#1 

February 17 [Thu], 2005, 0:15
この恋はいつから始まりいつ終わるのか、
そう考えるだけで眩暈がする。
だってそもそも恋愛なんて、盲目で始まり目が醒めて終わるものだから。

市原一樹は4つ離れた弟のクラスメイトだった。
二、三度、家に遊びに来たことがあったが、その他大勢のガキんちょの中に、1人背の高い細い子が混ざっている、そんな印象しかない。
それが3年前、私の会社に新入社員として入ってきた。
濃紺のスーツ、光沢のあるネクタイに細かいチェックのシャツ、趣味のいい身なりと少し伸びた前髪のせいで、ひどく洗練された印象。そんな彼の様子に、不覚にも少し驚いてしまったのだ。
驚いた。そう、それが、この再会の正直な印象。
まったく、いまどきの男というのはちょっとした身なりの変化で、まったく別人になってしまう。そんなの女の子の専売特許だったのに。
私みたいに仕事能力をウリにするような女性が登場しているわけだから、それでバランスが取れているという事かしら。

「加奈子さんの売りは、甘え下手なところ」
見透かしたように、隣でジントニックを啜りながら一樹が呟いた。
「なにボーッとしてたの。加奈子さんの番だよ」
一樹は少年ぽさが抜けなくて、やたらとゲームが好きだ。
今日も携帯用のポケットゲームを持ってきて、加奈子に勧める。
ゲームは楽しい。
自分がこんなにも先の読めない人間だったのかと、改めて知らされるのだ。
ちょっとした選択ミスが引き起こすつまらない失敗。
そうして落ち込む加奈子を見て、横で一樹が「ほーら、だから言ったでしょ」と笑う。こぼれ見える一樹の歯は白く、そんな些細なことで、なぜだか加奈子はひどく安心する。
いつからだろう。選択することすべてに、緊張感を覚えるようになったのは。失敗を恐れて、出しかけた手をそっと引き戻すようになったのは。
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