けにはいき

June 11 [Thu], 2015, 18:05
りそうですね」
 外に出ると、澪はハンドバッグを後ろ手に背筋を伸ばし、穏やかな青空を仰ぎ見ながら息を吸い込んだ。心地よさそうに微笑を浮かべて目を閉じる。ほのかにあたたかいそよ風が、くせのない長い黒髪をさらさらと軽やかに揺らしていた。
「なあ」
 隣に立つ大地は、空を見上げながらぽつりと声を落とした。
 澪は不思議そうな顔で小首を傾げて彼を見上げる。
「どうして迎えに来たんだ?」
 それは悠人も気になっていたことだった。もともと悠人がひとりで迎えに行くつもりだったのに、彼女の方から自分も一緒に行きたいと言ってきたのである。大地の帰国を心待ちにしていたわけではないはずだ。それでも彼女なりに何か思うことがあるのだろうと、あえて理由は尋ねなかったのだが。
「……自信がなかったんですよ」
 澪はしばらく無表情で逡巡したあと、口を開いた。
「お父さまと会って、どんな気持ちになるかわからなかった。冷静でいられるのか自信がなかった。結婚式で取り乱したり動揺したりするわませんから、前もって会っておいた方がいいと思ったんです。娘にみっともないところを見せたくないというのもありますし」
 話が途切れ、隣の大地はちらりと横目を流す。
「で、どうだった?」
「わりと平気でした」
 澪はにっこりと笑顔で答えた。黒髪をなびかせて上空を見やり、目を細める。
「子供のころってもっと単純だったと思うんです。良い悪いも、好き嫌いも。でも、年を重ねて経験を積むにしたがって、だんだんと境界が曖昧になっていって。それが良いのか悪いのかはわかりませんけど、きっと仕方のないことなんですよね」
「僕の気持ちも少しはわかった?」
「さあ、どうでしょうか」
 彼の方を見ようともせず煙に巻くようにそう言うと、一呼吸おいて言葉を継ぐ。
「私は選択を誤りたくありません。決して自分を過信することなく、他
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