第2話

November 01 [Thu], 2007, 8:42
愛美 小学2年生   2月
「おはよう。ねぇ、愛美はさぁ、身長も大きいし体つきもしっかりしてるんだもん。どう?バレーやってみない?」
クリーン作戦の寒い日の朝、ご近所でなじみの百合亜ちゃんママが、クチャクチャになったお菓子のゴミを拾いながら突然話しかけてきた。
「おはよう。バレー?どうしようかなぁ・・・。」
空き缶を拾いながら、あまり興味もなく答えた。しかし、ご近所のママ友達からの誘いでもあるし、無下にはできない。
「じゃぁ、今度、愛美と一緒に見学に行ってみようかな。」
私は、空き缶を袋の中へポイと入れながら、当たり障りのない返事をした。すると、
「じゃ、監督に話しとくね。」
ゴミを拾う手を止め、私の顔の前に顔をグッとだしてきて、とびきりの笑顔で言った。
マズイ。この目は真剣だ。断れない。やる気ないなんて言えない・・・。
そう思いながらも、
「あ、じゃぁよろしくお願いします。」
と、百合亜ちゃんママの顔を見て、いかにも行く気満々な感じの笑顔で答えた。
その瞬間、己の優柔不断さをのろった。
どうしようかな・・・と考えていたが、まぁ考えても仕方のないことなので、愛美に相談することにした。
「ねぇ、まなちゃん。百合亜ちゃんのお母さんがね、愛美にバレーをやってみないかって言ってたの。百合亜ちゃんも始めたんだって。どう?一度見学にいってみる?」
そう言うと、
「バレー?百合亜ちゃんやってるの?見学に行ってみたい。」と屈託のない笑顔で明るく、元気に答えた。百合亜ちゃんは同じ通学班の4年生で、愛美の面倒をよくみてくれ、愛美の大好きなお姉さんなのだ。
まぁ、見学に行くだけ行って、後は気乗りしないと伝えばいいか。とりあえず約束は守ったし。などとお気楽に考えていた。
 早速、市の体育館へと足を運んだ。
そこには、小学2年生〜6年生の女の子が20人くらいで練習をしていた。
「こんばんはぁ。」
私はキョロキョロしながらおそるおそる体育館の中へと進んでいった。
「こんばんはぁ。」
と、練習している子供達が一瞬手を止め、私達の方を見てペコリと頭を下げ挨拶をしてくれた。そしてすぐにまた練習を始めた。すると、5頭身くらいのちょっと小太りした中年男性が、コートの端っこから小走りに近づいてきた。
「見学の方ですか?」
ちょっと息をきらしながら聞かれた。この息をきらしてる人が監督なのか?
そう思いながらあたりを見回しても、それらしい人物は見当たらない。どうやらこの人が監督らしい。このメガネをかけている人が監督なのかぁ・・・と、自分の中で創造していた人物とはあまりにもかけ離れていたのでちょっと拍子抜けした。
「あ、はい。そうなんです。」
と、慌てて答えると、男性は、
「そうですか。今、何年生なんですか?」
と、愛美を見ながら聞いてきた。
「あ、今、2年生なんです。」
と、答えながら愛美の肩を抱いた。愛美は少し照れたように、その男性に微笑んだ。
「2年生ですか。今2年生は3人いるんですよ。」
と、愛美に笑顔を返した後、振り向きながらコートの中で練習している小さな女の子達を指差して言った。
「へぇ。そうなんですか。あそこにいる子達ですか?」
と、一番小さな子達の集団に目をやりながら聞くと、
「そうです。あの子達は、2年生になってすぐに始めた子達なんですよ。とりあえず今日は、ゆっくり見学してってください。」
と、コートの方へまた小走りに帰っていった。
愛美と二人で練習風景を眺めていたが、体育館は寒いし、なにより知らない子達の練習をずっと眺めていても楽しくはないのですぐに帰ることにした。
「どうもありがとうございました。」
と、先ほどのコートの端っこにいる男性にむかって頭を下げながら言った。
男性も小さくおじぎをし、すぐに練習している子供達に目を向けた。
 私と愛美は、体育館を出て小走りに駐車場までかけていき、車へと乗り込んだ。
「どうだった?」
エンジンのキイをまわしながら愛美に聞くと、
「やってみたい。すっごくやってみたい。バレーやりたい。」
と、はしゃぎながら愛美が言った。
「え?やりたいの?」
やりたいという答えが返ってくるとは考えてもみなかったので、ちょっと驚いた顔で愛美の顔を見てもう一度聞いた。
「本当にやるの?」
「やる!」
愛美は、意を決したように私のほうをまっすぐ見ながら言った。そのまなざしは、今までに見たことないくらい強いものだった。
「そうかぁ。じゃぁ、パパと相談してみようね。」
と言い、すぐに車を発進させた。
あ〜。週2回の練習かぁ・・・。こりゃぁ、パパとおばちゃんの協力を得ないとできないなぁ。ちゃんと了解を得ないとなぁ・・・などと車の中で考えながら運転をしていた。
家に着くと、愛美はすぐに車から降りて、玄関へと走っていった。
きっと、パパに自分から話したいんだろう。
私が車から降り、玄関を開けると、家の中ではやや興奮気味の愛美が、パパとおばちゃんにさっきの出来事を甲高い声で話していた。
「それでね、それでね、まなちゃん、どうしてもバレーやりたいの。いいでしょう?パパ、いいでしょう?」
パパの顔を覗き込むように、目をウルウルさせながら聞いていた。
あ〜。そんな顔でお願いされたら、愛美のことが大好きなパパは「いいよ」って言うに決まってるよ。と思ってみていたら案の定、
「いいよ」と、デレデレ気味で答えていた。
やっぱり・・・。
「でもね、愛美、何事にもおいてそうだけど、中途半端ではいけないよ。自分でやりたいって決めたなら、きちんと6年生までやるんだよ。」
と、父親らしい事も話していた。
「うん。最後まで頑張る。」
愛美は、大きくうなずいてニッコリ笑った。
お姑さんの了解も得て、こうして愛美はバレーを始めることになった。
これが、私達のバレー生活の始まりである。

