いっそのこと壊してくれたらよかったのに 

February 19 [Sun], 2006, 18:08
報われない想いだと気付いてしまった。


きっと貴方は離れていく。


縋りつく私を振りほどいて


一度も振り向くことさえしないで・・・・。


NAME 

February 01 [Wed], 2006, 15:13
彼と知り合ったとき、私は人生のどん底にいた。
結婚した相手は結婚した瞬間からそれまで隠していた
異常な性格を現しはじめ、私の精神状態を壊していた。
「このままでは殺される」
何度そう思ったかわからない。

彼との出会いはそんな生活から抜け出すことすら諦めかけていた
そんな時期だった。


彼と初めて話したときのことをよく覚えている。
まるで魔法にかかったように時間が止まったから。
深い、優しい声を聞いていると不思議とリラックスできたし
私だけに向けられている眼差しが、心の中まで見透かされているようで
それなのに不快感はなく、不思議と心地よかった。

初めて名前を呼ばれたときに心の中から溢れるような幸せを感じた。
名前を呼び合う、ただそれだけで満たされた。

私にとって彼の存在は地獄の中で出会った
美しく力強い天使のようだった。


人間というのはどうして貪欲なのだろう?
どうして名前を呼び合うだけでは満足できなくなるのだろう。
どうして多くを求めてしまうのだろう。
どうして優しい言葉が欲しくなるのだろう。

不安な時に名前を呼んで欲しかった。
あなたの声で私の名前を呼んで欲しかった。
どうしてそれすら、言えなくなってしまうのだろう。

白い世界へ 

January 13 [Fri], 2006, 17:59
耳が痛い
息が白い
吸い込んだ息が胸の中心を刺して
痛みだした記憶の断片を切り刻むの

踏み込んでこないで
もう入ってこないで

何も見たくない
何も聞きたくない

目を閉じて飛び込みたい
深い深い海の底へ


自分の中の暗い闇に自分が飲み込まれていく


いっそ突き放してよ
中途半端に優しくしないで

いつか離れていく運命なら
中途半端に抱き寄せたりしないで
あたなの手で私を切り刻んで


何も感じない世界へ
私を誘って・・・・・・

無題 

January 02 [Mon], 2006, 11:46
欲しがっている
快楽に身を任せて何もかも壊れてしまえ

私の中のナニかが
動き出そうとしている

あなたの手で私を貫いて
身体も心も引き裂いて
痛みも苦しみも 何も感じなくなるまで

コワシテ
コワシテ
コワシテ


逃げようとする頭を押さえつけて
ノドの奥まで満たして
世界が白く見えるまでやめないで

欲しがっている
あなたの狂気で私を満たして
私の殻をコワシテ


篝火9 

December 05 [Mon], 2005, 14:54
次の日、奈央と話をするために早く帰宅した真一郎は
いつも奈央に任せきりにしていた家事を少しでもやろうと
夕飯の支度をして待っていた。
奈央をビックリさせようと、早めに帰宅することを告げずにいたことを
少し後悔し始めた頃、玄関の鍵が開く音がして奈央が入ってきた。

「おかえり」

真一郎のサプライズにビックリした様子の奈央に満足げな真一郎は
奈央をテーブルにつかせるとワインを開け、二つのグラスに注いだ。
一緒に住み始めた頃、奈央と一緒に選んだものだった。

帰宅してから奈央が帰ってくるまでの間、部屋の中を見回してみて
改めて奈央の存在の大きさがわかった。
ここが自分の家で、自分の帰るべき家はここなんだ。
そしてこの家には奈央がいて初めて落ち着ける空間になるのだと。

テーブルに着いた奈央はまだビックリした様子のままで注がれた
ワイングラスと真一郎を交互に見つめていた。

「奈央、今まで不安にさせるようなことばかりですまないと思っている」

テーブルの向かいに座り、真一郎が真面目な顔で話し始めた。

「結婚しよう」

真一郎は奈央の目を見つめたまま言った。沈黙がやけに長く感じて
頷いてくれるはずだと思っていても、何故だか不安がぬぐいきれない。
次の瞬間、奈央の目からは涙が零れていた。
真一郎はオロオロしながら奈央の傍に行き、ハンカチを差し出した。
そんな真一郎を見て奈央は少しおかしくなって泣きながら笑い、
首に抱きついて泣いた。

