とむらひ 

2008年09月02日(火) 0時00分

求めてやまない面影は
きっとわたしの影法師

私はあなたを殺すだろう
私はあなたを孕むだろう

泣きながら目覚める朝
それは幸福な結末の証

悲しみに満たされて
満たされるよろこび

 

2008年09月01日(月) 12時00分

変えられないものにとらわれて生きてゆく

夢の中
再現されるあの日が不安を煽る

今日も私は泣き足りない亡霊と背中合わせ

劇場 

2008年08月31日(日) 0時00分


僕は時にこの身を愛し
僕は時にこの身を殴り
僕は時に真実を叫び
僕は時に真っ赤な嘘をつき
僕は時に無言で君を思い出す

僕は君と共に未来に恋をし
僕は君と共に過去に欲情し
僕は君と共に今日を孕み
僕らは育てきれないほどの思い出を産み落とす

僕は僕の喜劇役者であると同時に
僕は僕の悲劇作家であり
僕は僕からの歓声に深々とお辞儀をしながら
僕が君の劇場であることも
決して忘れはしない


Traum 

2008年08月30日(土) 0時00分


稲穂色した午後の出来事
窓の中 カキワリの 校庭に


非日常


轟音の ヘリコプタ−


砂漠色に潰される窓枠の絵画


僕だけが これから起こるすべてを知っている


ドアが勢いよく開く音
黒服にサングラスの 男
ざわめき始める生徒達の中
僕の鼓膜だけが 無音

僕はあえて男を見る
驚愕 混乱 疑問 興奮
適当にみつくろった仮面をかぶって

男が大声で伝える政府からの通達

僕の眉間に突きつけられる マグナム


僕の鼓膜だけが 無音
僕の左心房だけが 平静


「立て」お決まりの文句

青く固まった観客 突き刺さる視線の中
今にも倒れそうな顔をして僕は進む
(そう、男の後をゆっくりと、重い足取りで)


音もなく扉を閉めた男が振り返る
見慣れた紋章が刻まれたマグナムを受け取り
こみあげる笑みを抑えながら僕は歩き出す
(そう、パレードみたいな、軽い足取りで)


非日常


轟音の ヘリコプタ−


砂漠色の乾いた粉塵を巻き上げる


青く晴れた空に響く僕の声


花嫁 

2008年08月29日(金) 0時00分

結婚前夜の宴のさなか
突然消えた花嫁アニー

愉快に踊る人の輪崩し
悲鳴のように君を呼ぶ
アニーアニー
若くて綺麗な僕の花嫁

ああだけど
どこかで僕は分かってた
緑のしとねに横たわる
彼女の姿が見えていた

遠くで鳴った銃声が
悲しい予感を裏付ける

知っていたけど
わかってたけど
君との別れは悲しいよ
アニーアニーアニー
若くて綺麗な僕の花嫁

僕らは再び出会うだろう
何度も出会いを繰り返し
その度想いは遂げられず
幾千億の夢の中
こうして嘆いてきたのだろう

夢から覚めても尾を引いた
巨大な巨大な喪失感
アニーアニー
小さく小さく呟くと
かすかに香る森の風

獏を飼う少年 

2008年08月28日(木) 12時00分

睫の隙間に秘密を溜めて

夢から夢へ

深夜の散歩

His name is Michel 

2008年08月27日(水) 0時00分


一番仲の良かった友達が引っ越した矢先
一番ぼくと遊んだ子犬が死んで
一番目のパパが遠くへ行った
ぼくの頭の中は空っぽになった


友達は最後に手紙を書くねと言って手をふった
子犬は最後に鈴を鳴らしながら駆け寄ってきた
パパは最後にぼくを抱き上げて時計をくれた
ぼくはしばらくの間それらを思い出してすごした


夢の中で友達と笑った
夢の中で子犬と走った
夢の中でパパと眠った
ぼくは目覚まし時計が鳴っても目をあけなかった


学校で勉強しているときも
外で遊んでいるときも
家でご飯を食べているときも
ぼくの目に映る世界はどこか色あせていた


ある日手紙が届いた
ある日子犬が贈られた
ある日パパができた
ぼくは喜んでいいのかわからなかった


次の日返事を書いた
次の日首輪を選んだ
次の日キャッチボールをした
ぼくはそのつど大泣きしてみんなを驚かせた


ぼくは友達を忘れない
子犬の小さな前足や
パパの笑い声もきっと
ぼくは自分が何ひとつ失ってなどいなかったことに気がついた


久しぶりに見上げた空は青く
そのまなざしはどこまでも優しかった
昨日の自分の手を引いて
ぼくは通学路を駆け抜けた


十年後、友達は運命の相手と出会う
十年後、犬はまだ走り回っている
十年後、パパは息子に背を抜かれる
今のぼくはまだ、知らないけれど


鏡地獄 

2008年08月26日(火) 0時00分

人々はみな合わせ鏡であって
誰一人他人ではなく
百八面の私の仮面

既知なる未知を
粉々に割り
万華の地獄に投身しようか

Castel in the sky 

2008年08月25日(月) 0時00分


急にとられた右手が
あなたに共鳴して
少し痛い


あれが見える?


あの日、あなたはそう尋ね
青空の隅を指した
遠くに小さく光が見えた


ええ、でも、あれは何?


途端、あなたは顔色を変え
私の手をとり駆け出した

何も言わず
ふり向かず
血走った目を細め
神話のように走り続けた


何処へ行くの

あそこへ行くんだ


再びその指が示した一点、そこには…


脆弱 躁鬱 根拠の無い自責の念
今にも泣きだしそうな顔をしながらも
あなたは揺るぎない双眼を持っている
目指すほかはない理想郷を知っている

そして、私の目にもその指の先
まだ光としか言いようのない大地が見えている


私達、目指すしかないのだろう
たどりつく先が地獄でも
泣きたくなるような求心力に従って
私達、泣きじゃくりながら求めるのだ


鏡と雷鳴、遠吠えと夢 

2008年08月24日(日) 0時00分

答えは自分の背中に記されているのに
私はそれに気付けない
稲光のあと数を数えるのに夢中で

答えは自分の姿そのものなのに
君は気付けない
どこかで鳴いている犬の鳴き声を聞き取るのに必死で

鏡を割らなければよかったのに
目を潰さなければよかったのに
いくら合わせ鏡が恐かったからといって

目を閉じて
眠りに就くと
内側に開く目
目の中の目
それは見せる
昼間見えなかったものたちを

前を歩く人間の背中に
奇妙な文字が記されている
彼はそれを読めるのに
読めることに気付かない
そして足早に追い越してしまう

目を閉じて
眠りに就くと
内側に開く目
目の中の目
それは見せる
昼間目を背けていたものすべてを
見逃すにはあまりに惜しい
満潮を待つ世界への手引きを

まどろみの羊水に浮かぶ彼らは
現実への誕生に備え何度か深く夢を吸い込むと
静かに目を開けた

稲妻が盲点を照らす
遠吠えが行き先を告げる

無限に開かれていく
目の中の目
夢の中の夢
それは見せる


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