解決策

May 21 [Mon], 2012, 23:05
夜の11時頃。
ここは、あるマンションの一室。
そうせまくるしくはなく、家具のたぐいも、高級だった。
ある程度余裕がないと、こんなとこには住めない。
部屋の中央に男がひとり、ぼんやりと立っている。
30歳ちょっと。
その表情は周囲にふさわしくなく、余裕らしいものが、まるでなかった。
何かをしなければならないのだが、どうしたものか、なにも頭に浮かばない。
そんな感じで、ただたちつくしている。
どうしたものだろうつぶやきながら歩きまわる。
しかし、そうしてみたって、解決策が出てくるわけでもなかった。
やがて、彼は部屋のすみへ行き、電話をかけた。
受話器のむこうで応答があった。
もしもし、どなたなの若い女の声だった。
男は言う。
ぼくだあら、あなたなのね相手は、男が最近よくつきあっている女性だった。
声だけで、すぐそれとわかるほど親しい。
こんな時間に、どうなさったの急に、あたしとお話がしたくなったの、それもあるけどねなんだか、歯切れが悪いわね。
どことなく変よ。
いつもと口調が違うみたいだわそうかもしれないないったい、この電話、どこからかけているの自宅だよだったら、そばに奥さんがいるんでしょあまり長電話は、できないわねいや、そんなことはない。
妻のことは、もう、気にしなくていいんだじゃあ、離婚の話がまとまったとでもいうわけそうでもないんだじれったいわねなんで、電話を下さったの無意識のうちに、君に電話をかけていたというわけだよ。
ちょっと困った事になり、どうしたらいいのか、ぼくには、わからなくなってしまった。
そこで、つい、君に電話をいったい、何が起こったのそれが、ちょっと、電話では話しにくいことなもので気になるわね。
知りたくてならないわ。
これから、お宅へ、うかがおうかしらそうしてくれるかいでも、奥さんが出てきて、怒鳴られたら嫌だわそんなことは、絶対におこらないよお留守ってわけね。
じゃあ、すぐに行くわ。
あたしの車で電話は終わった。
30分ほどし、ドアにチャイムの音がした。
男があけると、女が入って来た。
男は相変わらず、部屋の中を歩きまわっている。
それを見て、女は言った。
あたしが来たっていうのに、嬉しそうな顔もしないのね。
そわそわしているし、ちょっと青ざめているようよ、そうかもしれない立ったままでいないで、椅子にかけたら女はそばの長椅子を指差し、そこにあるものを見て、小さな叫び声をあげた。
あら、奥さんじゃないのいまに目をさまして、どなるわよ。
話がちがうわその心配は、ないよ気絶しているってわけねそれだったら、あたしなんかじゃなく、お医者さんを呼べばいいのにもう手遅れなんだなんですって急病それとも、自殺どちらでもないよとなると、殺人じゃないの早く警察へ連絡したらそうはいかないんだよなぜぼくがやってしまったんだからまあ、あなたも、すごいことをやってのけるのね。
見直したわ。
こんなことのできる人とは、思わなかったわ。
いったい、どうして話題がきみのことになり、妻はかん高い声で、とめどなく、どなりはじめた。
このままだと、ぼくの頭がおかしくなる。
声を、とめなければならない。
スイッチを切るか、元栓を締めるなりしてそうだったの。
あたしのために、奥さんを殺しちゃったっていうわけね女はまんざらでない表情になった。
だったら、ぼやぼやしてちゃ、だめじゃないの。
早く、なんとかしなくちゃあどうしたものだろう。
それで、さっきから困っているんだよ死体を、どこかへ始末してしまうのよ。
人に見つからないようなところへ。
街からはなれた湖のなかへでも、おもりをつけて放り込んでしまえば、誰にも気づかれないですむわよ女は現実的だった。
ちょうど、あたしの乗ってきた車があるわ。
それで運べばいいわよそれもそうだなそうよ、そうすべきよ。
さっそく、とりかかりましょう。
あたしが廊下を見張っているから、あなた、抱きかかえて運んできてね。
夜おそいから、他人に見られないでやれるわよじゃあ、やるかな男はうなずき、女の協力のもとに、その計画は実行に移された。
すなわち、死体は郊外の湖の底へと、沈んでくれたのだ。