「うん・・・」

耳元で涙声の小さな奈央の声がした。
真一郎は奈央を抱きしめ髪を撫でていた。

篝火8 

December 02 [Fri], 2005, 15:39
会社で仕事をしながら、真一郎は薫との事を考えていた。
奈央の事を愛しているのに、何故傷つけるとわかっていて
奈央の同僚である薫と関係を持ってしまったのだろうか?
出会って二年、自分にとって奈央はいて当たり前の存在になっている。
空気のような、といえば聞こえはいいが当たり前すぎて奈央を理解しようと
努力もしてこなかったような気がする。
昨日の帰宅したときの、奈央の涙が真一郎の胸に突き刺さっていた。
寂しい思いをさせていると真一郎は心のどこかでわかっていたのに
気付かないフリをしている自分に憤りを感じて仕事が手につかなかった。

パソコンのモニターにメールが来ている表示が現れた。
見てみると薫からのメールで、今日も薫の部屋で待ってるというメールだった。
一瞬、迷って真一郎は「わかった」とだけ返事を打って薫に返信し、
覚悟を決めたように席を立った。




「どうして奈央じゃなきゃダメなのよ!!」

薫がいきなり怒鳴ったので真一郎はびっくりした。
薫が激昂するなんて真一郎にとっては青天の霹靂だったのだ。
薫との関係は半年、奈央と別れてとせがむわけでもなく
奈央の誕生日やクリスマスなどのイベントの時には誘ってこなかった。
それどころか、奈央が会社で小さなミスをした時などは
落ち込んでるだろうから今日は早く帰ってあげてなどとメールを送ってくる。
だから薫にとってはただのゲームなのだと真一郎は思っていた。

テーブルには自分のためにつくってくれたシチューが湯気をたてている。
薫は泣きながらテーブルの上のものを全部床にばらまいた。
そんな薫を見つめながら真一郎はどう声をかけていいのかすらわからず
立ち尽くしていた。




篝火7 

November 22 [Tue], 2005, 17:13
最終電車で帰宅した真一郎は、もう奈央は寝ていると思って音を立てないように鍵を開けた。リビングのソファに座って外を見ている奈央に気付いて慌てて鞄を取り落としてしまった。
振り向いた奈央は、泣いているように見えて動揺した。薫とのことがバレたんじゃないかと内心冷や汗をかいていたのだ。
しかし奈央は涙を拭き、真一郎に笑いかけた。

「おかえりなさい」

「どうしたの・・・・?なにか・・・・あった・・・・?」

恐る恐る聞くとに奈央は笑った。

「お酒飲んだらなんだか寂しくなっちゃって・・・帰ってきてくれてよかった・・・」

奈央はそういうと真一郎を抱きしめた。
奈央の髪を優しく撫でながら、真一郎は心の中で薫との関係を終わりにしようと決断した。このままでは奈央を悲しませてしまうことになる。

奈央は和馬への想いに引きずられてしまいそうな自分を、真一郎にしっかり捕まえてて欲しいと願っていた。終わった恋をいつまでも引きずっててはいけない・・・・そう自分に言い聞かせて・・・。

篝火6 

November 22 [Tue], 2005, 16:51
真一郎と婚約して一緒に住み始めて半年、ここ最近の真一郎は仕事が忙しいと最終電車で帰ってくるようになっていた。昼休みに同僚の薫とランチを取りながら、奈央は浮かない顔でカフェの外をぼんやりと眺めていた。

「奈央?どうかしたの?」

薫の呼びかけにハッとして慌てる奈央に薫は笑った。

「真一郎さんと何かあったの?」

「ううん・・・特に何かあったわけではないんだ」

「そう・・・?奈央は顔に出やすいからなぁ」

クスクス笑う薫に、奈央は苦笑いしながらコーヒーを一口飲み、ため息をついて真一郎の帰りが最近遅いことなどを話した。

「真一郎さんが浮気してるって思ってるの?」

「ううん・・・疑ってるわけじゃないんだけど・・・なんだか心配で・・・」

「真一郎さんに限って奈央を裏切ることはないんじゃないかな」

サンドイッチを頬張りながら言う薫の言葉に頷きながら、奈央の中ではまだ不安を拭いきれずにいた。


その夜も真一郎は仕事で遅くなると留守電に残していた。夕飯は済ませてくるという真一郎のメッセージがあったから奈央は一人で夕食を取り、一人ではあまり飲むことのないワインを開けた。
ふと和馬の言葉を思い出した。

『自分の家に妻も子供もいなくて一人でいるとき、こんなにも部屋が広いと感じるのかって気付くんだ。 そのときほど寂しいって思うことはない』

真一郎と二人で住むために選んだマンション、二人で選んだ家具、このペアグラスも二人で選んだものだったことを思い出して、奈央は胸が痛んだ。
付き合ってる時は10歳も年上の和馬の優しさに包まれているようで、甘えてばかりいた。あの時、和馬は寂しかったのだと初めて気付いたのだ。
奈央は涙が止まらなくなっていた。
寂しいって気持ちがこんなにも胸を締め付けるものだったなんて・・・・。気付いてあげられなかった自分がすごく情けない気分になった。

