富士通のNetbook「FMV-BIBLO LOOX M」がフルモデルチェンジし、ボディのデザインを一新したほか、基本システムを改め、性能や機能も強化された。
【拡大画像やボディーカラーの紹介画像】 【表:ベンチマークテストの結果】 店頭モデルは2年間ライセンス版Office Personal 2007プリインストールモデルと、Officeを省いてモバイルWiMAXモジュールを内蔵したモデルがあり、それぞれ3種類のカラーバリエーションで展開されるが、ここではOffice付きのルビーレッドモデル(FMVLMG30R2)を評価機とした。新モデルの気になるパフォーマンスや新機能、そして使い勝手などを検証していこう。
新デザインのボディは、エッジを大胆に丸みを持たせた独特の形状が目を引く。光沢で仕上げた深みのあるメタリックレッドの塗装も印象的で、シルバーの縁取りやシンプルなシンボルマークとの相性もよく、上品な高級感がある。カラーバリエーションには、ほかにシャイニーブラックとアーバンホワイトの2種類が用意される。一方、底面部は樹脂の成型色(ブラック)を細かい梨地で仕上げたもので、強度確保のためか凹凸などもあってすっきりとした見た目ではない。この辺りはNetbookらしいといえるが、これはこれで悪くない。
ちなみに直販のWEB MART限定で、ピンク色の“「モモエリ」コラボモデル”がラインアップされており、興味がある人はチェックしてみるといいだろう。
ボディの具体的なサイズは、270(幅)×189(奥行き)×35.2(厚さ)ミリ、重量が約1.2キロで、実測の重量は1.14キロと公称値を下回った。背面に搭載するバッテリーの容量は10.8ボルト 2900mAhで、公称駆動時間は約5時間となっている。オプションのLバッテリーに交換すれば、約10時間の長時間駆動が可能となる。なお、付属のACアダプタも、サイズが38(幅)×87(奥行き)×28(厚さ)ミリ、ケーブル込みの重量が約200グラムと非常に小型軽量で携帯性は申し分ない。
前モデルのLOOX M/E10と比較すると、ボディ横幅で12ミリ、厚さで1.2ミリ(最厚部)は大きくなっているが重量は同じだ。標準バッテリーの容量が増えたことにより、公称駆動時間は約1.4時間延びている。さらにACアダプタも一回り小型になり、100グラムほど軽くなったのがポイントだ。
●新型Atom+Intel NM10 Expressチップセットを採用、WiMAX内蔵モデルも
本機のCPUには、2009年末に発表されたシングルコア(Hyper-Treading Technology対応)のAtom N450(1.66GHz/2次キャッシュ512Kバイト)を採用している。Atom N280(1.66GHz)と共通のCPUコアに加えて、メモリコントローラとGPUコア(Intel GMA 3150)を1つの半導体チップに統合しているのが特徴だ。それにともない、Intel NM10 ExpressというAtom N450向けのワンチップのチップセットが採用される。TDPはAtom N450が5.5ワット、Intel NM10 Expressが2.1ワットである。
従来機で採用していたAtom N280+Intel 945GSE Expressチップセット(サウスブリッジはICH7-M)の組み合わせと比べると、機能面の進化は対応メモリがPC2-4200からPC2-5300へ高速化した程度にとどまるが、サウスブリッジが減ったことから基板サイズの小型化が可能となり、CPU+チップセットの合計消費電力も11.8ワットから7.6ワットに減っている。従来機に比べて公称のバッテリー駆動時間が大きく延びた要因の1つだろう。
メモリはこれまでより若干高速なPC2-5300 DIMMに対応し、容量は前モデルと同じく標準で1Gバイト、最大で2Gバイトだ。データストレージはSerial ATA対応の2.5インチHDD(5400rpm)を採用しており、容量は据え置きの250Gバイトで、光学ドライブは内蔵しない。メモリソケット(1基のSO-DIMM)やHDDベイには、底面のカバーから簡単にアクセスできる。
通信機能は、Office付きモデルとOfficeなしモデルで機能が分かれる。100BASE-TX対応の有線LANとBluetooth 2.1+EDR機能はどちらも装備しているが、評価機のOffice付きモデルでは無線LANがIEEE802.11b/g/n(最大150Mbps)であるのに対し、OfficeなしモデルではIEEE802.11a/b/g/n(最大300Mbps)の無線LAN機能に対応する。さらに無線LAN機能と排他でIEEE 802.16e-2005準拠のモバイルWiMAX(受信最大20Mbps)機能も備えているのが相違点だ(モバイルWiMAXを利用するには別途通信会社との契約が必要)。
●データ交換に便利な「USBメモリ機能」を搭載
端子類では、左側面手前側に用意されたUSBクライアントポート(USBミニBコネクタ)が目新しい。USBケーブル(標準で付属)を使って別のPCに直接接続し、簡単にデータのやりとりができるようになっている。
