小さな森の、小さな池で子どもが教えてくれたこと

March 21 [Tue], 2017, 2:22
この5〜6年、このブログで言いたかった事、
あるいは、ここ数年、ドキュメント映画を作ってまで私が訴えたかった事・・・
この3連休の夕方に、中野区の小さな小さな森の、
小さな小さな池の淵、
そこで子どもが教えてくれました。
 
『ああ、それだ!それそれ!
君たちは本当に小学1年生なのかい?
カエルの神様が舞い降りて来て、
君たちの体と口を借りて、
私に訴えかけてくれてるんじゃないのかい?』
私は、彼らとの1時間に及ぶ話の中で
何度もそう思いました。

この3連休、私は仕事がございましたが、
15:00には終わる仕事だった為、
帰り道に、ある公園に寄りました。
実は、公園で誰かが私を呼んでいる気がしたからです。

この公園には池があり、それが凄く良い池で、
私は、こここそ、東京23区で最後のカエルの聖地であると確信していました。
だから内緒にしています。
自然保護の観点から、場所は教えないんです。
とにかく、すごい場所なんで。
いいえ、すごい場所だったので・・・
2014年の3月半ば。
そうです、ちょうど3年前の今頃に撮った凄い写真を初公開します。




これは、アズマヒキガエルの卵塊です。
東京23区随一と言いましたが、日本中探しても、
今じゃ、これほどまで池がカエルの卵塊で埋め尽くされる光景ってのは
滅多にお目にかかれなくなっています。

このアズマヒキガエルは、東京都区部では2013年に準絶滅危惧種に指定されたほど、
姿を急激に消しつつある重要な希少動物なのですから、
この池の貴重さがどれほどのものか、お察し頂けるものと思います。

今年も、当然、こういう感じになると思っていましたが、
信じられない事が起きました。
今まで200〜300匹のカエルが産卵に来ていたこの池に、
今年2017年にやってきたのは、わずか数匹。
私のカウントでは、10匹に満たない数でした。
当然、卵塊の数も驚くほど少なく、最初は、『無い!』と思ったぐらいで、
かつて池を覆いつくしたチューブ状の卵塊は、よく探したら、ようやくあるという程度に
激減してしまったのです。

あまりの衝撃でした。
生き物がいなくなってしまった以上、ここに立ち寄る理由もありません。
通勤ルートから少しずれるだけで来られるのですが、
今年はもう来なくてもいいや。と思っていました。

でも、何か胸騒ぎがします。
何か嫌な予感というか、虫の知らせというのか、
行かなくては・・・と思って、3連休中、仕事の帰りに立ち寄ったのです。

池に着いて、すぐに、『こういう事か・・・やっぱり何かある気がした』と思いました。
もしかしたら私の脳裏に、こういう事が予測できていて、
それがはっきりとした形で把握できていないだけだったのかもしれません。

今さらながらに考えてみれば、
前作の映画も、前々作の映画も、”水が干上がった池”がテーマだったのです。
私にとって、池の水が干上がれば、そこに生きる水生生物が全滅するという事は
脳裏の基部に刻まれているはずの最重要事項のはず。
だから、常に、知らず知らずのうちに
そういった事態を心のどこかでイメージしていたのかもしれません。

池が干上がりかけていました。



1週間ほど前に来た時の半分ほどになっていたのです。
この前は、写真の真ん中にある小さな2本の木の杭のところぐらいまで
水があったはずなのに。



問題は、
2017年、わずかに産み付けられたカエルの卵塊のほとんどが、
今、すでに干上がっている場所にあったという事です。
ただでさえ少ないカエルの卵、
そのほとんどが、すでに干からびてしまった可能性があるのです。

すぐに近くに行き、干上がった地帯のカエルの卵を確認しましたが、
案の定、嫌な予感は的中してしまっていました。
卵塊は完全に陸の上に位置し、
本来、黒いはずのカエルの卵が白濁しています。
この卵塊の卵は、生きているとは思えません。



