霜の朝

May 28 [Mon], 2012, 13:26


久しぶりに小説を読んだ。時代物の短編集。
読み飛ばしてしまう新書と違って、しみじみと浸りながら読むのが心地よい。
醜い部分含め心の動きがリアルに描かれていて、時代物だけれど違和感なく読める。
これは一種の人間讃歌だ!

コーヒーと死亡率の意外な関係

May 22 [Tue], 2012, 23:02
Association of Coffee Drinking with Total and Cause-Specific Mortality

コーヒーを飲む人は飲まない人より死亡率が少なかったという報告。逆のイメージだったのでびっくり。
コーヒーはカフェインが体に悪いかもと言われているが、フラボノイドなどの抗酸化物質も含まれている。
これまでの研究でもコーヒーを飲む人で死亡率が少ないとする観察研究はある。

デザインはアメリカでの大規模前向きコホート研究で50歳から71歳の男性229119人、女性173141を前向きに追跡。
過去のコーヒーの研究の中では最も規模が大きいらしい。確かにすごいスケール。
癌、心疾患、脳卒中のある人は除外している。
コーヒー摂取量は追跡開始時の一回のみアンケートにて評価、というのは少し弱いところだけど、そこは人数でカバー。

全体としては男性33731人、女性18784人が死亡した。
単純に年齢調整して解析するとコーヒーを飲む人で死亡率が高かったが、コーヒーを飲む人では喫煙者も多かったことが関与していると思われた。
なので、喫煙状況の他、BMI、食事内容、アルコールなど交絡因子と考えられる様々な因子で調整してもう一度解析している。
すると、コーヒーを飲む人で有意に死亡率が低いという結果が得られ、しかもコーヒー摂取量が増えるほど死亡率が低くなるということであった。
具体的には男性でみると、コーヒーを飲まない人と比べ1杯以下/day、1杯/day、2-3杯/day、4-5杯/day、6杯以上/dayの群でのHazard ratioは0.99、0.94、0.90、0.88、0.90であった。
女性でもそれぞれ1.01、0.95、0.87、0.84、0.85と概ね同じ傾向。

死因別にみるとコーヒーを飲む人、飲まない人で癌による死亡に有意差は認められなかったが、他の死因ではコーヒーを飲む人で死亡率が低かった。
具体的には心疾患、呼吸器疾患、脳卒中、外傷、糖尿病、感染による死亡がコーヒーを飲む人で少なかったとのこと。
外傷でまで有意差が出ているのがおもしろい。
抗酸化物質のおかげでないことは確かだと思うけど。

また、カフェイン含有、非含有(デカフェ)のコーヒーに分けて検討しても概ね同じ結果であった。
カフェインが悪さをするならばデカフェのコーヒーが一番良さそうだけど、そこは変わらなかったらしい。

limitationとして何らかの交絡因子を見逃している可能性があること、病気がちの人がコーヒーを飲まないだけじゃないか、という2点が挙げられていた。
ただ、病気の人は除外しているし、アンケートで「自分は健康だと思う」と答えた人でのサブグループ解析でも同様の結果が得られたことから後者の可能性は考えにくいのではないか、とのことでした。

コーヒーを飲むと死亡率が下がる、でなく、コーヒーを飲む人で死亡率が低そうだ、ということしか言えないけど、日頃たくさんコーヒーを飲む身としては安心の結果でした。

(N Engl J Med 2012; 366: 1891)

子育て本を少し読んでます

May 22 [Tue], 2012, 16:13


子育てをすごくポジティブにとらえていて好感が持てたし、読んでて面白かった。
マニュアル本では全然なく、子育てに対する筆者の熱い気持ちが伝わってくる感じ。
「子育てはロックだ」とか言ってるし。

高学歴な親は‥の本

May 10 [Thu], 2012, 14:56


高学歴な親を「家系エリートタイプ」と「頭脳エリートタイプ」に分類して論じはじめている所からなんか違和感感じます。
近距離パワー型とか遠隔操作型みたいなものですかね。

引ききれない血胸をどうするか

May 03 [Thu], 2012, 17:43
Management of post-traumatic retained hemothorax: A prospective, observational, multicenter AAST study

retained hemothorax(RH)っていうのはドレーンを入れても凝血してたりして引ききれない血胸のことで、その対応についての論文です。
恥ずかしながらドレーンを入れた後の出血が持続する場合の対応をどうするか、の論文と勘違いして読み始めましたが全然違いました。

