Girl's War.U

December 13 [Sun], 2009, 23:38
予約更新です。
今頃夜行バスでよだれ全快で寝てるでしょうね。

ちゅーっこって。

続きから長らくお待たせしてしまいました、白き翼SS『Girl's War.T
の続きになります。

追記:あらすじ書き忘れたので書きます。

あらすじ>
長に呼ばれ、京都を訪れる木乃香と刹那。
それと同時刻、麻帆良学園には天ヶ崎千草が脱走したという連絡が。
京都へ集結する魔法使いたち。そして学園に忍び寄る不穏な影。
それにいち早く気付いたのは朝倉とさよだった。世界樹の前に佇む
怪しげな女、天ヶ崎千草。朝倉からの連絡が途絶え、明日菜たち
白き翼は世界樹前広場に駆けつける。
京都の木乃香たちは無事なのか、果たして朝倉たちは・・・
迫る危機に彼女達白き翼は動き出す。


Girl's War.U、以下からどうぞ。




彼女は、動き出す。



第三章 〜救世主〜



明日菜さんの跳び蹴りが華麗に炸裂した。私たちはちょうど広場のなだらかな階段を登りきったところで、一様に肩で息をしながらその光景を目の当たりにしていた。ぺたりと地面に膝をついていた朝倉さんの元にさよさんが慌てて駆け寄った。その頬には透明でキラキラとした涙が伝っていた。なるほど、そういうことですか。私は瞬時に理解した。

明日菜さんは先ほど跳び蹴りを喰らわせた相手を仁王立ちで睨み付けていた。相手は自分よりも数倍は大きい鬼だというのに明日菜さんはそんなこと全く気にも留めていないようだった。仲間を傷付けようとする奴はどんな相手であろうと全部許すまじ敵。そんな風に明日菜さんはきっちり線引きする。ふむ、と私は実に明日菜さんらしい潔い考え方だと思った。論理的に物事を考える私などは自分が敵わないと分かった途端逃げ腰になりそうだが、明日菜さんはその逆。考えることをまるでしない。だからあんなにも真っ直ぐに敵と向き合えるのだろう。ネギ先生も明日菜さんのそんなところに惹かれているのだろう。本人はまるで気付いていないようだが私には分かる。

「そうだ、ネギ君よ。ネギ君呼ばなきゃ」
「ダメです。携帯も念話も全くつながりません。どうやら魔法だけではなく通信も遮断されてしまったようです」
「そんな……んじゃ、どうすんのよ。このまま明日菜一人であいつの相手するっていうの」
「それなら私が呼びに行く。直接エヴァンジェリンさんのところに……!」

のどかが力強く言った。しかし彼女の仲間がいつ襲ってくるかも分からないこの状況で何の力も持たない私たちに何ができるだろう。
ハルナがのどかの手を掴み、静かに首を振った。のどかはピクリと肩を震わせ、やがて目を伏せた。私も拳を握り締めたり、唇を噛み締めたりする他なかった。悔しい。皆一様に自分の無力さを呪った。

きっとあのときから始まっていたのだ。
明日菜さんが朝倉さんと連絡を取れたあの瞬間、全てがシャットアウトされた。電波も通信も魔法も全て。この学園にいったい何が起きているのか。今の私たちにはそれを予測することでしか役に立てそうにない。そう悟った。

「また会ったわね、天ヶ崎千草。今度は何をしようってわけ? 分かってるだろうとは思うけど、ここは関東魔法協会の本部。あんたが何かする前にやられるのがオチよ。まあ学園が手を下す前に私たちが……って聞けえ!」

明日菜さんがキレるのも無理はない。天ヶ崎千草からは何の返答もなく、それどころか明日菜さんに背を向け再び世界樹を仰いだのだ。お前には興味がない。その背中がそう言っているような気がした。ひくひくと明日菜さんの肩が鳴り出した。ああ、あれはかなり怒っているですね。

しかし、明日菜さんの言う通りだ。ここは関東魔法協会の本部、いくら何でもリスクが大きすぎる。その危険を承知で彼女は一人この学園に足を踏み入れた。いや、一人ではない。仲間がいたからこそそれができたのだ。彼らは少なくとも五人、ここに来る途中私たちはそう導き出した。世界樹の魔力を最大限に取り込むとしたら魔法陣内の、それもここ世界樹前広場以外の五つの魔力溜まりを制圧しなければならない。それはこうしている間にも天ヶ崎千草と同時並行でなされている可能性が高い。でも、とりあえず今は目の前の彼女を何とかせねば。

