約束の15分前/亞祈 

September 19 [Tue], 2006, 16:31
「今日の8時、あの場所で待ってる。」

放課後の下駄箱前で君に言ってやった。

「…不二…、だから何度も…」
「いいから。…待ってるよ。」

君に断る権利なんてない。
僕には強制する権利もないけれど。

「不二、今日の8時に待ってるから来てよね。」

「ごめん英二。今日は行けない。」
「……不二は手塚の所に行く気なんだ。」

頬を膨らませて拗ねる。それも計算通りだった。
むくれた英二を置き去りに、すれ違う瞬間。
吐いた言葉。むせ返る程の笑顔で放っていた。

「手塚が僕の所に来てくれるのさ。」

欲望という言葉を知りもしなかった僕には

きっと何の罪もない。

自分のものだと言えたら/深見 

September 16 [Sat], 2006, 23:34
歓声がコートを射抜く。
それは華やかな印象を添える。

最早不快でしかないのだ。


強めの打球が、僅かに浮いて地を滑った。
ぼす、と鈍い音は気にせず、早々に其処を後にする。

「……センパイ」
「ごめん。少し休むよ」

気にする余裕もない。
咎めの眼差しをなるべく見ないようにして、ただひたすらに歩いた。

どうせすぐに見えなくなる。
ならばこちらから逃げてしまえ。
扉一枚隔てた向こう側で、彼が何を感じるか。
一々気に留める自分が腹立たしくて堪らない。

「…、」

視界が揺らいだ。
頭痛が襲い、こめかみを押さえて耐える。
彼はこんな風にならない。
俺に溺れたりしない。

「…てづか」

危うい。
きっとこの愛は釣り合わない。
柄にも無く自信を無くす。
誰かが奪う、恐怖。
付き纏って離れない。


だから、だからこそ。
言葉にしないと安心出来ない。


(君は俺のものだ)

----------

頼むから逃げないでって、そんな風に泣かないで/亞祈 

August 11 [Fri], 2006, 18:55
なんでそうやって 哀しい顔するの
そんな顔 しないで
どうして ただ笑って 俺と 向き合えないの

『御前の所為だ』

俺の所為じゃないデショ
泣き虫アックン。ここまで おいで。

『…もういい』

そうやってすぐ逃げて
俺が追いかけなかったら どうせまた 泣くんだ
でっかい身体して 膝を抱え込んで まるで子供のように

泣き虫アックン。手の鳴る方へ。

どうして 俺を 嫌がるの
俺のこと キライに なったの
それでも 俺は …

泣き虫アックン。…捕まえた。

斜め前の席/深見 

August 11 [Fri], 2006, 15:40
例えば、
綺麗な色だな、とか、
寝てるなこいつ、とか、
考える事は山ほどあるのだけど、それでも。

きっとあたしの知らない所で、あんたは頑張ってる。
だから起こしてなんかやらない。
これは、せめてもの抵抗。



「…何で起こさなかったんだよ」

授業が終わってそうそう、抗議の声。
不機嫌そうに眉寄せて、不機嫌そうに唇を尖らせて。

「お生憎様。其処まで優しくないもんで」
「てめえ知ってただろ」
「知ってたよ」
「……起こせよ」

いつも授業中飛び出してくくせ、起こせと言う。
矛盾しているじゃないかと。
言って終わらせるのは簡単だったのに。


(ばっかみたい)



それからまた、チャイムが鳴った。

どうか、幸せに/亞祈 

August 11 [Fri], 2006, 9:21
俺がこうして笑っている間

泣いてるんじゃないか っ て
独りなんじゃないか っ て

君は強いから …強くないから

それでも もう 俺は 君に手を差し伸べる資格なんて 無い
誰か 何処かで あいつを見つけたなら
優しい言葉でも 同情の眼差しでも
何でもいい 何でもいい 何でもいい
…あいつを見捨てないでやってくれないか

もう二度と強い君が泣かなくていいように
幸せになれるように
例えその相手が 俺 じゃなくたって
俺は 俺の 幸せの為に
君は 君の 幸せの為に

俺の愛した人
俺の愛を捧げた人
…最後の約束を交わそう

どうか 幸せで いて…

屋上の風/深見 

July 15 [Sat], 2006, 19:16
ふわり、と、黒が靡いた。
夢か、現か。


(――現だ)


