水無月とショッカー

June 26 [Mon], 2017, 15:40
6月も下旬
大好きな「水無月」を買いに和菓子屋さんへ行ってきた

ういろうに小豆を混ぜこんで見た目も食感もつるんとして涼しい水無月が好きです

プレーン(というのかな) 黒糖 抹茶の3個セットを購める

水無月の横に「トマト大福」というのがあって
ふたつ割りにした見本も添えられて ミニトマトまるまる1個がなかに入っているらしい
いちごのない季節はこれで ということか
どんな味か想像しにくい

お店を出ると小雨
ようやく梅雨らしくなってきました

このあいだ小耳にはさんだ会話で
「仮面ライダーのショッカーって ブラック企業の使い捨て社員のようなものだよね」
ということばがおもしろくて
時々思い出し笑いしている

英語教育とトロイメライ

June 23 [Fri], 2017, 15:56
中学校の英語の初歩ではやくもつまづいている娘の勉強をすこし見てやる
小学校で何年かやっているはずなのに
それならばゼロからのスタートではなくて20くらいからのスタートかなと思うのに
見ているとまったくゼロからやっているようにみえる
少なくとも彼女にとって小学校での英語教育は全くの無駄だったようだ

小中の英語教育の連携はどの程度なされているのだろう
カリキュラムを一貫させて教科書も連続性のあるものにしないと
はやくからはじめても何の意味もないかもしれない


荘村清志さんのギターでシューマンの「トロイメライ」を聴いていた
心地よい驚き
ギターというのは最も非ロマン的・非感傷的な楽器のような気がする
ロマン派の作曲家でギター曲のレパートリーはほとんどない(知らないだけかな)
そのギターと ロマン派の代名詞のような「トロイメライ」のミスマッチがとても新鮮だった
べたべたしてなくて さらっとしてて 乾いた叙情

重曹と満洲国

June 11 [Sun], 2017, 21:31
どこにも出かけず 一円も使わない一日
この世に忘れられたようなのも悪くない
そんなわけでリュッケルト/マーラーの「私はこの世に忘れられて」Ich bin der Welt abhanden gekommen を聴いている

風呂に重曹を少し入れるとあとで浴槽を洗うのに石鹸がいらないと聞いて試してみた
なるほどシャワーをかけながらスポンジでごしごしするだけできれいになるような気がする

紫芋の焼酎をお湯割りにしていただく
水飴を少したらすとおいしい
コップに二杯ほど ほろ酔いの手前でやめておく

このごろあまり暑くなくさわやかなので助かる
太陽の黒点がなくなって活動が衰えていることと関係あるのだろうか

図書館で借りた遅子建の『満洲国物語』読んでいた
描写が詩的で美しい

月桂樹とメタモルフォーゼン

June 10 [Sat], 2017, 14:07
買ってきた時には膝の高さだった月桂樹が
いつの間にか二階の窓まで大きくなり 幹も子どもの手首ほどになった

根元にはコーヒーや麦茶の殻や精米後の糠を捨てて ミミズたちの楽園でもあり木の肥料にもなっていると思う

徒長した太い枝をのこぎりで切り落とすと
切り口から鮮烈なローリエの香りが立ちのぼった
葉だけでなく全身にこの香りを蓄えているのだと知る


R.シュトラウスの「メタモルフォーゼン」をYouTubeで聴く
Anna Rakitina というポニーテールの若い女性が指揮している学生オーケストラの演奏
美しい
この指揮者の腕の動きが音楽を雄弁に描いている

https://youtu.be/tgd6McW3718

マカダミアナッツチョコとパルティータ

June 07 [Wed], 2017, 17:14
きょうはこぼしたり落としたりする日だった
朝 グラタンが焼けたのをオーブントースターからだそうとしたときに手がすべってグラタンは落ち お皿は割れた
お皿を割ったのはひさしぶり
お昼は豆乳コーンポタージュを作っていた時に ふと目を離したすきにふきこぼれて五徳をよごして もったいないことをした

気をとりなおして娘が買ってくれたマカダミアナッツチョコを食べる
この季節のチョコレートは冬のように硬くなく 真夏のようにべたべたにとけているわけでもなく 歯にあたってやわらかくくずれる程度の硬さなので好きです

バッハのパルティータの3番をちょっと練習
なかなか指が鍵盤を覚えてくれない
イ短調という#も♭もない調なのに だからこそだろうか
とっかかりがつかみにくくて でも大好きな曲

