100万ヒットお礼SSです。
久しぶりの長編SSに腕が鈍ってるかと思えばそうでもなく。
やっぱり長編は書き始めると止められませんな。
最近は書きながら眠ってしまいます。素敵な眠り方です。
今回は自身初となる白き翼SSを書きました。
なんか、ここまで来るとネギま自体に感謝感謝ですよね。
ま、実際はこのせつ書いてたらみんな出てきちゃったっていう←
色々初挑戦してみました。初めて書くキャラもいたり面白かったです。
では、続きから白き翼SSどうぞ。
私たちに平穏などない。
第一章 〜あの人〜
窓の外に広がる景色。何度見ても見飽きることのないその景色が変わったのは隣で気持ちよさそうに寝ている彼女のおかげ。二人でいるようになっただけでこんなにも世界が変わってしまうだなんて。
ウチの耳をくすぐる彼女の漆黒の髪。さらさらと艶めいていて思わず手を伸ばして、でもすぐ止めた。起こしてはかわいそうだ。なにせ彼女は仕事明けでこの新幹線に乗り込んだのだから。かなり無理をしたのだろう。本当は二日かかる仕事を一日で終わらせたのだから。そうまでしてもウチと一緒にいたかったんや。そう考えると嬉しいが、ちょっぴり悪い気もした。でも喜びの方が強い。
「せっちゃん、こそばゆいて」
呼んでもやはり反応はない。せっちゃんはこうやってウチの隣で熟睡するとめったなことでは起きない。困ったなあ。彼女の枕になっているこの肩が先ほどからこそばゆくて仕方がない。起きたらびっくりするだろうな。ウチはくすっと小さく笑った。「すすす、すみません!」とか、「お嬢様に寄りかかるなんて」とか、いずれにせよ落ち込みそうだ。まあでもそうなったらにこっと笑えばいい。そうしたらせっちゃんは顔を赤くして落ち込んでいた理由を見失うだろう。
あともう少しで京都だ。
父さまが手紙をくれたのは先週の半ばあたりだった。父さまはいつもメールではなく手紙をくれる。ウチが手紙を出すようになったからだ。これは修学旅行が終わった後に始めた習慣で、ネギ君がお姉さんに手紙を出しているのに触発されたのもあるが、一番はせっちゃんの影響である。
父さまがウチらのことを気にかけているのは知っていたし、何よりもウチが知らせたかった。せっちゃんとどんな風にして毎日を過ごしているか。せっちゃんのおかげでどれだけ学校が楽しくなったか。もちろん明日菜やネギ君たちとの修行の様子や自分がどれだけ強くなったかなどなど。手紙だけでは足りず写真も同封するようになった。せっちゃんは最初のうち照れて嫌がっていたのだが、焼き増しした写真をやると陰で嬉しそうにしていた。後で龍宮さんに聞いたのだが、何やらせっちゃんがアルバムを作り始めたらしい。写真作戦はどうやら大成功だったようだ。
そして今回の父さまからの手紙は帰郷を促すような内容だった。もちろんせっちゃんも一緒に。みんな会いたがっているよと最後に添えられていたが一番会いたいと思っているのは父さまではないだろうか。それをせっちゃんに言ったらやはりせっちゃんもきっとそうですよと笑った。
そや。ウチは旅行バッグからデジカメを取り出した。フラッシュがちゃんとオフになっているか確認する。せっちゃん怒るやろなぁ。そう思いながらもウチは静かにシャッターを押す。と同時にアナウンスが流れた。
「せっちゃん、そろそろ着くえ」
声をかけるとせっちゃんはんん、といやいやをするように身をよじった。どうやら今日は寝起きが悪いらしい。せっちゃんの眉間にはしわが寄っていた。
「せっちゃんって、もう準備せな。着いてまうで」
「う」
ようやくせっちゃんが起きた。目を半分だけ開けてまぶしそうにまばたきを繰り返す。おはよ、と笑いかけるとせっちゃんは寝ぼけたようにお辞儀を一回した。
「おはよ、このちゃん……」
