手帳 

2005年06月20日(月) 0時26分
机の上に手帳がある。
黒革の、ビジネス用の手帳。
もう2年使っている。手に馴染む。

手帳を開くと、そこには日々の予定が書かれている。
正確には「あるべきはずだった日々」の予定だ。
2年前に僕は道を選択した。選択しないほうの道の予定がこの手帳の中にはある。
そうしてその道を歩んでいる気持ちになる。
そうして現実を認識しないのではない、そうすることで現実が僕の掌に収まるのだ。
収まりきらないもわもわとしたものが体の中をめぐる感覚から抜け出すことができる
のだ。

そうして今あるべき姿は存在へと変貌する。

この道も僕の道だ、あの道も僕の道だ。
ひとつだけの道を歩まねばならない理由がどこにあるか、僕には選ぶことができなか
った。だから、妄想と現実の合間を生きることにした。
そこは酷く曖昧な世界で、飴のようなもので満たされていて、僕は心地が良い。
そうして今日も今週の予定を書き込んでいく。

今週は子供の誕生日がある。まもなく1歳になる女の子に、今年は何を買ったらよい
だろう。そういえば、この間赤い靴の前から彼女は離れなかった。女の子は小さい時
から女なのだと思った。
明日、仕事が終わったら百貨店に行ってあの靴を買ってこよう。彼女はそろそろ歩き
始める。外の世界を知り始める。
ぬるま湯のような飴のような彼女の内側の世界にはない、外界には怖いものも面白
いものも彼女に差し伸べる手も、彼女を傷つけるものも沢山ある。
どうか、彼女に祝福がささげられますように。
彼女のこれからが、これからも輝いていますように。
ああ、今週も忙しいな。

僕は手帳を閉じた。

巨乳 

2005年06月19日(日) 1時35分
私には胸がない。
サイズは65Cカップ。サイズ的にはそうでもないが実際はつまらない。

乳に詰まっているのが脂肪ではなく、憎悪だったら貧乳がもてはやされるかもしれない。
誰かを憎むほど、胸の中に体積していく憎悪。
貧乳は心の清らかな人として、人気が出る。清純派アイドルは皆必死に貧乳になろうと
する。

しかしそんな世の中でも巨乳が好きという人間はかならずいるだろう。
2ちゃんねるには【性格】それでも好き!巨乳 Dカップ【最悪】というスレッドが立つ。
性格悪くてもいいから巨乳と寝たいという男が確実に一派として現れる。貧乳はつまら
ない女として扱われたりもし始める。
そして彼女たちは憎悪を募らせていく。AAカップだった胸はいつしかDカップへ、そして
巨乳の仲間になる。やわらかな乳房の中に潜む、憎悪。憎悪が巨乳を構成している。

私は、自分の胸を見つめる。

携帯電話 

2005年06月19日(日) 1時27分
机の上に携帯電話がある。
NTTドコモ製。使い初めて一ヶ月。

これは知っている人とは連絡が取れない携帯電話なのだ。
知らない人とだけ連絡を位取ることができる。
知り合いになったら、連絡は途絶える。
連絡する手段はない。
送ったメールもかけた電話もどこの誰に送信されるかわからない。
このあいだはグリーンランド在住の日本人に偶然送信されたので、英語でメールを
送らなくても返事が帰ってきた。

電車の中で規制されることはない。が、電車の中の人に送信してしまうことがあるら
しい。そこでその人だと気づいたとき、どうなるのか僕はまだしらない。
インターネットでは色々な憶測が飛び交っているし本当かどうかわからない諸説も流
れているがそれが正しいのか、確かめる術はない。

だから結局、好奇心と恐怖とないまぜになった状態でビクビクしているよりは家で
ゆっくりとメールを打った方が僕にはあっているので今夜も一人でメールを打つ。

「こんばんは 元気ですか」

「元気です 何してるんですか」

「メールです」

「今家の前にいますよ」

「まさか 知らないでしょう 知り合いとはメールできませんし」

「でもいます 絶対います」

僕は携帯電話を閉じた。

ペットボトル 

2005年06月19日(日) 1時19分
机の上にペットボトルがある。
500ml。中味は既に入っていない。

蓋を開けるとそこはブラック・ホールだった。透明な黒。透明な闇。
人指し指を入れると、静かにそこに息づくものがあるように感じる。
コォォォという乾いた音が、指を透明な闇へ導いていくような気がする。
覗いて見る勇気はない。外部から見ることのできる透明感は恐らく内部では全く
異なる材質となって反射しているのだろう。指先だけがその存在を感じている。

この先はどこに繋がっているのだろう。
宇宙だろうか、世界の果てであるのだろうか、あるいは僕の部屋のカーテンの隙間
から除く夜の闇。覗く事の恐怖と共に、禁忌を犯すような興味も沸く。
このペットボトルに入っていた液体はどこから現れ、どこに消えたのだろう。
夜の闇の中に液体が漂い、傾けると溢れてくる。

そんなことを思いながら、僕はそっと指を抜いた。
P R
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