この池は、区が管理している筈ですが、
以前は、ちょろちょろと絶えず水が供給され続けていて、
小魚も泳ぎ、それを目当てにサギ類が飛来するほどでした。
しかし、ここ最近、水が供給されている様子はまったくありません。

私は腐ってしまった卵は持ち帰ろうと思いました。
腐敗した卵は、完全に止水となった状態のこの池では、
水の劣化を促進させてしまい、生きている卵に影響を及ぼすからです。
また、保護し、酸素を豊富に含んだ水に浸せば、万が一ですが
命を吹き返す可能性もあるかもしれないからです。



そして、まだ生きていると思われる卵は、
池の中央部の、まだ水が残っている方に
放り投げてあげるつもりでした。

そこへ3人の小さな男の子がやって来ました。
『おじさん、何やってるの?』的に話しかけてきて、
一回、話をすると延々話が続く面倒くさいタイプの3人組です。
救出や撮影がほぼほぼ邪魔されるパターンです。
世間は三連休、池に子どもがやってくるのは仕方のない事ですし、
無下に扱うとますますややこしい事になるので、
池の実情をありのままに子どもたちに伝えました。

すると、子どもたちは予想外にも、
『オレも手伝いたい!』
『オレも!』と、言い出しました。
しかし、この子たちには無理です。
私はこんな事もあろうかと、晴れの日でも平気で長靴を履いていたりしますが、
この子たちは、水が干上がったドロドロの池の淵にさえ近づけないでしょう。
『池に近付くと、ハマって動けなくなるから
危ないから、おじさんに任せなさい』
そう言って諭した時に、父親らしい人が現れ、
おじさんの言う通りだから、邪魔しないで見てなさい的な事を言いました。
どうやら、3人の子どもの内、2人は兄弟で、その兄弟のお父さんのようです。
もうひとりは、兄弟の兄の方の同級生でした。

『同級生かい?小学生?』
私が尋ねると、
2人は同時に、『1年生!』と言いました。

つまり、私の目の前には
A君とB君という小学1年生がいて、
さらにA君の弟がいます。
そしてA君と、その弟のお父さんがいるという事です。

この3人の子ども、
いや、お子様とそのお父様が今回の救出劇に
結果的に大貢献してくれて、
いや、くださって、
多くの命を救出できました。



私が入れるところの卵は素手で掬い、
水のある方へ放り投げ、
私の手の届かない場所の干上がった卵は、
B君のアイディアで、B君が探してきた枝で私が卵を掬い、
それをお父様とお子様たちが池の中央へ放り投げるというものでした。



私が久しぶりに感動したのは、
救出している最中に、この子たちが私を手伝いながら、
私に熱く語ってくれた言葉の数々なのです。



以下は、私の小型フルハイビジョンカメラで救出劇を撮影している最中に、
音声だけが同時に収録された実際の会話です。
あまりに素晴らしいと思い、
そのまま文字起こししました。

A(小学1年生男子):ひとつの生き物が全滅すると、全部の生き物に影響があるよね。
私:君みたいな人が政治家になってくれるといいんだけどね。
B(小学1年生男子):じゃオレなろっか?

こんな会話からスタートしました。
久しぶりに面白く愉快な子どもたちだなと思いました。
小学1年生のA君とB君は、人間の欲や業について
納得のいかない事があるようです。

B:最初はなんかさ、草ヤブとかがあったけどさ、破壊してさ、家建てちゃったりするからさ
私:少し残してあげればいいんだよね
B:生き物が全部残れるんだったらいいんだよ
私:そうだよな
B:それもちゃんと考えてくれればいいんだけどね
A:たまにそこの手入れをしたりね
私:ああいいね

小学1年生が、こういう事を相対的に俯瞰で見ているという事が驚きでした。

A:人間と生き物は仲良くならないといけない。
だって、どっちも生き物だから。
同じだもん。
よく考えてみると、同じ家族のようなものだもん。

私;素晴らしいよ!

B:確かに同じ家族みたいなもん。

私:それが大人になると、わかんなくなっちゃう人がいるんだ、たまにね!

