第3話

November 01 [Thu], 2007, 8:44

  愛美 小学5年生
月日の流れは早いもので、愛美はあっという間に5年生になった。入団した当時は3人だったのに、今では5年生の団員は7人になった。愛美を誘ってくれた百合亜ちゃんは去年卒業した。
5年生になると、練習も本格的で、6年生と共に行動しなくてはならない。
といっても、その6年生が今年は2人しかおらず、5年生7人と計9人で動くこととなるのだ。
主な練習日は、火曜日・木曜日・金曜日は夕方6時から8時までとなり、土曜日・日曜日・祝日は、朝から夕方までびっしり練習試合が組まれており、当番制で保護者が付き添うことになっている。
近隣の県へ出向くことが多く、正直費用はバカにならなかった。
それでも、かわいい我が子たちが一生懸命に頑張る姿は凛々しくもあり、頼もしくもあり、私たち保護者は張り切っていた。
 少年団のスポーツにも、後援会として、保護者会長1名、副会長2名、会計1名、監査1名が選出される。会長、副会長1人、会計、監査は6年生がやり、もう一人の副会長は5年生がやることになっている。この役員選出は、保護者間で決めることになっているものであり、監督・コーチにはいつも事後報告とされている。
今年は、6年生が2人しかいないので、当然ながら、会長・副会長はすんなり決まった。しかし、5年生からの役員選出をどうするか・・・。結局話し合いの結果、推薦となり副会長には私が、会計には優ママが、そして監査には4年生の千絵ママが選ばれた。
まぁ、メインは6年生なのだから、私自身何かやるということはまずないだろうと軽い気持ちで副会長を引き受けた。実際、昨年の5年生の副会長だって何一つ役割を果たしていなかったし、まぁそんなもんだろうと安心していたのだ。
 しかし、その安心とは裏腹に、一年間の行事などをどのように運営していくか、いろいろ決め事を話し合わなくてはならなかった。
バーベキュー大会の事、クリスマス会の事、バス代の事など、そして、今年は10周年記念パーティーという大きな行事もあり、とにかく決める事が多かった。役員が毎年こんなに大変な思いをしていたなんて、全く知らなかったので、改めて役員の大切さを身にしみて感じた。まぁ、それでも私は6年生についていく立場でもあるので、6年生の意見や、アドバイスをしっかり受け、自分なりに頑張っていたつもりだった。

ある日、監督側からユニホームを新調したいという申し出が会長にあった。
こういう申し出があった場合、5、6年生全員を集め、皆で話し合うという決まりもある。全員に集合をかけた。
子供達が練習している体育館のホールのベンチに座りながら、全員が集まったところで、会長から、
「監督とコーチから、新しくユニホームを12着作るのはどうだろうかって持ちかけられたんだけど・・・。どうかな?」
モゾモゾしながら歯切れの悪い話し方で切り出してきた。これでは監督達が何を求めているのか他の保護者には伝わらない。
「監督たちは、作りたいって言ってるの?それとも、保護者の一存に任せるって言ってるの?」
5年保護者の里奈ママが聞いた。里奈ママの質問は、5年保護者全員が聞きたい質問でもあったため、皆うなずきながら会長をみた。
うちのバレーの方針は、監督・コーチの意見や要望は、会長だけがコーチのところへ呼ばれ、コーチから「監督の意見です。」と伝えられ、それを会長が保護者へ伝えるという決まりになっている。一保護者の意見は、会長を通すように、そして、監督・コーチに気安く話しかけてはいけないという決まりになっており、それは代々いわれている暗黙のルールらしいのだ。だからいつだって、大切な話は会長しかしらない。それゆえ、監督・コーチは何をどうしたいのか、会長はしっかりと把握しなくてはならない。
この、監督・コーチというのは夫婦で、10年以上もスポーツ少年団でバレーを教えている人たちで、自分達の意見は何が何でも通すタイプなのだ。だから、監督とコーチの意向をしっかりと理解していないと、後で揉め事になる。
「ん〜・・・。どっちなんだろうなぁ。でも、うちらが決めていいみたいなこと言ってた気もするんだけど・・・。」
しどろもどろに会長が答えた。どっちなのかはっきりしない会長の答え方に苛立ちを隠せない保護者もいた。
しかし、まぁそこは大人なのでやんわりとことが運ぶよう
「私たち5年保護者は、6年生についていく立場だから、6年生の2人が作りたいっていう希望があるのなら、私たちはその意見に賛成ですから。」
と、未来ママがバックアップ体制をおしまないよという意思表示をした。
すると、
「う〜ん・・・。うちらは今年で最後だし、そのユニホームを新調しても何回着れるかわからないしなぁ・・・。まぁ雪絵がほしいって言うんだったら、新調してもいいのかなぁっても思うし・・・。」
会長が困ったような表情で、下を見ながら答えた。
「私はいらねぇよ。だって、今、5月だろう?出来上がるのが6、7月だとしても12月には引退だし、そう考えると、やっぱりいらないよ。今ので十分だよ。」
と、副会長でもある絵美ママはきっぱりと言った。絵美ママは、3人の娘をもつママであり、皆このバレー少年団に入っていた。その末っ子が現在6年生である。そんな大ベテランの絵美ママの一言は、5年生保護者にとって影響は大きいものである。
また、絵美ママの言うとおり、1万5千円くらいするユニホームを12着新調すると、1人あたりの負担額は大きい。団員全員からお金を集めるといっても、団員は全学年を合わせても18人。それに、今の小学2年生がユニホームを着るころには、またボロボロになっている恐れもある。だとすると、どこの学年までお金を集めるか、また、そのユニホームは団へと寄付になるなど、お金に関しての事だけに問題は大きい。
「じゃぁ、6年生がいらないって言うんじゃ今回のユニホームの件は新調しないということでいいですか?」
と私が皆の意見を聞くと
「いいんじゃない。6年生がいらないって言うなら、私たちはそれでいいよ。」
と、5年保護者は口々に言った。また6年生保護者もそれでいいと大きくうなずき、新しいユニホームは作らないという全員一致の意見でまとまった。これで話し合いは終了し、今回の話し合いを会長が、監督・コーチに伝えるだけとなった。
  • URL:http://yaplog.jp/cocoroni_hana/archive/3
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