装飾死体殺人鬼番外編 『先日の悪夢〜中編〜』 

November 14 [Tue], 2006, 1:07





―さて、逃亡者は一体何処に居るのだろうか・・・。



「外に出た痕跡はありませんから、何処かに隠レているんでしょうね。」
「でも一体何処に?皆イヴァンさんの姿見てませんけど・・・」
「そうよねぇ、誰か一人位目撃してても可笑しくないのに。」
「多分、私に報告されると困ルからでしょうね。」


一つ溜息を吐くクラウスに、訝しげな表情でダリウスが問う。


「そういやぁ・・・クラウスさっき、”また”って言ってたよな?まさか去年もやったのか?」
「ええ」



「毎年恒例の行事ですよ。」



「は・・・」


誰もが絶句する。
毎年恒例という事は、彼は悪びれも無く毎年親友に嫌がらせをしていると言う事だ。
しかも彼曰く”悪戯”のレベルの話らしいが、恐らく甘い物が苦手なイヴァンにとってはもはや嫌がらせでしかないだろう事は容易に想像出来た。
逃げたくなるのも無理は無い。


「キッチンにも部屋にも居ナイんですから、後は地下室か車庫位ですね。」
「確かに・・・クラウスとイヴァンさんしか知らない場所だものね。」
「けれど彼が其処に向カウとはあまり思エないですね・・・仕事の時しか使イませんから。」
「じゃあ何処に居るんだろう・・・」


うーん、と四人が考え込んでいる其の時。
今まで一言も喋らなかったミニーが、口を開いた。


「クラウスおにいちゃん。」
「何です?ミニー」



「イヴァンおにいちゃん、そこにかくれてるよ。」



ミニーが指を指したのは、2階に上がる螺旋階段の横の壁。



「誰もいねぇぞ、ミニー。」
「でもワタシ、夜中におトイレに行く時にイヴァンおにいちゃんがそこにかくれるの見たもん。」
「・・・」


無言で壁へと近付くクラウス。
そして、壁に手を当ててからメスを取り出す。
こいつもメス常備してやがる、とダリウスは呟いた。



ザクッ



ガリガリガリガリッ



其処に現れたのは一枚の扉。
そして、クラウスがそっと其のスライド式の扉を開ける。
其処に居たのは、紛れも無くイヴァンだった。



「見ツケましたよ、イヴァン。」
「・・・ちっ・・・」


微笑を浮かべるクラウスに、舌打ちをして罰が悪そうな表情をするイヴァン。


「お前、そんなとこに隠れてたのかよ。狭ぇとこだなー」
「でもちゃんとイースタントの食事が持ち込まれているわ。」
「しかも新聞と小型テレビまで!隠れ家みたいですね〜。」


半ば感服したように三人がその小さな部屋を覘いている。
その間にも、クラウスが満面の笑みでイヴァンに迫っていた。


「イヴァン、見ツカッタんですからポッキー食ベて下サイね。」
「・・・・・」
「・・・・・」


二人の間に寡黙の時が流れる。
そして・・・。





「う゛っ・・・・・!!」










装飾死体殺人鬼番外編 『先日の悪夢〜前編〜』 

November 13 [Mon], 2006, 0:47





―昨日は何の日だったかを覚えているだろうか・・・。



11月11日。



某製菓会社の陰謀とも呼べる特別な日である。
俗にポッキーの日と呼ばれている。
其れを知っている者も、知らない者もいるだろう。
しかし例外無く住人全員が其の日を知ってる家庭もあった。





「今日はポッキーの日ですね。」



何でも無い一言。
しかしその一言も、言う人物によっては破滅的意味を伴うものである。
其の場・・・リビングに集まっていた全員が発言者へ視線を向けた。
ナイフの手入れをしながらの鼻歌も止まった、キッチンで鍋を見ていた其の目もこちらへ向けられた。
アニメを見ていた其の目も向けられたし、勉強をしていた其の手も止まった。
全てが全て、彼の一言によって止まったのだ。
其れは何でも無い事であったが、一つだけ可笑しなところがあった。


「イヴァンは何処でしょう?」


何時もならば相も変わらず無表情で、ソファに座ってまるで一家の大黒柱かのように新聞を読んでいる其の人物。
其れが今日はまるっきり見ていない。
だが外に出たわけでは無いようだ。


