拒絶 

August 11 [Fri], 2006, 21:35
金色の瞳。
まだ少年の残る声。
君の持つ全てが私を捕らえる。

コレ以上、暴こうとしないでくれ。
君に知られては困る事が、私には多くあるんだ。
自分の手にも余ってしまうほどのモノを抱えて居るんだ。

『オレのこと馬鹿にしてんのか。
恋したから忘れるほどの目的だって?
アルとの約束はそんなに軽くない。
でも、あんたのことだって、アルとの約束があるからって
切り捨てられる想いじゃないんだ。
だからこうして話してるんだ』

まっすぐと迷いの無い視線。声音。
それら全てが、自分の中の何かを突き崩していくような気がした。

コレまでに積み上げてきた何かが、さらさらと砂のように音を立てて崩れていくような。
焦燥感の様な、喪失感のような…そんな若干の違和感を残していく。

「バカにしているわけではないよ。…ただ、…君は…一つの事に囚われると、
他の事が疎かになるように思える。
これまでも、そのような事は少なくなかったとは言わせないよ?
何よりも優先せねばならない事を、疎かにしてまで、私は想われたいとは
思わない。」

向けられる視線。顔を微かに上げて、それと自分の視線を絡ませる。
輝くような金色の瞳。いつもは心地よく思えるその強い光も、今は眩しくて
目が眩むようだった。

それでも、私は君と対峙しなくてはならない。

私と想いを交わす…などという、罪を君に負わせたくはない。
だから……私は君を、拒み続けるよ。

内部で渦巻く感情に反した言動のしわ寄せは何処にやってくるか、分からないが…
それでも……私は。。。

君に想いを告げる事は、叶わない。

無題 

August 10 [Thu], 2006, 20:05
気づいてるか? 嘘を重ねれば重ねるほど、
もっともらしく饒舌になるってこと。
本当と嘘を混ぜれば、そしたら言葉は不思議と
本当らしくなるんだ。それがあんたのやりかたなんだ。

想いを素直に受け取ろうとしない理由、
嘘をついて逃げようとする、その理由は。
自分の進むべき道、これのことか?
あんたに恋してる気持ちは目的の邪魔になるって?

そう思い当たると頭の芯が熱くなった。

「オレのこと馬鹿にしてんのか。
恋したから忘れるほどの目的だって?
アルとの約束はそんなに軽くない。
でも、あんたのことだって、アルとの約束があるからって
切り捨てられる想いじゃないんだ。
だからこうして話してるんだ」

支えになり、同じ道を歩きたかった。
いつも身近にはいられないからこそ、
変わらぬ想いだという誓いをたてたかった。

何度も響いては、渦となり、身体中に染み渡る
その感情は切なさと寂しさだっただろうか。

「…大事にしたい存在を守りたいって思うの、
当たり前だろ。誰だって完璧じゃない。誰かの
支えなしに存在できる人間なんていない」

不意に胸が締め付けられるような痛みを感じた。
それで、想いをひとりで仕舞いこむのではなく
共有したかったのだと気づいた。
繋がりたいという願いが向かう先はたったひとり。
この人でなければ意味がないのだ。
無理矢理に道を切り開くしかないのだろうか。
扉は、叩き壊さなければ開かれないのだろうか。

傷つけたくないのに。

解放 

May 07 [Sun], 2006, 19:13
金の瞳が此方に向けられる。
射るようなその輝きに、心の奥底にしまい込んだ本音がこぼれ落ちてきそうだ。

全てを暴いてしまいそうな視線。
そのまなざしから、逃げる事は出来ず、まっすぐに視線を返す。
わき上がる全ての感情を押し込めて、冷静な態度に努める。
君につけいる隙さえ与える事は出来ない。

本音を暴かれては困るんだ。
君を突き放さなくてはならないのに、一瞬の迷いすら許されない。
聡い君は、ほんの少しのほころびさえ見逃してはくれないだろうから。


噛み締められた唇。
微かに震えているように見える。
言いたい事があるなら、口に出してしまえばいい。
君の苦しむ姿は見たくは無いんだ。
言ってすっきりするならば、そうすればいい。
私はその言葉を受け取って、切り捨ててあげるから。
ヒドイ大人で在り続けるから。