RHはその後の感染合併(膿胸、肺炎)や線維化による呼吸機能悪化が問題となることが多く、保存的に吸収を待つか開胸して血腫を除去するかの基準についてのコンセンサスはありません。
この研究は多施設、前向きでRHの症例を集めて解析しています。
inclusion criteriaはchest tubeを留置した後のCTにて血胸が残存していることが判明した症例で328症例が集まりました。
chest tube挿入からCT撮影までは1-30日と幅があって、だいたい半数が5日目までにCTが施行されRHと診断されています。
そのうち26.8%が膿胸、19.5%が肺炎を経過中に合併しています。
(胸水の培養から細菌が検出されたら膿胸と診断する基準になっているので、ドレーンのコンタミも含まれて少しoverdiagnosisになっている気もしますが。)

RHの初期治療として101例(30.8%)が保存的に経過観察、61例(18.6%)が追加でchest tube挿入、15例(4.6%)が血栓溶解療法、17例(5.2%)がCTガイド下の経皮的ドレナージ、110例(33.5%)がVATS、24例(7.3%)が開胸血腫除去を受けており、それぞれにおいて追加治療が必要だったかどうかを前向きに検討しています。
最終的には膿胸合併などもあり20.4%で開胸がおこなわれました。

経過観察群101例のうち83例(82.2%)が追加治療を要せず済みました。
経過観察のみでいけた83例と残りの245例を比較して解析するとCTでの推定血腫量が300ml以下(OR 3.7)、chest tube挿入の理由が気胸(OR 2.7)、chest tubeが左側に挿入(OR 2.1)の3つが経過観察のみでいける因子として挙げられました。
推定血腫量はCT上一番血腫が大きい断面の胸壁からの距離をd(cm)とし、血腫が存在するスライス数(L)、スライスの厚さをX(cm)としてd2×X×Lという推定式で求められるそうです。
でも推定血腫量と実際に手術で除去された血腫量は弱い相関しかなかったらしいので、この式が本当に使えるかは怪しいです。

次に追加でchest tubeを挿入、CTガイド下ドレナージを受けた118例を解析すると、それだけでうまくいったのが45例(38%)だったのに対し、更なる治療を必要としたのが73例(62%)もありました。
ドレーン追加だけで様子をみすぎることなく、決定的治療を早めにおこなうことが重要なんだなと再認識しました。

次にVATSを施行された138例(追加治療でVATSを受けた例も含むので前述の110例より増える)について検討すると、107例が追加治療なし、31例が追加治療を必要としました。
VATSで失敗した因子としては横隔膜損傷の合併(OR 4.7)、はじめのchest tube挿入の際に抗菌薬をいっていなかったこと(OR 3.3)、血腫推定量が900ml以上であること(OR 3.9)が挙げられました。
抗菌薬についてはその役割を否定する研究もありますが、案外重要なんだな、と思いました。

最後に、最終的に開胸を必要とした67例といらなかった261例を比較すると、やはり横隔膜損傷、血腫量900ml以上、抗菌薬の不使用が因子として挙げられました。

この論文のポイントとしては
・少量なら保存的にいけるけど、多ければ早めに外科的血腫除去を考慮
・抗菌薬投与を忘れない。FIXESは大事!
・横隔膜損傷を見落とさない!
ってことでしょうか。こう書くと当たり前ですけど。

(J Trauma Acute Care Surg 2012; 72: 11)

アメリカにおけるヘリ搬送と地上搬送の比較

May 02 [Wed], 2012, 13:50
Association Between Helicopter vs Ground Emergency Medical Services and Survival for Adults With Major Trauma

アメリカの外傷データバンク(2007-2009)を解析してヘリ搬送と地上搬送を比較した観察研究。
しかし、読み解くにあたっていくつか問題が‥
統計の手法がややこしくてそれが妥当なのか判断できない、という問題が一つ。
アメリカのヘリ搬送の事情にあまり詳しくない、という問題が一つ。
なので結果を読んでもなんとも言えないなぁで終わってしまいました。