題詠百首+十首

April 24 [Mon], 2017, 10:43
001:入
入相の鐘なりわたる室生寺のもみぢのにしき忘れかねつも
002:普
あめつちに普くひかり満つるあさ春告鳥の初音はつかに
003:共
明けぬればもはや往にけり共寝せしふしどのなかのあはき残り香
004:のどか 
のどかさも中ぐらゐなり桜樹の伐り倒されし曠野の春は
005:壊
恋しければ壊るるほどにだきしめぬ春のわかれの鷺沼の駅
006:統
星月を統ぶるお方はみえねども夜夜にうるはし古典力学
007:アウト
労働を忌みつつ生きてこの日ごろアウトノミアの書にしたしめり
008:噂
噂たつことをおそれて裏門に待ちあはす子の伏し目がちなる
009:伊
紀伊のくにみなべのうみの浜千鳥跡ものこさず世を遁ればや
010:三角
大三角西にかたぶくひさかたの空の冬にも春きたるらし
011:億
こころひとつからだのからをぬぎすててのがれゆきたし十万億土
012:デマ
百重なす薔薇に埋もれて死なまほしアルマ=タデマの幼帝のごと
013:創
ブーイングに笑みてこたふるクセナキス頬の銃創かげきざみつつ
014:膝
をさなごを膝まくらして耳掃除するつかのまに寝入りたりけり
015:挨拶
いま死にし王よみがへり仇敵と手とり挨拶幕切れのあと
016:捨
身を捨つるほどの祖国はなけれどもなど惜しまめや妹がためには
017:かつて
夢遊してかつての家をたづぬればあとかたもなく枯野となりぬ
018:苛
苛政避け虎に喰はれしいにしへのもろこしびとのあはれなるかな
019:駒
宵闇の観覧車より見はるかす生駒のやまの藍にしづもる
020:潜
しだれさく木香薔薇を潜るときわがころもでにはなぶさひとつ
021:祭り
蝶々のかたちにむすぶ帯ゆれて祭り太鼓にいそぐをとめご
022:往
須磨の浦敦盛塚にきてみればただ海のみぞ往時のよすが
023:感
はかなくも恋ひわたりけり感熱紙うすくかすれて消なば消ぬがに
024:渦
渦をなす銀河のなかの星屑のひとつに生きて湯豆腐を食ぶ
025:いささか
わが宿のいささ群竹いささかもきみをはなれてなど生きめやも
026:干
干る間なく恋ひやわたらむ寄るなみにしとどぬれつつ逢ふよしをなみ
027:椿
はなびらのすがたかたちはそのままに落ち椿てふ絢爛たる死
028:加
春浅き加太の海辺にうかぶ雛いづちゆくらむ風のまにまに
029:股
花のごと裳裾ひろがる踊り子のうつくしきかな大股開き
030:茄子
オリーブのあぶらのごときかなしみに茄子をひたせばにほひたつ紺
031:知
香をたき花々撒きて待たなましきみが通ひ路わが知らませば
032:遮
ベルの鳴りドアの遮る別れ際加速とともに遠ざかる君
033:柱
夕かげに蚊柱ひかるかまくらのうら山伝ひともにあゆみき
034:姑
年の瀬の厨に出汁の香のみちて慈姑の煮ゆるときのしづけさ
035:厚
かたちなきものにかたちをあたへつつけさも作りぬ厚焼き卵
036:甲斐
住之江のまつ甲斐のなきひとさへも待たるるここちする侘び寝かな
037:難
難波江の蘆のわかばのしなやかにほそき御身を恋ひつつぞ寝る
038:市
ひさかたのひかりをあびて市ケ谷のお堀のさくらいまさかりなり
039:ケチャップ
第一声おなかすいたといふ子らにケチャップライスの半ドンの昼
040:敬
敬語もてはなしかけくる子と歩く春の夕べの距離のたのしも
041:症
後天性恋愛依存症候群ねてもさめてもきみをしぞ思ふ
042:うたかた
わたつみの泡より生れしヴィーナスををろがむゆゑやうたかたの恋
043:定
夕星のゆれ定まりて西の空あをよりあゐにうつりゆく色
044:消しゴム
鉛筆と消しゴム定規たしかめて早やも寝にけり受験のむすめ
045:蛸
来ぬひとをまつほの浦に凧のごと足ひろげられ蛸の干さるる
046:比
冬比叡ふりさけみれば横雲の峰にかかりぬ雪ふるらしも
047:覇
覇者の墓敗者の墓にとなりあふ墓地に降る雨雪にかはりぬ
048:透
夏されば着替ふるきみの半そでの透きとほるまでしろき二の腕
049:スマホ
スマホテル月かげあかき須磨の宿いさり火の群れはるかかなたに
050:革
つり革にとどく背丈になりし子の横顔みればいまだをさなき
051:曇
曇りのち晴れのち曇り永き日を籠いつぱいにつくしつみつつ
052:路
思ひつつ寝れども逢はずぬばたまの闇の夢路にまどふこのごろ
053:隊
磔の腕に間合ひをはかりつつ少年白き体操隊形
054:本音
本音つゆもらさぬ吾子と経巡りぬ南禅寺から法然院を
055:様
