ss「二つの涙」 

January 04 [Mon], 2010, 22:36
 「ひのや」の一室で銀時は目を覚ました。
銀時「・・・ここは。」
 そう言って起き上がろうとすると、全身に激痛が走った。
銀時「つっ・・・!」
 そううめきながら体を見てみると体中には包帯が巻かれていた。
銀時「ああ、そういや・・・。」
晴太「銀さんゅ!!気がついたんだねっ!母ちゃん!月詠姐!銀さん目を覚ましたよっ!!」
 晴太が大喜びしながら叫んでいる。廊下から日輪が車椅子を動かしながら部屋の前まで来て、起き上がった銀時を見ると安堵の笑みを浮かべた。
日輪「良かったぁ・・・。銀さん一週間も寝てたのよ。医者はもう助からないかもしれないって、言われたから皆すごく心配したのよ。」
晴太「よがっだ、よがっだよぉ・・・。オイラ、エグッ・・・、銀さんが死んじゃったらどうしようかと思ってたぁ・・・。」
 晴太は泣きながらそう言った。
月詠「二人とも大げさじゃ。この男がそう簡単に死ぬわけなかろう。何せ、こやつの生命力はゴキブリ並みじゃからのう。」
 そう言いながら月詠が部屋に入ってきた。
銀時「テメェ、人が奇跡の生還を果たしたってのに、ゴキブリ呼ばわりかよ・・・。」
 銀時の額に青筋がでる。
月詠「いつも自分ひとりだけでつっ走って人に心配ばかりかけるからそうなるんじゃ。新八と神楽がどれだけ心配したと思っておる?」
銀時「アイツらは?」
日輪「二人なら、一旦万事屋に帰らせてあるよ。あっ、そうだ。早く二人に知らせてあげないと!」
晴太「そうだねっ!早く二人を安心させてあげなくちゃ。」
月詠「では、わっちは仕事があるのでこれにて失礼する。銀時、主はそこで大人しく寝ておれ。もし外に出ようなんて馬鹿なことを考えたのなら、わっちが主を冥土に送ってやるからの。」
 そう言い放って、月詠はへやを出て行く。
晴太「え?月詠姐もう行っちゃうの?」
月詠「当たり前じゃ。そんな阿呆にかまっていられるほど、わっちは暇ではない。」
 そういい残して月詠は廊下を歩いていった。
銀時「ったく・・・。相変わらず可愛げのねえおんなだぜ。」
 そう言って悪態ついている銀時を日輪は穏やかな笑顔で見ていた。


 時を遡ること一週間前、
吉原に紅蜘蛛党の残党が攻め込んできた。以前、この組織をまとめ上げていた地雷亜の死後、残った者たちは銀時たちに一矢報いようと密かに準備をしていたのだ。
万事屋の三人と百華の協力で、どうにか機器を脱せられるだろうと皆がおもっていた。しかし、敵は策を用意していた。銀時一人を孤立させ、天人から取り寄せた最新の兵器やらで銀時を集中攻撃したのだ。
いかにいくつもの修羅場を潜り抜けてきた銀時といえど、ここまで不利な状況が重なっては苦戦を強いられるしかなかった。どうにか、その敵を全員蹴散らし、危機的状況を脱したが、最新兵器の猛攻を受けた銀時の身体はもはや限界を超えていた。
銀時はそのままその場に倒れた。

 敵を退けていた月詠は、ふとあることに気がついた。
 銀時の姿が見当たらない。途端に、何やら胸騒ぎがした。月詠はその場を部下に任せ、一人吉原を走った。その時、吉原の最も奥にそびえ立つ、今は廃墟となっているかつて夜王・鳳仙が根城としていた建物。そこから爆発音が響いた。月詠はその音がした所へ向かった。
 建物の中を走り、とある広間に出た。そこはかつて月詠と百華が銀時と共に鳳仙と激戦を繰り広げた場所であった。そこで月詠が見たのは、
全身から血を流して倒れ、ぐったりとしている銀時の姿だった。
 それを見た瞬間、月詠の全身から血の気が引いた。
月詠「ぎ、銀・・・時?」
 ゆっくりと歩み寄って、その顔を見た月詠は、今まさに銀時の命が消えかかっていることを悟った。
 がくりと膝から崩れ落ち、銀時を抱きかかえた。
 涙が溢れ出す。胸が苦しく、息ができない。
月詠「銀時・・・。死ぬんじゃない、銀時・・・。」
 何があっても自分は泣かない、自分は何も恐れない。そう思っていた。
だが、今は銀時を失うことが恐ろしくて仕方がない。
 失いたくない、この男を
 泣くしたくない、自分が愛する存在を
月詠「銀時、お願いだ・・・、逝かないでくれ・・・。銀時、銀時・・・・・。」
 声を殺して、月詠は、涙が枯れるのではないかというほど泣いた。


 日輪は、廊下を歩いていく月詠の姿を見送っていた。
 事件が片付いた直後、運び込まれてきた瀕死の銀時のそばで目を真っ赤にしていた月詠。
 医師から銀時が助かる可能性は極めて低いと言われた時に血の気の引いた顔で呆然としていた月詠。
 銀時が目覚めたと聞いた時に、今にも泣き出しそうな顔をしていた月詠。
自分が初めてであってから一度もそのような表情を見せたことのない、強くまっすぐな心を持った妹分の背を見つめながら、日輪は思わず苦笑いをした。
日輪「本当に、すなおじゃないんだから・・・。」

 廊下の角を曲がり、日輪たちの目の届かない所まで来ると、月詠はその場に力なく座り込んだ。
月詠「良かった・・・。本当に、良かった・・・。」
 そうつぶやきながら、月詠はまた泣いた。
 今度の涙は、喜びの涙だった。
P R
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