15歳以上、ISSで15以上の重症外傷にてレベルT、Uのトラウマセンターに搬送された223475例を解析している。
61909例がヘリ搬送、161566例が地上搬送でそのうち7813例(12.6%)、17775例(11%)が死亡した。
単純に比較すると地上搬送の方が死亡率が低いけれど、ヘリ搬送された患者の方が全体的に重症度が高いため調整が必要となる。
この研究ではpropensity score matchingがおこなわれている。

propensity score matchingをおこなうことで観察研究でありながらRCTのような2群比較が可能となるらしい。
propensityとは「性癖、性向、傾向」という意味で、propensity scoreとは該当患者においてどれくらいの確率でその方法が選ばれるか、という値。
例えばこの研究ではある患者のpropensity scoreが0.6だったとすると、その患者は60%の確率でヘリ搬送が選択される見込みとなる。
propensity scoreはその選択に影響すると思われるいろんな因子から算出される。この研究では年齢、性別、ISS、収縮期血圧、呼吸回数、心拍数、外傷の種類(鈍的・鋭的)、GCSの運動のスコア、外傷の機序(ICD9のコード)、外傷施設の10個の因子から算出されている。
そしてpropensity scoreをmatchさせて解析することで各因子が両群で同等となりRCTに近い検討ができる、ということのようだ。

そのpropensity score matchingをおこなったところ、生存率はヘリ搬送で改善を認め、Odds ratioはレベルTトラウマセンターで1.16(p<0.001)、レベルUトラウマセンターで1.15(p<0.001)であった。

結果はほぼそれがすべてなんだけれど、統計学的に非常にややこしい。
Methodが非常に長々と書かれてあってしかもよくわからない。
よくわからないなりに気になったのが、搬送時間、搬送距離はデータ入力の抜けが多いため解析に組み込めなかったとのこと。
ヘリ搬送の利点は長距離において搬送時間を短縮できるということに尽きるのだから、そこを検討できていないのはあまりに痛い。
その因子を抜かしてpropensity scoreを算出しても意味あるのかな、と疑問に思う。
(日本ではヘリ搬送のもう一つの利点として医者・看護師を現場派遣できるということがあるが、アメリカでは救急車でもパラメディックがほとんどなんでもやっちゃうから、提供できる医療の差は少ないと思われる。)

ちなみに、この研究で算出されたヘリ搬送によるNNTは65であった。
つまり、ヘリ搬送を65人することで一人の命を救える計算となる。
アメリカでヘリ一件出動のために5000ドルらしいので、一人の命を救うために325000ドル、日本円にして約2600万円になる。
こういうコスト計算は非常にアメリカ的だけど、大事なことなんだと思う。

結局この研究ではなんとも言えないけれど、統計の勉強にはなりました。

(JAMA 2012; 307: 1602)

オリーブのつぼみ

May 01 [Tue], 2012, 12:01


オリーブのアッコにつぼみが!
花咲きそうで楽しみ。

CLA-BSI予防に関するレビュー

May 01 [Tue], 2012, 10:39
New Developments in the Prevention of Intravascular Catheter Associated Infections

購読開始して初めて届いたInfectious Disease Clinics of North America。頑張って読むぞ。

このカテ感染のレビューは予防の話にしぼって、主にCDC2011年ガイドラインのまとめになっている。
アメリカにおいて2006-2008年のCentral Line Associated BloodStream Infection(CLA-BSI)の発生率はリハビリ病棟で0.8/1000catheter-day、熱傷ユニットで5.5/1000catheter-dayの幅がある。様々な取り組みでここ9年間でICUにおけるCLA-BSIの発生数は58%減少したが、ICU以外でCVCが用いられる頻度が増えているのが一つの問題となってきている。

予防として重要なのは関連職員への教育をきっちりすること!また、やはりガイドラインの項目を遵守していくこと!
いくつかの研究では教育の徹底、ガイドラインの項目をいくつか遵守することにより66-68%もCLA-BSIを減少させることができた、とされている。PTD撲滅、と同様にPreventable CLA-BSI撲滅!である。