軒端にはてるてる坊主縊られぬしのぶの里のしぐれ模様に
056:釣
わが胸の底ひによどむ鬱憂をくみあぐるべき釣瓶もがもな
057:おかえり
今日かぎり家を出る子よ幸あれよ辛いときにはいつでもおかえり
058:核
真桑うりきうりにがうりからすうり瓜核顔のきみに恋ひにき
059:埃
春埃立つ中庭に卒業の子らのつどひて最後の写真
060:レース
わたつみは碧瑠璃の衣寄る波はレースの裳裾いざ唇を君
061:虎
歌もひとも遠しと思ふこの日ごろ李徴のごとく虎にならまし
062:試合
ラケットを楯と背負ひて乙女子の試合へむかふあかときやみを
063:両
マフラーをふはふは巻きし乙女子のひくくつぶやく「両思ひ巻き」
064:漢
吾妹子に恋ふればくるし銀漢の銀微塵ふる夜半のねざめを
065:皺
魂の皺ひとつづつのばしつつアイロンかけるあさのしづけさ
066:郷
落ち穂拾ふルツの背まるくかがまりぬ異郷てふ名のあかき残照
067:きわめて
栄華きわめてやがてむなしきソロモンの邸の前の菫一輪
068:索
ゆきやなぎ咲ききはまりて花序重し思索のはての春の夕闇
069:倫
ニコマコス倫理学読むはつなつのつつじの花にみつばちの飛ぶ
070:徹
すみれほど小さきひとによみがへる夢見て復活徹夜祭の夜
071:バッハ
経と緯追ひつ追はれつ綾なして弾けども飽かずバッハの風雅
072:旬
わかれきて旬日経れどかきやりしその黒髪を忘らえなくに
073:拗
ゴルゴタの道行き険し半音の執拗低音ゆきなやみつつ
074:副
Toujours は優しき副詞去りぎはの暮色のなかに母音たゆたふ
075:ひたむき
ぬばたまの黒髪の子のひたむきに墨濃くかきし二文字「質実」
076:殿
玲瓏と銀三十枚神殿に散りまがひたり逮捕の夜に
077:縛
みことばは肉体となり縛せられ十字架上の昼の闇黒
078:邪魔
「パジャマ邪魔」言ひつつきみのひきはがすふたりを隔てるいちまいの膜
079:冒
花冷えに耳たぶ白く冴ゆる夜マタイ受難曲冒頭合唱
080:ラジオ
霜冴ゆる夜のしじまに不明者の名前を告ぐるラジオ聴きをり
081:徐
緩徐調に愛は歌へよさくらばな散らまく惜しむ春のゆふべを
082:派
タレ塩半々焼き鳥たのむ春の宵タレ派のきみと塩派のわれと
083:ゆらゆら
ゆらゆらと燃ゆる蠟燭ひといきにふきけす吾子のいのちたしかに
084:盟
いにしへの盟神探湯のことかたりあふ秋のまひるの甘樫丘
085:ボール
飛びうせしテニスボールを追ひかけてばつた群れとぶくさむらのなか 
086:火
寝すごしてさくらふぶきのキャンパスの火曜一限ラシーヌ講読
087:妄
迷妄も雑念もさもあらばあれ祈禱書とぢて風に吹かるる
088:聖
とこしへの愛を信ぜぬわが身にも薔薇咲きにほふ聖五月かな
089:切符
大人用切符はじめて買ふ吾子の乙女さびたり十三歳(とをまりみとせ)
090:踏
閨に踏む煎り豆ひとつ拾ひけり春立つあさの白き光に
091:厄
災厄ののちの瓦礫にエグモント序曲を振れりチェリビダッケは
092:モデル
薔薇風呂にモデル泛べて今宵もやきみゑがくらむピンク・オフィーリア
093:癖
抱き癖のつくまで抱きしいとし子のはしばみ色のひとみ思ほゆ
094:訳
半過去を訳しなづみて夕まぐれ八重のさくらの咲き重りつつ
095:養
芳養の駅過ぐれば空も海も青かなたに見ゆる白き航跡
096:まこと
「まこととは」問へど答へずヴェロニカに顔をふかるるイエスなりけれ
097:枠
ひざまづく告解室のくらがりの木枠の窓に神はいまさず
098:粒
きぬぎぬの閨のひまよりチンダルの淡きひかりの粒子ふりつつ
099:誉
梅錦西の誉に高清水だしまきたまごとともに春宵
100:尽
身を尽くすほどの恋など知らぬまにわがみよにふるフルートふるる
101:轢
ひとすぢの血痕かすか冬道に忘られゆくや小さき轢死
102:鼎
魏蜀呉鼎立の図をさらさらとかきつつきみは孔明かたる
103:スパナ
しろがねのスパナのひかる逆光の自転車屋の自転車修理
104:欅
雨はれて欅の樹々のさみどりの芽吹きの春となりにけるかも
105:饒
水俣病以前知らねど不知火の豊饒なりし海をしぞおもふ
106:鰆
テーブルをたたいてせがむ子の口にほぐし与ふる鰆の切り身
107:蠱惑
半なまにとろりしつとり焼きあがるガトーショコラの甘美の蠱惑
108:嚢
みどりごの小さき陰嚢つつみもてやさしくあらふ沐浴の昼
109:而
夏・日暮れ・くちなしの花・遠花火 われの愛する形而下のもの
110:戴
春の野に一日あそびしをとめらは花かんむりを戴きかへる