「ふふ、おはようせっちゃん。よう眠れた?」
指の背でまぶたをこすりながらせっちゃんがこくんと頷いた。
せっちゃんも起きたことやし、と荷物をまとめゴミを片付ける。そうしているうちにせっちゃんも完全に覚醒したらしく、「すみません」と顔を赤らめながら自分の荷物をまとめ始めた。
ホームに降り立つといつも帰ってきた、という感覚に襲われる。周りの人たちはみんな同じように関西の言葉をつかっているせいだろうか。せっちゃんはそんな周囲にまだ慣れないらしい。その茜色の瞳がキョロキョロと忙しなく動いている。せっちゃん、名前を呼ぶとせっちゃんの瞳はようやくウチを捉えた。
「行くで」
「あ、はい!」
ウチはリュックを背負うと今度は足下にあった旅行バッグに手を伸ばした。
「あ、私が持ちます」
「んもう、せっちゃんはいっつもウチに荷物持たせてくれへん」
「で、ですが私の役目ですし」
「せやからいつも言うとるやん。そういうんは嫌やって」
「でも……」
ウチは知っていた。それがただの使命感から生まれたものではないことを。せっちゃんにとってそれは普通でしかないのだ。ウチはせっちゃんにせっちゃん自身のために行動してほしいと常日頃から願っていた。でもそれを強く主張してしまう。そしてそこがウチのあかんところ。
せっちゃんはすっかりしょぼくれて肩を落としている。さっき寝ていたときにつけた寝ぐせがそのやるせなさをさらに助長する。あーあ、結局言わなあかんのや。せっちゃんの寝ぐせを丁寧に直しながらウチは言った。
「せっちゃんの両手がふさがったら手つなげないやん」
いちいち言わせんといて。つんと鼻をつつくとせっちゃんは一瞬目をパチパチさせた。せっちゃんの左手は荷物を持つためにあるんじゃない。ウチの右手のためにあるんや。そう言ったら滅茶苦茶だと怒られるだろうから、ウチは自分の荷物を持つとせっちゃんの手を取りさっさと歩き出した。
せっちゃんの様子が気になるが振り返らない。だって今振り返ったら顔が上気しているのがバレてしまう。さっきの言葉を反芻してしまったのが悪かった。せっちゃんの左手はウチの、なんて自分で言っておいてこれだ。
お嬢様、速いですよ。せっちゃんの声を無視し、ウチはついに走り出した。早く冷たい風に当たりたい。その一心で。
実家の屋敷まではバスで行くことにした。いつもなら迎えの車が来るのだが今日は必要ないと言った。なんとなく街並みを堪能したかった。せっちゃんと。
せっちゃんは先ほどから窓の外をぼんやり眺めてばかりいる。彼女も景色を見るのが好きなタイプなのだと分かって少し嬉しい。
「お嬢様、人がたくさんいます」
「連休中やしなぁ。京都は人気の観光地やさかい、しゃあないやろ」
「駅から乗って正解でしたね」
「ん、そやね」
景色に見とれて気付かなかったが車内も幾分混み始めてきた。しばらくし、バスは停留所で止まった。そこで乗ってきたおばあさん二人にウチらは席を譲った。
その時だった。外の人混みの中にほんの一瞬だけ見えた。誰やったっけ、まるで思い出せない。顔覚えはいいはずのなに、魔法にでもかけられたようだ。「あの人」声は自然と出た。声に出せば思い出せるかもしれない。
「お嬢様」
一気に現実に引き戻された。
バスが発車した。見やるとおばあさんが飴玉を差し出していた。おおきに、受け取るとさっそく中身を開けて口に放り込む。メロン味だ。せっちゃんが再びお礼を言い、おばあさんと世間話をし始めた。ちょっと気恥ずかしそうにしているのがせっちゃんの横顔からうかがえた。話を聞きながら、時には話に参加しながらウチは口の中でコロコロと飴玉を転がす。届きそうだった記憶がその甘さに徐々に溶けていった。
景色は容赦なく流れていく。
つづく
久しぶりの長編SSに腕が鈍ってるかと思えばそうでもなく。
