Coming by night 

November 03 [Mon], 2008, 21:59
赤々と、西陽。
徐々に赤みを失ってゆきながらも未だ強さを残して隣街あたりを燃やし続け、空の中間あたりではそのやわらかな余韻が淡くのびてたゆたう。

連なる店々の、磨かれたショーウィンドウ。中身をくり抜かれ、奇怪な微笑を浮かべるかぼちゃ。
ゆらゆらと揺れるろうそくの炎と家々から漏れるオレンジ色の光が、夕陽と重なる。
魔女やミイラ、白い幽霊。恐ろしさよりもかわいらしさを振り撒きながら、大人たちの合間を器用にくぐりぬけ、笑いながら駆けていく子どもたち。
一見奇妙な彼らの衣装に目を留め、それらを怪訝そうな瞳で見るひとも今日という日にはいないのだ。
どこまでも魅惑的な空気をただよわせている街の大通りを、エドワードは走り抜ける。


(あと、ふたつ)

大通りから所々に枝わかれしてのびる小路の数を通り過ぎる際にカウントダウンしていく。

(…右)

残り数がゼロになったところで、エドワードは方向転換して右側にのびる道に入った。
この道をまっすぐ進み続けると目的地に到着だ。
路地に入って少しすると、店も人も打って変わったようにその数を減らし、閑静で穏やかな住宅地へと姿を変えた。

(…あいつ、今日が何の日か知ってんのかな)

一人寂しく、夕陽が射す中ソファーなんかで寝てるんじゃないんだろうか。
熱を孕んだように浮かされた空気が漂う街の様子なんか微塵にも知らずに。

そう。

やつは、ちょうど、非番。らしい。



◇◇◇



「…当たり」

一歩部屋に足を踏み入れて、真っ先に目をソファーに向ければ、予想通り黒髪が見えた。
家具の位置が前来たときと何一つ変わっていない。
特に増えたものも減ったものもないし、まさに生活感がないというか、相変わらず人がここで生活しているとは思えなかった。

ぐるりと部屋を一瞥しながらソファーへ足を進める。
纏っていた赤いコートを脱いで、無造作にソファにかけた。
なるべく振動を起こさないように、ゆっくりとソファーに乗り上げる。

「……」

ああ、久しぶりに見る顔だ。
そっと頬に指を滑らせ、確かめるようにゆっくりと撫でる。
両手で顔を包みこんで、コツンと額を合わせてみた。

(…目、あけるなよ)

開けたままになっていた窓から吹いてくる、微量な風を頬に感じてちらりと窓の方をみれば、空はまだ赤い。
伝わる体温を感じながらゆっくりと離れる。

すると。
それと同時に、黒い瞳を隠していた瞼がゆっくりと開いた。
そして、エドワードの瞳を静かに捕らえる。

「おはよ」

真っ直ぐにこちらを見あげてくる黒に、いたずらっぽく口の端をあげてみせる。

「…驚いた」

ロイは、特に表情を変えることもなくそう言った。

嘘つき野郎。俺が部屋に入って来た時にはもうわかっていたくせに。
心の中で小さく悪態をつくが、そんなふうに度々紡がれる嘘は嫌いではなかった。

「せっかくの睡眠時間だったんだがね」
「あっそ」

帰ってもいいけど。
わざと冷めた口調で嘘をつき返してやれば、冗談だよ、と笑いを含めた声が返ってきた。
同時にロイの手がするするとエドワードの方へのび、その金糸を指に絡める。

「そういえば、今日はハロウィンだったか」
「なんだ、知ってたんだ。なんか意外」
「…どういう意味だね」
「さあ?」

少し小首を傾げ、笑ってはぐらす。
ロイはむっとしたように双眸を細めるが、黙ったままだ。
ソファーの上に仰臥しているせいで、いつもは目を隠すようにある前髪が、今はあらゆる方向に散らばっている。
だから表情の変化がいつにも増してわかった。
(そして一層童顔に見えるが、そんなことを言えばヤツは怒るだろうからあえて黙っておく)