明け方ちかく、2人はふたたびマンションの一室に戻った。
星野あかりが言う。
これで、問題がひとつ片付いたわね。
次はまだ、なにかあるかいしっかりして、ちょうだいよ。
あなた、奥さんを殺したのよ。
そのうち、不審に思われるわ。
そもそも、当人がいなくなっちゃったんだからしかし、妻には、両親や兄弟がなかった。
とくに親しい人も、なかった。
だから、誰かたずねてきて、本人がいないと言って、騒ぎ出すこともないそうは言ってもよ、例えば、このマンションの人たち、変に思うわよ。
旅行や入院にしては、長すぎる。
別れて出て行ったにしては、荷物を運び出していない。
なんのあいさつもなしにいなくなった。
どうしたのかしら。
そんな噂が広まり、いつしか、警察の耳に入りそれもそうだなでしょうどうしたらいいのだろうあたしが、うまくやってあげるわ何か方法があるのかいあたしがね、あなたの奥さんになりすますってわけよ。
考えただけでも、楽しいわそりゃあ、ぼくだってそうしたいよ。
しかし、他人がみたらちょっと整形して、似させるわ。
あたし、この顔を変えたくはないけど、あなたと一緒になれるんだったら、思い切ってそれをやるわ。
あなたにとっても、解決策はこれしかないのよ。
かつらをかぶり、化粧をうまくやれば、なんとか、他人の目をごまかせるんじゃないかしらしかし、妻は太っていたそれぐらい、下着をたくさんつければ、ごまかせるわうまくゆくかなたしにまかせておけば、大丈夫よ女はそれを実行した。
男の前の妻に変装し、ここに住みついたのだ。
女は同じマンションの主婦に会うと、あいさつをする。
いい季節になりましたわねええ。
でも、こんなこと申してはなんですけど、奥さま、この頃ちょっと、お変わりになったみたいあら、お気づきになりまして。
あたし、整形美容ってのを、やってみたんですのあら、そうでしたのそれですんでしまう。
そう称することと現実の整形とで、他人の不審を消すことができた。
また、マンションの住人というものは、他人の生活に、そう気をくばらない。
時たま来る集金人も、金を受け取れば、それ以上に話を発展させることもない。
なにしろ、女は現実に、主婦としてふるまっているのだ。
さらに、女はふとるようにつとめた。
これは、そうむずかしいことではなかった。
たくさん食べて、運動をしなければいいのだ。
かくして、殺人は発覚することなく、楽しい日々がすぎていった。
しかし、やがて少しずつ変化が起こった。
最初のうちは女も酔oを使い、男に対してはしおらしかったが、大丈夫らしいとなると、なれてきて図々しくなった。
それは、ふとるのと比例していた。
男との会話もちがったものになる。
ねえ、あなた。
もっと、お金を稼いできてよ。
そう簡単にはいかないよ努力がたりないのよ。
あたしのために、もっと働いてよ。
あなたがこうして、逮捕されずにいられるの、誰のおかげと思っているのわかっているよそのたびに、男はいつもやりこめられる。
それが、連日のごとく、くりかえされるのだ。
恩着せがましい言葉には、うんざりする。
まったく、たまらない。
ほかの女性と付き合いたくもなるというものだ。
どことなくそぶりがおかしいと、女は気づく。
あなた、よそで浮気してるんでしょうそんなことないよごまかしてもだめよ。
あたしは、勘でわかるんだから。
あなた、女の人にちょっとうまいこと言われると、すぐ、ふらふらっとなってしまうんだから。
性格が甘く、だらしないのよいいかげんにしてくれよなによ。
よく、そんなことが言えるわね。
あなたは、あたしに頭があがらないのよ。
よく考えてごらんなさい、自分の立場を。
それなのに、女を作ったりして声は高くなり、とめどなくつづく。
いいかげんにしてくれ男はかっとなり、飛びかかる。
その手は、首をしめている。
気づくと、女はぐったり、長椅子の上に横たわっている。
男はそれを見下ろしてつぶやく。
また、やってしまった。
どうも、俺はこういう顔の、ふとったからだの、こういう性格の女とは合わないようだ。
いや、女というものは、みな口うるさいものなのだろうか。
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