第二章 其ノ三 

2008年01月10日(木) 17時12分
―現在。
忍は自室で椅子に座り、何をするでもなくただ外を眺めていた。
外は気が滅入る様な土砂降りだったが今の忍には不思議と雨の音や匂いが心地よかった。
「ぼうっと外を眺めてどうしたんだい?」
ふいに後ろから声がした。
振返ると、ニッコリと微笑み、紅茶が二つ乗ったお盆を持った龍馬がいた。
「...龍馬さん、いつも部屋に入る時はノックして下さいと言ってるでしょう」
「ノック?したよ?君が気付かなかっただけじゃないか」
「え?そうなんですか?」
「嘘」
「...」
「おや、これは重症だ」
いつもの忍ならば何かと言い返して来るのだが今回はそれが無かった。
「...何を考えていたんだい?雨は癒しの力もあるが過去を呼び覚ます事もある。時には忘れたい記憶さえも...」
(どうしてこの人はこんなに鋭いんだか...)
「昔の、昔の事を思い出していたんです」
ぽつりぽつりと忍は重い口を開く。
「...昔の事?」
「はい。父さんと出会って此所に来た事や、龍馬さん、貴方や清志郎と出会った事もです」
「君は此所に来てからどんどんふてぶてしくなったよねぇ」
「...龍馬さん、貴方は僕のセンチメンタルな気分を台無しにして楽しいですか?」
「楽しいよ」
即答だった。
「でも、私は褒め言葉のつもりで言ったんだ」
「...褒め言葉?」
忍は訝しげに龍馬を見やる。
「そう、褒め言葉。君は本当に明るくなった。最初はどこか気を使ってるというか、感情を押し殺す節があるとは思ってたんだ。」
忍はただ黙って龍馬を見据えている。
「今では君の笑顔を見ない日は無いぐらい君は笑ってくれている。...でも」
「...でも?」
「本当は見たくないけど、君の哀しむ顔や怒った顔はまだ見た事が無いんだ。本当に楽しい事しか無くて見た事が無いのならそれはとても素晴らしい事だよ。でも、そうじゃないだろう?君は此処迄一緒に来たのに、まだ心を開いてくれないのかい?」
ふと龍馬は悲しそうな眼をした。
「僕は...弱いから。だから一度でも泣いてしまうと今迄の分が全部溢れてくる...泣く訳にはいかないんだ。受け止めてくれる人がいると全て頼ってしまうから...」
ゆっくりと忍は言った。
それはどこか自分に言い聞かせる様だった。
「...忍、頼む。泣きたい時は泣いてくれ。泣かない事が決して強さの証だなんて思わないでくれ」
龍馬の声は微かに震えていた。
「...私も過去に自分を閉ざして、今の君の様に泣く事は弱い証拠だと思っていた。それをある人に言ったら思い切り殴られた事がある。」
「龍馬さんを殴ったの?」
龍馬はクスリと笑った。
「ああ、手加減なしでね。でもね、殴られたのは僕なのに殴ったそいつが泣いてたんだ」
「...なんで?」
「そいつは泣きながら、[全部一人で抱込むんじゃねぇ!それともそんなに俺達が頼りにならねぇのかよ!]って。私が皆に心配させない様にとしていた事はかえって皆を心配させていたんだ。」
「...今の僕みたいに?」
「...そうだね。辛い、苦しい、悲しいって気持ちを押し殺してついた嘘というモノはとても脆いんだ。忍、君が雨の日にどこか虚ろな眼をしているのも皆知ってたんだ」
「...う...嘘」
「本当だよ。君に触れると壊れるんじゃないかと思う程余りに弱々しいから何も出来ない、というか何をしていいのか分からなかったんだよ...本当に不甲斐ない」
悲しそうに龍馬は眼を伏せた。
「そんな...」
知らなかった。
自分が表に出さなければ皆が悲しむ事もない。
忍はそう安易に決め付けていた。
「僕は...皆にも辛い思いをさせてたの?」
忍の頬に涙が伝う。
「忍...」
龍馬は優しい眼で忍を見据えていた。
「泣いても良いよ」

ナイテモイイヨ...


忍の脳内に言葉が響いた。
その瞬間、堰を切った様に忍の眼から止めど泣く涙が溢れた。
「あ...うあぁぁぁあぁ!!!」







ひとしきり泣いた後、忍は赤く腫れた眼を擦りながら冷めた紅茶を手にしていた。
「ねぇ忍?」
忍が落ち着いたのを見て龍馬が切り出した。
「なんですか?」
「二つ教えてあげる。一つは泣かない事は決して強さじゃない」
「...はい」
「二つ目」
龍馬は真剣な顔から何時ものヘラヘラした顔になっていた。
「明日、二人程引越して来るからその子達の面倒お願いね♪」
「...は?」
ぽかんとする忍。
「じゃあね〜」