この機能を、富士通では「USBメモリ機能」と呼んでいるが、本機のHDD全体がほかのPCから見えるわけではなく、HDD内に作成された仮想ドライブ内部だけが見えるようになっている。使い方は簡単で、ほかのPCに接続すると「USBクライアント機能」のメニュー画面が立ち上がるので、「USBメモリ機能(またはDVDドライブ共有機能とUSBメモリ機能)」を選べばよい。すると接続したPCではUSBメモリを差したときのようにリムーバブルディスクが加わり、自動再生メニューが表示される。ドラッグ&ドロップでのファイルコピーなど、ほかのPCからはUSBメモリと同じように扱える。仮想USBドライブの容量はデフォルトで約4Gバイトだが、ユーザーが任意に指定することも可能だ。メインとなるPCが別にあってNetbookを併用する場合に、ネットワークのない環境でもUSBケーブル1本で簡単かつ手軽にデータ交換ができる点は魅力だろう。
従来機同様、「DVDドライブ共有機能」も備える。ネットワーク上にあるPCの光学ドライブを比較的簡単に共有して利用できるが、場合によってはコンピュータ名やIPアドレスの入力など多少のネットワークに関する知識は必要になる。前述の「USBメモリ機能」をサポートしたことにより、共有機能に使うための専用ソフトのインストールを(別途USBメモリなどを利用せずに)USBケーブル経由で行うことができるようになって手軽さが増した印象だ。
なお、これらの機能がサポートしているPCとしては、Windows XP以降のOSを搭載したFMVシリーズに限られている。もっとも、試用した限りでは他社のPCでも問題なく使え、FMVシリーズでなければ利用できないプロテクトがかけられているわけではないようだ。FMVに限定しているのは、動作検証の手間やサポート上の理由からだと思われる。
そのほかの端子類はNetbookとしては標準的で、3基のUSB 2.0やアナログRGB出力、サウンド端子、液晶ベゼル上部には有効130万画素のWebカメラとアナログマイク(モノラル)などを備える。ただ、メモリーカードスロットはSDHC対応SDメモリーカードのみ対応となり、これまで対応していたメモリースティックへの対応は省かれた。
●画面解像度が1366×768ドットにワンランクアップ
本機に採用されているOSは、Windows 7 Starterだ。これはマイクロソフトが定めるハードウェアスペック条件を満たした低価格PC(要するにあまり性能や機能が高くないPC)のみに提供される機能限定版のエディションである。コンシューマー機では一般的なWindows 7 Home Premiumと比べると、Aero Glass(半透明表示)、DVD-Videoの再生、マルチモニタの対応(ミラー表示は可能)、Windows Media Centerなどの機能が省かれている。デスクトップの壁紙変更やAero Peak/Shake、フリップ3Dなども利用できないので注意が必要だ。
液晶ディスプレイのサイズは10.1型ワイドで、画面解像度は1366×768ドットと、従来機の1024×600ドットに比べて約1.7倍の情報量があり、Webブラウズなども快適に行える。Windows 7では、標準状態でタスクバーやアイコンサイズなどが大型になっているため、使用感は格段に向上している。
LEDバックライトを採用した光沢仕上げの液晶ディスプレイは映り込みが目立つが、明るくシャープな表示が好印象だ。ややあっさり目の発色で上下方向の視野角は狭いが、ヒンジの角度は160度近くまで開くので、ヒザの上など低い位置で使う場合にも見やすい角度に調整できる。125度程度までしか開かなかった前モデルに比べて、この点でも改善が見られる。
●Webブラウズを快適にするスクロールパッドを新たに装備
キーボードは、主要キーの横ピッチが約17.5ミリ、キーストロークが約1.9ミリで、従来機のキーピッチが約17.2ミリ、キーストロークが約1.5ミリと比べて、少し余裕をもって入力できるようになった。縦方向のピッチも実測で約16.5ミリあり、窮屈な印象はない。左右の端で多少細いキーがあるものの配列は素直で、主要キーと同じ大きさを確保したカーソルキーも打ちやすい。ユニットのたわみも、キーを強く押し込めば少し感じる程度だ。キートップにも指が置きやすいカーブが付けられ感触も悪くないが、パームレストの奥行きは最大でも50ミリ弱とあまり広くない。
ポインティングデバイスは、2ボタン式タッチパッドに加えて直径25ミリの円形スクロールパッドを装備している。タッチパッドはシナプティクス製ドライバが導入されており、パッドの右辺/下辺を利用した上下/左右スクロールが標準で有効になっているほか、ユーティリティーで設定することで、つまみズームや回転、2本指ではじくなど、おなじみのマルチタッチジェスチャー機能も利用可能だ。ただ、新設のスクロールパッドがある影響でパッドのサイズが45(横)×32(縦)ミリと小さく、ジェスチャー機能の使い勝手はいまひとつだ。逆に左右のクリックボタンは小型ながら独立しており、スイッチの高さも適度で押しやすい。
