Association Between Helicopter vs Ground Emergency Medical Services and Survival for Adults With Major Trauma
アメリカの外傷データバンク(2007-2009)を解析してヘリ搬送と地上搬送を比較した観察研究。
しかし、読み解くにあたっていくつか問題が‥
統計の手法がややこしくてそれが妥当なのか判断できない、という問題が一つ。
アメリカのヘリ搬送の事情にあまり詳しくない、という問題が一つ。
なので結果を読んでもなんとも言えないなぁで終わってしまいました。
15歳以上、ISSで15以上の重症外傷にてレベルT、Uのトラウマセンターに搬送された223475例を解析している。
61909例がヘリ搬送、161566例が地上搬送でそのうち7813例(12.6%)、17775例(11%)が死亡した。
単純に比較すると地上搬送の方が死亡率が低いけれど、ヘリ搬送された患者の方が全体的に重症度が高いため調整が必要となる。
この研究ではpropensity score matchingがおこなわれている。
propensity score matchingをおこなうことで観察研究でありながらRCTのような2群比較が可能となるらしい。
propensityとは「性癖、性向、傾向」という意味で、propensity scoreとは該当患者においてどれくらいの確率でその方法が選ばれるか、という値。
例えばこの研究ではある患者のpropensity scoreが0.6だったとすると、その患者は60%の確率でヘリ搬送が選択される見込みとなる。
propensity scoreはその選択に影響すると思われるいろんな因子から算出される。この研究では年齢、性別、ISS、収縮期血圧、呼吸回数、心拍数、外傷の種類(鈍的・鋭的)、GCSの運動のスコア、外傷の機序(ICD9のコード)、外傷施設の10個の因子から算出されている。
そしてpropensity scoreをmatchさせて解析することで各因子が両群で同等となりRCTに近い検討ができる、ということのようだ。
そのpropensity score matchingをおこなったところ、生存率はヘリ搬送で改善を認め、Odds ratioはレベルTトラウマセンターで1.16(p<0.001)、レベルUトラウマセンターで1.15(p<0.001)であった。
結果はほぼそれがすべてなんだけれど、統計学的に非常にややこしい。
Methodが非常に長々と書かれてあってしかもよくわからない。
よくわからないなりに気になったのが、搬送時間、搬送距離はデータ入力の抜けが多いため解析に組み込めなかったとのこと。
ヘリ搬送の利点は長距離において搬送時間を短縮できるということに尽きるのだから、そこを検討できていないのはあまりに痛い。
その因子を抜かしてpropensity scoreを算出しても意味あるのかな、と疑問に思う。
(日本ではヘリ搬送のもう一つの利点として医者・看護師を現場派遣できるということがあるが、アメリカでは救急車でもパラメディックがほとんどなんでもやっちゃうから、提供できる医療の差は少ないと思われる。)
ちなみに、この研究で算出されたヘリ搬送によるNNTは65であった。
つまり、ヘリ搬送を65人することで一人の命を救える計算となる。
アメリカでヘリ一件出動のために5000ドルらしいので、一人の命を救うために325000ドル、日本円にして約2600万円になる。
こういうコスト計算は非常にアメリカ的だけど、大事なことなんだと思う。
結局この研究ではなんとも言えないけれど、統計の勉強にはなりました。
(JAMA 2012; 307: 1602)