「グレイトイリュージョンサーカス」
会場 リトルワールド野外ホール
観覧日 2010年3月24日 11時半
リトルワールドのようなオープンステージで、本格的なイリュージョンをやるというのは、なかなか大胆な試みなのだが、2006年秋と2008年春に本格的なイリュージョンとサーカスをドッキングさせたショーが大人気となった。テレビでは見たことがある瞬間移動や、人体交換、さらには人間浮遊などが、目の前で見られるということが人気の秘密となっている。今回は、2006年秋に出演したマクシーモフファミリーが再び登場することになった。前回のアダムスファミリーとはまったく違うキャラクターで上演するとリーダーのナターシャが宣言したのは、去年の11月。公演までわずかな時間しかなかったのだが、まったく新しいキャラクターを創り出し、見事にサーカスとイリュージョンを合体させた。
今回は石器時代から現代に迷いこんだ4人(マクーシモフファミリー)が、マジックを披露しながら、都会での生活に溶け込んでいくというストーリーにしている。その意味で野外ステージに入ってすぐに目にする現代の都会をイメージした背景幕がとても効果的である。
音楽が流れ、客席からそして袖から現代の装いをした人たちが現れるというオープニングがなかなかこシャレていた。まずはフラフープの演技が始まる。これを演じるサーシャは、1998年夏にリトルワールドで公演した「ロシア・キッズサーカス」に出演している。あの時も可愛らしい娘が、ませたしぐさで演技するそのアンバランスさが受けていた。(そういえばあの時お母さんとお父さんのふたりが何故かやって来て、毎回毎回娘に声援をおくっていた。余談だが、子供は交通費が安くていいと最初は思ったが、父兄が必ずつきものと知って、これ以来不経済なキッズサーカスは二度とやらないと思った。)
大人になってさらに色香を増した彼女の演技の前半の見せところは、男装スタイルで登場し演技をする彼女が、長い髪とセクシーなドレスに着替えるところ。最初もらったビデオでは、一瞬の暗転で着替えるのだが、照明などない昼の公演でどうするのかと思ったら、服に仕掛けがあり、観客の目の前で着替えて見せた。これは聞いた話なのだが、ゲネプロの時に、小学生の団体が見に来ていたらしいのだが、このシーンで歓声があがり、一人の男の子が鼻血を出したらしい。なんと幸せな人生体験をしたのだろうと思う。そしてさらなる見せ所は、途中突然声をあげ、原始人に扮したマクシーモフファミリーが客席から舞台になだれこんできて、ふたりが残り、30本近くのフラフープを二方面から次々と投げるのを、サーシャが身体でキャッチしていくアクト。さらにこの演技のあと、サーシャが運ばれてきた箱に入ると、一瞬で原始人のワーリャと入れ替わるというイリュージョンのテンポの良さに場内は唖然。見事なつかみ、演出であった。この春東京でフジテレビが大々的に展開するショービジネス「ルナ・レガーロ」のサーカス芸は、『グレイトイリュージョンサーカス』を派遣してくれたモスクワグレートサーカスが担当している。この演出をした人がリトルのこの番組の演出もしている。一流の仕事である。
次のサーカスアクトは、オレーシャの空中ブランコ。野外ステージのそう高くない空間での演技は、大変だったと思うが、旋回技や飛び移りなど、一丁ブランコの魅力をふんだんにいれた構成になっている。静止した状態でのポーズではなく、一連の動きのなかでさまざまなアクトを決めていくのは見事。
次のイリュージョンは、リトルではやっていなかった人間くぐり抜け。箱に閉じ込められたボーバの身体を貫通してバーリャがくぐり抜ける。このイリュージョンは、もったいぶって長々と演じるのではなく、テンポ良く、スピーディーに演じる。これが効果的。
ジーマとナースチャの親子が演じるラダーアクロバット。今回のサーカスアクトのなかでは、一番客席から悲鳴のような歓声がわきあがるアクト。「コルテオ」にもラダーアクロバットのアクトはあったが、親子が演じるリトルのラダーアクロは、ラダーを操るジーマの頭の上で、15才の少女が身体の柔らかさとバランスを駆使したアクロバットを見せるのが見せ場になっている。トリのアクトで二本のラダーが出てくるところで、悲鳴ともつかぬ歓声がわき上がる。圧巻の技であった。
人間浮遊のイリュージョンが続くのだが、いままでのミステリアスなムードを一新させ、コミカルに演じる。ナターシャを浮かせたまま回すときに、ボーバが寿司と書いた鉢巻きをまいて、寿司を握るマイムを見せるところでは爆笑。
最後のサーカスアクトは、去年ルスツ、姫路で客席を大いにわかせたサーシャの自転車アクロバット。運動会でよく耳にする古典的な音楽にのせて、サーシャが登場するだけで盛り上がる。ただルスツ、姫路から比べたらかなり狭いスペースでの演技になるので、ちょっとしんどいそう。リトルワールドで仕事するために特別に8キロ痩せてきたと言っていたが、確かに痩せてはいたので、あとはこの狭く、絨毯という自転車にとってはあまりいい環境ではない条件に慣れ、演技をさらにグレードアップさせてもらいたい。
エンディングには「トランク」と名づけられた瞬間移動と人体交換をミックスさせたイリュージョンをもってきた。これもまったく新しい音楽と演出でやってくれている。最後にMacの電源を切ったときの音が流れるのには笑った。そのあと全員そろってのダンス、そしてエンディング。
40分の中に、イリュージョン、サーカスがまさにぎっしりにつめこまれている。一流ショフの料理付きで18000円でサーカスを見せるという「ルナ・レガーロ」のいまどき珍しいバブルな企画よりは、リトルワールドで屋台料理をつまみながら、豪華なサーカスショーを見る、その方が心の底から愉しめる幸せな時間を過ごせるのではないだろうか。