バタン

ドアの閉まる音で忍は我にかえった。
「ちょ...どういうことですか龍馬さっ...あれ?」
勢いよく扉を開けて龍馬に叫ぼうとしたがもうそこには龍馬の姿はなかった。

第二章 完



シリアスモード突入とおもいきや次回はまたギャグ寄りです
今時間がないので今回はこのへんで!m(_ _)m

夢≒現実 番外編 

2008年01月01日(火) 0時00分
注意:今回は番外編+お試しで本文は台詞と擬音オンリーとなっております。



清志郎(以下清)「新年あけましておめでとう!!!いや〜新年だぜ、新年!早いねぇ」
忍「テンション高いし、うるさいよ...」
清「なんだよ、感動のねぇ奴だな。子供だったら普通、恒例のお年玉とかでテンション上がるもんじゃねぇのか?」
忍「...あるの?お年玉」
清「俺からはねぇがな、龍馬の野郎にでも交渉してみりゃ良いじゃねぇか」
龍馬(以下龍)「あけましておめでとう。呼んだかい?」
清「うぉ!?どっからわきやがった?」
龍「細い事は気にしないでよ。それで、どうしたんだい?」
清「忍がよ、お年玉欲しいってさ」
忍「ちょ、誰もそんなこと言ってな...」
龍「お年玉、ねぇ...いいよ」
忍&清「え!?」
龍「ただし、ここで普通に渡したらこの話おわっちゃうし」
清「この話とか言うなよ」
龍「お正月という事で運試しも兼ねて、お年玉の金額はおみくじで決めるよ」清(サラリとシカトしやがった...)
龍「最高金額は僕の自腹で10万円でどうだい?」
忍&清「のった!!!」
龍「じゃあ僕の持ってるこの木箱に紙が入ってるから一枚取ってくれ」
清「用意周到だな...よし!じゃあ俺から!」
ゴソゴソ...
清「よし、これだ!」
カサカサ...
清「...なぁ、龍馬」
龍「なんだい?」
清「俺の紙には10ルピーって書いてんだけど...ルピーってなんだよ!!!」
龍「そんなことも知らないのかい?ルピーと言えばインドの通貨じゃないか」
清「そういうこといってんじゃねぇよ!!!普通は単位は円だろ!!!」
龍「僕は最高金額が10万円って言ったんだよ。別に円しかないだなんて一言も言ってないし」
清「お前って本当に根性曲がりだな」
龍「ありがとう」
清「...はぁ」
忍(僕も気をつけて引かないと大変な事になる気がする...)
龍「次は忍だよ」
忍「あ、うん今引くよ」
ゴソゴソ...
(...よし、これ!)
カサカサ...
忍「...ねぇ、龍馬さん」
龍「どうかしたかい?」
清「今度は何処の国があたったんだ?」
忍「国っていうか...京一って書いてるんだけど」
清「はぁ?!」
龍「あぁ、それはある意味一番の当たりかもね」
忍「...どういうこと?」
龍「その紙を持って父さんに直接ねだるのさ」
忍「え?!父さんに?」
龍「大丈夫、一応このクジ作ったの父さんだからいくらかはくれるよ」
清「じゃあ、あの自腹で10万円ってのは?」
龍「僕が君等に進んでクジ引いて貰う為のダウト(嘘)」
清「じゃあ10万円って書かれた紙は入ってねぇのか?」
龍「そんなお金あったら僕が欲しいよ」
清「一瞬でもお前を信じた俺が馬鹿だったよ」
龍「全くもってその通りだね。あ、忍、早く父さんのとこに行きなさい」
忍「あ、はい」



忍「父さん」
京一(以下京)「どうした?」
忍「えーと...お年玉下さい」
京「じゃあ京一と書かれたメモを引いたのかい?」
忍「あ、はい、ここに...」
京「...確かに。じゃあこれ引いて?」
忍「引くって?」
京「実は少し暇だったからもう一つ作ってみたんだ」
忍「はぁ...今度の中身はなんですか」
京「引いてからのお楽しみ♪」
忍(まったく...この人はこういうとこだけ真剣なんだから...)
京「ほら、早く早く。木箱は一緒だが中身は全然違うんだぞ!」
忍(何時になく楽しそうだな...何かあるのか?)
ゴソッ
ペタリ
忍「...ん?この感触は何?なんだかぬるっとして冷たい...」
京「さぁ、思いっきり引っ張り出してみなさい」
忍「へ?...引っ張り出す?」
忍(掴めるみたい...掴んでみよう)
ぐにっ
忍(うわ!やっぱキモチワルイ...それにかなり嫌な予感がする)
忍「...よし!」
忍(目を瞑ってでも、とにかく引っ張り出そう!)
ぎゅっ
ずるり
忍(なんか...長いモノみたい。怖い!けど、目を開けなきゃっ...!)
ちらっ
忍「あっ!!!ちょっ!!うわぁぁぁ!!!!」
べたっ
ずるずる...
京「あはははっ!ドッキリ大成功〜。相変わらず忍の蛇嫌いは治ってないみたいだね」
忍「父さん!今はそんなことどうでもいいから速くその這いずり回ってる奴どっかにやって!!!」
京「なんで蛇が嫌いなんだか...君はこんなに可愛いのにねぇ?」
蛇「シャー!!!」
忍「ひぃぃぃ!!!僕をっ!僕を見るなぁぁぁぁ!!!」
京「あはははは!!!」