「そういえば・・・見ませんね。」
「そういえばって・・・お前気付いてなかったのかよ?」
「いや、だってイヴァンさんなら勝手に出てって何時の間にか戻りそうじゃないですか。」
「私も気になってたんだけど・・・何処行ったのかしら??」
「ま、俺は居ない方が清々するけどよっ!」


ジュリアがその言葉を聞いてキッとダリウスを睨む。
ジャックの発言も思いの外失礼だとは思うが、ダリウスの発言の方が気に食わなかったようだ。


「また逃ゲたようですね・・・全く。」


溜息を吐くクラウス。
その言葉に不思議そうにクラウスを見るジャック。


「逃げたって・・・何からです??」
「私から、ですよ。」
「クラウスさんから?」


可笑しいな、とジャックは考え込む。
イヴァンは他人に近付かれるのはあまり好まないが、クラウスを相手に避ける事はまず無い。
何かあったのだろうか、この二人に。

少し聞きづらそうにして、ジャックは尋ねる。


「もしかして、喧嘩でもしたんですか?」
「喧嘩?」
「だって逃げたって・・・。」
「しませんよ、喧嘩なんて。喧嘩らしい喧嘩なんて、昔なら分カリますが今となっては全クしてませんからね。」
「じゃあ逃げたっていうのは・・・?」
「これです。」


クラウスが手に持っていた物は箱である。
パッケージは如何にも美味しそうな棒状のお菓子・・・ポッキーの写真。
一体これが何だと言うのか。


「これを彼に食ベさせようと思ッタんですが・・・。」
「ポッキーを、ですか?でも・・・」


ん?と首を傾げるジャック。


「イヴァンさん、甘い物大丈夫でしたっけ?」
「嫌イですよ。」
「ポッキーは平気なんですか?」
「ポッキーも嫌イですね。」


あれ??


「じゃあそれを食べさせるって言うのは・・・?」
「彼へのほんのささやかな悪戯ですね。」
「・・・クラウス、それはちょっとイヴァンさんが可哀想だわ。」
「そうですか?」


きょとんとした表情のクラウス。
ジャックは未だにクラウスの考えが理解出来なくて困っているし、ジュリアは溜息を吐いた。
ダリウスはまじまじとクラウスの持つ箱のパッケージを見て、それがポッキーの中でも一番甘いと言われるものだと気付く。

そして一言。


「お前マジ酷ぇな。」
「どう致シまして。」


その微笑みに、今だかつて無い何とも言えぬ恐怖心を抱いたダリウスだった・・・。










私的感情等。 

July 25 [Tue], 2006, 23:08

辛い辛いつらつらら・・・
貴方の御顔が浮かんでく

消してけ消してけ記憶を爆破
貴方の御顔も消えてゆく

ほうら何も残らない
痛いものは残らない

それでも浮かぶはあの御顔
誰か誰かと叫びつつ

嗚呼手を伸ばすのは愚かさ故に・・・



無題 其の四拾 

July 20 [Thu], 2006, 0:29
好きなもの好きな場所好きな人。
みんなみんな、歪んでく。
私が壊して、歪んでく。

歪んでるのは君の方だよ。

気付いていたの、御免なさい。
歪んでいたのは私自身。
視界が思考が歪んでく、もうすぐ全てが歪んでく。
愛する程に歪んでく、嗚呼どうしたら戻れるだろう。

きっと、後戻りは出来ないけれど。



私的感情等。 

July 01 [Sat], 2006, 0:50



愛して愛して止まないから
その御顔を潰したくなるのであって
憎んでいるなんて滅相も

只殺意が芽生えますのは
貴女のその御顔が微笑んで
私がその瞳に居ない時

何を見ても宜しいのですよ
恐れないと言うのなら
何をしても宜しいのですよ
覚悟があると言うのなら



嗚呼死ぬ前の口付けを



無理に奪った唇に毒
注いだ液体流れる赤
もがき苦しむ姿さえ
嗚呼愛しいなんて・・・



”罪でしょうか私の愛は 罰でしょうかこの涙は”