彼の口元が微かに笑みを象る。


『大佐…。オレ、あんたを大事にしたい。
ずっと前からそう思ってた。…今も、変わらない。
どうすることがそうなのか、まだ考えなきゃいけないけど、
そう思えて幸せだ』


先ほどと表情が変わった。
何か、整理がついたような…そんな表情。


再び、訪れる静寂。
耳に痛いほどの静寂が、私に彼と向かいあう力を与えてくれる。
無機質な空気が、動揺を攫い、代わりに冷静さを残して去っていく。

盛大にため息を付き、肩を落としてみせる。
彼の視線は、相変わらず自分に向けられたままだ。

………君が、若い行動力を武器に向かってくるのならば、
私は、コレまでの経験を生かして、サラリとかわしてあげよう。

 

May 07 [Sun], 2006, 0:14
まだまだ子供、そう言われて立ち止まる。
その通りだ。誰から見ても自分は子供だろう。
けれど、そうであることに甘んじている訳にはいかない。

唇を噛み締め、振り返る。再び彼に向き合う。

底知れぬ沈黙を湛えて彼はこちらを見ていた。
熱くもなく、冷たくもなく…つまりは完全に理性で
コントロールされている意識。

壁はこんなにも厚くて高い。
固く結ばれた心を解くにはどうしたらいいのだろう。

これほどの無力感を感じたのはあの日以来だった。
忘れもしない、罪を犯したあの日。
オレとアルの運命を変え、そしてこの人と出逢った。
はじまりは幸福ではなかったのかも知れない。それでも。
過ちでさえ新たな芽を育むこともあるのだと思った。

唇を噛み締め、じっと大佐を見つめる。
駄目だ。今のままでは。想いを告げても届かない。

自分の想いを告げて、オレの心は軽くなるかも知れない。
でも、大佐は? 大佐がどのように受け止めるか、
オレにはわからない。想像もつかない。

好きだ、というだけでは駄目なのだ。
好きだというくらいで決めてはいけない、彼はきっと
そう言うだろう。

少し走ったくらいでは追いつかないほどの距離。
その認識は何故か快かった。一気に視界が開ける気がした。
唇の端に微笑みが浮かぶ。

「大佐…。オレ、あんたを大事にしたい。
ずっと前からそう思ってた。…今も、変わらない。
どうすることがそうなのか、まだ考えなきゃいけないけど、
そう思えて幸せだ」

 

May 03 [Wed], 2006, 19:50
そんなに不安そうな顔をするんじゃない。
自らに誓った事を破ってしまいそうになるじゃないか。

君の全てを受け入れて、この腕の中に抱き込んでしまいたくなる。
許されない事だと、理解しているのに…
その衝動が、次から次へとわき上がってきて、自らを戒めるのに必死だよ。



『言い訳なんかしねェよ。理由は、言っただろ』

理由、聞いていないよ。はっきりとした答えが欲しいんだ。


『あんたは逃げそうだから。……逃げられない時を狙ったんだ。
それだけ』

逃げそう?…君から逃れようと画策しながらも達成出来ていない私に、
君は気づいていないようだね。
気づかれるわけにはいかないから、喜ばしいことだが。


無音の時が部屋を包む。
しーんとした静寂が耳に痛い。


ふと、君が踵を返す。
揺れる金の髪、そして風に乗るコートの赤い裾が綺麗だと、…思ってしまう。

『じゃ、用事は終わったしオレはもう行く。
…邪魔したな、大佐』


紡がれる言葉に、入り交じった感情を微かに感じる。

何かを、押し隠すような…そんな。



「君は自分の行動についても、満足に説明出来ないのか…

…成長したと思っていたが、…まだまだ子供だね。」


去ろうとする背中に言葉を投げつける。
盛大にため息を付く。
彼の耳にも聞こえた事だろう。



ぴたりと足が止まった。
しかし、此方を振り返る様子はない。

新たに言葉をかける事はせず、彼の判断に任せる事にする。
そのまま出て行きたければ、それで良い。
君が決める事だから。

ただ…

鋼の……

胸に宿る想いがあるならば告げてしまいなさい。

私が否定してあげるから

君の想いを、私に対する感情を否定してあげるから

そうすれば君は再び歩き出せるだろう?