カミュ『異邦人』を再読して

April 23 [Sat], 2016, 20:51
カミュ『異邦人』再読。再読のたびに発見のある小説である。

窪田啓作の訳に誤りがあるのでまず指摘しておきたい。

物語の終わり近く、ムルソーと司祭の会話


そのとき、私のほうを振り向きながら、不意に彼は大声で、あふれるようにしゃべりたてた。「いいや、私はあなたが信じられない。あなただってもう一つの生活を望むことがあったに違いない」もちろんだ。しかし、金持ちになったり、早く泳いだり、形のよい口許になることを望むのは、やはり意味のないことだ、と私は答えた。それは同じ世界に属することなのだ。

「もう一つの生活」は原文では une autre vie 英語で言えば another life。「もう一つの生活」には違いないが、具体的に何のことかわからない。司祭がムルソーに宗教を語る場面ではそれは死後の生、来世以外になく、そう訳すべきだ。

この司祭の問いかけに対するムルソーの答えは日本語として理解不能。原文は

...mais cela n'avait pas plus d'importance que de souhaiter d'être riche, de nager très vite ou d'avoir une bouche mieux faite. C'était du même ordre.


主語の cela は来世を受けており、「来世は que〜 以上に重要なものではない」つまり

「来世なんて、金持ちになることや速く泳ぐことや形のいい口になることと同じくらいの価値しかない」

最後の文の ordre は世界というよりも「次元」とでも言おうか。

宗教的な救済と現世的な快楽は同じ次元のものなのだ、ということ。

地の文だが、これはいわゆる自由間接話法であり、ムルソーの司祭への言葉だ。

どうしてこんなでたらめな翻訳が版を重ねて生き延びているのかわからないが、ここを引用したのは、ムルソーの世界観がわかりやすい形であらわれているからである。




ムルソーの口癖「どちらでもいい」「何の意味もない」フランス語でいえば Cela m'est égal.

すべてのものを平等に(égal)同じ価値のものとしてムルソーは見る。

来世も、金持ちになることも、速く泳ぐことも同等の価値のもの。宗教の超越的な価値も神の特権的な位置も認めない。

アルジェリアで働くのもパリで働くのも同じ価値だから、上司に転勤をすすめられても「どちらでもいい」。

母の死も、それ以外の人の死も、同じ価値のもの。母の埋葬に際してとくに悲しまない。

マリーから結婚をせがまれても、彼にとってはどちらでもいい。誰かを特権的に愛するということを彼はしない。




ムルソーは非情な人間だろうか。

マリーといい感じになっているのになんだかよそよそしくて、恋愛小説の展開を期待するとあっさり裏切られる。

私のことを愛してるのと聞かれてそんなことはどうでもいいとか愛してないかもしれないとかいうムルソーのことを、マリーはいやにならないのだろうか。

変わった人ね、といって、でも微笑んで、もう一度ムルソーにキスをしている。いやならそんなことはしないだろうな。

恋人に対してつれないのに、ムルソーにはどこか魅力がある。

この小説と並行して書かれた『手帖』Carnets はカミュの創作ノートと日記を兼ねたようなものだが、その中で彼は

「非情 impassibilité」という人がいるようだが言葉がよくない。むしろ「厚情 bienveillance」だろう、と書きつけている。




実際、ムルソーはなかなかいい奴である。

アパートの隣人と上手につきあっている。犬が迷子になったと嘆くサラマノ老人の話し相手になってやるし、

恋人とトラブルになっているレーモンの相談に乗って、手紙の代筆までしている。

上司とも同僚ともそこそこうまくやっているし、マリーにも親切。

だから、裁判で証人として出廷する上記の人々のなかで、だれひとりムルソーを悪く言う人はいない。




誰かを特権的に愛することをしない というのを裏返せば 誰もが特権を持っているということになる。

「誰でもが特権を持っているのだ。特権者しかいないのだ」というのは司祭との対話のなかのムルソーのことばである。

すべての人を、すべてのものを、平等に愛したのがムルソーではないか。




ともすると愛は偏愛にかたむく。

神を信じ、神を愛することは、神に叛逆するものへの敵意と表裏一体である。

特定の誰かを愛して結婚するならば、それ以外の人に排他的になりうる。

ムルソーはすべてをひとしなみに愛していた。

物語の最後のページ、死刑を待つ独房に夜のとばりがおりて、遠くに汽笛を聞きながら母をしみじみとしのぶ場面でムルソーは「世界の優しい無関心に心を開いた」。

優しい無関心 la tendre indifférence というのは撞着語法かに見える。無関心といえば冷淡でやさしくないはずなのに。

しかしムルソーにとっては無関心こそが優しさ。

indifférenceの語源にさかのぼれば「差異 différence」のないこと 区別や差別をしないこと それがほんとうの優しさ。

すべての価値を否定する虚無的な無関心ではなく、すべての価値を肯定する優しい無関心。

ニーチェ的な意味とは別の意味の「距離のパトス」のようなものを、ムルソーに感じる。

人に執着、愛着するのではなく、ある距離を置いて人を愛する。




カミュの戯曲の上演にも参加した女優の Catherine Sellers にあてたカミュの手紙の一節を読んだ。

I know I've done everything to detach you from me, and all my life, when someone has become attached to me, I've done everything to make them back off.

