an intermission(うめもん) 

October 21 [Tue], 2014, 23:35
 「あっはっはっ」
 豪快な笑い声が更衣室に響き渡る。その主を遠くから見つめていた。

 今は昼の公演と夜の公演の間の休憩時間。メンバーは思い思いのことをして時間をつぶしている。メンバー同士で話しこんでる子たち、机にうつ伏せになって寝てる子、音楽や本に没頭してる子、そしてなんだかよく分からないけど騒いでる子たち……。

 私はそのどれにも入らず、イスに座って遠くからとりわけ賑やかなグループをボーッと眺めていた。明日香といーちゃん、そして下野さんが話してる。「じゃあ、今日のお題は……」とか聞こえてきたから、夜公演MCの打ち合わせでもしてるんだろう。

 その中でひときわ賑やかなのが下野さんだった。さっきの公演でもテンション高かったもんな。なんか色々ちょっかいかけられたし。ま、私も楽しかったけど。

 チームが違うから、ああやって一緒のステージにのる機会は少ない。このひまわり組公演と今やってる全国ツアーくらいだ。

 ……全国ツアー。そのことを考えるとちょっとだけモヤっとした気分になる。今までのコンサートではHKT全員で参加できた。でも今回はそうじゃない。その理由はスタッフさん達に説明されたから納得はしている。与えられたステージでも全力でやってるつもりだ。でも、それでも……割り切れないものは残る。
 そういえば下野さんはどう考えてるのかな? 今回のコンサートでは一部出演の同じ組になってるけど、そのことについて話したことがない。実際、ツアーの時も普通に楽しそうにしてるし……。

 前にちょっとだけ…そう、ちょっとだけ下野さんに甘えてしまったことがあった。
 あれから、わたしなりにやれるとこはやってきたし、チャンスも色々ともらってると思う。それでもまだ足踏みしてる気がしてならない。気づくと今年ももう11月近く。来年は高3になる。そして、将来は……どうなってるんだろう……

 「…め。ねー、聞いてる、うめ!」

 気づくと、その下野さんの顔が目の前にあった。

 「ふええっ?!」
 思わず変な声を出して、後ろに倒れそうになった。

 「あぶなっ」
 ガシッと下野さんが私の体を支えてくれたおかけでイスから転げ落ちるのを免れた。

 「もー、夜公演あるんだから、ケガとか気をつけなよ」
 「あ、ありがとうございます」
 やだ、また顔が真っ赤になってる。

 「でさ、うめは下野に何か用がある?」
 「え?な、なんでです……?!」
 「ほらほら、テンパらないテンパらない」
 そう言って笑う下野さん。
 「や、なんかさっきからずっと下野の顔見てたっぽいから。……あ、もしかして下野に惚れた?」
 「なななな……」
 「最近、メンバー人気高いからなー。モテモテのぴーちゃんからもモテてるとか、マジでキてんじゃね?」
 キてねーよ、とツッコミたかったけど言葉が出てこなかった。

 その途端、ニヤニヤしてた下野さんに落胆の表情が浮かぶ。

 「ほらそこは、キてねーよ!ってツッコんでくれないと」
 「は、はい……」
 「やっぱりうめにこういうツッコミはきびしいかー」
 「で、できますよ、私にも!」
 「へー、じゃあ夜公演楽しみにしてるね」
 とまたまたニヤニヤが戻り、踵を返して元いた明日香達のところに戻ろうとする。

 からかいに来ただけなんだろうか。
 私は下野さんのことを考えてたのに……思わずちょっとムッとしてしまった。

 そしたら、下野さんがこちらを振り返り、こんなことを言った。

 「あとさ……。またなんか溜め込んでんなら、下野に話してみるってのもいいかもよ」

 思わずポカーンとする私。もしかして、顔に出てたのかな……。

 「え? なんか変なこと言った?」
 「い、いえ、下野さんがそんなことを言うなんて意外だったから」
 「そう? んー、そうかな? 下野にも意外と優しいところはあるよ?」
 「……知ってますよ」
 そう。あの時優しくしてくれたことは今も覚えている。 

 「いやいや!? そういうことストレートに言われると恥ずかしいわ!」
 急に動揺する下野さん。

 人というのは不思議で、話してる相手が動揺しはじめると逆に落ち着くものである。反撃してやろうという気持ちになる。

 「じゃあ……」
 「ん?」
 「来週握手会が東京であるんで、自由時間にデートしましょう!」

 ごめん、嘘。全然落ち着いてなかった。何言ってんだ、あたしは。ただ相談するのにちょうどいいかなと思っただけなのに。

 「……」
 ほら、下野さんが固まって黙っちゃった。
 「あ、あの今のはですね……」
 そしてまたテンパる自分。顔も真っ赤になってる。
 「……いいよ」
 「え?」

 「じゃ、デートしよっか。いやぁ、イケメンのうめとデートとか、やっぱ下野モテ期だわ」
 すっごくいい笑顔になってこんなこといいやがった。なんだ、この先輩。調子にのってんじゃねーぞ。

 「じゃ、楽しみにしてるからね〜」
 反論する間も無く、下野さんは行ってしまった。

 どうしてこうなった……という気がしなくもない。
 でも明日香たちのとこに戻って、心なしかさっきよりもテンションが高く話している下野さんを見てると、今度の握手会が楽しみになってきた。さぁ、夜の公演の予習でもしよう。そう思って、イスから立ち上がり、大きく伸びをした。


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特に何も始まっていません……。一応、前のお話から続いてるという体になっていますので、そちらも読んでいただけると嬉しいです。


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