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【日本版コラム】誰が「太陽光発電バブル」を作りだしたのか? / 2010年06月28日(月)
 「バブルがいつ崩壊するか予測するのは誰にもできない。ただ、過去のバブルは例外なくはじけている。経済学の世界では、決まって多数派が間違える」

 これは20世紀を代表する経済学者で、元ハーバード大学名誉教授の故ジョン・ケネス・ガルブレイス氏の格言である。

 今回のコラムのテーマは「太陽光発電バブル」である。6月22日、ダウ・ジョーンズ通信は、「スペインの太陽光発電補助金、削減されれば資本逃避の恐れ」と題したインタビュー記事を掲載した。

 インタビューに応じたのは、太陽光発電スペイン2位のフォトワティオ・リニューアブル・ベンチャーズのベンフメアCEOである。スペイン政府は今月中に再生可能エネルギー(以下クリーンエネルギー)に関する新たな規制を発表する計画で、既に稼働している太陽発電設備について、補助金を30%削減する可能性がある。

 新しい規制が作られることは以前から分かっていたが、業界の利益を損なって欲しくないというのが、インタビューの内容である。

 ベンフメア氏は「スペインでは投資が行われた後にルール変更が起きることが分かると、クリーンエネルギーを始めとする規制分野への外国からの投資が国外逃避する可能性がある。」と語っている。

 補助金削減が予想されているのは、2008年9月に操業を開始し、25年間、1メガワットあたり450ユーロの固定価格買い取り制度(フィード・イン・タリフ:FIT)の対象となる発電施設である。スペインは2009年だけで太陽光発電業界に、26億ユーロの補助金が支払われており、今後FITの買い取り単価を下げなと、電力料金の引き上げをしなければならない。

 この事例は、国家財政危機を理由に市場の標的にされている「PIIGS問題」(ポルトガル、イタリア、アイルランド、ギリシャ、スペイン)とは問題の所在が違う。ただ、ドイツやPIGGSメンバーのスペイン、イタリアにおいて、クリーンエネルギー業界を成長させたFITのパワーとその副作用について様々なことを教えてくれる。

 FITは、エネルギーの買い取り価格(タリフ)を法律で定める方式の助成制度である。クリーンエネルギーは火力発電や原子力発電よりコストが高いので、普通に発電しても利用者にとって割が合わない。そこで、一般の人が払う電力料金を少し割高にして、その分、クリーンエネルギー事業者に還元しようという仕組みがFITである。クリーンエネルギーの普及の財源を公的資金で埋めるのではなく、国民が薄く広く負担するわけである。

 政府レベルでFITを導入したのは1990年のドイツが最初である。これは大きな効果を上げ、ドイツ環境省の報告書によると、2007年の全発電量に占めるクリーン電力の比率は14.2%となり、2000年の6.3%から大幅に増加している。

 ドイツの成功にならうように、2007年には世界46ヶ国・地域(REN21による)がFITを導入した。

 その結果発生したのが「太陽光発電バブル」である。

 PHOTONのデータを基に、全世界で新規に設置された太陽光パネルの量の年別推移を見ると、発電能力ベースで2000年は0.3ギガワットに過ぎなかったのが、04年に1ギガワットを超えている。その後、成長に弾みが付き、08年に5.8ギガワット、09年には8.6ギガワットになった。12年には63.5ギガワットに達すると予測されている。05年を起点に計算すると、なんと年率69.2%の急成長市場である。

 これが「太陽光発電バブル」の正体だ。

 エコ意識が世界で強くなったから太陽光発電が増えたわけではない。もしエコ意識が成長の理由ならば、CO2削減が既に政治課題に上がっていた2000年代前半に大して増えなかったことを説明できないからである。

 世界の46ヶ国・地域で2000年代にFITが相次ぎ導入されて、その政策効果が数年前から加速度的に表れてきたということがバブルの背景である。

 市場の急成長を見込んで、まず太陽電池やパネルのメーカーが大幅に増産した。シャープや京セラといった伝統的な太陽電池メーカーを、独Qセルズ、中国サンテックパワー、米ファースト・ソーラーなどの新興企業が生産量で追い越してしまった。

 また、製造されたパネルを設置する「太陽光発電事業者」がバブルの恩恵を受けた。これら事業者は製造されたパネルを家庭や企業に販売し、設置・管理のサービス料を貰う。何せ作った電気は、FITによって長期間、国が割高な値段で買い取ることを「保証」しているので、投資リスクは殆どない。銀行も安心して事業者に融資をして、それがバブルを助長したのである。

なかでも、バブルが顕著だったのがスペインである。

次回はスペインの太陽光バブルの詳細と、世界的にバブルがはじけつつある要因について考えてみたい。

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尾崎弘之 東京工科大学大学院ビジネススクール教授

 東京大学法学部卒、ニューヨーク大学MBA、早稲田大学博士。野村證券NY現地法人、モルガン・スタンレー証券バイス・プレジデント、ゴールドマン・ サックス投信執行役員を歴任後、ベンチャービジネスに転身。2005年から現職。専門分野は環境ビジネス、金融市場論、ベンチャー企業経営論など。主な著 書は「出世力」(集英社インターナショナル)、「次世代環境ビジネス」「投資銀行は本当に死んだのか」(いずれも日本経済新聞出版)。http://hiroyukiozaki.jp/

【6月28日12時3分配信 ウォール・ストリート・ジャーナル
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20100628-00000009-wsj-bus_all
 
   
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