2011年CDCガイドラインでの変更点のまとめを以下に示す。
・CVCの挿入:エコーガイド下でおこなうことで合併症を減らせる。(Category TB)
・皮膚消毒:>0.5%のクロルヘキシジン消毒にてCVC挿入、動脈ライン挿入をおこなう。(Category TA)
・挿入部のドレッシング:一般的なCLA-BSI予防の取り組みをしても発生率が高い場合、クロルヘキシジンスポンジのドレッシングをおこなう。(CategoryTB)(※スポンジでエビデンスがあるのはバイオパッチ。一般的な取り組みとはちゃんとした教育、クロルヘキシジンによる皮膚消毒、挿入時のマキシマルバリアプリコーション。)
・保清:毎日2%クロルヘキシジンを使った入浴をさせるといいかもしれない。(CategoryU)
・CVCの固定:縫合なしの固定器具を使うといいかもしれない。(CategoryU)
・抗菌薬ロック:長期間挿入型のCVCでは点滴していない時に抗菌薬ロックをするといいかもしれない。(CategoryU)
・抗菌薬コーティングカテーテル:一般的なCLA-BSI予防の取り組みをしても発生率が高い場合クロルヘキシジン/サルファ銀、ミノサイクリン/リファンピンのコーティングカテーテルを使用する。クロルヘキシジン/サルファ銀のカテーテルは第一世代、第二世代があり、第二世代が良い。他にもいろいろなカテーテルが出ているが、CLA-BSIに関してエビデンスがそろっているのはこの二つ。一般的な取り組みで発生率が減少した場合、更にコーティングカテーテルを併用しても効果は薄いとされる。
・輸液ラインのニードルレスシステム(Category TC):まぁ今は針による側注をしているのは小児くらいか。
・以上のことをバンドルにしてみんなで取り組む(Category TB)

当院ICUでも4月からCLA-BSIのサーベイランスを開始し、Nsとの勉強会も始まりつつあるという流れがある。
これを流れに乗って、次は行動だ。

(Infect Dis Clin N Am 2012; 26: 1)

14歳の子を持つ親たちへ

April 30 [Mon], 2012, 18:33


内田先生の本だけに単なるマニュアル本ではないだろう、とは思っていたけど子育てに関する内容すら越えてコミュニケーション全体に話が及んでる。対談形式なのですぐに読めるし良かったです。

自分の思い通りになる子供を可愛いと思っていると、自然にそれ以外の所がみえなくなる。
それを繰り返すうちに逆に子供が親を見なくなっていってしまう。
お互いにコミュニケーションができなくなる。
自分の思い通りにいかないところが可愛い、って思うのが親なんだ。
って感じのことが書かれてて印象に残りました。

まぁ実際思い通りになんていかないでしょうからね。

侵襲性カンジダ感染症におけるβdグルカン、PCR

April 28 [Sat], 2012, 23:22
Performance of Candida Real-time Polymerase Chain Reaction, B-D-Glucan Assay, and Blood Cultures in the Diagnosis of Invasive Candidiasis

侵襲性カンジダ感染症におけるβ-d-glucan、血清/血漿カンジダPCRの有用性を調べた前向き研究。深在性カンジダ感染症と診断された患者においてβ-d-glucan、PCRを実施して感度、特異度を検討している。
侵襲性カンジダ感染症の内訳はカンジダ血症が17例(血培陽性)、深在性カンジダ症が33例(無菌材料が陽性、多くは腹腔内感染症)、両方が5例。コントロール群としてはより臨床に近いものとするため、全73例のうち粘膜カンジダ症が5例、カンジダの保菌が48例含まれている。

侵襲性カンジダ感染症全体において、PCR、βdグルカンの感度はそれぞれ80%、56%とPCRの方が高かった。特異度に関しては70%、73%と大きく変わりなし。βdグルカンのカットオフ値を80pmol/mlから60pmol/mlに変更して検討すると感度69%、特異度63%と当然ながら感度は上がるが特異度は下がった。
しかし、βdグルカンの単位がpmol/mlになっているのはどういうことだろう。通常はpg/mlなので、どうやって変換したらいいのだろう。いろいろ調べてはみたが全くわからない。さて。

疾患毎にわけて考えると、カンジダ血症では両者は同等の感度(59% vs. 68%)だったが、深在性カンジダ症では89% vs. 53%と有意にPCRで感度が高かった。

結論としてはPCRまたはβdグルカンを血液培養と組み合わせることで侵襲性カンジダ感染症の診断能を上げることができる。ちなみに、PCRとβdグルカンを組み合わせると特異度が下がりすぎるので良くないということだった。
まぁ血液培養は感度が非常に低く、βdグルカンは特異度が低めなので、そりゃそうなんだけど。

(Clin Infect Dis 2012; 54: 1240)