AB;うん。

B:ありえん

A:ありえん!

私:ありえない。

A:環境破壊しないように僕は気を付けよう。

A君の父:〇〇、(A君の名前を呼んで)虫を採りすぎないようにしないと。
今、いろいろ飼ってるけど、楽しいんでしょ?
それを忘れないようにしなきゃ。

A:無言でうなずく



A:たまに動物園行くけど、動物園って、ちょっと酷くない?

この言葉を聞いて、正直、私はあっけにとられました。
動物園の善悪については、専門家ですら的確に表現ができませんし、
そのようなオピニオンが行われるようになったのも
最近の事と言っていいでしょう。
まして、子どもが、それも小学1年生の子が、
動物園で飼われている動物の側に立って、その視線で語るという事に
ものすごい驚きと感動を覚えました。
そして、お父様の咄嗟の切り返しがまた良かった。

父:まあね。でもさ・・・・
ま、触れ合える場所をさあ、作ってあげる事も大事じゃない?
それが、(動物を)大事にしたいって気につながるかもしれないから。
だから、そこは動物園がちゃんと環境も良くしてさ、
大事にさ、育ててあげればさ。
・・・ほんとはね、野生に棲むのが一番なんだけど。
・・・でもなかったらおまえだって、生きてる動物見れなくなっちゃうから。

通常、小学生であれば動物園は楽しい場所でしょう。
しかし、このお子さんは、動物が狭い場所に閉じ込められ一生を終わるという真実を理解している。
そして父親はそれを無理やりに正当化させる事なく、
ちゃんと認めた上で、その中で人間がすべきことは何かを提議されていらっしゃいました。
素晴らしい親子関係だと思いました。



A:よく考えてみると、人間は家族(他の生き物)を破壊してる。
家族を殺したり、家族の居場所をなくたりしてるんだよ。

私:うん。
同じ生き物って事を考えると、結局、そういう事になるね。

B:動物ってさ、人間と同じ家族みたいなもんでさ、
動物の住み場所とか、(人間は)破壊してる。

私:うん。

B:(人間は)頭もいいからさ、その分、動物にしてみれば、ズルい。

私:そうだな。ズルいってのはね。
うん、そうだな。

B;人間って頭いいからさ、家とか作るのに、頭いいからさ、
動物達にさ、何かするのをさ、わかんないのかな?

私:そう、その頭をいい方にちょっと使ってあげればね!

B:うん!虫博士をやめて、やっぱりこういうの(保護活動)にしよっかな。

私:何になりたかったの?

B:虫博士になりたかったけど、こっちの方が大切だから。

A:僕は昆虫を助ける天才発明家になりたい。

私:いいね〜!

B:そうだ、いい事思いついた!俺、研究家になりたい。

A:将来の事を考えるよりさ、今、ここの事を考えないと。

親:はっはっは!
すごいな、君たちは。

本当にすごいお子さんたちでした。

私のバイクが見たいという事で、池から一緒に
公園の入り口のバイク置き場まで歩いた時に、
B君がこんな事を言いました。

B:前はさあ、命の事とか考えてなかったけどさあ、
最近、考えるようになったんだよ。
だって、生き物ってのはみんな生きてるんだからさあ。

2017年の3月の3連休。
ほんの束の間の小さな小さな森の中での
人間の子ども達の会話です。


プロフィール
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  • アイコン画像 性別:男性
  • アイコン画像 誕生日:1962年6月5日
  • アイコン画像 血液型:A型
  • アイコン画像 現住所:東京都
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  • アイコン画像 趣味:
    ・『動物トリビア図鑑』(東京書籍)佐藤栄記著-世界一動物に詳しい人・千石正一先生が最後に監修された貴重な本となってしまいました。
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東京書籍より『動物トリビア図鑑』(佐藤栄記著)を出版して頂きました。
2012年にご逝去された世界一動物に詳しい男・千石正一先生が最後に監修された貴重な本となりました。
お子様から大人まで楽しめる3択クイズ形式の動物に詳しくなれる本と自負しております。
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