なぜ? 東京の先生を他県受験者から

March 12 [Fri], 2010, 22:26

 東京都教育委員会は、秋田・高知・大分の各県教委と協定を結び、それぞれの県が実施する教員採用試験の受験者の「第2志望」に加えてもらい、そこから教員を採用する制度を始めました。なぜ、こんな制度が必要だったのでしょうか。背景を追っていくと、単に先生の数の確保というだけにとどまらない、深刻な課題が透けて見えます。

 文部科学省の調査から、ここ10年間の全国的な公立学校の教員採用試験の推移を見てみると、2000(平成12)年度には13.3倍あった倍率が、09(同21)年度は6.1倍にまで減少しています。それでも6倍台ですから、大変な競争率です。ただし、今回協定を結んだ都県については、秋田が14.9倍、高知が11.0倍、大分が12.7倍なのに対して、東京は4.2倍です。ほかの道府県を見ても、政令市を含めた大都市圏と、それ以外では、倍率に大幅な開きがあります。

 その主な原因は、今いる先生の年齢構成に偏りがあることです。一般の会社などでは「団塊世代の大量退職」が問題になりましたが、学校の場合「お客さん」は子どもです。団塊世代が就職して結婚し、その子どもである団塊ジュニア(第2次ベビーブーム世代)が「大量入学」してくれば、当然、先生も「大量採用」しなければなりません。その時に採用された世代が今後、世間とは10年ほど遅れて、大量退職していくわけです。たとえば小学校について見ると、30歳未満が 11%なのに対して、今後10年の退職予備軍である50歳以上は35%と、3人に一人を占めています(07<平成19>年度、文科省調査)。

 ただし、これはあくまで全国平均です。高度経済成長期は、都市部への人口集中が進んだ時期でもあります。大量退職が既に始まっている東京では、ここ数年、若い先生を大量に採用しているため、30歳未満が20%、50歳以上が37%と、20代の先生も増えてきていますが、先の3県では30歳未満が数%、50 歳以上が2〜4割といった状況です。これらの県でも今後10年で大量退職時代を迎えるわけですが、小学校の先生の人数が3,000〜4,000人程度の3 県に対して、東京は約2万8,000人ですから、規模が違います。しかも「大量退職」の影響で先生の半分近くが入れ替わると言われるほどですから、影響力は甚大です。

 実際、東京都では、09(平成21)年度の小学校教員の採用倍率が2.6倍に落ち込みました。3倍を割ったら優秀な先生が選べない、というのが採用担当者の一致した≪経験則≫です。危機感を抱いた都教委では、10(平成22)年度の採用試験を34年ぶりに2回行ったり、地方の大学生に東京の学校を見学してもらうバスツアーを開催したりと、受験者の確保に努力しています。受験者の確保は、東京に限らず、首都圏など大都市部に共通の課題になっています。

 若い先生が増えるということは、学校にとって活力源になるので、良いことのように思えます。しかし今でさえ、中堅層やベテラン層に、新人を一人前の先生に育てていく余裕がなくなり、教える技術や経験の継承が危ぶまれているのが現状です。年齢構成の極端な偏りと、その対応は、今後の「教育の質」をも左右する、大問題になっているのです。


  • URL:http://yaplog.jp/edu-news/archive/4392
Comment
小文字 太字 斜体 下線 取り消し線 左寄せ 中央揃え 右寄せ テキストカラー リンク 絵文字 プレビューON/OFF
画像認証  [画像変更]
画像の文字 : 
利用規約に同意
 X 
禁止事項とご注意
※本名・メールアドレス・住所・電話番号など、個人が特定できる情報の入力は行わないでください。
「ヤプログ!利用規約 第9条 禁止事項」に該当するコメントは禁止します。
「ヤプログ!利用規約」に同意の上、コメントを送信してください。