京「クスクス...もう落ち着いたかい?」
忍「酷いよ父さん...なんでこんな無意味な事したんだよ?」
京「君はいつも済ましてて子供らしくないというか、ふてぶてしいだろう?」
忍「ほっといてよ」
京「だから正月ぐらい皆さんに意外な姿を見せてもいいかなと思ったんだ」
忍「それは...僕が決める事じゃないの?」
京「君は苦手なモノだけ伝えてリアクションせず帰るタイプだから駄目」
忍(...ちっ、当たってる)
京「まぁいいじゃないか、君にも人間らしい処はちゃんとあるってアピール出来ただろう?」
忍「はぁ...じゃあお年玉も結局は全部嘘だったんだね」
京「それならちゃんとあるよ」
忍「え!?」
京「ほら、ここに」
カサッ
京「はい、どうぞ」
忍「ほんとだ...開けて良い?」
京「どうぞ」
カサカサ...
忍「....」
京「どうした?」
忍「これ、何処のお金?」
京「インド。金額は10ルピー」
忍「何時までもしょーもない小ネタを引っ張るなぁぁぁぁ!!!」

番外編 了



あけましておめでとうございます!
ヤプログ!の機能を初めて活用して、年明けた瞬間にUPが実現!
つまり、これ書いてる時点ではまだ年は明けてないし、きっと明けた頃は寝てます。
多分爆睡中(笑
さてさて、今回は番外編で一話完結ということでキャラぶっこわしました(笑
やたら長いのに内容はかなり下らないorz
さらにチャレンジとして本来入る筈の普通の文章を一切排除。
読みにくい!
擬音や台詞だけで様子を伝えるのは凄い難しいです。
二度とやらん!
しかも説明的な台詞にならない様に(不自然にならない様に)すると話が分からなくなる...
普通の文章の有り難みを実感しました。
今回ははちゃめちゃになりましたが、本編はシリアスを保てる様(シリアスが残る様、の間違いか?)今年も頑張っていきたいと思いますのでどうぞよろしくお願いします!

祝! 

2007年12月13日(木) 22時03分
え〜と、今回は小説いったんお休みしまして、感謝の記事を!
遂にやりました、いや、やって頂きました1000HIT越え!
小説始めて、キャラもたってきた今日この頃...(しみじみ
イラストとか一切UPしてない(やり方わからん)こんなサイトもなんだかんだで1000回、一回キリの方もそうでない方も含め、沢山の方のアクセス故の事!
と、いう訳で急遽決定したのは年明け番外編企画!
まぁ読んだそのままなんですが、忍達が時代を無視してリアルタイムの新年を祝う小説アップしたいと思います!
本当は忍達の年賀状を(UPしてないだけでちゃんとビジュアル面の設定もあるのだ)希望者に無料配布っていう案もあったんだけど、誰も何も言ってこんかったらぶっちゃけ悲しいやん!
まぁ、年賀状本当に欲しいって人は(居たら)連絡下さい。
多分書いて送れるとは思います(^-^)v
では、これからも「イカれた奇術師の家」および、小説「夢≒現実」をよろしくお願い致しますm(_ _)m

