弓月城太郎が描く精霊界の風景

October 13 [Wed], 2010, 1:36


精神世界や超常現象というとどうもインチキ臭いイメージがつきまとうものです。そのため精神世界を正面から扱った小説はなかなか見かけることができません。ましてSF小説となるとほとんどありません。やはり科学をテーマとするSFとは相性がよくないのでしょう。

しかし、弓月城太郎の『神秘体験』 はSFというジャンルのもとでとてもリアルな精神世界を描き出すことに成功しています。SF作家である著者が持つ該博な知識と卓抜な表現力によって精神世界に関する新たな展望を描き出しているのです。

これはとても難しいことだと思います。精神世界を理論で説明しようとするとどうしても無理が出てきてしまいます。強引にこじつけや中途半端な理屈で納得させようとして失敗してしまうリスクが高いのではないでしょうか。それに精神世界や超常現象をSFのテーマにすると「うそ臭さ」が感じられてしまってSFとしての価値が下がってしまう可能性もあるのです。

しかしこの『神秘体験』において弓月城太郎はその両方の問題点をうまくクリアしています。「精神波量子脳理論」による超常現象の科学的説明、そして主人公である天才科学者柚月恭司とその家族が織り成す絶妙のストーリーライン。作者の博学振りが窺える理論の内容で読者を驚かせながらも納得させ、圧倒的臨場感で描写される精神世界へと読者をいざなう。そして読み終わったあとには鮮明に脳裏に焼き付いた広大な精神世界のイメージを思い起こすことになるのです。

精神世界の鮮やかなビジョンをSF小説において描いた弓月城太郎の『神秘体験』。エンターテイメントとしてトリップすること間違いなし。弓月城太郎は現代人の退屈な日常に新たな良質の刺激をもたらしてくれました。これはSFファンだけでなく幅広く多くの人たちにオススメしたい小説です。



作品はこちらで無料公開されています→http://yuzukijoutarou.3rin.net/
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