やっぱり長編は書き始めると止められませんな。
最近は書きながら眠ってしまいます。素敵な眠り方です。
今回は自身初となる白き翼SSを書きました。
なんか、ここまで来るとネギま自体に感謝感謝ですよね。
ま、実際はこのせつ書いてたらみんな出てきちゃったっていう←
色々初挑戦してみました。初めて書くキャラもいたり面白かったです。
では、続きから白き翼SSどうぞ。
私たちに平穏などない。
第一章 〜あの人〜
窓の外に広がる景色。何度見ても見飽きることのないその景色が変わったのは隣で気持ちよさそうに寝ている彼女のおかげ。二人でいるようになっただけでこんなにも世界が変わってしまうだなんて。
ウチの耳をくすぐる彼女の漆黒の髪。さらさらと艶めいていて思わず手を伸ばして、でもすぐ止めた。起こしてはかわいそうだ。なにせ彼女は仕事明けでこの新幹線に乗り込んだのだから。かなり無理をしたのだろう。本当は二日かかる仕事を一日で終わらせたのだから。そうまでしてもウチと一緒にいたかったんや。そう考えると嬉しいが、ちょっぴり悪い気もした。でも喜びの方が強い。
「せっちゃん、こそばゆいて」
呼んでもやはり反応はない。せっちゃんはこうやってウチの隣で熟睡するとめったなことでは起きない。困ったなあ。彼女の枕になっているこの肩が先ほどからこそばゆくて仕方がない。起きたらびっくりするだろうな。ウチはくすっと小さく笑った。「すすす、すみません!」とか、「お嬢様に寄りかかるなんて」とか、いずれにせよ落ち込みそうだ。まあでもそうなったらにこっと笑えばいい。そうしたらせっちゃんは顔を赤くして落ち込んでいた理由を見失うだろう。
あともう少しで京都だ。
父さまが手紙をくれたのは先週の半ばあたりだった。父さまはいつもメールではなく手紙をくれる。ウチが手紙を出すようになったからだ。これは修学旅行が終わった後に始めた習慣で、ネギ君がお姉さんに手紙を出しているのに触発されたのもあるが、一番はせっちゃんの影響である。
父さまがウチらのことを気にかけているのは知っていたし、何よりもウチが知らせたかった。せっちゃんとどんな風にして毎日を過ごしているか。せっちゃんのおかげでどれだけ学校が楽しくなったか。もちろん明日菜やネギ君たちとの修行の様子や自分がどれだけ強くなったかなどなど。手紙だけでは足りず写真も同封するようになった。せっちゃんは最初のうち照れて嫌がっていたのだが、焼き増しした写真をやると陰で嬉しそうにしていた。後で龍宮さんに聞いたのだが、何やらせっちゃんがアルバムを作り始めたらしい。写真作戦はどうやら大成功だったようだ。
そして今回の父さまからの手紙は帰郷を促すような内容だった。もちろんせっちゃんも一緒に。みんな会いたがっているよと最後に添えられていたが一番会いたいと思っているのは父さまではないだろうか。それをせっちゃんに言ったらやはりせっちゃんもきっとそうですよと笑った。
そや。ウチは旅行バッグからデジカメを取り出した。フラッシュがちゃんとオフになっているか確認する。せっちゃん怒るやろなぁ。そう思いながらもウチは静かにシャッターを押す。と同時にアナウンスが流れた。
「せっちゃん、そろそろ着くえ」
声をかけるとせっちゃんはんん、といやいやをするように身をよじった。どうやら今日は寝起きが悪いらしい。せっちゃんの眉間にはしわが寄っていた。
「せっちゃんって、もう準備せな。着いてまうで」
「う」
ようやくせっちゃんが起きた。目を半分だけ開けてまぶしそうにまばたきを繰り返す。おはよ、と笑いかけるとせっちゃんは寝ぼけたようにお辞儀を一回した。
「おはよ、このちゃん……」
「ふふ、おはようせっちゃん。よう眠れた?」