第二章 其ノニ 

2007年11月22日(木) 19時19分
忍にとって、京一との出会いは偶然だとは思えなかった。
たまたま孤児院にやって来た京一が忍を偶然見つけた。
忍にとってこの偶然は偶然ではなく、必然的な事である様に思えた。
忍は京一の屋敷に行く途中、いろんな事を聞いた。
それによると、[ブラッディ・ジャッジメント]なる組織が存在し、(以後BJとする)金の力に飽かせて犯罪を堂々と犯す族などをターゲットにした暗殺組織だそうだ。
BJは国公認の組織らしいが、国家機密であるが故に公に出ることはまずないそうだ。
それゆえにその事を真実だと裏付ける証拠が見当たらない忍は少し疑念も抱いていた。
BJ、直訳すると「血の裁判者」
その名の通り、公では裁かれることのない者達を裁く。
この世の膿ともいえるそんな奴等を消して世界を浄化したいと願う忍には理想的な処であると言えた。
京一はそのBJの最高責任者らしい。
自分は孤児であり、騙して何処かに連れて行ったとしても何の得も無い事は明らかだった。
だからこそ疑いの念も徐々に減ってきたのだが。
京一は街で唯一の洋館に住み、少し変り者として扱われていた。
まるで映画の様な京一の生活に憧れを抱く者や嫉妬の念なのか日本人のくせにと批判する者もいた。
だが当の本人はそんな事は気にも留めていなかった。
屋敷の門から屋敷までの長い道の途中に一人の青年が立っていた。
遠くからみてもはっきりと解る美しい銀髪の青年はこちらの姿を見つけると嬉しそうに駆寄ってきた。
「おかえり。君が忍君?僕は龍馬。君の兄になるわけなんだが...」
「あ、初めまして。忍と言います。今日からお世話になります、龍馬さん。」
忍は自分の知る限りの丁寧な言葉を選び、深々と一礼した。
龍馬はというと、少し苦笑いして「龍馬さん、って...堅苦しいなぁ。龍馬でいいのに。せめて兄さんとか...」少し寂しそうだ。
「さすがにそれは僕が心苦しいので...」
「じゃあ私の事は龍馬さんでいいから敬語はやめてくれよ」
「...わかった」忍は戸惑いながらも返事をした。
龍馬は年が10も離れていたが優しく接してくれた。
忍は意外で仕方なかった。
忍の中で貴族や華族といった所謂上流階級の人間というのは、傲慢で下らないプライドと顕示欲の塊の鼻持ちならない人間ばかりだと思っていた。
だから気さくに接する京一や龍馬に対して、「こんな人達もいるんだな」と素直に自分の偏見に気づいた。
「じゃあ行こうか。」龍馬に声を掛けられ、忍は我にかえった。
その瞬間、「あー!!!」大きな声が響く。
声のした方を見ると、よく日に焼けた大柄な男が走って来ている。
男は半袖シャツの上にオーバーオールをきて、麦わら帽子を被っていた。
肩を少し過ぎた位まで伸びた長めの黒髪を後ろで一つに縛っている。
龍馬はなかなか身長が高く、180センチはあったが、目の前の男はどう見ても190センチはあった。
「ひっでぇ!龍馬、新しい奴が来たらすぐ教えろって言ったじゃねぇか!」
「今行こうとしてたんだけど...清志郎は気が早いんじゃないか?」
「お前がのんびりし過ぎてんだっての!」
「そうかなぁ...?」
清志郎にまくし立てられて頭を掻く龍馬。
龍馬の視界にはぽかんとした顔の忍がいた。
「あぁ、ごめんごめん。忍、この人は...」
「俺は庭師の須王清志郎ってんだ!敬語はつかわねぇからソコんとこ宜しくな!」
龍馬の台詞を遮って大きな声で自己紹介した。
「あ、はい。えっと、僕は忍といいま...」
「ストーーーップ!!!」
またもや人の台詞を遮る清志郎。
忍は何か失言があったのかと自分の台詞を思い返す。
「俺は敬語を使われんのも苦手なんだよ。だから使うな。というか敬語禁止」
「わかった。清志郎さ...」
清志郎さん、と言いかけたのだがギロリと睨まれてしまった。
「えっと、清志郎」
「おぅ!」
清志郎と呼捨てにすると、満足そうにニカッと笑った。
「ねぇ忍?」龍馬が語りかける。
その声は忍を諭す様に聞こえた。
「ここにいる人達は忍が今まで見て来たどんな人とも違うと思う。ここは皆が同じ立場の人なんだ。役割は違うけれど、誰が欠けてもダメで、家族であり仲間でありライバルでもあり...忘れないで欲しいのは今日から君もその仲間だって事」
とても優しい瞳をしていた。
不思議と引き込まれそうになる。
「...うん」
忍が深く頷くと龍馬は嬉しそうに忍の頭を撫でた。

第二章 其ノニ 了

ごめんなさ〜い(土下座
どんだけ更新して無いんだって話ですよね...
月1とか...月刊誌かよ(遠い目
今度はもうちょい更新スピード上げていけたらと思います。
多分無理なんだろうなぁ(殴
今回は本文が長いのとこれといった裏話もないんでこれ位で。
ではまた次回お会いしましょう!

