いつの日か、僕の電源が切れる、その時まで。

2004年11月
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雨。(弥生と真由) [3/3] / 2004年11月09日(火)
「センセイは、誰でも良いのよ。誰だって構わない。別に、あたしじゃなくても良いの。“ジョシコウセイ”なんてラベルの付いた、制服を着たオンナノコなら、誰だって。」
怒っているようでもなく、悲しんでいるようでもなく、かと言って悔しがっているようでもなく、弥生ちゃんは唯坦々と、一本の直線のように真っ直ぐに呟いた。
弥生ちゃんはずっと、垣根の青々とした葉っぱをつるつると撫でる、その白い指先を見ていた。私も黙ってそれを見つめていた。

「性欲塗れの男なんて、みんな死ねばいいのよ。」

その言葉は宛ら雨の雫の様でもあり、氷の棘の様でもあった。
私は、そう言った弥生ちゃんの横顔や首筋が、何だかとても綺麗に見えた。少し、怖いくらいに。
 
   
Posted at 23:24 / 夜とナイフ / この記事のURL
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雨。(弥生と真由) [2/3] / 2004年11月09日(火)
「きのう、センセイから、電話来たよ。」
弥生ちゃんは表情を変えないまま、まるで積み木をそっと重ねるように、一つ一つの単語を並べるように話した。
「それで、何か言われたりした?」
「ううん、特には。また、会いたい、って言われただけ。」
「そう。」
“センセイ”は弥生ちゃんが一年の時の英語教師で、三十路前半の背の高い男だ。
「弥生ちゃんは、」そう言いかけて、私はその続きを言うのを躊躇った。だけど弥生ちゃんは振り向いてしまったので、少し迷ったけれど、続けることにした。
「えと、弥生ちゃんは、好き…だったの?その…センセイの、こと。」
我ながら凄くしどろもどろでとんでもない発言だと思った。言い終わってから、やっぱり聞くべきじゃなかったかなぁ、と後悔した。
案の定、弥生ちゃんは黙ってしまった。少しだけ俯いて、また、遠くを見るような目をしている。
「…わかんない、かな。」
私がちょうど謝ろうかとしたときに、彼女はそう答えた。
「自分の気持ちなのに分かんないって、おかしいよね。でも、よく分からないんだ。」
「…そっか、変なこと聞いてごめんね。」
「ううん」
弥生ちゃんは、私に向かって少しだけ笑ってくれた。最近やっとわかるようになってきた、弥生ちゃんの微かな笑顔、表情の変化。

「でも、」
雨にぬれた垣根の葉っぱをつまみながら、弥生ちゃんはぽつん、と言った。
「でも、最初は、多分、好きだった。」
「最初は?」
「うん。最初はね。だけど、嫌いになった。…今は、大嫌い。」
弥生ちゃんがつまんでいた葉っぱは、プチッと音を立て、水滴を散らして千切れた。
「なんか、壊れちゃったんだ。綺麗だと思ってたものとか、素敵だと思ってたものとか、そんな感情とか、色々。」
弥生ちゃんは一人、もそもそと呟いた。
「そ、か。」
私はなんと言えば良いのか分からず、何だか不自然な相槌をうった。
「センセイは、あたしのこと、好きじゃないよ。」
え、という声が私の口から自然に零れた。センセイは、弥生ちゃんのことが好きだから、こんなにしつこく会いたがっているんじゃないの?
 