篝火5 

November 21 [Mon], 2005, 19:23
奈央は和馬の会社近くの花屋で働きながらフラワーデザイナーの勉強をする10歳年下の女の子だった。他愛のない話をしながら奈央を駅まで送り、帰途についた和馬はふと自分が何をしに外に出たのかを思い出し、苦笑した。
さっきまでのやるせない思いは消え、なんだか晴れ晴れとした気持ちになっていた。

「私、花が大好きなんです」

そう言って笑う奈央の笑顔が、和馬の暗い気持ちを明るくしていた。


和馬はそれからしばらくは奈央のことを忘れていた。
再会したのはそれから一週間近く経ってからのことだった。
仕事を終え、帰宅しようとしていた和馬は、今日優子が出張から戻ってくる日だと思い出して花を買うことを思いついた。花屋は会社から歩いて5分くらいのところにある。
前にここで花を買ったのは3年前、優子にプロポーズしたときのことだっただろうか。人の良さそうなおじさんとおばさんがやっている小さな花屋だった。

「すいませーん、花束を作ってもらえませんか?」

「はーい」

店の奥から若い女の子の声がした。あの夫婦の娘だろうか?そんなことを考えながら待っていると店の奥から出てきたのはこの間の女の子、奈央だった。

「この間の・・・・!!」

お互いに指をさしながら、口を揃えていって二人で噴出した。

「会社の近くだとは聞いてたけど、ここの店だったのかぁ」

和馬の言葉に奈央は顔を綻ばせながら頷いて笑う。

「あ、お客さん花束でしたよね」

思い出したように奈央が言って和馬も我にかえる。

「あ、そうそう。薔薇の花中心であとは任せるよ」

「かしこまりましたぁ」

奈央はいそいそと花のケースへ行って薔薇の花を選んでいる。その顔はまるで恋人に会っているときのように楽しそうだ。和馬はそんな奈央を見ている自分の気持ちまで明るく楽しくなってくるのを感じていた。

和馬が帰宅したとき、妻はまだ帰宅していないようだった。
留守電の再生ボタンを押すと優子からの伝言が入っていた。
出張が一週間伸びたことを謝る短い伝言だった。和馬はため息をついてソファに座り
ネクタイを緩め、傍らに置いた花束を手にとった。
自分のリクエストで薔薇が中心になっているが、奈央らしいカワイイ花束になっている。
和馬はそれを見ながら奈央の笑顔を思い出すだけで気持ちが暖かくなっていくのを感じずにはいられなかった。

篝火4 

November 19 [Sat], 2005, 16:27
「ねぇ、和馬さん。これイイと思わない?」

妻の優子と一緒に買い物にきていた和馬は、ショーウインドの中の天使のガラス細工を見ていた。笑った顔が別れた女に似ているような気がして、目を留めて、そのまま思い出に浸ってしまっていた自分に自責の念に駆られながら優子の呼ぶほうへ向かう。
優子はそんな和馬の様子をじれったそうに引っ張り、お目当ての指輪のところへ連れていく。

「それでいいんじゃない?」

和馬の複雑な心境とは逆に店員と交渉する優子は幸せそうだ。

和馬と優子は10年付き合って結婚し、子供も産まれた。けんかや言い合いもよくするけど、自分には彼女より合う女はいないと和馬はずっと思っていた。
あの日、奈央と会うまでは・・・・。

奈央と初めてあったのは、優子と結婚して三年経った頃のことだった。
仕事から帰った和馬は妻も子供もいないことに気付いたが、別段慌てることもなかった。
大体の推測はつく。テーブルの上の置手紙に、自分の予想が当たったと思った。

優子は大手の商社で女ながらに出世し、子供を持ちながらも仕事を続けていた。
とはいっても、優子の実家は孫を預かることを手放しで喜んで、預かってくれる。
まだ小さい息子はすっかり優子の父母に慣れていて、自分よりも義理の両親に
なついているんじゃないかとも思わせる。

和馬はやりきれない思いで、ビールの栓を抜いたが、口をつけるのをやめ
そのまま上着を羽織って街へ出た。

6月にして肌寒い夜だった。
和馬が行く当てもなく歩いていると、女の子が男に絡まれていた。

「ごめん、待った?」

和馬は待ち合わせに遅れた男のようなフリをして女の子の肩を抱くと、絡んでいた男は悪態をつきながらフラフラと歩いていった。
女の子はホッとしたような笑顔でぺこりと頭を下げた。
長い黒髪のクセ毛と笑顔が印象的な女の子。それが奈央だった。