なんとかして君を私から遠ざけようとしてきた。だれかが私に執着しようとすると、どんなことをしてでも遠ざけてきた。


このような態度には東洋的な世界観を感じる。愛執を断ち切り犀の角のように歩めと言った仏陀や、善悪や正邪などすべての差異を否定した荘子に通ずるもの。

「不条理」の思想は仏教の「空」や荘子の「万物斉同」を想起させる。

『手帖』には『荘子』からの引用もある。逍遥游篇の冒頭、鵬という巨大な鳥が空高く羽ばたいてはるか下の世界を見下ろすところ。(訳書では朱子になっているが荘子の誤り。朱子は紀元前4世紀に生きていなかったしこんな文章を書かなかった。窪田とは別の訳者だがいいかげんさに呆れる)

距離をもって世界を見ればすべての差異が消失する。血縁も愛執も法律も、すべてが。

荘子といえば、妻が死んだとき、盆をたたいて歌っていたエピソードが有名だ(至楽篇)。訪ねた人が驚いてなぜ悲しまないのかと問うと、塵から生まれた人が塵に帰るのに何を悲しむことがあろうかと答えている。

母の死に際して、死顔も見ず、涙も流さなかったムルソーを思い出さずにはいられない。



『手帖』には『異邦人』についてこんな覚書もある。

自分を正当化することを欲しない男の物語。人が彼について抱く観念のほうが彼にとってむしろ良い。自分についての真実を知るたった一人の人間として彼は死ぬ。


実際、ムルソーは裁判で自分を正当化するような弁明をほとんどしない。「なぜ殺したのか」「なぜ母の死に泣かなかったのか」...矢継ぎ早の「なぜ」に彼は沈黙を守る。まるでピラトの前のイエスのように。

法律や宗教はムルソーの思想とは正反対の「差異」の思想である。

現世よりも来世に価値を置く。

ばらばらの事実に相互関係と意味を付与して有罪または無罪を宣告する。

そこではムルソーは自分を正当化する必要も意味も見いだせなかった。



「太陽のせいだ」の一言は、ほとんど自暴自棄のことばにみえる。

だが、真実の一端をついていることもたしかだ。

あまりにも太陽がまぶしく、汗が目に入って一時的に盲目になったとき、相手のアラブ人の顔が見えなくなった。顔が見えないから発砲できたともいえる。

アラブ人の顔を見ながらでは引き金を引くことはできなかっただろう。

ムルソー自身はアラブ人に何の憎悪も怨恨もない。レーモンのトラブルにまきこまれただけだし、いきり立つレーモンをなだめて、できるかぎり暴力を避けようとさえしている。
マソンが法廷で証言したように、ムルソーは「誠実な男」(honnête homme) 。喧嘩のときも数の均衡を保ち、武器の使用も対等にし、一対一で正々堂々と戦おうとしている。
にもかかわらず、最終的に彼自身がその均衡を破ってしまったのは皮肉としか言いようがない。



また一方で「太陽のせいだ」というのは皮肉のようにも聞こえる。
西洋の古い迷信では狂気は「月のせい」と考えられていて、lunatic の語源は lunaつまり月にほかならない。
太陽のせいと聞いて笑っているけれど、そういうあなたたちは精神錯乱を月のせいにしてきたではないか。
発砲の理由を「太陽のせい」というのと「母の死を嘆かなかったせい」というのと、どれほどの差異があるというのだろう。


「不条理」というのは堅苦しい日本語だが、対応するフランス語 absurde(形容詞)absurdité(名詞)は「ばかげた」「無意味な」というほどの、日常会話でも使われる語である。

『異邦人』にはたった一か所、この語が使われているところがある。
物語の終わり近く、司祭との会話のなかでムルソーが Du fond de mon avenir, pendant toute cette vie absurde que j'avais menée,...で始まる一文。

「いままでの私のばかげた人生の間中ずっと、未来のはるかかなたから、暗い風が私のほうに吹きつけてきて、私に与えられるすべてのものを等価値にしてしまうのだ」という大意である(ここにもキーワードの「等価値にする」égalisait が出てくる)。
訳者の窪田はこの cette vie absurde を「あの虚妄の生」と訳しているけれども、この人はカミュのことを全然わかっていなかったんだなと思う。虚妄ではない。リアルなのだ。リアルなのに無意味でばかげている。それが不条理なのだ。



不条理というと、たとえば地震や災害で命を奪われたとか、無辜の子どもが虐待されたとか、災難や不幸について言われることが多い。

それが不条理なのはもちろんだ。

だが、幸福や富貴は条理にかなっているのか。

そんな都合の良い話ではないだろう。

きょうがきて、あしたがくる。平凡で平和なこの日常こそが、なんの意味も根拠もない不条理。



しかし、だからといって、ムルソーは悲観的にも虚無的にもならない。

たとえこの世界が不条理であっても、世界は美しい。

アイスクリーム屋のラッパ。海の匂い。夜の星のまたたき。マリーのスカートの柄。

この小説の最後のページはふしぎな静謐と平安に満ちている。

不条理だからこそ、世界は愛すべきものなのだ。

題詠百首2016

April 08 [Fri], 2016, 0:23
五十嵐きよみさん主宰の題詠100首2016に参加
2月上旬より詠みはじめてきょう百首めを詠みました
ありがとうございました
百首のまとめです