   
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雨。(弥生と真由) [1/3] / 2004年11月09日(火)
此処のところ雨ばかりで憂鬱になるわ、と弥生ちゃんは呟いた。
だけど、その顔はちっとも憂鬱そうじゃなかった。でも、楽しそうでもなかった。
雨が割と好きな私は、傘をくるくる回しながら弥生ちゃんについていく。
「真由、傘の飛沫、冷たい。」
「あ、ごめん。」
弥生ちゃんは、ふふ、と少しだけ笑った。

弥生ちゃんはあんまり笑わない。
怒っているところも、泣いているところも、私は今まで見たことがない。
…とは言っても、私は弥生ちゃんと知り合ってまだ半年も経っていないのだけど。
ほとんどいつも、遠くを見ているような、人形のような表情をしている。
「あたし、ちょっと真由が羨ましい。」
「え、何で?」
弥生ちゃんは時々、突拍子も無いことを言う。
「だって、真由は『真由』じゃない?」
「ん、どういうこと?」
「ほら、あたしって、いつも皆に苗字で呼ばれてるじゃない?しかも『さん』付けで。」
ああ。そういうことか。
弥生ちゃんは、凄く大人っぽい。こう、なんともいえない落ち着いた雰囲気、というのだろうか。とても静かで、なめらかなオーラが、常に彼女を包んでいるのだ。
そんなオーラに圧倒されて、皆彼女を下の名前で呼ぶのを躊躇うようだった。事実、彼女を「弥生ちゃん」なんて呼ぶのは、この学校で多分私だけだ。
もちろん私も、最初に弥生ちゃんと出会ったときは、そんなオーラに圧倒されて、凄くドギマギしてしまったけれど、“あのこと”があってから私は、彼女を普通に「弥生ちゃん」と呼んでいる。つい、三ヶ月前のことだ。
「私は逆に、弥生ちゃんが羨ましいけどなぁ。私も弥生ちゃんみたいに大人っぽくなりたいよ。」
「そう?そうかなぁ。確かに大人っぽくていいね、とかよく言われるけど、あたしはあんまり良いとは思わないな。」
「そういうものなの?」
「うん、そういうものよ。多分ね。」
弥生ちゃんはまた、遠くを見るような顔をした。私はそんな弥生ちゃんの顔を見ると、何だかヒヤッとしてしまう。それは切ないような、悲しいような、少しだけ、怖いような。
 
   
Posted at 23:19 / 夜とナイフ / この記事のURL
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乾いた眼、凍て付く視線。 [3/3] / 2004年11月09日(火)
しかし、人形は余りにも多すぎた。“保護”しきれなかった人形達は問答無用でゴミ袋の中へ入れられていった。
例え其れが無機質な物であっても、命がないものであっても、生き物の形をしているし、第一私は未だに人形は「想い」を持っていると信じていたので、余計に可哀想で、申し訳なくて、身が裂かれる思いだった。
ビニールの向こうで見つめ返してくる沢山の眼、眼、眼。
その日は一晩中泣きはらし、人形達にごめんなさいと謝り続けた。
翌日、学校でも、ふとした瞬間に人形のことを思い出し、思わず涙しそうになることもあった。

自分の意に反して、突然に、それも大量に、大事にしていた人形を処分されるということは、それからはもう無かったのだけれど、やっぱり私はどうしても人形が捨てられないし、今でも「想い」があるんじゃないかと考えてしまう。
流石に昔ほど溺愛することは無くなったけれど、今でも人形は大好きだし、惹かれてしまう。

ある程度の年齢になって、自分で自由に使えるお金も徐々に増えてきて、人形も縫いぐるみぐらいなら買えるようになったけれど、それでも「あの眼」のことを思い出して、いつも購入を踏みとどまった。そう、ゴミ袋の中の人形達の眼だ。

私はあの眼が嫌いだ。あの悲しそうな痛い視線も。
だからだろうか。初めてスーパードルフィーという球体関節人形を見たときに、目が合ったまま動けなくなってしまったのは。そして、それがとても「欲しい」と感じられたのは。


(*)弟が誕生日のときには私もプレゼントがもらえ、私が誕生日のときには弟もプレゼントがもらえた。父から、母から、という形ではあったが、実際は殆どがどちらも母が購入していたと言う話を、ちょうどその頃聞いたばかりだった。父がくれた人形と言うのは、お医者さんごっこが出来るキットが付いたもので、かなり得意げに私に渡した物だった。私がそれを捨てるといった父の不機嫌そうな顔や母の気まずそうな顔を今でも少し覚えている。
 
