5 

August 28 [Thu], 2008, 3:39


雄輔と別れ自宅に戻る途中、
孝太郎は必ず立ち寄るコンビニで花火大会と夏祭りが特集されている雑誌を手に取った。



これくらい浮かれてもいいよな・・・

心の中で二回確認した後、そのままレジに向かう。



いらっしゃいませー、こちら暖めますかー?

夜中のために店員も疲れているのだろうか、情報誌なんて暖めるわけないのに、決まりきったセリフを向けてくる。
別に暖めなくていいです、と答える孝太郎の言葉に店員もあっという顔をし、袋の中にさすがに割り箸は入っていなかった。



「でかいとこじゃ隆一さんバレちゃうからなー」

自分も有名人だと自覚していないのか、自室に転がって買ったばかりの雑誌をめくる孝太郎は隆一のために夏祭りを選ぼうとしていた。


空の下に広がる提灯や出店で照らされた場所
オレンジみたいな光の中はきっと彼に似合うだろう。



「よし、ここにしよう」

見つけたページの右上を少し折り返す。

都内から少しだけ離れた場所
車でいけばすぐだし、
何より、掲載されている写真が気に入った。
賑わう出店の間のいつもより少し狭くなった道を
二人で歩いてみたい。





4 

July 18 [Fri], 2008, 9:49


「じゃあ行きますか?」

がっつかないように、あくまでもさり気なく…さらりと口にした。
だけど、えっと驚いた隆一から何の言葉もなく孝太郎の頬に赤が差す。


「えっと…」

隆一に何か言われるのが怖くて慌てて口を開くも言葉は続かない。


そんな孝太郎に隆一は微笑んだ。

「孝太郎君が誘ってくれるの初めてだよね?」



「え…そうでしたっけ?」

そうだよーと隆一が笑う。







「…というわけで来週、隆一さんとお祭りに行くことになった…」


孝太郎の真面目な顔に目の前の幼なじみは吹き出す。

「雄輔、なにがおかしいんだよ」

孝太郎がじろりと睨む。

「ごめん、ごめん。だって相談があるって言うから来たのに、まさか恋バナだと思わなかったよ」

雄輔の言葉に孝太郎は照れるがそれを悟られないようにするためか横を向く。
もちろん、そんな癖は長年一緒にいる幼なじみには見抜かれているのだけど。




「で、どうするの?」


何が?と孝太郎が目だけ向ける。



「浴衣。着んの?」

3 

July 14 [Mon], 2008, 7:16


最近よく孝太郎君に会う。

知り合いや友達の数は多くても、よく会う相手というのは限られていて、自然と居心地の良い人を探す。
礼儀正しく、まっすぐな孝太郎といることは緊張が解れるような気持ちになれた。




「爽やかそうだしな、そいつ」


隆一の隣で並んでグラスを傾けているJがやっと口を開いた。

「いーんじゃねぇの?」

Jの言葉に、そうかな?と隆一が確認するみたいな声を出した。

「ナントカの会だっけ?少なくともギトギトしたオヤジたちと付き合うよりはよっぽど健全だと思うけど?」


J、と隆一とJの向かいに座っているINORANが窘める。
それを隆一は苦笑してやり過ごそうとした。


隆一には場に流されやすいという困った癖がある。
最近ではいろいろな企業の経営者や権力者の集まりに目を付けられ、食事やゴルフと何かにつけ呼ばれるたびには断りきれず応じていた。
そんな風に彼らと共にいる隆一をよく思わない人も多く、おかしな噂を立てられることもある。
Jはそれをひどく嫌がっていた。

不器用に自分を心配するJを安心させたいと思うのに…
いっそのこと火傷するくらい誰かに大きな恋でもできたらいいのに、と隆一はよく思う。



「孝太郎君は俺のことけっこう好きだと思う……たぶん」

「隆ちゃん言うねー」

笑うINORANに隆一もつられ、それをみたJの顔も柔らかくなった。





久しぶりに3人で過ごした夜は早く流れた。
店を出た時のむっとした暑さは夏なんだということを昼間より感じさせる。




家路につきながら隆一が携帯を開く。



こんばんは。明日も仕事?お疲れ様です。


得意ではないメールを少し打って


送信ボタンを押す前にデリートした。



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