眼の眩むような青空の下。
不服そうな顔が、目の前にあった。

「起きろ。」
「…何だよ、何か用か…」
「いいから、さっさと起きろ」
「……あー」

易々と起きる事が出来れば苦労はしない。
猛烈な眠気が一護を襲っていた。
この暑苦しい天候の中でよく眠れるな俺、なんてぼんやり考える。

「…ッ」

そして、一瞬で消え去って行く。


「だーッ!何だよ昼寝くらいゆっくりさせろ!」
「たわけ!貴様がさっさと起きんからだ!」

「……」
「……」


沈黙が落ちて、そよぐのは風の音。

居心地が悪いだとか、気まずいだとか、
そんな感情はまるでなかった。
ただ、その静けさが嫌に長い、と。そう思っただけだ。

「……何だ。今日は――」

だから、その時相手が何を言おうとしているか分からなかった。


「………ああ!」
「な、何だそのああ!≠ヘ!」
「忘れてた」
「……何?」

「今日、誕生日か。俺」

焼け付く頬を抑えて呟けば、仏頂面が和らぐ。

「そうだ。自分の誕生日くらい覚えておけ」

(ありがとな。ルキア)


また、黒が靡いた。
己には無いそれを見て、何故だかとても綺麗だと感じた。

空を渡る風船/深見 

July 15 [Sat], 2006, 0:00
不安定に、浮かぶ。
蒼に向かい、高く。
少女の泣き声が、遠く。


そして、渦巻くは得体の知れない感情。



「取ってあげないんスか?」

降り掛かる飄々とした声に対して、一護は首を横に振った。
彼の持つ雰囲気が、怪訝そうなものへと変わる。

「取れねーよ」


母親が死んだ。
護れない事を猛烈に後悔した。
目の前で、自分にしか見えない少女が消えた。
一人さえ護れない事に苛立った。

漆黒を纏ってもまだ、全てを掴める訳ではない。
思い知ったのは必然であり――残酷な事実。


「黒崎サン」

其処から先、言葉は無く。

(――だけど)

伝わる温もりが、教えてくれた気がした。


「…、分かってる」
「じゃ、取って来て下さい」
「あのなあ…!」



それはからりとした、晴天。
雲の無い空に橙が存在を主張する、

そんな夏のある日。

公衆の、無責任な言葉の針/深見 

July 12 [Wed], 2006, 20:30
「……お前は、」

「…否。お前には、自信があるのか」

(―――)

声が喉元で行き場を失う。

貴族≠ニそれ以外≠フ違い。
誰の目から見ても明らかなもので。
そして俺は、明らかな事実を言葉によってまた、明らかにされた。
親しくしている友人でさえ、潜む棘をどうする事も出来ない。

当の昔に理解していた。
ただ、抵抗する術を持ち合わせていなかっただけのこと。
自信があるかどうかなど、愚問に過ぎない。




「…ンなモン、ねーよ」
「だったら…!」
「なァ、ルキア」
「……、」

「自信なんざねェ。それでも、」

護りたいと思ってしまったのだから、仕方ないと思え。
そう言うと、彼女は微笑んだ。


(やめてくれ)

そんな事を訊かないでほしかった。
そんな眼で、笑わないでほしかった。


耐え切れる自信なんて、あるはずもないのだ。

理解者/深見 

July 02 [Sun], 2006, 2:24
愚かな、愚かな、

フーリッシュ・ラブ。



僕は君に恋をしている。
僕は君に恋をしている。
狂う程、君を愛してる。

僕は君を憎んでいる。
君は僕を置いて行った。
僕は君を恨んでいる。
君が置いていかなければ、と。

僕は異常だ。
君は非情だ。
ねえ、試してみようか。
語呂が良いなら相性も、なんて。

ほら、狂ってる。



愛してるのに。
置いていかれて気付いた感情。
君が置いていかなければ、僕は気付かずに済んだかもしれないのに。
君が此処に居てくれれば、僕は狂わずに済んだかもしれないのに。


理解者なんて居ない。
期待しちゃいけない。
吐ける自信も無いくせに。


(―だから、きみしかいないんだよ)

きみが悲しむことは全て/深見 

June 26 [Mon], 2006, 22:26
強く頑丈な殻を持つモノ程、内は弱く脆い。



抱え過ぎだ、と言えれば楽。
一部を背負う事は容易で。

――最も犯してはならない、罪なのに。
手を貸そうと思ってしまうのは、何故か。


分かるのは己だけで充分だ。

(きっと、キミはそれを望まない)


全て背負ったフリをして、
貴方の眠る真夜中零時。

強くしようと、強くなろうと、朧月に誓った。