   
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乾いた眼、凍て付く視線。 [2/3] / 2004年11月09日(火)
私が小学校三年か四年の頃の、ある日の夜のことだった。
夕食の後、父がゴミ袋を取り出し、突然宣言した「人形一掃処分」。
少し大げさに聞こえるかもしれないが、それは私にとって死刑宣告のようなものだった。
「どうせもう人形でなんか遊ばないだろう」
父は人形が入っていた箱をひっくり返し、1人五個まで残して、あとは処分する、といった。(五個、と言っている時点で父は人形を唯の“物”としか考えられないのだな、と悟った)
全身の血の気が引いていくのが分かった。頭がとても冷たくなって、だけど身体はとても熱くなった。

私は泣きながら抵抗した。どうして捨てなければならないのか、と。何故突然そんなことを言うのか、と。
私にとってどれだけ人形が大事なものであるか、その存在が私にどれほど大きな安定をもたらしているのか、拙い言葉で一生懸命に伝えようとした。しかし聞く耳すら持ってもらえず、私はもう気が狂いそうになっていた。
反抗の意味も込めて、私は初めて父が父のお金で買った(*)という、まだ貰ったばかりの人形を、じゃぁこれはいらない、と突き放した。(何の罪もない人形には本当に申し訳なかったけれど…)

「お父さんなんか大嫌い!!」
泣き叫びながら父の背中を叩く一方で、ああ、人というのはこんな風に壊れていくのだな、と、頭の隅でぼんやりと、とても冷たく感じていた。
結局母の助け舟も合って、15体まで確保することが出来た。私は更に、密かに自分の布団のなかへ運び隠したものも含め、約20体近く“保護”することが出来たのだった。
 
   
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乾いた眼、凍て付く視線。 [1/3] / 2004年11月09日(火)
人形を虐める人は私の敵だ。

人形―それは布製の縫いぐるみからガラスの眼やビニールの肌をもつものまで様々―は、私と私の精神・思想・過去にとって重大且つ重要なキーワードである。

独りで「ごっこ遊び」をするのが好きだった私は、よく人形を相手にままごとをしたりしていた。
その頃の私は、人形にも「想い」がある(つまり意思や感情がある)と信じて疑わず、例えば子供にありがちな、生物的ににありえない方向へ関節を動かしたりだとか、あからさまに「物」として扱うような行為は一切しなかった様に思う。
実際近所の友人二人が家に遊びに来て、一緒にお絵かきをすることになり、人形の絵を描こうということになったとき、友人達は人形を取り合う形になってしまい、両腕を引っ張られた人形が余りにも可哀想で、私は泣き出してしまったほどである。(しかし実はこのエピソード、現実での出来事なのか、夢の中の出来事なのか、いまいち判別が付かないのだ。どちらにしろ、私が人形を哀れんで号泣したことは確かである。)

小学校へ入学しても、私の人形の溺愛ぶりは変わらず、特にドナルドダックの人形(弟に服と帽子を取られてしまい、また、いつも其れでばかり遊んでいたために型崩れした、がーちゃんと名づけられた人形)は、ランドセルに入れて学校に持っていくか?と大人たちにからかわれるほどだった。

私の家にはそういった縫いぐるみが結構な数あり、それらは玩具箱の中に押し込められるように収納されていた。そしてその中で特にお気に入りの数体は、私のベッドの枕元に並べられていたのだ。
私にとって人形とは、私の思い通りに動いてくれる都合のいい遊び相手でもあり、私の愚痴を聞いてくれる慰め役でもあり、そしてなによりその存在自体が私の精神を安定させる、無くてはならない大事なもの、最早自分自身の一部であったのだ。
 
   
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螺子蟲の夢 [2/2] / 2004年11月09日(火)
「これって虫なの?」
そう私が問いかけると、母はそうよ、虫なのよ、と答えた。
気がつけば父や弟も集まって、家族皆で“ネジムシ”を眺めていた。
捕らえることもなく、潰して殺すこともなく、ただ黙って眺めていたのだ。