私への想いなど捨てて、忘れて…歩き出せるだろう?

君は、私に囚われていてはいけないのだよ……。

距離 

April 29 [Sat], 2006, 20:40
もともと、軽く言葉をかけたからといって
それを本気に取る相手じゃないことはわかってた。
紙に書かれた文字は、心の乱れなど欠片もないと
言わんばかりに整っていて。

−邪魔をしに来たのならば、追い出すよ?−

少し寂しくなると同時に、後ろ髪を掴まれて引っ張られる。
離れろ、とでもいうように。
もっと触れたいなんて、どうして言えただろう。
けれどその言葉は喉の奥で身じろぎするのをやめずに
燻っていた。

大佐、……大佐。どうしよう。こんなにも。

やがて受話器を置く音に正気にかえる。
こちらの心臓を貫いてしまいそうな眼差し。
問い掛ける言葉に口を開きかけ、それから
ひとつ、溜息を漏らす。

「言い訳なんかしねェよ。理由は、言っただろ」

触れたくても遠い…こんなに近くにいても遠い。

「あんたは逃げそうだから。……逃げられない時を狙ったんだ。
それだけ」

大佐は、記憶を反芻するかのように押し黙っている。
答えがあるとは思ってなかった。

「じゃ、用事は終わったしオレはもう行く。
…邪魔したな、大佐」

謝る言葉を何故か言えなかった。
また、と再会を告げる言葉も。

馬鹿だな、この次会えるのがいつなのか、
そんなこと考えてるなんて。

対峙 

April 23 [Sun], 2006, 17:18
電話の向こうの声が更に遠ざかる気がした。

揺れた心情を悟られぬように、と冷静に努める。

自分の書いた文字を撫でる彼の表情、仕草はコレまで見た事がなく
一瞬、ドキリとさせられた。

(…こんな顔もするようになった、のか。)


心の中で呟き、小さく笑みが漏れる。
喜ばしいような、違うような…なんとも、微妙な感情がこみ上げてくる。



『…冗談じゃないぜ。今すぐキスしたい。あんたに』

再び、囁かれた言葉に跳ねそうになる肩を必死に押さえ込んだ。

注がれる言葉、触れる熱、鼓膜へと伝わる水音…全てが、自分の足下を崩していく
ような…そんな感覚に陥る。


震えそうになる腕を叱咤して、ペンを走らせる。

−邪魔をしに来たのならば、追い出すよ?−

そう綴るとペンを置き彼の後ろ髪を掴み、そのまま後ろへと引っ張る。
じわりと痛みが拡がるように、ゆっくりと引く。彼が自分で退く気になるように…

ふ、と耳に触れていた熱が遠ざかり、代わりに感じるのは空気の冷たさ。
この部屋はこんなにも冷えていたのだろうか…。




「…それでは、失礼します。」

通話が切れた事を確認してから、受話器を置く。

ふぅ、…と一つ息をつき、傍らに立つ彼を見上げる。
向きが変わった事で、回転椅子が、キィ…と小さく鳴いた。



「さぁ、言い訳を聞かせて貰おうか?……上からの電話中にもかかわらず
起こした行動の、…その理由を。」


じぃ…と、射るような視線を向ける。
瞳の奥底に渦巻く感情に気づかれぬように、気を強く持とうと自身に課して
彼と対峙する。

無題 

April 20 [Thu], 2006, 0:07
戯れじみた、けれど本気での提案に返された
冷静さを崩さない彼の筆跡に微笑が浮かぶ。

 ―冗談は止しなさい
  君は私の邪魔をしにきたのかい?―

その文字を愛撫するかのように指先で撫でて、
再び、耳元へ唇を寄せる。

「…冗談じゃないぜ。今すぐキスしたい。あんたに」

誤魔化す余裕のない時だからこそ、言える言葉。
その場から動けないことを知っているからこそ、
触れられる唇。

後ろから肩を抱き寄せ、耳朶を柔らかく舐める。
くちゅ…と濡れた音を響かせる。

自然に頬が熱くなる。
なんだよ。我ながら余裕ないのな。
これじゃまるで、オレのほうが何かされてるみたいだ。

「大佐…」
恋人同士のように触れ合っていられるのが
電話が切れるまでの間なのだとしたら。

不意にこみ上げた熱と切なさに胸が震えた。

交錯 

April 15 [Sat], 2006, 21:26
何か言いたげで、でも言い出せなくて、揺れる瞳はそのような感情を物語るように
せわしなく動いていた。

君は何を言うつもりなんだ?

