書名 「たった独りの引き揚げ隊−10歳の少年、満洲1000キロを征く」
著者 石村博子 出版社 角川書店 出版年 2009年
本屋で偶然見かけて購入したのだが、この本と出会えたことに感謝しないといけない。いったん読み出したら、もう止まらなくなってしまった。ビクトル古賀がこのノンフィクションの主人公なのだが、彼のことは何度かテレビで見たことがある。コサックの血を引くサンボリストということで、以前から興味はあったのだが、その彼が、11歳の時ソ連軍の進攻の時、家族とはぐれ、満州国の対ソ最前線地であったハイラルからハルビンを経て、新京、奉天とひとりでおよそ1000キロの道を歩ききり、ひとりで日本に帰ったというまさに信じられないような旅をして生き延びたとは・・・ほんとうに驚いた。ベタの聞き書きにせずに、ある程度彼の話をかみくだき、物語仕立てにしたため、とても読みやすいものになっている。ソ連軍が進攻してから、彼の幼年時代に大きな影響を与えた祖父のフョードルのことを語りながら、コサックの歴史と満洲時代のコサックについて立ち戻ったのは、構成上とても良かったと思う。ビクトルがこのあと親と別れ、ひとり歩いて満洲の1000キロの道を走破できたそのサバイバル術が、このコサックの教えにしたがったものであったからである。
ぜひたくさんの人に読んでもらいたい本であるし、ネタバラシになるのであまり本編の内容に触れておかないでおく。
いま長谷川濬の評伝を書いている自分にとって、この本はビクトル古賀の希有な冒険談だけでなく、ハイラルやコサック、さらには三河という長谷川濬にとっては重要な意味をもつ場所やことがらについて貴重なそして生の情報をもらえたこともありがたかった。
ロシア人と日本人のハーフであったがために満洲の地をひとり歩かざるを得なくなるのだが、彼の目から見た戦乱の時代の日本人の姿も興味深かった。
一つだけ難を言えば、タイトルもう少しなんとかならなかったのだろうか。副題もあるのでわかるとは思うが、ちょっともったいない。
|