火車

January 07 [Thu], 2010, 0:07
 

著者:宮部みゆき


 休職中の刑事、本間俊介は遠縁の男性に頼まれて彼の婚約者、関根彰子の行方を捜すことになった。
 自らの意思で失踪、しかも徹底的に足取りを消して―なぜ彰子はそこまでして自分の存在を消さねばならなかったのか?いったい彼女は何者なのか?
 謎を解く鍵は、カード会社の犠牲ともいうべき自己破産者の凄惨な人生に隠されていた。山本周五郎賞に輝いたミステリー史に残る傑作。


※ストーリー展開に触れるので未読の方は読まないことをおすすめします。

ようやく再読しました。
読んだのは5〜6年前かな?
うろ覚えですが、これが私の宮部初作品だったような気がします。

5〜6年経つというのに話の流れは覚えていて、
最後の一行が残した余韻は未だに残ったままなのです。

だからすごく大事な作品で、読むのがもったいないという気持ちがありました。
小学生の頃から読書は好きなほうだったけど、本格的に読書好きになったのはこの本のおかげと言ってもいいくらいです

もう読む前から、表紙に描かれている女性を見て、
これがあの女なんだな・・・(さすがに名前は忘れた)ってしみじみしちゃったほど。


そして読んでみたけどやっぱり良すぎる
以前より断然楽しみながら読みました。

喬子(彰子になりすましていた女)視点は一切なく、
本間が調べ上げた断片から浮き彫りにされた第三者の憶測のみで語られます。
だから色んな解釈をするのにも夢中になりました(笑

宮部さんは、喬子を可哀想な女に描いています。
本当は心根は優しいんだけど、殺人を犯してまで幸せに手に入れたかった。
喬子には幸せになる権利があるのに、喬子に非のない理由で届くことのない幸せ。
その理不尽さを払拭したくて、本当は申し訳ないと思うのだけど、
どうしても人並みに幸せになりたくて、禁忌を犯すしかなかった・・・
喬子はお金や権力を手にしようとしたわけではなく、平凡な幸せを欲していただけだと思います。
おまけに非はないのに悲惨な人生を強いられてきて・・・
どうしたって喬子に肩入れしていまいます。

前回読んだときはこの解釈のまま読み終えたのですが、今回は少し違います。


第一の候補が別にいます。
そちらの家族を殺すのに失敗して、彰子に乗り換えました。
そして第一の候補の家族が死んだらまた接触して来た・・・
ものっすごい凶悪で残酷


本当に被害者に悪いと思っていたのなら、絶対2回目はないはずです。
それ以前に、殺害に失敗した時点で怖くてもう考えられなくなると思います。
卒業アルバムや学校の墓のことなどで見せた優しさも、
単に死んだ彰子の怒りを少しでも和らげようと、死人の報復を恐れていただけなのかな、とも思うようになりました。

そもそも、結婚するはずだった男を一瞬で捨てて逃げたわけですから。
「平凡な生活」が手に入れば、そこに愛は必要なかったのかな。


喬子の人生が明らかになるのと比例して、当然彰子の人生も浮き彫りにされます。
彰子だって幸せになりたくて、それがちょっと間違えて、
かえって自分の首を絞めることになってしまって。
そんな不幸の中、必死に人生を立て直そうとしたところに殺されてしまって・・・
しかも彰子の場合、気にかけてくれる優しい幼馴染がいました。
尚のこと喬子のしたことの卑劣さが明瞭になっています。


かといって、喬子の不幸な人生にはやはり同情せずにはいられず、
単なる凶悪犯と思っているわけではありませんし、
未だに「喬子実は心根が優しい」説も残ってはいるのです。


唯一残念なのは、最後のページをめくったとき、
気が急いて真っ先に最後の一行に目が行ってしまったことです(笑
なので余韻が半分になったような気はしますが、
これしかないという素晴らしく効果的な終わり方だと思います。

