恋の始まり。 

2010年10月05日(火) 16時05分
―ある夜のこと―



「ベルセンパーイ。前任って生き返ったんですよねー。」

ミーがベル先輩に質問した。

「それってマーモンの事か?」

「そうそう、確かそんな名前の人ですー。」

「ああ。生き返る前は無残に殺られたらしいぜ。うししっ♪」

ベル先輩が笑いながら言った。

「そのマーモンっていう人ヴァリアーに戻ってくるんですよね…。」

「そうなんじゃねえの?って何でクソガエルがんなこと聞くんだよ?」

「別に…もう寝ますー。」

そう言ってミーは自分の部屋に戻った。

―前任が戻ってくるならミーはどうなるんでしょうか?―

そんな考えがミーの頭を過ぎった。

―ミーが前任の代わりならその役はもう終わった。―

だから…

「此処に残るかそれとも…」

…師匠の下に帰るか…。

これを決めるのはミーではなくボス…ボスの言葉しだいで決まる。

「どっちにしろミーに選択肢なんて無いじゃないですか…。」

ミーは無意識に涙を流した。

「あれ…?何で涙が…」

目を擦っても擦っても涙が止まらなかった。

「やっと堕王子から離れられるじゃないですか…望んでたことなのに何でこんなに悲しいんですかー…?」

涙で潤んだ瞳が、今夜出ている満月を映した。

その満月の光が、ずっと遠くに感じられた。

―朝―





「う…んー…。」

ミーは何時の間に寝てたのでしょうか?