「あ、逃げた」
私が皆の顔を眺めている間に、ネジムシは逃げてしまったらしい。
先ほどまでふたつのネジが転がっていた場所には何も残っておらず、家族達はそれぞれにため息をついたりして部屋へ戻っていき、母はガラスの引き戸を閉めながら、開けっ放しになっていたのね、閉めるのを忘れていたのね、と独り言を言った。

「ほら、いつまでも其処に居ないで、お姉ちゃんも部屋に戻りなさい」

目覚めれば、其処はいつもの見慣れた風景、カーテンの隙間から光の差し込む寝室で、一連の出来事は夢だったのだと気づかされる。
二段ベッドの下段で、上段のベッドの裏を眺めながら、夢で見た映像を無意識に反芻していた。この頃の私にとって、見た夢を反芻することは習慣でもあり癖でもあった。

銀色に光る其れ、ネジムシ。
何故だか分からないけれど、底知れぬ恐怖感と嫌悪感が溢れ出して来て、私は布団の中で思わず身震いした。
視覚的にはなんの恐怖も嫌悪感もない、唯のネジでしかなかったのに、私は其れが突然とても恐ろしいものに思えてきたのだ。

何時の事だか、今でははっきりと思い出すことのできない、幼い頃のあの日の夢。
ネジムシなんてものは現実には存在しない。
そして、もう私はあの家には住んでいないし、祖母も父も居ないし、あの食器棚もとうに無いけれど、あの夢はしっかりと、はっきりと覚えている。

そして、あの夢を見た、あの日以来、私は何故だか虫がすっかり苦手になってしまったのだった。
 
   
Posted at 23:13 / puzzle / この記事のURL
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螺子蟲の夢 [1/2] / 2004年11月09日(火)
私の家には当時大きな食器棚が二つあった。
そのうちのひとつ、普段使う茶碗などを置いていた棚の、開けっ放しになっていたガラスの引き戸の向こう側に其れは居た。

銀色の、1cmほどのネジが、二つ。
私が不思議に思って其れを眺めていると、母がやってきて「あ、ネジムシ」と言って、すぐに居間のほうに戻ってしまった。
ネジムシ。聞いたことがない。私の目の前にあるものは、どう見てもネジでしかないのに、これは虫なのだろうか。それとも、“ネジムシ”とは何か他のものなのだろうか。

母は祖母を引き連れてまた台所へ戻ってきた。
ネジに見入っていた私に「触っちゃ駄目よ」と注意を促し、素手で掴もうとした祖母を「またあの毛虫みたいにかぶれるから駄目よ」と止めた。

うちの庭には梅や木蓮、ツツジをはじめ、様々な木や植物が植えられていた。そのなかで特に梅の木は、春になると毛虫がついてしまう。その毛虫―何という種類なのかは忘れてしまったが、確か外来の―は、触れると皮膚がしくしくと痛み、かぶれてしまうのだった。
祖母はよく庭弄りをしていて、毛虫に触ってしまうことも何度かあり、そしてつい先日もその毛虫に刺されたばかりなのだ。

またあの毛虫みたいにかぶれるから駄目よ、ということは、このネジムシとやらもあの毛虫のような毒性をもっているのだろうか。このねじ山が、毛虫で言う毛の部分に当たるのだろうか。
 
   
Posted at 23:12 / puzzle / この記事のURL
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title / 2004年01月01日(木)
 
   
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P R
P R O F I L E
■ 名前  織比良 氷莉
■ 分類  雌
■ 年齢  18歳
■ 職業  学生
L O V E
■ 作家
乙一、西尾維新、長野まゆみ
■ 音楽
蜉蝣、Dir en grey、ムック
Schwarz Stein、deadman
椎名林檎、Cocco、System F
NUMBER GIRL、等。
■ 写真家
kari-ssu-mummy
小林伸一郎
■ 人形作家
恋月姫、佐藤美穂
■ イラストレーター
森チャック、ウラノイブキ
             (敬称略)
 
 
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