と、不意にある期待が過ぎった。
そうだ。ハロウィンだと知っているのならば。

「じゃあ、ちゃっかり甘い物とか用意してあったりすんだろ?」

期待に身を乗り出しながらそう言えば、不意に腰の辺りに腕が回された。
それに気付いたのと同時に、その手に力がこもって下へと引き寄せられる。

「わっ」

急なことに抵抗する間もなく、当然のように体勢を崩してロイの上に荒々しく着地する。

「…!なにす「まったく可愛いげのないおねだりだね…」

顔を顰めて直ちに抗議の声をあげるが、それはヤツの得意分野である嫌味に遮られる。

「…んなもんあってたまるか、阿保」

腕は腰に回されたままで身動きができないので、仕方なく顔だけをあげてみる。
身長差がまたいじらしかった。エドワードの頭はロイの胸部あたりまでしか足りていない。


「なあー菓子ー」
「そんなものはない」
「はぁ!?」
「見てわかるだろう、部屋の中とか」
「な、ありえねぇ!ハロウィンって知ってたら菓子くらい用意しとけよ…!」
「今気がついたんだよ」
「……勝手にほどくなっ」
ロイの手が、きっちりとゆわれたエドワードの髪を静かに解いた。
会話の途中だったが、キッパリ言ってやる。

「せっかく綺麗なのに。勿体ない」

「…阿保」

はぐらかすんじゃねぇ、と睨みつけてやろうと思った瞬間、ぐるりと視界が反転する。

「…っ!」

とすっ、と渇いた音と同時に、背中に弱い衝撃が走る。
反射的に閉じた目をゆっくりと開けば、ロイが解いた髪のせいで視界が所々遮られた。
それを無造作に払い退けて、今度こそ男を睨みつけてやる。

「二回目。急になにすんだ」
「君が上だとどうも落ち着かない」
「うわっむかつく…菓子もねぇし」
「いつまで引きづるつもりだね」

降ってくるロイの声と同時に、カチリ、と無機質な音が耳に届いた。
すぐにそれが服の留め金を外す音だときづく。

「あんたいい度胸してんな…この状況下で…」
「それはどうも」

今にも機械鎧の左足を持ち上げて、鳩尾に蹴りのひとつでもいれそうな剣幕のエドワードをさらりとかわして、

「君こそ、人の家にあがるんだったら、菓子をねだる前に自分で持ってきたらどうだ。一方的だと思わないかい?」
「…子どもがおっさんに菓子やんのかよ」
「礼儀の話だよ」
「あんたこそこれが客人に対する礼儀か」
「おや、嫌だったらやめましょうか?」

にこりと笑うロイを無言で睨み付け、ふんっ、と視線を反らす

「まるで猫だな、君は」

気まぐれで、気分屋で、気高くて。

「それから勝手に家に入り込んできたり」
「…その猫は餌がないとわかった今、帰りたい一心なんですが」
「それはちょっと寂しいな」

くすくすと笑うロイに、あからさまに顔を歪めてみれば、そっと唇にキスをくれた。
俺の機嫌を損ねた時はいつだって触れるだけのそれをくれる。

「…、…」

離れる直前、おもむろにやつのシャツの襟首をつかんで引き寄せれば、驚いたように動きを止めた。
でもそれは一瞬のことで、すぐにまた俺の気まぐれに応えてくれる。

「ふ、…っん…」

啄むように何度もキスを重ね、暫く唇の柔らかい感覚を味わったあとで、僅かに舌を覗かせてぺろりとロイの唇を舐める。
と、不意にロイが身を引いた。髪の黒が残像を残して視界を通り過ぎる。

「…どうした?」
「何が」
「君からキスを求められるなんて珍しい」
「……あんた俺をなんだと思ってるわけ」

時々妙に愛しく思ったりして何が悪い。

「最初はキスするだけでも顔を真っ赤にしてぎゃあぎゃあ喚いてたのに」
「……」
「初めて君を押し倒した時は危うく蹴られそうになっ「それは執務室でやろうとした阿保が悪い」
「…でもそのあとに涙を浮かべながら顔を赤くして鳴いてる君は可愛かったよ」
「………」
「そんな君がせっかく積極的になってくれたんだ、まあ世間はハロウィンらしいし、今日は猫になってもらおうかな」
「…変態」
「君限定だよ」

ロイは小さく笑った後、急に声を潜めて口角をあげると同時に、目をスッと細めた。

――あー…、ぜったいこいつ、なんか企んでる。
ってゆーかなんか楽しんでる。

「実はあるんだけど」
「…なにが?」
「ケーキ。君が大好きな生クリームいっぱいのやつ」
「!」
「……使う?」
「ッ!!な…っ!馬鹿か!」
「食べさせてあげようかなーと思って。いろんな意味で」
「いらんことせんでいい!」
「やっぱり変わらないね、君は」