001:地
ひとつぶの種地に落ちて幾星霜イスファハンの薔薇いま咲きにほふ

002:欠
紺青に暮色せまりてよろづ屋の棚の達磨の点睛を欠く

003:超
朔北の砂漠はるかに班超の虎児を得んとて一穂の錐

004:相当
恒河沙と阿頼耶のあはひ 相当算白紙のままにうちふす子はも

005:移
園丁のもはや歌はぬ薔薇園に移植鏝ひとつ春の日を浴ぶ

006:及
哲学の夢の及ばぬくさぐさをひくく歌へり佯狂王子

007:厳
Muss es sein? 問へど答ふるもののなく四重奏曲「厳粛」果てつ

008:製
その眼にはいかなる空を夢むらむ翼ひろげし剥製の鳥

009: たまたま
たまたま割ればふたごのたまごたまはりしたまゆらの生真幸くあらな

010:容
涙腺の容量こゆるリュッケルト「亡き子をしのぶ歌」玲瓏と

011:平
平等院出づれば氷雨ふりやまず世を宇治川のくれなゐの橋

012:卑
卑金属婚式めでたや 春浅き人造湖上の錆色の月

013:伏
雌伏せよわが魂よ 綿綿と尽くることなき玄牝の門

014:タワー
破壊こそ快楽の極み をさなごは積み木タワーを完膚なきまで

015:盲
盲ひても意気おとろへず口述のフーガながるる楽興の時

016:察
頬紅く染めて無口になれる子のからだ寄せ来ぬ診察待つ間

017:誤解
生は比喩 愛とは誤解 うぐひすのさへづりやまぬ花野の夕べ

018: 荷
荷ほどきのいまだをはらぬせまき閨からだよせあひ初夜をねむりき

019:幅
をさなごの歩幅にあはせあゆみつつともにひろへり黄の葉赤の葉

020:含
あめつちに光は満ちて潮の香を含む風、夏、白帆はるかに

021:ハート  
あさかげにきえさりゆきぬきぞ書きし結露の窓のハートのしるし

022:御
カンティクム・カンティコールム薔薇窓にひびく御堂のあをき黄昏

023:肘
六本の肘やはらかにをりまげて阿修羅立像夕闇のなか

024:田舎
聖トマス小崎寮に朝陽さして神田舎監の鐘うちならす

025:膨
春あさきくりやの朝に麵麭生地の膨らむみればこころはなやぐ

026: 向
巻向の山の辺はるか 金色に稲穂は熟れてまどろむ真昼

027: どうして
どうしてもをんなになれずごむまりをむねにはさみし少年の日

028:脈
ひそやかな地下水脈をさぐりつつ指を這はせきその白き肌

029:公
遅き日を子はかへりきぬぬばたまの髪に蒲公英一輪挿して

030:失恋
うらうらとひばりの上がる奥津城に失恋ひとつ埋めてかへりき

031:防
防具はづせば幼さのこる白皙の一揖ののちしづかに去りぬ

032:村
村雨ののちの月かげ さえかへる空に氷の刃のごとく

033: イスラム
顫音のギターラ幽か イスラムの栄華燦たるアルハンブラに

034:召
召し出しのマタイのやうになにもかもすててなにかに連れ去られたし

035: 貰
顔と顔溶けあふムンク「接吻」の葉書貰ひぬ髪ながき子に

036: 味噌
酢味噌もて和ふれば春の香の立ちぬぬめりをおびてあをきわけぎを

037: 飽
出来あひの思想に飽きてはつなつに金時豆をふつふつと煮る

038: 宇
その眉宇にあはき愁ひをただよはせ阿修羅立像黙して立てり

039: 迎
迎へ火の燃え尽くるまでながめゐしきみなに思ふせなかまるめて

040: 咳
謦咳はいまも耳底にひびきたり君の亡きあといくとせ経れど

041: ものさし
鯨尺の竹のものさしひきあてて軽羅縫ひゐしはつなつの母

042: 臨
臨終に遅れてわれのとびのりし車窓のそとの連翹の黄

043: 麦
白きのどみせつつ麦茶のみほしてみなづきをとめいのちみなぎる

044: 欺
みづからを欺くことに飽きはてて退職の朝沈丁香る

045: フィギュア
小夜更けて樹脂のフィギュアのトテチテタおもちやのおまつり子の眠る間に

046: 才
法学部卒才媛の書をすてて菓子職人となりにけるかも

047: 軍
なげきつつ兵を語りてこめかみの刀傷癒えず敗軍の将

048: 事情
こどもにはこどもの事情 ハロウィンの仮装の相談秘め事めきて

049: 振
一振りの刀身としてよこたはるつめたくあをき秋刀魚のひかり

050: 凸
凸レンズにひかりあつめてほむら立つ 燃えよ恋文消えよわが恋

051: 旨
よもぎ摘む野に森鳩の来鳴く朝 御旨の地にもおこなはるべし

052: せんべい
ごませんべい食みつつ相撲中継を見いりし祖父の禿なつかしき

053: 波
みんなみの海の波間のかなたより春の女神のかぜにのりくる

054: 暴
医者を怖ぢ泣いて暴れしをさなごの診察をへてしんとなきやむ

055: 心臓
わが胸に顔をうづめて眠る君心臓に息ふきこむごとく

056: 蓄
咲くためのちから蓄へ冬薔薇はかたくつぼみをとぢてねむれる

057: 狼
狼の異名をとりし関取の醜聞の記事よみさして捨つ

058: 囚
死刑囚宅間守の縊らるるまへにジュースを所望せしとぞ

059: ケース
ヴィオロンの形をしたるヴィオロンのケースおかれてあかるき窓辺

060: 菊
あたらしき骨壺に読経つづく夜供花の白菊ひとひら落つる

061: 版
ドビュッシー「版画」聴く夜雨脚の強まる庭に涓滴の音

062: 歴
リラダン リルケ ロルカの履歴消して春ルリタテハ一羽ふはり飛び去る

063:律
調律師かへりしのちのピアノあけ展覧会の絵を弾くゆふべ

064: あんな
あんなめて幸せさうなをさなごよ口のまはりを黒く汚して

065: 均
まなかまでにじりよりたるシーソーにやうやくたもつ吾子との均衡