夢≒現実 第二章「裁きと過去」 其ノ一 

2007年11月03日(土) 21時54分
忍は孤児だった。
孤児というだけで、親がいないというただそれだけのことで周囲からは同情の眼を向られた。
忍は賢かった。
忍は当時わずか12歳だったが、大人達が自分に向る眼の奥に潜む自己満足や優越感すらも理解していた。
「カワイソウニ...」嘘の悲しみの表情を堂々と浮かべた大人達は言う。
「いえ、大丈夫です。他の子達ともうまくやれてますし...楽しいですから」忍は何時もこう答えていた。
偽善者として、そして自分達に同情する人間に対しての百点の答えだった。
そして大人達はそんな忍をみて、満足そうに「そう?良かった...私も安心だわ。私達は貴方達のことだけを思っているの。何時でも力になるわね」
「はい、有り難う御座います」
忍はそんな言葉達が上辺だけの物でしかない事も知っていた。
それは過去の苦い経験からだった。
忍は[良かった?何が?アンタらが何にもしなくて済んで良かったって事かい?]と本心では思っていた。
そんな風に自分を押込めて苦しくなった時は、孤児院のそう高くない屋根の上で一人過していた。
文明開化の波を表すかの様に溢れ出る真黒なスモッグ。
空気は最悪だ。
屋根がそう高くないのと、スモッグの発信源である工場が近いこともあり、屋根の上は煤だらけだった。
だがその煤のお陰で他の孤児が近寄ることは無く、忍一人の空間が出来上っていたので邪魔と感じることもなかった。
何時もの様に人や車の波を見ながらふと(いっそのこと僕の手でこの世の醜い物を浄化出来たらな...)と思った。
意識せずに忍は呟いた。
「...全く、全部が狂ってるよ」
「私もそう思うよ」後から突然男の声がした。
振返ると、そこには美しく身なりを整えた紳士が立っていた。
忍はただ呆然と紳士を見上げていた。
「はは...僕の頭もいよいよおかしいかな」
「酷いな、君」幻覚に向いて呟いたつもりだったのに確かに自分に向けての返事が返って来た。
「君、いくつだい?」
「...12ですけど」
困惑しながらも答える。
「12!?その歳にしてその考えを持つとはずいぶんと老成してるんだねぇ」
紳士は悪戯っぽく笑う。
そんな紳士に不思議な感情を忍は抱いた。
自分とは正反対の、例えるならば陰と陽の様なイメージだった。
「...お言葉ですが、正面な神経が少しでも残っていればこう感じても当然だとは思いませんか?」
ふいに忍がきりだした。
その言葉に紳士は「正面な神経、か...私はむしろ君の様にそれを持ち合わせている人間がいる事に感嘆の意を表すがね」
「でも僕からすれば貴方の様に少しでも理解を示してくれる方が居る事事態が不思議ですけど?」
「違いない、だが君が老成してる事も違いないと思うよ」
紳士はクスリと笑う。
「...君の名は?」
紳士は急に真顔になる。
「...忍です。見てのとおり孤児なんで苗字はあってないようなもんです。貴方は?」
「お、光栄だね。私は村雨京一だ。一応華族という身分だよ」
「あぁ、やっぱり」
「何がだい?」
「いえ、その格好はそれなりの身分が無ければ御召しになることはないだろうと思ったもので」
「やはり君は賢い。私の元へこないか?」
突然だった。
あまりに突然すぎて理解がかなり遅れた。
「...理由をお聞かせ願えますか?冗談半分や気紛れならお断りします。」
「気紛れなんかじゃないさ。君は聞く処によると身体能力も高いそうだね」
「この孤児院の中での話ですけど」
「君はこの世の醜いものを浄化したいと願うかい?」
忍の返答を無視して尋ねる。
「はい、願わくばこの手で」
忍はというと、そんな事など気にも留めずに即答する。
「じゃあ君のその小さな手が...」
「例え僕のこの手が紅に染まろうとも僕は世界を浄化する」
京一への返事というよりは自分に言い聞かせる様に力強く言った。
「...そうか。なら尚更私の元へ来なさい。その術を教えてあげよう。君にとって良い事なのかは解らないがね」
「いえ、行かせて戴きます」
こんな会話から得られる相手の情報など何一つ無いというのに忍は不思議と京一を信用する気になった。
その後忍は正式に京一の養子になり、村雨忍として生きる道を決めたのだった。

第二章 其ノ一 了


久々の更新再開です!
原文だけはどんどん進むんですが、ここにUPしてる文と読み比べると全く違う話になってます(ヲイ!
「この表現の方がいいな」とか「この文要らないや」とかを繰返していった結果です。
でも更新してる文の方が確実に面白い物へと仕上っている自信はあります!
ただ、最近キャラ達が一人歩きを始めて手綱を取るのが難しくなって来てます(汗
ホントにあるんですね、キャラが作者の元を離れて行くのって(笑
キャラが成長しているのならその成長を十分に魅せてあげるのも作者の務めの気がします。
大口たたいてますが、その大口に見合うスキルをこれからも勉強していこうと思っていますのでぜひ今暫くお付き合い下さいm(_ _)m

お知らせ 

2007年10月13日(土) 21時11分
注意:今回はお知らせのみです

この家の管理人琉夜は一応学生の身なのでテストというモノも存在します
で、そういう訳なんで今週から2、3週間更新ストップします
せっかくヒット数も順調に増えてたのに...って感じもしますが(元々更新は亀並みに遅いんですけど)遅くとも11月にはまた長々とした小説が再開します。
いるかどうかは分かりませんが(多分いない)「夢≒現実」を楽しみに又は楽しんで読んで下さる方には申し訳ないです(>_<)
話は書いてるんですが、携帯に写すのがなかなか時間が掛かる作業なので(文章の手直しや追加を含むため)テスト期間中に更新は難しいと思ったので今回の様にお知らせしました。
次回からは簡潔に「テスト期間のため更新ストップ」というお知らせだけすると思います。
では勝手ですがまた今月末か来月始め頃にまたお会いしませうm(_ _)m