指の背でまぶたをこすりながらせっちゃんがこくんと頷いた。
せっちゃんも起きたことやし、と荷物をまとめゴミを片付ける。そうしているうちにせっちゃんも完全に覚醒したらしく、「すみません」と顔を赤らめながら自分の荷物をまとめ始めた。
ホームに降り立つといつも帰ってきた、という感覚に襲われる。周りの人たちはみんな同じように関西の言葉をつかっているせいだろうか。せっちゃんはそんな周囲にまだ慣れないらしい。その茜色の瞳がキョロキョロと忙しなく動いている。せっちゃん、名前を呼ぶとせっちゃんの瞳はようやくウチを捉えた。
「行くで」
「あ、はい!」
ウチはリュックを背負うと今度は足下にあった旅行バッグに手を伸ばした。
「あ、私が持ちます」
「んもう、せっちゃんはいっつもウチに荷物持たせてくれへん」
「で、ですが私の役目ですし」
「せやからいつも言うとるやん。そういうんは嫌やって」
「でも……」
ウチは知っていた。それがただの使命感から生まれたものではないことを。せっちゃんにとってそれは普通でしかないのだ。ウチはせっちゃんにせっちゃん自身のために行動してほしいと常日頃から願っていた。でもそれを強く主張してしまう。そしてそこがウチのあかんところ。
せっちゃんはすっかりしょぼくれて肩を落としている。さっき寝ていたときにつけた寝ぐせがそのやるせなさをさらに助長する。あーあ、結局言わなあかんのや。せっちゃんの寝ぐせを丁寧に直しながらウチは言った。
「せっちゃんの両手がふさがったら手つなげないやん」
いちいち言わせんといて。つんと鼻をつつくとせっちゃんは一瞬目をパチパチさせた。せっちゃんの左手は荷物を持つためにあるんじゃない。ウチの右手のためにあるんや。そう言ったら滅茶苦茶だと怒られるだろうから、ウチは自分の荷物を持つとせっちゃんの手を取りさっさと歩き出した。
せっちゃんの様子が気になるが振り返らない。だって今振り返ったら顔が上気しているのがバレてしまう。さっきの言葉を反芻してしまったのが悪かった。せっちゃんの左手はウチの、なんて自分で言っておいてこれだ。
お嬢様、速いですよ。せっちゃんの声を無視し、ウチはついに走り出した。早く冷たい風に当たりたい。その一心で。
実家の屋敷まではバスで行くことにした。いつもなら迎えの車が来るのだが今日は必要ないと言った。なんとなく街並みを堪能したかった。せっちゃんと。
せっちゃんは先ほどから窓の外をぼんやり眺めてばかりいる。彼女も景色を見るのが好きなタイプなのだと分かって少し嬉しい。
「お嬢様、人がたくさんいます」
「連休中やしなぁ。京都は人気の観光地やさかい、しゃあないやろ」
「駅から乗って正解でしたね」
「ん、そやね」
景色に見とれて気付かなかったが車内も幾分混み始めてきた。しばらくし、バスは停留所で止まった。そこで乗ってきたおばあさん二人にウチらは席を譲った。
その時だった。外の人混みの中にほんの一瞬だけ見えた。誰やったっけ、まるで思い出せない。顔覚えはいいはずのなに、魔法にでもかけられたようだ。「あの人」声は自然と出た。声に出せば思い出せるかもしれない。
「お嬢様」
一気に現実に引き戻された。
バスが発車した。見やるとおばあさんが飴玉を差し出していた。おおきに、受け取るとさっそく中身を開けて口に放り込む。メロン味だ。せっちゃんが再びお礼を言い、おばあさんと世間話をし始めた。ちょっと気恥ずかしそうにしているのがせっちゃんの横顔からうかがえた。話を聞きながら、時には話に参加しながらウチは口の中でコロコロと飴玉を転がす。届きそうだった記憶がその甘さに徐々に溶けていった。
景色は容赦なく流れていく。
つづく
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