何を考えている?

知りたいが、知りたくない。

2つの想いが私の中で交錯しているよ。


やけに時計の音が響く。

この部屋はこんなにも静かだったのだろうか。

君が居る、普段と違うのはただそれだけなのに、こんなにも
がらりと違って見えるのだろうか。


『じゃぁさ…』

君がゆっくりと口を開く。


彼の言葉に耳を傾けていると、ベル音が響き渡る。
普段と何ら変わらない音量のハズなのに、ソレまで静寂に近かった部屋には
耳をつんざくような音のように聞こえた。

「はい、…マスタングです。」

受話器を取り、耳に当て、応える。

相手は中央のお偉方。
仕事の話が半分と、小言やそれ以外が半分。
思わず、眉間に皺が寄り出す。

−緊張でどれほど息苦しく感じようとも、君との時間は大切なモノなのに。
  金色の視線に囚われる時は…何にも代え難いのに……−

現に今も、…聴覚は電話に集中していても、視覚を捕らえているのは


金色の輝き。


彼が此方へと歩みを進める。
絨毯に音を吸われ、それほど大きく聞こえるはずはないのに…
ブーツの踵が床を蹴る音がやけに、響く。

電話の奥の声が遠ざかる気がした。…先ほどから小言ばかりでうんざりしていた所だ。
問題はない。

近づいてくる彼から目をそらす事が出来ない。
ゆっくりと伸ばされる手。そこから逃れられる術を私は知らない。

優しく頬を撫でるその手は、温かかった。

制止の言葉も、それ以外の対応も考えられぬまま、目の前の彼に捉えられていた。
筆談にしようと紙にペンを乗せるが、ソレが文字を作る事は無く、ただただ微かに震えるだけ。



『キスしていいか?』

耳に触れる温かな吐息と、紡ぎ出された言葉。

ソレは、現実から微かに離れつつ在った思考を、取り戻すきっかけとなった。


先ほどまで、何も生み出さなかった右手がウソのように滑らかに動き出す。


綴られた文字は……


−冗談は止しなさい
  君は私の邪魔をしにきたのかい?−


真白い紙に、ダークブルーのインクが、やけに映えた。

無題 

April 15 [Sat], 2006, 20:05
訝しげにしながらも見つめ返される。
言いたいことははっきり言いなさい、と促されて。
大佐。だけどオレは。
触れたいと願った手をだらりと下げたまま言葉を探す。

どう伝えれば、気持ちが伝わるんだろうか。

せっかくふたりきりなのだ。
この際、色々と聞いてみるのもいいかも知れない。
誰かに相談されたんだけど、と前置きして。
思えば、オレって、大佐が普段どう過ごしてるかとか
好きなものとか全然知らねェな。
うん、なかなかいい思いつきだ。

「じゃあさ…」

特別な奴には何をしてやったら喜ぶか教えてくれよ。
あんたなら詳しいだろ、そういうの。

内心の台本どおりに喋ろうとした矢先。

机の上の電話が鳴った。
大佐は途端に厳しい表情になって、受話器を取ると
低い声で話し出した。

冷静に続ける筈だった言葉は消し飛んで
ただ感じるのは胸の高鳴り。

視線を逸らさないまま、電話で話している大佐に
近づく。生身の手で大佐の頬に触れて軽く撫でた。
初めて触れた肌は滑るようにきめ細かい。
大佐は驚いた顔をしている。
メモをしようとペンを握った手が震えていた。
オレは微笑って、反対側の耳に吐息と共に囁きかける。

「キスしていいか?」
P R
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