夢≒現実 第一章 其ノ四 

2007年10月11日(木) 8時45分
本気で落込む清志郎を尻目に忍は屋敷へと入っていった。
屋敷に入るとすぐに良く通る男の声がした。
男は黒いスーツを着ていて、透き通る様に白い肌の持ち主だった。
肌とスーツのコントラストもさることながら、ショートにカットされた銀髪もまた人の目を否応無しに引き付ける。
「おかえり、忍。今回はまた結構な出で立ちだねぇ」少し含み笑いをしながら男は血塗れの忍を眺める。
「...ただいま、龍馬さん」忍はゆっくりと龍馬と呼んだ人物を見やる。
龍馬は25歳という若さにしてこの大きな屋敷の主人でもあった。
この屋敷にある西洋の家具は先々代ぐらいから受け継いでいるらしいが、龍馬が主となってから購入したものも多々ある。
この屋敷の家具というのもかなり値は張るだろうが豪華絢爛といった折笠家の印象とはまるで正反対だった。
そんな家具達は龍馬の日本人離れした美しさをより引き立てていた。
龍馬の美しさに思わず見とれてしまう事は忍にも多々あった。
「で、今回の首尾は?」龍馬は忍から目を逸らす事なく話しかける。
「何時も通り、完璧ですよ。ただ...」
忍は言い淀む。
「...ただ?」そんな忍を龍馬は優しい声で促す。
だがその眼は決して笑っておらず、有無を言わさない響きだった。
忍はメシアを殺さなかった、いや、殺せなかった自分を悔いていた。
確かにリストの人間全員を間違いなく殺した。
それで何時も通り終わりになるはずなのに忍はどこか引っ掛かる、もどかしい気分だった。
この汚点とも言える事実を龍馬にしられたくない、瞬時にそう思った忍は、「ただ、今回のターゲットの多さに疑問があってね」別の疑問をぶつけた。
事実これは忍が聞こうとしていた事柄だったので嘘ではない。
「そうかい?珍しいね君がそんなこと言うなんて」
龍馬は相変わらず飄々とした態度だ。
「...いつもは家の人間だけだ。大家族だと言うのならば今回の人数も納得するさ。使用人まで殺す理由が何処にあると言うんだい?」
忍は暗殺者であった。
年齢などは問題では無い。
優れた資質があるがゆえの現状であり、忍はそれに対して神に感謝することもなければ恨むこともなくただ事実を享受していた。
忍が暗殺を命じられるのは決まってこの世に害をなす組織や人のトップであり、それと同時にその後を継げる後継者や深く関与している者だけだった。
「なんだ、そんな事を気にしていたのか。大した情報すら持たなさそうな人間まで殺して何になる、と?」
「そうだ」忍は一度メシアの事を忘れその事に意識を集中させる。
「...やっぱり君は優しいね、忍。でも私はやり方を変えたわけでも何でもないよ。アイツらは全て知っていた、いや、使用人ですらないよ」
「...使用人じゃ、ない?」忍は訝しげな眼で龍馬を見やる。
「あぁ。私は以前折笠の館に個人的に招かれた事があってねぇ。あの強欲ジジイは暗殺の取引を持ち掛けて来た。」
「え?!」「はは、もちろんその場は誤魔化したよ。私が行った時いたのはそのリストのメンバーだ。私にも多少の武術の心得があるのを知ってた様でね、みんなナイフやら拳銃やら持っててあぶなっかしいったらなかったよ」
驚きを隠せないでいる忍を気にも止めずに、龍馬はまるで昨日の夕食のメニューを話すかの様に軽く喋っている。
「ちなみに今回はその返事をする機会として忍、お前を向かわせた事になっている」
「通りで...武器に頼りきっている辺り大した奴らはいないと思ってたが単なる使用人にしては強いと思った」
「でも、折笠って言うのはかなりの小物で相手にする価値もない、貴方にそう教えられたのですけれど?」
龍馬はクスリと笑って「アイツは最近都合のいい後盾を手に入れた様だよ。
力の無い者が笑わせてくれるよ。ただアイツの後ろの力は間違いなく本物だ。だとするならアイツにも殺す価値くらいは生れるのさ。それに...」
「...それに?」
龍馬の意味深な態度に思わず忍は聞き返す。
「私はアイツの趣味の悪さには耐えられないんだ」

第一章 其ノ四 了
第一章 完



やっと第一章終わりました〜!!!
ながい!
これでもだいぶ中身削ったんだよなぁ...orz
次の章では忍の過去と暗殺に携わるきっかけを書いて行きますので長々しいですがどうぞお付き合い下さいm(_ _)m

