「わたし、おっくんに興味あるかも」
唐突に、女友達がそんな訳のわからんことを言うから、俺の返答も当然
「はぁ?」な訳で。
「え、何どしたん、急に。っていうか訳分かんないんだけど」
「いや、だからそのまんまなんだけど」
女友達は、元々地元が一緒で、成人してから仲良くなった。
地元友達数人で飲みに行ったり遊んだりする中の一人。
顔は可愛くて大人しいけど、よく笑う。あと何かエロい(と男の中では評判)
「いやいやいやいや、ちょっと、ちゃんと説明して」
「あー、えっとね」
まとめて更に直接的な言い方にすると、彼女は俺に性的欲望を抱いているらしい。
「え、だってエミちゃん彼氏いるじゃん」
「いるよ。大好きだよ」
「俺も彼女いるし」
「知ってるよ。可愛い人だよね」
じゃあ何でそんなこと言うの。
彼氏以外に触られたくないとか言ってたし、飲み会とかで異性とスキンシップとかしないじゃん。
伝えると彼女は恥ずかしそうな、困惑した顔で「そうなんだけど」と言葉を濁す。
「おっくんが、彼女を大事にしてるのも知ってるし、付き合ってる人以外と性的交渉しないのも知ってる。
わたしもそうだし。でも、何だろ、おっくんと、そういうやらしいことしてみたいな、とか思っちゃってる訳でして…」
もじもじしながら、そんなことを言う。
これは、あれか、据え膳なのか。俺は食べなきゃいけないのか。
そんな風に言われたら、俺だって意識をしてしまうではないか。
頭がピンクになってきた俺の前で、そんな頬を赤らめて下向かないでほしい。
「え、じゃあ、どうしたいの」
「え、いや、だから、あの・・・」
いよいよエミちゃんの顔は真っ赤になる。
俺の心拍数はどんどん速くなっていく。
「だから・・・」
「う、うん」
顔を見合わせてしまって、その近さに驚いた。
すぐ前に、目を真ん丸にしたエミちゃんの顔があって、思わずひき寄せていた。
「一応確認するけど。・・・ぼくのこと、好きなんじゃないんだよね?」
「わ、悪いけど、うん・・・」
ただ、性的に興味があるだけ。あぁ、ぼくとか言っちゃった。
エミちゃんのシャンプーの香りがして、それが良い匂いでクラっとくる。
「・・・キスとか、なしにしよう」
「うん・・あと、その・・・入れるのも、ナシ、ね」
「あぁ、うん・・・」
あー、ぼくら何言っちゃってんだほんと。
バカじゃないのか。
ぼくらは本当に、バカみたいなことをしようとしている。
そっと背中を撫でると、ビクっと肩を揺らせて「エロい」と呟かれた。
これは、浮気なんだろうか。
浮気なんだろうな。
でも、行為に興味があるだけだから、罪悪感もなくて。
「わたしたち、最低なコトしてるよね」
熱い吐息を吐きながら、エミちゃんは言う。
「墓場まで、持っていこうね」
額ににじむ汗を意識しながら答えると、小さく笑ったようだった。
エミちゃんとは、それから何もない。
普通に友達としては付き合っているけれど、性的な目では見れない。
それは、エミちゃんも同じだと思う。
本当に何にもないので、あれはもしかしたら夢なのかもしれない、と思う。
でも、恋人とイチャイチャしている時に、フとフラッシュバックして、ほんの少し心を引っ掻く。
その度に、彼女と深く繋がりながら「墓場まで」という言葉と、小さな笑い声を思い出すのだ。