おそろし

November 26 [Thu], 2009, 18:15
 

著者:宮部みゆき

 実家である川崎宿の旅籠で起きたある事件をきっかけに、
 人に心を閉ざした17歳のおちか。
 叔父・伊兵衛夫婦が神田三島町で営む袋物屋「三島屋」に身を寄せている。
 おちかを案じた伊兵衛は、いつも碁敵を迎える「黒白の間」で、
 人々から「変わり百物語」を聞くようおちかに言い付ける。
 人々は話すことで心を軽くして帰っていき、彼らの不思議な話はおちかの心を少しずつ溶かし始める。
 伊兵衛の狙いはそこにあり、やがておちかが心を閉ざした事件も明らかになっていくのだった。
 連作時代長編、江戸ふしぎ譚。


百物語と言っても、怪談というよりは怪奇譚という感じで、怖くはないです。
連作短編なので夜更かししなくて済んでよかったですが、
読み出したら止まりません

でも私は全体を通してというより、三島屋にやってきやお客が語る、
ひとつひとつの物語がおもしろかったです。
怖いんだけど切ないんだよなぁ。
ひとつひとつの物語には、もちろん主人公がいるのですが、
その主人公たちによって不幸をもたらされた人々のことはあまり書かれていないのです。
それでかえって、その人のことを考えて切なくなってしまいました。
特にお吉、宗介に。


ちなみに一番好きなのは、おたかの凶宅です。
ぞぞぞっとするお話・・・でも、なぜか悲しい話でした。
どうでもいい話過ぎますが、読後「このタイトルは【座敷牢】に違いない
と思ったら違いました。


個人的に主人公のおちかがあまり好きになれなかったので、
おちかの話は正直どうでも良かったかも・・・

そして最終話だけちょっとギモン。
いきなりのファンタジー的展開はいいのですが、
嫌な人たちも含め丸く収まってめでたしめでたし。これはちょっと・・・。
お吉が可哀想でなりませんよ

あと、個人的には大嫌いなやつなのでいいんですけど、
おちかの許婚だった良助が出てこないんです(笑
おちかが主人公なんだから、出てこなきゃいけない人なんです絶対に
ホントに嫌いなんでいいんですけど、出てくるとややこしくなるから、
出すのやめちゃったんだなぁと思いました。

英雄の書

October 12 [Mon], 2009, 23:00
  

著者:宮部みゆき

お兄ちゃんが人を刺すなんて・・・。<英雄>に取り憑かれた兄を救うため友理子は物語の世界へと旅立った。
毎日新聞連載、宮部みゆきのファンタジー最新刊!


いや〜、信じられません
宮部さんの本でこんなにも退屈を味わうとは。

最初の1ページからおもしろくなくて、キツかったです。
ユリコのキャラも好きじゃないし。


上巻はなんとかちゃんと読んだけど、下巻は無理・・・。
不死身の兵士の話がおもしろかったので、
期待が高まったんですが、話が終わると一気にまたつまらなくなって。

結局斜め読みしてなにか話に変化がありそうな部分だけちゃんと読むという感じになってしまいました

でも何がどうつまらないかってのがよくわかりません
無駄に長いとは思うけど、宮部さんの長編って基本的に無駄が多いし・・・。


唯一ここが気に入らないってのは犯罪を軽く扱ってること。
兄が人を殺したのに、理由があるならしょうがないと言う小学生。
それが家族愛だみたいになってるんです。

実際どうなのかわからないけど、犯罪者の家族に的をあてた本をいくつか読んだ私としては、キレイ事にしか思えないのです。

下巻でその考えが変わるかと思いきや、
人を殺した事実はほぼ無視され、ユリコの考えが変わらないまま終わりました。
(これが変わったとしてもおもしろくなかったです。)
宮部さん、なんでこんな設定にしたんだろう・・・。


そういえば宮部さんのファンタジーって初めてかもしれません。
他のもあんまりおもしろくないのかなぁ。

堪忍箱

September 24 [Thu], 2009, 22:50
 

著者:宮部みゆき

アンソロジーを除けば、宮部さん結構久々

時代物の短編集です。
悪くはないけど、宮部さんだと厳しくなっちゃいます


堪忍箱
代々伝わる、決して開けてはいけないという「堪忍箱」。
両親はこの箱を開けたために非業の死を遂げたのだろうか?