夢≒現実 第一章 其ノ三 

2007年10月07日(日) 21時54分
折笠の館を後にした忍は街に戻ることにした。
忍の行き着いた先は街で一番の大きさを誇る洋館だった。
折笠家も結構な場所だったが、その場から流れる荘厳な雰囲気はとても敵うモノではなかった。
忍は表にある大通りには出ず、そうっと裏手に回った。
メシアと名乗る少女との会話は現実味を帯びず、まるで白中夢を見ているかの様だったが、白中夢では無いことを顔や服にこびりついた血痕がありありと物語っていた。
屋敷の裏手にはおよそ5mはあろうかという鉄で出来た柵が屋敷を取り囲む様に存在した。
忍は柵に手を掛けると、軽々とよじ登り、一番上まで来るとヒョイと飛び下りて屋敷に侵入した。
忍が着地した瞬間、「忍〜!!!」少し離れた所からよく日に焼けた大柄な男が駆け寄って来た。
「忍、入るんならそこの裏口使えって何時も言ってんだろ!」そこの、と男が指差した先には確かにしっかりと施錠されてはいるがドアらしきモノがあった。
「はぁ...あそこの鍵、一々取るのめんどくさいんだよね。もっと楽な置き場所無いの?清志郎」ぶっきらぼうに返事をする忍。
清志郎と呼ばれたその男は、この屋敷の庭師だった。
キップのいい清々しい男で、どこか江戸っ子を彷彿とさせる。
そんな男らしさに似合わず、庭の手入れは繊細の一言だ。
清志郎の庭師としての腕前はかなりのモノだった。
「楽な置き場所ぉ?んなもんねぇよ!防犯のために隠してんだからすぐ分かったら意味ねぇだろ。大体お前が裏から帰って来る時は大概血塗れだろ?そんな手で触ったドアや柵は誰が掃除すると...!」
清志郎はやたらと細い小言を忍にまくし立てる。
忍は清志郎を見て溜息を吐いて、「...清志郎のオッサン主夫」ボソッと呟いた。
清志郎の外見は不精髭がめだち、どう見ても30代前半だった。
清志郎はというと、忍の呟いた言葉をハッキリと聞いていた。
「オッサン言うな!!!」(あ...バレた)忍の頭には反省という文字はない。
清志郎も清志郎でオッサンしか否定しない辺り主夫という事は認める様だ。
「大体なぁ、俺ぁまだ27なんだよ!20代のおにーさんを掴まえてオッサン呼ばわりはないだろ!」
「...そんなに若かったっけ?」忍は嫌味などではなく真顔で聞く。
「じゃあお前俺を何歳だと思ってたんだよ...」
忍は清志郎をまじまじと見つめる。
その後何故か考え込んでいる。
清志郎としては、悩まずにさっと実年齢を言ってくれるという期待があったために少し忍の態度には不服の様だ。
「35歳」ふいに忍が呟いた。
予想より遥かに高い年齢を言われた清志郎は怒りを通り越して本気で凹んでしまった。
清志郎はその場にうずくまり、地面に[の]の字を書き出した。
「あ、そんなことより清志郎、龍馬さん何処か知らない?」
「そんなこと、って...龍馬ならいつもの書斎だろ」
清志郎は声が震えてマジ泣きしている。
「そう、ありがとね」
そんな清志郎を慰めるでも無く忍は屋敷へと入って行った...

第一章 其ノ三 了


えーと、今回はほんとは龍馬も登場の予定でしたが、忍と清志郎との会話が長引いたので名前しか出せませんでした(涙
ちょっとここでネタバレって程でもないですけど、龍馬、清志郎、忍の関係性を軽く説明します。
(別に読まなくてもストーリーは楽しめるし、第二章で詳しく説明するので先の展開は知りたくないって方はブラウザバックプリーズ。)
いや、気になるって方だけレッツスクロール









龍馬は由緒ある華族の長男で今回出て来た屋敷の主でもあります。
清志郎はその屋敷の庭師で、敬語を使わずに龍馬と呼び捨てにしているのも理由がちゃんとあります。
理由はまだヒミツです(大したことじゃありませんけどニ章でポイントになるので)
忍はこの屋敷に住んでますが、どういった立場なのかもよく考えればまだ言えませんでした(汗
言えることは忍は使用人では無いってことぐらいですかね
次回は龍馬と忍のやりとりにも注目!
そして上手く文がまとまれば折笠家についての秘密も明らかに!?(無理のある盛り上げ方...orz)
次回をお楽しみにm(_ _)m
関係ないけど小説書き出してから明らかにヒット数増えてるみたいです。
ありがとね〜!!!

夢≒現実 第一章 其ノニ 

2007年10月05日(金) 23時36分
忍は玄関までたどり着いた。
何故か少し感傷的な気分になって、今までいた館をもう一度見回してみる。
そこにはまだ人の活動していた気配がありありと残っていた。
厨房から流れる紅茶の香り、隅にどけられた掃除用具...
そこは、現代で言うならばマリーセレスト号を思わせた。
恐らくはこんな風に人だけがその空間に存在しないのだろう。
ただ、この場合人はちゃんと別の場所にあるのだが。
忍は少し寂しそうな眼をした後玄関のドアに手を伸ばした。
ドアが重々しい音をたてて開く。
ドアの向こうでは太陽は眩しく、空気は澄み切っていた。
見渡せば只鬱蒼とした森が生い茂っているだけ...の筈だった。
そこには明らかにそぐわない、蒼白い顔をした少女が立っていた。
少女は美しい華が描かれた赤い着物を着ていた。
晴着ではなく明らかに普段の装いとして身に纏っている辺り、どう見ても庶民とは思えない。
忍とあまり背丈は変わらないが、紅をひいているのか、妙に紅い唇が彼女をより大人びた印象にしている。
少女は微動だにすることなく美しい微笑みを忍に向けている。
何故か忍はその微笑みに寒気を覚えた。
忍は少女の瞳をじっと見つめる。
(こんな山奥で何をしている?)(それより此所は折笠家の私有地のはず、と言う事は折笠の関係者?)(僕の血まみれのこの姿を見ても微笑む子の娘は一体?)
次々に忍の脳内に疑問が沸きあがる。
「...のね」ふいに少女が言葉を発した。
「今...なんて?」
固まっている忍に対して少女は微笑みを崩さぬまま話す。
その声には悲嘆や恐怖といった感情は全くみられない澄んだ声だった。
「あなた...この家の人間全員...殺したでしょ?」
忍は心を掻乱された。
だが何とか落着払った表情を造る。
「何の冗談です?」
「あら、私冗談なんて申しておりませんわ。あなたこそ、言い訳なさるならその血を全て拭き取ってからおっしゃれば?」
少女はクスクスと笑う。
そこだけ見れば忍と何ら変わらぬ年齢の少女に見えた。
(こいつが何者かは分からないが...害をなすなら殺すか...?)
少女から眼を放さず、なおかつ気取られない様にズボンのポケットに突っ込んだサバイバルナイフに手を伸ばす。
ナイフに触れる瞬間、「まぁ、そんな恐い顔なさらないでくださる?」
少女は突如話しかけて来た。
「僕、そんなに恐い顔してましたか?」
「ええ。まるで私を殺そうとでもしている様でしたわ」
「それはまた笑えない冗談ですね」
「そうですわね、でも冗談は冗談。軽く流して下さいな」
少女の瞳は笑っておらず、忍に警告している様だった。
忍はナイフから手を離した。
小さく溜め息を吐いて、「君は何者だ?」と聞いた。
少女は少し考えてから、「私訳あって今身分を明かす訳にはまいりませんの、ですからメシアとでも呼んで頂けるかしら?」
「救世主(メシア)ね...大それた名前だな」
「あら、そう?とにかく、今日は貴方の顔を見に来ただけですし、これで失礼しますわ。また会いましょうね、シノブさん」
メシアと名乗る少女は次の瞬間にはもういなかった。
「はは...なんだあいつ...僕まだ名乗ってすらないし...人間か?」
少年の紫の瞳にはやけに鮮明に少女の紅い唇が焼き付いていた...