066: 瓦
地下足袋の瓦職人ひたひたと屋根つたふ音 夏の払暁

067: 挫
挫折せし独語文法再開の春に唱ふる一語 traurig

068: 国歌
総毛立つフランス国歌 殺戮の血潮したたるその詩を聴けば

069: 枕
花柄のスカートの膝枕して花野にあそぶ夢を見しかな

070: 凝
透明度とりもどしつつオリーブの油の凝固解けて春立つ

071: 尻
春日野の枯葉ふみわけゆく鹿の真白き尻のゆれつつ離る
離る「さかる」

072: 還
鷹匠に鷹は還らずひさかたの空の青みに消えてけるかも

073: なるほど
霧深くなるほどつのるわが恋の無明の闇にまどひぬるかな

074: 弦
羊腸の弦さや鳴りてシャコンヌの最弱音(ピアニッシモ)の消なば消ぬがに
消なば消ぬがに「けなばけぬがに」

075: 肝
つやつやと紡錘のかたちになまめきてわた和へに佳し烏賊の肝臓
紡錘「つむ」

076: 虜
神殿は毀たれはてつ バビロンのユダの虜囚よ哀歌うたへよ

077: フリー
半音階のしらべかそけく 無憂宮にフリードリヒの吹く横笛の

078: 旗
紅旗征戎とほくはなれてもりのなか音なき雨にぬれつつあるく

079: 釈
歳月といふ名の波にたゆたひぬこのかなしみを希釈するため

080: 大根
吐く息の白き厨の歳晩に大根を炊き蒟蒻を炊く

081: 臍
おづおづと鋏をもちて妹の臍の緒切りしわが息子はも

082: 棺
むなもとにきつつなれにし帽子あり棺のきみの息あるごとく

083: 笠
みづからの笠をあたへて雪道を濡れて帰りし翁思ほゆ

084: 剃
無精髭数日分を剃りおとすわが恢復期半音ひくく

085: つまり
むらさきのにほへる芋を貰ひけりさつまりんごのタルト作らむ

086: 坊
木偶の坊とよばれながらも玄米と味噌と野菜の日々のあけくれ

087: 監
スータンの裾ひるがへすはつなつの風に碧眼の舎監フランソワ

088: 宿
この世をば仮の宿りと思ふらむなきつつかへるかりがねの群

089: 潮
由比ヶ浜に夕さりくれば波のおと高くきこえて潮満ち来らし

090: マジック
マジックテープに襁褓留むればぴんぴんとてあしうごかすあはれみどりご
襁褓「むつき」

091: 盤
高みよりオルガンの慈雨ふる朝の聖水盤にゆびさきぬらす

092: 非
焼失の塔のいしずゑ昏れのこる左右非対称伽藍のねむり

詞書
西塔再建前の奈良薬師寺を詠める

093: 拍
ひそやかに太鼓のきざむ拍にのりあらはれいづるボレロのしらべ

094: 操
貞操はさびしからずや機織りの音ひびきたるペネロペの閨

095: 生涯
変声を迎へぬままに生涯ををへにし君の通夜の花冷え

096:樽
仄暗き蔵に麹の香の満ちて醤油熟れゆく杉樽のなか

097: 停
夕かげのやうやく暗き停車場に「陰翳礼讃」ページひらきつ

098: 覆
宝石の覆されて夏のあさ憂しと見し世にひかりあふるる

099: 品
つかのまの逢瀬ののちにわかれにき秋の日暮れの九品仏駅

100: 扉
「かの人に語れムーサよ」ユリアヌス伝の扉の短き題辞

怠ける権利

October 24 [Sat], 2015, 17:40
ジョルジュ・ムスタキ「怠ける権利」試訳


たぶん私の最初のそして唯一の師であった人に
感謝をささげたい
哲学者 死んでからもう何十年か経つ
老いてもいず病んでもいないのに 自ら死を選んだ人

歴史に残るほどのひとではない
彼のことを覚えている人は多くはない
聖者や預言者とされることもない
けれど 我々に先んじて幸福と祝祭を追い求めた人

ぎゅっと抱きしめるような人生
戦争みたいにお金を稼ぐ必要のない人生を彼は夢見た
大地は果実とパンと愛で満ちていて 
それはみな無償だと彼は言う

もはや機械の前に腰を曲げることも
膝まづくことも必要ないと言った
来たるべき世代のこどもたちには
もはやいかなる痛みにも苦しまないことを望んだ

人に教えるつもりもないのに 彼の話はわかりやすく
それゆえに革命的だ
この叡智の師に感謝したい
オリエントのひとでもギリシャの人でもないこの人に

この叡智の師に感謝したい
彼が望んだのは怠ける権利だけ


ここでムスタキが師と呼んでいるのはポール・ラファルグ(1842〜1911)という人で
「怠ける権利」はラファルグの著書のタイトルでもある
こういう人がフランスに出たからでしょうか フランスはストライキがさかんでバカンスもながくて みんなで怠けよう 人生を楽しもうという気分があふれていていいなと思う

日本では怠けているとなんだか罪悪感がありますからね...

「ぎゅっと抱きしめるような人生」(こんな訳でいいのか自信がありませんが)と訳したところは原文では
Il rêvait d'une vie que l'on prend par la taille 恋人の腰に手をまわして抱くようなイメージです

そんな人生ならすてきだな

YouTubeでムスタキが歌っているのを貼ります https://youtu.be/oRzBv0ohce8
この曲を教えてくれたTwitter上の友人 いつのまにかアカウントがなくなっていたけど元気かな

以下に原文を挙げます

Georges Moustaki
LE DROIT À LA PARESSE
G. Moustaki

 
Je voudrais rendre grâce a celui qui peut-être
A été mon premier et mon unique maître