堪忍箱、開けてよ
憶測が憶測のままで終わっているので消化不良な感じ。


かどわかし
総領息子に、今でいう誘拐をして身代金を要求して欲しいと頼まれた箕吉。
総領息子は親しかった女中と暮らすため金が欲しかった。
説得して家に帰すが、今度は本当に誘拐されてしまう。


かどわかし=人をさらって、売り飛ばすこと。
この時代は今のような誘拐事件はなかったのでしょうか。


敵持ち
身の危険を感じている加助は、小坂井という浪人に用心棒を頼む。
その初日、殺人事件に出くわしてしまう。


ストーリーは普通だけど、小坂井の渋いキャラが効いてていいです。
この人が出る話があれば読みたい。また出してくれないかな?


十六夜髑髏
ふきが奉公に上がった米屋には、十六夜に呪いがかけられていた。

最後はなんだか不気味な神秘さがあってゾクッとした。
でも、そこまでは別におもしろくない。

お墓の下まで
市兵衛に拾われ家族になった3人はそれぞれに隠し事を持っている。
そして市兵衛も、拾い子である3人に隠していることがあった。


これは結構好き。それぞれの隠し事が全部切なくて。
雰囲気もいい。


謀りごと
差配が医者の家で死体となって見つかった。
そしてその差配の様々な「顔」が見えてくる・・・


死ぬまでは語られなかった色んな角度からの顔が長屋の住人から明かされるんですが、最後は色んな顔を持っているのは差配だけじゃないってこと。
ゾクッ。


てんびんばかり
姉妹のように育ち、今後も2人で生きていくのだと思っていたお美代が、玉の輿に乗る。
複雑な気持ちで祝福できないお吉の元に、お美代が夫でない相手の子を妊娠したと知らされる。


これは好き。最後にはお互いの気持ちが重なった気がします。
でも一箇所ミスがあった気がして気になる〜。


砂村新田
父親が働けなくなり、貧しくなった家庭を助けるため奉公に出たお春。
ある日怪しい男に母親のことを尋ねられ、どんな関係なのか心配になり始める。


なーんも思わなかった。

あかんべえ

June 08 [Mon], 2009, 23:06
 

著者:宮部みゆき

やっぱり時代物は素晴らしいですね
読み始めてすぐ、なんかあったかいなぁってほっとするのです。

ところどころに散りばめられた複線が、
少しずつ明らかになっていくのでミステリーほどではないけど
驚きもあって楽しめます。


登場人物もすごくいいです
みんな魅力があります
こういう話は登場人物に魅力がないとダメですからね。

でも幽霊たちが成仏できない理由に関して、
いまいちだなぁと思う部分も少々。
笑い坊やおみつなどは、関係性が浅いように思いましたし、
その分あっさり解決してしまいます。
お梅はかわいそうだけどその関係について複線がなかった(と思う)ので
なんだか唐突だなぁ・・・って。

文句を言いつつも、実はその辺りのシーンが一番盛り上がり、
一番楽しく、少し夜更かしして最後まで読みました。

読んでいて、なんで「あかんべえ」なんだ
と疑問だったのですが、それが明かされたとき、
なんて優しくて切ないのだろうと思いました。

最後は泣きそうになりましたよ〜。
悲しい〜・・・
成仏できて、いいことだけど別れは寂しいですね。
プロフィール
  • ニックネーム:みぃ
  • 性別:女性
  • 趣味:
    ・読書
読者になる
読書大好きです
最近本の好みが変わり、ミステリよりも文章を読んでいて楽しくなるものを好むようになりました。
文体重視というとちょっと違うような気もしますが、それに近い感じです(笑

画像隣の「」は一応評価です。
2009/4/7から今まで5段階評価だったのを6段階に変えました。

2009/6/16また変更
基本5段階評価で、「+」は半分の意味です。


好きな本を酷評していたりしたらすみませんです

ネタバレすることがあります。
未読の方は気をつけてください!!


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