる奴よりいじめられるほうが悪い…。喰われてしまう奴は弱いからだ…。

やられるのが嫌ならやるほうになればいいのか?





答えなどない…。





自分はどうだろう?

ありきたりだが、前者にも後者にもなりたくない。それが答え。
ただそれだけだ。








結局その日、ヨネちゃんからは5万円の記念硬貨一枚とお洋服たちを合計7万円出して引き取って、ヨネちゃん宅を後にした。

エレベーターに乗って姿が見えなくなるまで手を振り続けてくれたヨネちゃん。

私も玄関を出てからエレベーターに乗るまでの長い廊下を歩く間、3度振り返って手を振った。

出来る限りの笑顔で。






今日から独り立ち(*‘∀‘)

August 18 [Tue], 2015, 0:36



8月17日月曜日・・・。

今日は記念すべき、買取査定士としての初日。

昨晩は夜中3時まで眠れなかったのに、朝はスッキリ爽やかいつも通り5時半起床。






大丈夫・・・。焦らないで・・・。

きっと上手くいく・・・。大丈夫・・・。

自分らしく素直にいこう・・・。うん・・・。






不安な気持ちと、従来の自身のなさ加減が膨らみまくって爆発しそうだからこそ、自分に何度も暗示を掛けた。




今月の達成目標額から換算すると本日のクリアすべき金額はだいたい・・・・・。

う〜ん・・・。ふぅ〜・・・。なるほどね。(;'∀')

数字としての目標と、あとは自分自身で決めた目標を毎日1つ。

「すべてのアポを時間に遅れず廻れるように。」

とにかく一日一日、自分の掲げた目標をおざなりにせず、しっかり達成していくこと。













・・・・・・初回気合い入れて、うすら格好つけて書いていたらわけわかんない文章になってきた。




自分の性格。

命取りになっちゃうレベルの適当おおざっぱいい加減。

良く言えばおおらかで細かいことは気にしない!(ってか気づけてないだけだけど…。)的な典型的O型気質。





やれるだけのことはやってみよう!

FULLOUT。

そんな感じ。







とりあえず、簡単な説明です。

買取査定士というのは、リサイクル業に携わる人達の中で、

@在庫仕分けの力持ち(+腰痛持ち)、

A結局自分が一番のお得意様だったりする店舗販売員、

B単語の登録数なら任せて!のネットオークション担当さん、

と並ぶ4大ポジションのうちの1つで、

「他人の使い古した、又は使い古していないガラクタもしくは否ガラクタを買い取る人」のことです。




一昔前はかなり胡散臭いイメージ漂う職種だったと思われるリサイクル業。

今では、エコだの物を大切にする主義だのなんだのかんだの言って、結局のところ、いつになっても景気が良くならないこの日本において、新品で買うと高いから、お古でもいいわ!的な人が徐々に増えてきて、そんでそのままなんとなく社会に根付いてしまった業種。

そんな感じですかね。

バブルの頃にはなりを潜めていたけどね。

今は貧乏人が多い世の中ですからね。

でもやっぱり他人のお古を買ったり、使ったりするなんて信じられない!

とリサイクルに対して、というか知らない人の中古品に対して、嫌悪感を抱く方も勿論まだまだ多くいらっしゃいます。



そしてこのブログは、その方たちに益々「だからリサイクルなんて嫌なのよ。」と思わせてしまう内容のものです。





私はこのリサイクル業の末端の、今日やっと独り立ちをさせてもらえたという新米買取査定士としての視点から、

・リサイクル業のあれやこれや
・本音と建て前
・本物?偽物?
・この買取金額ぶっちゃけどうよ?

などなど、無駄な情報を無駄に発信してみたくなったので始めます。

そして一番伝えたいのは

「じいちゃん!ばあちゃん!私たちのような買取業者には十分注意して!」

ということです。





リサイクル業者のお宅への訪問買取など、はっきり言ってオレオレ詐欺的な部分、間違いなくあります。

言葉巧みに買い叩き、あなたのおうちの大切な価値あるお品物を根こそぎ剥ぎ取ってやろうと考えている輩ばかり…、買取訪問で訪れる訪問者は十中八九そういう人種と思っていていいくらいです。



今までそういう訪問者のせいで、一度でも嫌な思いをされた方、後悔した方、被害に遭われた方、二回も痛い目見る必要ないから。

一回目で十分勉強してるから。

もう二度と同じ思いをしちゃだめです!させません!



「おら今シュウカツ(終活)中だ〜。」とか平気で言ってヘラヘラ笑ってるおじいちゃんおばあちゃん!

人がいいのが取り柄なだけではこの世の中、悲しい思いをしちゃうのよ。

誰も守ってくれないから、とりあえず自分のことは自分で守って!

年寄世代がこんな底辺のブログを読んでくれる確率なんて、やる気一気になくすほど低いんだろうけど…。

でも、買取業者だからわかる買取業者のいろいろな手口をお教えします。





とかなんとか言いつつ、まあ最初からそんなに気合い入れたブログにする気もさらさらないので、忘れたころに更新する…そんな程度のブログです。



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