神様兄弟 其の弐 

June 17 [Sat], 2006, 23:35



―微風の囁く言の葉、辿り着く場所は・・・。



「久しぶりだね」

草原に立ち、青年は呟く。
誰かに話しかけるかのように、微笑みながら。

「うん・・・皆何時もと変わらず元気だよ。」

だから大丈夫、と空を撫でる。
まるで其処に誰かが居るかのように・・・。



「ウィズリー」



ふと名を呼ばれて、ウィズリーは声がした方角を見る。
何時の間にか一人の青年が離れた場所に立っていた。
空の色に馴染まぬ濁った水色の髪、深く深海を思わせる蒼色の瞳。
青年は真っ直ぐにウィズリーを見つめていた。

「あ・・・レイス。」

ウィズリーは青年の名を呼び、嬉しそうに微笑む。
レイスはゆっくりとウィズリーの居る場所へ移動する。
それは歩いているように見えたが、見れば彼の足は地に着いていなかった。

「どうしたの?また暇になった??」
「まぁね。それより誰と話してたんだ?」
「うん、風とね・・・。」
「風?」

首を傾げるレイスに、ウィズリーは苦笑して答える。

「暫く此処を離れていた風が帰ってきたんだ。世界を一周して此処まで戻ってきて、とても楽しそうに話すから・・・。」

だからその話を聞いてたんだよ、と説明する。
ふぅん、と素っ気ない返事をするレイス。聞いた割に、興味は無さそうだ。

「ところで、今日はどうするの?」
「昼寝。」
「昼寝?」
「そう、疲れるんだよ。外の世界は」

そう言って、レイスは草の上に倒れこむ。
ウィズリーもつられるようにレイスの隣に横になった。

「他の世界の人間なんか見なきゃ良かったな・・・」
「なら世界から出なければ良かったんじゃ・・・?」

溜息を吐き、呆れ顔のレイスに不思議そうに問うウィズリー。
その問いに、少し考えてから答えるレイス。

「それは・・・良いんだよ、目的があるから。」
「目的?」
「此処に来る目的。ウィズリーに会いに来て、息抜きするっていう目的だよ。」
「僕なんかに会いに来なくても・・・」

良いんだ、それが。と呟くレイス。
聞き取れなかったウィズリーは聞き返したが、レイスは面倒だと言って答えなかった。



微風が辿り着く場所は、神様の元。
自然を愛し、自然に愛される心優しき神様の。
そして、何よりも彼に愛される・・・。










無題 其の参拾九 

June 14 [Wed], 2006, 23:26

頭に咲いた 花
私に巻きつく 蔦
白く輝く 身体



死後の私を見て下さい



きっと美しいと思うから



神様兄弟 其の壱 

May 07 [Sun], 2006, 23:43





―神とは世界を創りし大いなる力を持った存在であり、無形であり、また崇めるべき存在である・・・





「って言うけど」

青年は床に寝転がったまま話し始める。

「僕達、人間に何も言ってないんだけどね。」

青年の髪は薄暗い部屋の中でも金色に光り輝いていた。
床に転がる青年の傍に立つ一人の青年。

「人間とは身勝手な生物だからな。」
「そう思うのかい?」
「何時も思ってる。」

黒髪黒目の青年は、銀縁の眼鏡を指で押し上げる。
その表情は厳しい。

「我々を何だと思ってるんだろうな。」
「そう言うなよ、セージ。彼等だって色々あるのさ」
「何が」

セージと呼ばれた青年は、床に転がる青年を見下ろす。

「色々さ。彼等の人生は僕達にとっては短いけれど、彼等にとってはとても長い。
 その中で苦しい事や悲しい事があるとついつい、目に見えない存在に縋りたくなるんだ。」
「誰がそんな事を言っていたんだ?」
「人間」