第3話

November 01 [Thu], 2007, 8:44

  愛美 小学5年生
月日の流れは早いもので、愛美はあっという間に5年生になった。入団した当時は3人だったのに、今では5年生の団員は7人になった。愛美を誘ってくれた百合亜ちゃんは去年卒業した。
5年生になると、練習も本格的で、6年生と共に行動しなくてはならない。
といっても、その6年生が今年は2人しかおらず、5年生7人と計9人で動くこととなるのだ。
主な練習日は、火曜日・木曜日・金曜日は夕方6時から8時までとなり、土曜日・日曜日・祝日は、朝から夕方までびっしり練習試合が組まれており、当番制で保護者が付き添うことになっている。
近隣の県へ出向くことが多く、正直費用はバカにならなかった。
それでも、かわいい我が子たちが一生懸命に頑張る姿は凛々しくもあり、頼もしくもあり、私たち保護者は張り切っていた。
 少年団のスポーツにも、後援会として、保護者会長1名、副会長2名、会計1名、監査1名が選出される。会長、副会長1人、会計、監査は6年生がやり、もう一人の副会長は5年生がやることになっている。この役員選出は、保護者間で決めることになっているものであり、監督・コーチにはいつも事後報告とされている。
今年は、6年生が2人しかいないので、当然ながら、会長・副会長はすんなり決まった。しかし、5年生からの役員選出をどうするか・・・。結局話し合いの結果、推薦となり副会長には私が、会計には優ママが、そして監査には4年生の千絵ママが選ばれた。
まぁ、メインは6年生なのだから、私自身何かやるということはまずないだろうと軽い気持ちで副会長を引き受けた。実際、昨年の5年生の副会長だって何一つ役割を果たしていなかったし、まぁそんなもんだろうと安心していたのだ。
 しかし、その安心とは裏腹に、一年間の行事などをどのように運営していくか、いろいろ決め事を話し合わなくてはならなかった。
バーベキュー大会の事、クリスマス会の事、バス代の事など、そして、今年は10周年記念パーティーという大きな行事もあり、とにかく決める事が多かった。役員が毎年こんなに大変な思いをしていたなんて、全く知らなかったので、改めて役員の大切さを身にしみて感じた。まぁ、それでも私は6年生についていく立場でもあるので、6年生の意見や、アドバイスをしっかり受け、自分なりに頑張っていたつもりだった。