「急がないとホントにまずいかもねえ」

こちらに引き下がっていた朝倉さんがぼやいた。

「朝倉さん、どういうことです」
「さっきね、さよちゃんが偵察に行って敵に襲われる前に見たらしいんだ。世界樹にお札が貼ってあって、さらに天ヶ崎が何やらブツブツ唱えてたんだって。やっぱりあいつの狙いは世界樹の魔力だったってわけさ。ここから先はあまり想像したくないんだけど」

背中に嫌な汗を感じた。
気付けば明日菜さんに向かって叫んでいた。

「明日菜さん、その人を止めるです!彼女の狙いは世界樹の魔力です。彼女は今一人、やるなら今です!」
「言われなくてもそのつもり!」

聞こえたのは何故か短い悲鳴だった。
「明日菜!」ハルナが叫んだ。見やると明日菜さんが静かに壁際に横たわっていた。辛うじて急所は外したものの、恐らく受け身をとった際肩をやられたのだ。起き上がろうとする明日菜さんの左腕はだらんと力無く地に臥せたままだった。背中も強打したせいか呼吸も荒くなっている。明日菜さんが元いた場所には先ほど倒したと思われた鬼が立ちはだかっていた。やはり素手ではダメージを与えられなかったのだ。さらに後ろにはもう一体、別の容姿をした鬼が立っていた。いつの間に涌いて出たのだろう。まずい、このままでは明日菜さんがやられる。

「明日菜さん! ……夕映、私やっぱりネギ先生を呼んでくる」
「し、しかし」
「このままじゃ明日菜さんがやられちゃう!」
「分かりました。私も一緒に行くです。のどか一人では行かせられませんからね」
「夕映……」
「バカリーダー、その必要はないでござるよ」

え、と声を振り返る直前だった。
明日菜さんを今にも襲おうと構えていた鬼が真っ二つになっていた。砂埃が舞い、辺りが再び晴れたときそこには綺麗に斬れたお札と巨大な手裏剣が地に刺さっていた。まばたきする間もなくもう一匹の鬼が吹き飛ばされた。鬼は階段沿いにあった建物の壁を破り、崩れる建物の下敷きとなった。その様子にふう、と息をはく少女の拳からは白い煙のようなものが立ち上っていた。

「遅れて済まなかたアルよ」
「楓さん、それにくーふぇ……来てくれたのですね!」
「んもう、あんたたち来るの遅すぎ!」

ハルナが叫んだ。

「みなさーん大丈夫ですかー!」
「あ、さよちゃん」
「さよ殿が迎えに来てくれたおかげでここが分かったでござるよ」

なるほど、さよさんなら敵に見つからない可能性が高い。そういえば先ほどから姿を見せないと思ったらそういうわけだったのか。
てっきりどこかに隠れていたと思っていたのに。おそらく朝倉さんが差し向けたのだろう。一人作戦成功という顔をして、満足げにさよさんとハイタッチを交わしている。「こりゃ朝倉に一本取られたわね」ハルナが額に手をついた。

「ここからは拙者達に任せるでござる。くー!」
「らじゃアル!」
「明日菜!」

明日菜さんがくーふぇの手によって運ばれた。どうやら大きな外傷は見当たらないようだ。
生身の体であれだけの攻撃を受けて生きているだなんて、今更ながら明日菜さんの驚異的な力に脱帽した。ごめんと手を上げる明日菜さんの頭をハルナが軽く小突いた。

「ったく、あんたは無茶しすぎだっつの」
「傷口にはこれを塗るといいでござる。しばらくは安静にしていなければならないでござるが」
「大丈夫! 楓のはよく効くアルよ」
「それとネギ坊主のことは心配しなくとも良い。拙者の分身が今エヴァ殿の屋敷に向かっているでござるからな」
「そっか、分身なら別荘に行っても一日拘束されなくても済むもんね」
「そういうことでござる。それと夕映殿」
「………え、それは本当ですか!?」

楓さんはこくんとひとつ頷いた。

「楓」

くーふぇが顔を上げて真っ直ぐ向いた先にはやはり鬼がいた。無傷ということはまた新たな鬼を召喚したということか。楓さんがゆっくりと立ち上がった。

「うむ。それでは明日菜殿のこと、頼んだでござるよ」
「二人だけで大丈夫ですか」

のどかが心配そうに伺う。おそらく鬼はあれだけではないはず、そのことを危惧したのだろう。しかし楓さんはふっと柔らかい笑みを浮かべた。瞬間、見計らったかのようにパシュッと小さな音がした。あまりに一瞬のことで聞き逃しそうになった。と同時に先ほど現れた鬼がスローモーションのように膝から崩れ落ちた。頭には銃で撃たれたかのような小さな穴が垣間見えた。そうか、皆一斉に楓さんの笑顔の意味を悟ったに違いない。

「助けに来たのは拙者達だけではないでござるよ。今回は強力な助っ人も一緒でござる」

ニンニン、いつものように楓さんは指を結んだ。



つづく


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