青年は軽く答えたが、セージは表情を険しくして怒鳴った。

「貴様っ・・・また地上で悪戯をしたのかっ!?」
「そう怒らないでくれよ、ほんのちょっと遊んできただけなんだ。」
「何をしたっ!?」

上半身を起こし、両手を床につくとセージに向かって笑顔で答える。



「悪魔を放ったんだ、ある小さな村に飛び切り悪戯好きの悪魔をね。」



無邪気な笑みを浮かべる青年を、セージが睨みつける。

「何を考えているっ!?」
「僕だってたまには遊びたいさ。」
「貴様のはたまにじゃないっ!!」
「セージは厳しいなぁ・・・」

肩を竦めて立ち上がると、セージに微笑みかける。

「大丈夫だよ、彼等はそれくらいじゃあ歴史を止めたりはしないから。」

寧ろ新しい歴史が出来るんじゃないかな、と暢気な事を言う青年。
肩を落とし、ずれた眼鏡を直すセージ。

「他の兄弟達も最近、やたらと己の管理する世界に興味を示しているし。
 全く先が思いやられる・・・。」
「それは喜ばしい事なんじゃないかな?」
「そうとは思えんがな・・・」
「まぁ例え壊したとしても」





「もう一度初めから作れば良いんだよ。」





開かれた瞳は空色をしていて、刻まれた十字がやけに目に付いた。









神様は、酷い。 

May 07 [Sun], 2006, 0:13



―神とは何か・・・



神とは世界を創りし大いなる力を持った存在であり、無形であり、また崇めるべき存在である。



―人間とは何か・・・



人間とは神に愛され命を与えられた生物であり、神の意に背かぬ限り
神の慈悲と慈愛を受ける事の出来る生物である。





それは偽りの記録





神にとって世界とは箱庭。
人間を飼育するケージ。
観察する為に用意された都合の良い物。





人間達は知らない・・・





生まれてきた理由。

神に愛されている証だと思い込み、自らを神に選ばれた唯一の生物と思い込み、
其の他の如何なる存在をも凌駕する至高の生物と信じ込む。
その愚かさと言ったら嘆かわしい。



警戒すべきは神の真意。



神は人間達が考えているよりも遥かに偉大であり、またあらゆる生物の手の届かぬ位置に
存在する。
如何なる方法を以ってしても到底及びはしない存在・・・。



其れ故に屈折した精神の持ち主。



人間を生かすも殺すも神の気分次第。
何時、何処でどうやって死ぬかを気にする必要は無い。
其れは何時でも神の気紛れによって定められる運命である。

何も知らずに神に只従う人形、其れが人間。










神に残虐な死を与えられた子羊が。 

May 06 [Sat], 2006, 0:07



―何て事をしたのだろう・・・



私はただ、この殺戮の支配する世界を生き延びようとただ必死だった。

人を殺してしか生き延びる事の出来ない世界。
生き延びられる人数はその日決まる、増えたり減ったり。
それでもこの世界が成り立つ程度に抑えて・・・。

誰が決めているのかなど、誰も知らない。
遥か昔からこうなのだ。掟、唯一の法とも言える約束事。
皆それに従っている、逆らえば必ず何らかの形で訪れる死。
恐怖に怯えながら何時しか人を殺す事に慣れていく。
神に祈りながら、明日を生きていけるようにと。



祈りを捧げた後に、後ろから声。



「なかなか可愛いな・・・」



後ろを振り向きつつ素早く銃を向ける。
だが声の主に殺意は無く、銃を向けても微笑んだままだった。

「何を怯えている?」
「誰・・・」
「誰って、お前はよく知ってるはずだ。ほら、何時も俺に祈りを捧げるじゃないか。」

まさか。

「神様。お前がこの世で唯一縋る者。」

分かった?と私に微笑みかける少女。
まさか、こんな少女が神なはずがない。

「ふざけないでっ・・・!!」

そう、殺し合いは始まっている。
出会った瞬間から、明日を生きられるのは限られた人数だけなのだから。
銃弾が彼女の胸を貫通する。
だが・・・



「危ないな・・・」

彼女は生きている、胸に銃弾は貫通。

「神に逆らう気か?」

生きていられるはずが無い、人間ならば。

「信じていたのに?」

信じていた、神を。それを私は・・・

「期待を裏切ったな」

裏切った?神を、私が・・・。





「お仕置きは痛いぞ。」





神の手が私に伸びる。
私の頭を掴んだ手が、食い込んでいく。
私の身体は動かない。激しい痛みに涙が溢れ、呼吸が浅くなっていく。



グチャリ



・・・鈍い音を彼女が聞く事は無かった。
神は赤く染まった手袋をその場に棄てて去る。
赤く染まった手袋の隣に、頭の上半分を潰された死体が倒れていた。










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