―前任がもう帰ってきているならミーは…―

「唯の使い捨ての道具ですー・・」

コンコンッ

ドアをノックする音がした。

「おーいフラン。朝飯。」

気がつくと太陽はもう東に昇っていた。

「…いらないですー…。今日はゆっくりさせて下さーい。」

ミーがそっけなく返事をした。

「ふーん。」

ベル先輩はそう言うとスタスタ行ってしまった。

―師匠の下に帰るならベル先輩にも会えなくなるってことですよね。―

考えれば考えるほど頭が痛くなって、ムカムカしてくる。

「…ベル先輩と離れるのだけは嫌ですー…。」

「…?」

ドアの向こうに、人の気配を感じた。

でもそれはほんの一瞬の事だった。

「気のせい…ですかねー…。」

それからミーはまた眠りの中に堕ちていった。


―2日目の夜―



「フラン…夜めs…」

「いらないですー。」

ベル先輩が言葉を言い終わらないうちにミーが答えた。

「お前そう言って朝からずっと飯食ってねえじゃねーかよ!!」

ベル先輩が怒鳴った。

「…今は…何にも食べたくないんですー。」

ミーが泣きそうな声で言った。

「だから早くどっか行って下さーい…。」

「…嫌だ。」

「ベル先輩に選択肢はありませんー。どっか行ってください!!」

ドゴンッ

ドアが壊れる音がした。

「王子に命令すんなっての。」

「ドアの修理代誰が払うんですかー…。」

「それより、お前昨日何かあったろ?」

ベル先輩がミーの隣に座った。

「な…んにも無い…ですー…。」

「嘘つけ。お前涙流してるぞ。」

気がつけば確かに頬に雫が伝っていた。

「あれ…?何でまた泣いてるんでしょうかー…。」

「また?やっぱり何かあったんだろ。」

ついミーの口から出た言葉を、ベル先輩は見逃さなかった。

「何でもないったら何でも無いんです!お願いですからもう…どっか行って下さい…。」

ミーの眼から涙がぽろぽろと零れ落ちた。


―決意―



「…マーモンのことか?」

ベル先輩の一言に、体が反応した。

「…やっぱりな。で、マーモンがどうかしたのか?」

ベル先輩がミーの横で慰めてくれている。

こんな時間が温かくて、優しくて…

いつまでもベル先輩と一緒にいたいと思った。

でも…ベル先輩のとなりは眩し過ぎて、ろくに顔も見えない。

ベル先輩のとなりを埋めるのは…

―前任―

そう思ったとたん、また涙がぽろぽろと出てきた。

「フラン?」

「…ベ…ンパ…イ…。」

―ベル先輩―

そう呼んだはずなのに声が掠れて音にならない。

「何だ?」

でもベル先輩は気づいてくれた。


思った事をベル先輩に全部打ち明けよう、と思った。


―ホットミルク―

「ちょっと待ってろ。」

ベル先輩はそう言って部屋を出た。

しばらくして、ベル先輩はカップを片手に持って帰ってきた。

「ほら、これ飲め。落ち着くぞ。」

ミーの大好きなホットミルク。

その味は、何時もより熱く、何時もより優しかった。

「ほら、思った事全部話してみろ。」

「…はい。」

ミーはベル先輩に全て話した。

悩んだ事や、苦しい事、悲しい事を。

そして…

前任の事を…。


「…ミーは前任の代わり…前任が生き返ったなら、ミーの役目は終わりました。」

ベル先輩は驚いた表情でミーを見た。

「だからもうミーはヴァリアーにとっては要らない不用品…。」

「!!」

気がつくと、ベル先輩はミーの頭を撫でていた。

「ベル…先輩?」

ベル先輩の意外な動作に、ミーは驚いていた。

「お前はマーモンの代わりでも要らない不用品でもねーよ。」

「じゃあ…このカエルは…」

「確かにボス達にはマーモンの代わりとか思ってるかも知れない。けど…俺はそうじゃねえよ。」

「じゃあ、ベル先輩にとってミーは…」

「大事なヴァリアーの仲間であり…好きな奴だよ。」

!!

「ベルセンパ…今…何て・・。」

「だからお前が好きだって言ってやってんの。何回も言わすなよ。」

ベル先輩の頬は少し赤くなっていた。

「本当…ですかー?」

ベル先輩の言葉が信じられなかった。

「本当だっての。誰が嘘なんてつくかよ。」

「で?お前はどうなんだよ?フラン?」

「大大大好きですー///」

「お、照れてやんの。」

「照れてませんー!!」

「うしし♪顔色良くなったな。」

気がついたら、さっきの苦しみや悲しみが消えていた。

「フランが残るかどうかは明日で決まる。それまで待ってみようぜ。」

「はい・・・。」

ミーはベル先輩に心から感謝した。

ミーに希望を与えてくれた人。そして・・・

ミーを好きになってくれた人・・・。

「夕飯食いにこいよ。腹減ってんだろ。」

ぐ〜っ

「///」

「ほら、腹の虫も鳴いてるぜ。」

「今行きますー!」

ミーは元気良く返事をした。

―会議―

ミーは朝からそわそわしていた。

今日、ミーが残るか帰るかの決まる日。

カエルの被り物を被り直し、会議室へ向かった。

「で、フランの事についてだが・・・。お前らはどう思う?」

スク隊長が言った。

そして・・・

「俺は残った方が良いと思うぜ。コイツ結構強いし。ししし♪」

「僕も同感だよ。」

この声は・・・

前任のマーモン先輩だった。

「・・・ちょっとムカつくけどね。」

それは一言余計ですー。

「あら、私も同感よぉ〜❤」

「・・・好きにしろ。ドカスが。」

あいかわらずおっかないですねー。

「俺も同感だ。」

うわ、何か偉そうだな、この変態雷親父。

「俺も賛成だぁ゛ぁ゛ああぁ゛!では、フランはこのままヴァリアー幹部の一員とする。」

「煩いよ。スクアーロ。」

「おーおー。良かったな。うしし♪」

「頑張りなよ。後輩。」

「良かったわねぇ❤」

「…。」

「ずをぉぉおぉぉおぉおぉい!!そうと決まれば任務だぁ!さっさと行ってこぉい!」

「了解しましたー!!」


―帰り道―

任務の帰り道。

「結構簡単に決まったな。会議。」

「そうですねー。嬉しいですーw」

「うしし♪」

そう言ったかと思うと、ベル先輩はミーを抱き寄せた。

「なっ何するんですかー!離してくださいよー!」

「王子に命令とか良い度胸じゃん♪」

そう言いながら、ベル先輩はミーの唇にキスをした。

「えっちょ…ベルセンパ…///」

「フランってこういう事には弱いんだな。」

「違いますー。ベル先輩がいきなりするからですよー。」

「ふ〜ん♪」

「ホントなんですってばー。」

空は赤く、まるで空も初恋が実ったようだった。

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