バス炎上事故、機転の脱出・勇気の救助(読売新聞)

May 17 [Mon], 2010, 13:34
 バスは蛇行を繰り返した後、何度も側壁にぶつかり、停止した――。

 大阪府高槻市内で3月末、スイミングスクールの送迎用マイクロバスが名神高速道路の側壁に衝突、炎上した事故。バスは火炎に包まれ、男性運転手(65)が死亡したが、乗客の子どもら14人は軽傷で救助された。被害の拡大を食い止めたのは、乗客の男児の機転や、偶然通りかかった男性たちの勇気ある行動だった。

 同市消防本部は、乗客の救助活動に協力したとして、計5人と事故現場近くの緑が丘自治会に感謝状を贈った。うち、いずれも同市内在住で、市立安岡寺小4年、井実聖君(9)、無職藤上薫さん(61)、同崎浜盛秀さん(72)の3人が読売新聞の取材に応じ、事故当時の様子を語った。

     ◇     

 事故があった3月29日夕、車内には、スイミングスクール帰りの5〜10歳の子ども13人と保護者の女性(39)、運転手が乗車。聖君は運転席近くで友人、弟の歩君(7)と並んで座っていた。

 〈突然、運転手がうめき始め、最初は気にしなかったけど、また声が聞こえて、バスが2、3回(側壁に)ぶつかった。最後に「ドカーン」と音がした〉

 車内では、泣き叫ぶ声が飛び交い、煙が広がってきた。聖君の目に、歩君が衝突の弾みでフロントガラスの方に飛ばされ、泣きじゃくっているのが見えた。

 〈どうしよう、はよ逃げなあかんと思い、席の後ろの方のドアを何度も押したけど、開かなかった。ドアの横に「自動→手動」と書かれたレバーが見えたので、「手動」の方に動かしてみた。すると、ドアが開いた。子どもらが一斉に外へ飛び出した。逃げられてよかった。車内にいるときに爆発していたらと思うと……〉

     ◇     

 ゴルフの練習に行くため走行中の藤上さんは、前方のバスの異変に気づいた。

 〈50メートルくらい手前から、ふらついていて、おかしいなと感じた。止まったバスをよけて進み、バックミラーを見ると、バスから黒煙が立ち上り、子どもが車内から飛び出していた。同じくらいの孫の顔が思い浮かんで、何かせずにいられなかった〉

 藤上さんが、慌てて駆け寄ると、激しいエンジン音とタイヤが空回りする音が響き、煙がバスを覆い尽くそうとしていた。藤上さんは、後部の窓から、3、4人の子どもの手や腕を引っ張り出した。その間、1、2分の出来事だったという。

 〈子どもたちは全員無事でほっとした。でも、あとで運転手さんが亡くなったと聞いた。助けてあげられず残念です〉

     ◇     

 ジョギングをしていた崎浜さんも一部始終を目撃し、救出に加わった。

 〈衝突後、驚いて駆け寄ると、「お母さん、助けてー」という泣き声が聞こえた。黒煙が上がり、タイヤが焦げる強烈なにおいがした。爆発するんやないかと、恐怖感を感じながらも、必死に窓から子どもを助け出した〉

 その直後、「ボーン、ボーン」と、2、3回爆発音が響き、バス後部から火の手が上がった。周囲にいた人たちはぼうぜんと見守るしかなかった。(山本慶史)

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