冗談だよ、とくすくすと笑い声を漏らしながら、ゆっくりとロイが首筋に顔を埋めた。
舌が僅かに皮膚を撫でていく感覚に、不覚にも肩が反応する。
それに気をよくしたのか、ロイは鎖骨に舌を這わすと、かぷりと甘噛みした。

「…ん、‥…」
「可愛いね」

満足げに微笑みながらゆっくりとした動きで頬を撫でられる。

「さて、今日という日に何も準備をしていなかったのは君だけだ」
「…っ、きにくわねー…」

本当に、毎回毎回、こいつには歯が立たない。
全て奴の手中。
今日こそは勝ったと思えば、こうして丸めこまれる。
おかしそうに、ロイは口の端をあげた。

「……なんだよ」
「お菓子がなければなんとか、だろう?エドワード」

からかうように耳元で囁く。

…馬鹿にすんな。

勢いよく奴の襟元を掴んで、真っ直ぐに見つめた。


「…やってやろうじゃん」

口端をあげて、ひとこと。





『Trick or Treat?』






はずかしい感じのろいえど。
たまにはあまくあまく。ハッピーハロウィン。

さよならをいうのは きっと 

November 03 [Mon], 2008, 19:18


すきだよ、と耳元で呟かれる言葉が嘘なんだとおれはずっとずっと前から知っていた。
そうやってきまぐれに抱きしめられることも、時々つむがれる言葉が嘘であっても、
嫌いになんてなれなかった。


髪をすく手も、時々呼んでくれる名前も、おやすみのキスも 全部。
全部、たいさのものは優しいんだよ。


抱きしめられるときの圧迫感が好きだ。
近くなった距離を噛み締めて、小さく深呼吸して、たいさの青を目に刻んで。
感覚の違う両手でその色を握り締める。
回された腕はどうしようもなくあたたかくて、おれはゆっくりと目をとじて、
見えないたいさの髪とおんなじの、まぶたの裏の黒を見る。
肺から押し出される空気が微かに震えることも、新たに入り込む気体があまりにも澄んでいることも、
気付いてしまうとなにもかも我慢できなくなる。



ねえ、たいさ。
たいさはすごく不器用だから こんなおれでさえもつきはなせないの。



耐えていられたのにな。まだそのままでよかった。
嘘が本当になれ。
なにもいらないよ。
ただそのことばを全部おれのものにして。
ねえ。



ああ、こんなのいけない。
だっておれはあんたのことなんてまったくしらなかった。
それなのに、目をふせればいつだって、ただ。
髪を撫でて、触れるだけのキスをくれた。
かきだくような抱擁よりも 噛み付くようなキスよりも、

それが一番、欲しくて 嬉しくて 切なくて 苦しかった。



いちばん、くるしかった。



ちがう。だめだよ。こんなのおれじゃない。
奪わないでよ。
なんで。

なんでこんなに   目が  熱く   なる  の。





(おれのこと、すきになってよ)









やさしすぎるキスなんかしてくれるから

あなたの嘘に 気づいてしまう

(さよならをいうの は、)

(きっと)





おれなの











俵万智さんの詩をよんで。 

/ 

October 13 [Mon], 2008, 23:36
本質を見ずしての痛みに翻弄されて今日もまた悲憤慷慨

いつになったら笑えるの、とか

忘れられるの、とか


手に入る自由や悲しみからの解放は、

いつだって孤独がついてくることなんて知ってるのに望まざるを得ない状況

怒りのベクトルが見当違いだとしてもそれは自己防衛のつもり

何をしたって苦しいなら選ぶ道はひとつなのにまた振り返るよ

アイデンティティ 

August 27 [Wed], 2008, 18:59



「ねえ、大佐」


堕ちた夕陽。
黒い髪の間。
指先の痺れ。
気づかないふり。


「おれのこと、好き?」
「…ああ」
「ちゃんといって」
「……鋼の」

伏せられていた瞳が一度だけ瞬いて、ゆっくりとおれをとらえる。
心臓が、訴える。
その目に見つめられる度、掴まれるみたいに軋んで、くるしい。
否定なんて何よりも簡単なことだって、ずっと思っていたのに。

おれはいま、どんな顔 してる?





