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 coda

2006/03/23 [木] 13:30

「お疲れ様」

自動販売機で買った温かい缶コーヒーで乾杯。
冷え切った体に風味も何も無い、ただ温かいだけのコーヒーが流れ込む。
それでも喉を通過すると、安堵感にも似たぬくもりに満たされた。

「肩、大丈夫?」

肩に彼女の細い指が触れ、優しく撫でられる。
心臓が大きくはねた。少し伏せられた瞼を縁取る長い睫に目を奪われる。
ここ一ヶ月数え切れないほど触れ合った人なのに、こんな些細なことでこうも緊張してしまうのは目標であったこの大会が終わってしまったから、だろうか。

「あ、はい、もう大丈夫です」

言うと、彼女の指が肩から離れていった。
襲いくる、自分でも驚く程の落胆。まだ痛いといった方が良かったかな、などと浅ましいことを考えながら、変に乾いた喉を潤すようにコーヒーを流し込んだ。

「・・・ねぇ、覚えてる?」
「へ?」

彼女が悪戯っぽい笑みを浮かべてこちらを見る。
何のことを言っているか理解できず、なんとも間抜けな声が出た。
瞬きだけを繰り返していると、彼女の指が僕の方へ伸ばされる。
こめかみから頬のラインをなぞられ、顎の先へ。
そうして、最後に僕の唇に人差し指を押し当てられた。

「・・・『イイこと』」

突然のことに目も閉じられなかった。
ほのかな香水の匂いが鼻を掠め、唇に柔らかいものが触れる。
頬に添えられた指が少し冷たい。そこだけが妙にリアルでぞくぞくした。
ス、と顔が離れると、今度は額を合わせられて。

「・・・ありがとね」

唇と唇の隙間、囁くような言葉が満ちた。

胸が、締め付けられる。この人を思い切り抱き締めたい衝動にかられた。
しかし。ダンスのパートナーの立場を越えて、僕が抱き締めていい人ではない。
下唇を噛んで堪える。鼻の奥が痛んで思わず眉根を寄せた。
目を閉じて、一度大きく息を吸い込む。
そうして、寄せられたままの指に自分の手を重ねた。

「―――僕こそ、ありがとうございました」

震える唇を開いて言葉を搾り出す。
恐る恐る目を開けると、彼女は少し潤んだ目で僕を見つめてくれていた。
細い腕が僕の首に絡められる。そのままぎゅっと抱き締められた。
耳の後ろで聞こえた言葉は、空耳なんかではないと思いたい。

あなたで良かった。

彼女の肩越しに見える会場が涙で滲んだ。


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 ラストダンス

2006/03/22 [水] 18:15

背筋を伸ばして、しっかり前を見据えた横顔がひどく美しくて涙が出そうになる。
その細い指をゆっくりと握ると、不思議そうな顔をして彼女はこちらを向いた。

「どうしたの?」

何か言わなければ。唇を一度開いた。
しかし何一つ言葉は出てこなかった。彼女の空いた手が僕の頬に触れる。
ホールに流れる音楽が、ステップを踏む音が、周囲の歓声と拍手が。
鼓膜を僅かに振るわせただけですり抜けていく。

「・・・次が、最後ですね」

口にして、ようやくそのことを実感する。否、そうであったと思い出す。
無理やり笑顔を作って、普段どおりを装ってはみても、語尾の震えは隠せなかった。
一瞬の間の後、彼女の綺麗に紅を塗られた唇の端が優しく上がる。
自分よりもずっと年上で、しっかりした女性。
真っ直ぐで明るくて、ああ、この人はどこまでも綺麗だ。

「決勝進出の方々は準備を始めて下さい」
正装した男性が僕ら出場者へ向かって少し落とした声でそう言った。

「――行きましょう」

真っ直ぐに見つめられて、僕はしっかりと頷いた。
ホールに落ちてくる光が彼女の髪飾りに反射する。
情けない、目頭が熱くなった。

踊り終わった時、あなたがまたいつものようにキラキラと笑ってくれるなら。
僕は喜んで、この体を差し出そう。

繋いだ手に力をこめて。
あなたとの最後のダンスが、今 始まる。


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まさかの 慎×マル!(笑)マ、マルたん可愛いよ(*´д`*)ハァハァ
社交ダンスでの2人があまりにも可愛くて仲良しだったので思わず。
決勝決まった時の慎の「肩なんか外れてもいい」発言にすごくときめいてしまった、よ。
ヘタレと熟女って最高じゃないか・・・!(じたばた)


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