第一章 其ノニ 了



今回はちょっと長いです。
元よりだいぶ文章も足し、イイ感じになったんではないかと思います!
最初はメシアちゃんはもっと気さくなキャラクターでした。
謎の少女っていうポジションは変わりませんけど(笑
で、ミステリアスな雰囲気を出すために言葉も気を遣ったりしてみました
当初は言葉をあまり発せずに行動をすることで不気味になればと思っていたのですが、(一応)小説だし、腹の探り合いみたいな緊迫したシーンの方がかっこいいかもと思って急遽変更(汗まだまだ自分の文章の未熟さを思い知らされます(涙
次は新キャラもやっと登場致しますので次回もお付き合い下さいませm(_ _)m

夢≒現実 第一章「紫の瞳と赤い唇」 其ノ一 

2007年10月04日(木) 10時27分
一人の少年がいた。
名は[村雨忍]といった。
彼は本来人間の持つ筈の無い紫の瞳を持っていた。
今の彼は一言で言うならば[惨劇からの生還者]と言った処だろうか。
上品なブラウスは半分が美しい紅に染まり、子供らしさの表れる黒い半ズボンもべっとりと重く濡れていた。
肩にかかるサスペンダーも片方が千切れて足下までぶら下がる紐に成り下がっていた。
あどけない顔にも容赦なくその飛沫は降り懸かったのだろう。
頬は赤く、頭から伝うそれもまるで涙の様だ。
ただ、今の中には一つ間違いが存在する。
[惨劇からの生還者]、これが大きな間違いだった。
なぜなら彼はこの惨劇から生還して当然の人間だからだ。
彼を赤く染め上げたその血は全て、一滴たりとも彼のモノでは無かった。
今の彼は[惨劇からの生還者]ではなく[惨劇を終えた殺人鬼]だった。
「ふぅ...やっと終わった」忍は溜息を吐く。
忍が今いる場所は山奥に位置する洋館だった。
街からも遠く、普通の人間はまず来る事はない。
なかには豪華な西洋風の家具や調度品が所狭しと見受けられる。
まるでこの屋敷の主の財力を物語っている様だ。
忍は薄い巻紙を取り出し、几帳面な字で書かれたそれを眺める。
やがて一息ついて、「折笠権三・63歳、同-百合子・58歳、同-博・36歳、同-美佐子・32歳、次は...使用人か...えっと、桜49歳に義男70歳...」この家の人間のリストだろう。
一人一人ゆっくりと読み上げる。
「...よし、これで30人全員だな。作戦完了」そう呟くと忍は玄関に向かって歩き出した。
広い館にこだます小さな革靴の音の向こうには、30体もの死体が転がっていた...
第一章 其ノ一 了


はい!いよいよ本編に入りました〜
ほんましんどいorz
うちの場合ノートに話を書いて、それを訂正、文の追加などを行いながらアップしてます。
何度も消しながら書いたりして、直前で差し替えたりも一杯(汗
今回被害者の折笠一家は名前思い付かなくて最初は鈴木一家だったからね(実話
これはかなり先まで書いてるんすよ実際。
この第一章はノートでは其ノ一と其ノニで終わってるんですが、うちの体力の都合で中身は一緒やけどちょっと細かくして其ノ四までにしようと思います。
かなり長くなりそうなのでヾ(^_^;
では次回をお楽しみに(楽しみにしてる人いるのか?!)m(_ _)m
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