ある日、監督側からユニホームを新調したいという申し出が会長にあった。
こういう申し出があった場合、5、6年生全員を集め、皆で話し合うという決まりもある。全員に集合をかけた。
子供達が練習している体育館のホールのベンチに座りながら、全員が集まったところで、会長から、
「監督とコーチから、新しくユニホームを12着作るのはどうだろうかって持ちかけられたんだけど・・・。どうかな?」
モゾモゾしながら歯切れの悪い話し方で切り出してきた。これでは監督達が何を求めているのか他の保護者には伝わらない。
「監督たちは、作りたいって言ってるの?それとも、保護者の一存に任せるって言ってるの?」
5年保護者の里奈ママが聞いた。里奈ママの質問は、5年保護者全員が聞きたい質問でもあったため、皆うなずきながら会長をみた。
うちのバレーの方針は、監督・コーチの意見や要望は、会長だけがコーチのところへ呼ばれ、コーチから「監督の意見です。」と伝えられ、それを会長が保護者へ伝えるという決まりになっている。一保護者の意見は、会長を通すように、そして、監督・コーチに気安く話しかけてはいけないという決まりになっており、それは代々いわれている暗黙のルールらしいのだ。だからいつだって、大切な話は会長しかしらない。それゆえ、監督・コーチは何をどうしたいのか、会長はしっかりと把握しなくてはならない。
この、監督・コーチというのは夫婦で、10年以上もスポーツ少年団でバレーを教えている人たちで、自分達の意見は何が何でも通すタイプなのだ。だから、監督とコーチの意向をしっかりと理解していないと、後で揉め事になる。
「ん〜・・・。どっちなんだろうなぁ。でも、うちらが決めていいみたいなこと言ってた気もするんだけど・・・。」
しどろもどろに会長が答えた。どっちなのかはっきりしない会長の答え方に苛立ちを隠せない保護者もいた。
しかし、まぁそこは大人なのでやんわりとことが運ぶよう
「私たち5年保護者は、6年生についていく立場だから、6年生の2人が作りたいっていう希望があるのなら、私たちはその意見に賛成ですから。」
と、未来ママがバックアップ体制をおしまないよという意思表示をした。
すると、
「う〜ん・・・。うちらは今年で最後だし、そのユニホームを新調しても何回着れるかわからないしなぁ・・・。まぁ雪絵がほしいって言うんだったら、新調してもいいのかなぁっても思うし・・・。」
会長が困ったような表情で、下を見ながら答えた。
「私はいらねぇよ。だって、今、5月だろう?出来上がるのが6、7月だとしても12月には引退だし、そう考えると、やっぱりいらないよ。今ので十分だよ。」
と、副会長でもある絵美ママはきっぱりと言った。絵美ママは、3人の娘をもつママであり、皆このバレー少年団に入っていた。その末っ子が現在6年生である。そんな大ベテランの絵美ママの一言は、5年生保護者にとって影響は大きいものである。
また、絵美ママの言うとおり、1万5千円くらいするユニホームを12着新調すると、1人あたりの負担額は大きい。団員全員からお金を集めるといっても、団員は全学年を合わせても18人。それに、今の小学2年生がユニホームを着るころには、またボロボロになっている恐れもある。だとすると、どこの学年までお金を集めるか、また、そのユニホームは団へと寄付になるなど、お金に関しての事だけに問題は大きい。
「じゃぁ、6年生がいらないって言うんじゃ今回のユニホームの件は新調しないということでいいですか?」
と私が皆の意見を聞くと
「いいんじゃない。6年生がいらないって言うなら、私たちはそれでいいよ。」
と、5年保護者は口々に言った。また6年生保護者もそれでいいと大きくうなずき、新しいユニホームは作らないという全員一致の意見でまとまった。これで話し合いは終了し、今回の話し合いを会長が、監督・コーチに伝えるだけとなった。
P R
プロフィール
  • ニックネーム:ゆう
読者になる
書いてみようと思うんです。
いろんなこと・・・。
ありのままのこと・・・。
この出来事には、一体どんな意味が含まれているのか知りたいんです。
だから、誰か教えてください。
この意味を・・・・。
最新記事
最新コメント
2007年11月
« 前の月  |  次の月 »
1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30