Un philosophe mort voici quelques décades
Mort de son propre choix ni trop vieux ni malade

Il n'était pas de ceux qui entre dans l'histoire
Nous sommes peu nombreux à servir sa mémoire
Il ne se posait pas en saint ou en prophète
Mais cherchait avant nous le bonheur et la fête

Il rêvait d'une vie que l'on prend par la taille
Sans avoir à la gagner comme une bataille
Nous disait que la terre était pleine de fruits
Et de pain et d'amour et que c'était gratuit

Il parlait de ne plus jamais plier l'échine
Ni de se prosterner devant une machine
Il souhaitait pour les générations futures
De ne souffrir jamais d'aucune courbature

Sans vouloir enseigner sa parole était claire
En cela peut-être elle est révolutionnaire
Je voudrais rendre grâce à ce maître en sagesse
Qui ne nous arrivait ni d'Orient ni de Grèce

Je voudrais rendre grâce à ce maître en sagesse
Qui ne demandait que le droit à la paresse

James Weldon Johnson の詩

October 23 [Fri], 2015, 14:44
歌という賜物


ともすればたどる道に霧がたちこめ

黒雲がつつみこもうとする

しかし ほら 魔法のようなやり方がある

陰鬱を陽気な日に変えるやりかた

私は小声で歌う



たとえ行く道がますます暗くなろうとも

悲しみの暗い翼に覆われようとも

ものともせず 喜びにのどをふくらませ

闇をつらぬいて調べもたかく

歌う 歌う



つらい過去はふりかえるまい

なにごとであれ 未来のもたらすものをおそれまい

明けない夜はなく 暮れない日もないのだから

そのときひとつの歌がわきあがり

歌うことができる



ジェイムズ・ウェルダン・ジョンスン

『五十年 その他の詩』より

1917年

この詩人は初めて知りました。アフリカ系アメリカ人であることと 1917年という時代背景を念頭に置くと この詩のなかの「霧」「雲」「夜」がどのようなものであるか 想像できるような気がします
各スタンザの終りがそれぞれ I softly sing; And sing, and sing; And I can sing となっていて「歌うこと」への力強い意志が響いてきます


The Gift to Sing


Sometimes the mist overhangs my path,

And blackening clouds about me cling;

But, oh, I have a magic way

To turn the gloom to cheerful day—

I softly sing.



And if the way grows darker still,

Shadowed by Sorrow’s somber wing,

With glad defiance in my throat,

I pierce the darkness with a note,

And sing, and sing.



I brood not over the broken past,

Nor dread whatever time may bring;

No nights are dark, no days are long,

While in my heart there swells a song,

And I can sing.



James Weldon Johnson

From “Fifty years & Other Poems”

1917




 
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自然派焼菓子&カフェ「サント・シャペル」の料理人&兼業主夫です
相方と二人でやっているちいさな店です
相方がケーキを焼き私がパンを焼き料理を作ります

走るのは嫌いですが歩くのは好きです
時代遅れの浮世離れでのほほんと暮らしております

運転免許持っていません
テレビみません


人ごみは苦手で、森や川が好きです
お酒はたまにしかいただきませんが純米酒が好き
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