上位モデルのFMV-BIBLO MGにも追加された円形のスクロールパッドは中央がややくぼんでおり、時計回りに円を描くようになぞると画面が下方向にスクロールし、反時計回りになぞると上方向にスクロールする(設定で左右方向に切り替えられる)。こちらにもシナプティクス製のドライバが導入済みで、スクロールパッドのタッピングに機能を割り当てることも可能だ。
タッチパッドのみでの操作に慣れていると、最初はタッチパッドとスクロールパッドの移動がややもどかしく感じるかもしれない。例えば、スクロール操作をしたあとでカーソルを動かすつもりでそのままスクロールパッド上で指を動かしてしまうような場面があった。しかし、広いタッチパッドを用意するのが難しいNetbookの制約の中では、スクロールのしやすさという点ではかなりよいレベルにあり、慣れたあとでは非常に快適に操作できた。また、タッチパッドと別に用意されている分かりやすさも評価できるだろう。
●前モデルからグラフィックス性能が若干向上
それでは、ベンチマークテストで本機の性能を計測してみよう。Windowsエクスペリエンスインデックスのスコアは画面の通りだが、以前にレビューしたAtom N280搭載機に比べ、グラフィックスのサブスコアがよい。これはビデオメモリとして共有するメインメモリがPC2-4200からPC2-5300へと高速化したことが大きいと思われる。ほかのテストの結果を見ても、グラフィックス関連のスコアで若干の性能向上が見られる。従来機と比較して画面解像度が高くなっていることもあり、使用感の向上は大きい。そのほかの項目については、他社のAtom N450搭載モデルと同様、Atom N280からの向上は着実にあるが、特筆すべき点はあまりない。
バッテリーの駆動時間は、海人氏のBBench 1.01で計測した。10秒ごとにキー押下、1分おきに無線LANでWebアクセスを行う設定(電源プランは「バランス」、液晶輝度は40%)で駆動時間は3時間15分(バッテリー残量が残り6%)だった。公称値には及ばないが、前モデルからは確実に進歩しており、モバイルPCとして実用的な駆動時間はぎりぎり確保したといえるだろう。
気になる静音性も優秀だ。室温22度、暗騒音32デシベルの環境で、アイドル時が34デシベル、高負荷時もほとんどが34デシベルだった。冷却ファンの風切り音は、耳元を左側面にある排気口に近づけると聞こえる程度で、机の上に置いてタッチタイプする利用姿勢ではほとんど分からない。電源投入直後や高い負荷をかけ続けると、まれにファンが高速回転して40デシベル程度に達するときもあったが、どちらもすぐに収まった。
発熱はボディの右側が中心で、しばらく利用していると右パームレストが熱を持ってくるのがはっきり分かる(38度前後)。底面も右側の一部で40度近くなるので、今の季節は暖かいという程度で不快とまではいかないが、夏場などは少々気になるところだ。
●「安さ優先」ではない本気のNetbook
本機には2年間ライセンス版Office Personal 2007が付属するほか、全16種の辞書・辞典コンテンツなどを搭載している。発売直後は7万円前後した店頭価格も、原稿執筆時の2010年3月段階は大手量販店で5万9800円が相場だった。台湾メーカーなどの製品と比べればどうしてもコストパフォーマンスでは見劣りするが、国内大手メーカーの製品としての仕上がりは悪くない。また、直販のWEB MARTではBTOこそできないが、より安価なモデルが用意されているので見逃せない。
同社の製品に限らず、全体的にNetbookはバッテリーの駆動時間が短かったり、ACアダプタのサイズが大きかったり、低コストを優先するためにボディが小さいにもかかわらず携帯性の面があまり重視されていない傾向が目立った。本機ではその辺りをキッチリと改善してきているうえに、スクロールパッドの装備など小さいボディを補う入力環境の工夫やUSBメモリ機能など、サブPCとしての使い勝手に配慮した付加機能も装備するなど、安さ優先ではなく、必要なところにコストをかけてきたという印象だ。きちんとモバイルで使いたいというユーザーにアピールできるNetbookに仕上がっているといえる。
Netbookのユーザー層は幅広く、必ずしもモバイルだけが目的ではないユーザーもいるだろうが、コストパフォーマンスではCULVノートPCというジャンルがあるだけに、より小型で軽量のNetbookではモバイル向けにフォーカスを定めてきたアプローチは理に適っているといえるだろう。上質な塗装を含めたデザイン、国内大手PCベンダーならではのサポート体制の安心感も合わせて、入門用のモバイルPCとしてはかなり魅力的な選択肢ではないだろうか。【鈴木雅暢(撮影:矢野渉)】
【3月16日18時24分配信
+D PC USERhttp://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20100316-00000070-zdn_pc-sci