「すきだよ」


滑り落ちる言葉。
呆れとか、哀れみとか、それから嘲笑。
そんなものが彼の瞳の中にはあった。


でもそんなのどうでもよくて。
だって確かにこのひとは今、おれを好きだと言ったんだから。




「よかった」



そっと顔を近づける。衣擦れの乾いた音が心地よかった。
目の前に映る黒。強いいろ。

それに負けそうになるんだよ。




冷めた唇にキスを落とせば、そっと背に手がまわされた。
先を促すみたいに、首筋を指が滑る。

そうやってやっと、
おれは突きつけていた銃を下ろすことができた。















(うそつき。)

ユーフォリア 

August 27 [Wed], 2008, 18:45




「あんたは俺を誰だと思ってんのっていうか何だと思ってんの」

今までじっと黙っていたエドワードが急にそう切り出した。
巻きついている私の腕から逃れるように、些か乱暴にもぞもぞと体を捩る。

「? 鋼のは鋼のだよ」
「それがわかってるなら離せ!俺は抱き枕でもなんでもない!」

突如として憤慨するエドワードに後ろから顔を寄せて、肩にもたれかかる。
なんというか、ジャストフィット。
椅子に座って彼を膝に乗せ抱きしめると、本当に体にしっくりくる。

「嫌?」
「いーやー!」
「どうして?すごく心地いいのに」
「あんたの理由なんか聞いてねえ!」

そう叫ぶと、足をじたばたと動かす。
半ばヒステリーを起こしつつある。
ちょっと危ない。(私の命が)

「違うよ、君だって心地よくないのかい?」
「ナルシシズム!」
「…だから、そうじゃなくて」

そう呟いて軽く腕に力を込めれば、少しだけ肩を揺らして、エドワードはおとなしくなった。
首だけ捻って大きな金の瞳で見つめてくる。

「そうじゃないなら、何」
「…最近また眠れていないんだろう。傍にいてやるから安心して眠れといっているんだ」
「…な、」

バレていないとでも思ったのだろうか。
小さく笑えば途端に目尻が釣りあがる。
ころころ変わる表情可愛くて仕方ない。

「ほら」

罵詈雑言を今にも浴びせようと僅かに開いた唇にキスを落とす。
夢に魘され、痛みとともに目を覚ます経験はよく知っていたから。

大丈夫、ひとりぼっちで怖い夢を見ないように。



「いっつも何かして貰うのはおればっかりだ。ずるい。おれだってあげられるのに」
「君が気持ちよくなることで私はもっと気持ちよくなれるんだよ。知っているだろう?」
「…この状況だからその言葉に関して寛大に赦免してやる」

小さく苦笑してそっと顔を離せば、エドワードは頬を朱に染めて睨みつけてきた。
その瞳をそっと手で覆う。

「おやすみ、鋼の」

どういうわけであれ、おとなしくなったエドワードの左手をそっと握った。

すこし小さな温かいその手は、決して握り返してはくれなかったけれど。












どこまでもツンなエド…ほんのちょっとでれてあげる。

RE 

August 23 [Sat], 2008, 1:52




「 輝きのない日常に耐えかねて 



何を殺せば勝ちだったのか?
 」




AE 

August 23 [Sat], 2008, 1:40
こえがきこえなくなった。

あなたのそのいろも、とけた。


いいよ、もういい。




はなさないように

つないでいてくれたその




あたたかいてを、はなして。

RE 

August 23 [Sat], 2008, 1:39
いつかした約束も結局守れなかったし


これから守る予定もないし






あんたと見てきた景色は今、

どれだけ残ってる?








さよならと呟いて、
答える奴はここにはいない

(無題) 

April 15 [Sun], 2007, 0:22

怒り 嫉妬 失望 赤色

自分への裏切り
あのひとへの筋違いな叱責

すがりついて泣く 

April 12 [Thu], 2007, 17:28
あなたは うそが うまいので
いつだってそのてが ふれるたびに
ぼくは その熱を かんじて しまうのです

どこにもいかないでなんて
子どもみたいに 泣いて
そのたびにくれる温度や あなたのその声を
いつか僕は無くすのだろうことに
そっと 目を とじるのです
(あなたは結局離れていってしまうことをぼくはしっている)

まだ
まだだめだよ まだ隠れていて
嘘を重ねあわせることでしか繋がることのできない温度を笑ってみる


大丈夫 どこにもいかない
見え透いた嘘の言葉に僕はまた喜ぶ

置いていかないでなんていっておいて
結局 僕を置いていったのは、




(あなただ、エドワードさん)
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