DEPOTのおすすめ度:★★★☆☆公開日:2007年1月13日
配給:東宝
監督:鶴橋康夫
出演:豊川悦司,寺島しのぶ,長谷川京子
鑑賞日:2007年1月13日
MOVIX三郷 シアター11(座席数518)
【ストーリー】
ある朝、情事の果てに女性を絞殺した村尾菊治が逮捕された。被害者の名は入江冬香。菊治はかつて恋愛小説の旗手として注目された作家だったが、今では世間から忘れられた存在だった。「愛しているから殺した」事件を担当する女性検事・織部は、菊治の言葉に困惑しながらも真相を追う。 菊治は自分のファンだという人妻・冬香と出会い、恋に落ちた。愛されることを知らずに生きてきた冬香。逢瀬の度に心と躰を烈しく求め合う2人。そして冬香の求めに応じ、菊治は冬香を殺めてしまう。「なぜ男は女を殺したのか、なぜ女は死を望んだのか」織部は疑問を抱えたまま裁判の時を迎える。そして法廷の扉が開かれた。今、愛と死の真相が明らかになる。
【レビュー】
本日2本目の鑑賞は、巷で話題になっている“愛ルケ”こと「愛の流刑地」です。日本経済新聞など読むはずもないデポなので、当然のことながら“愛ルケ”って何?って感じだったんですが、寺島しのぶさんの大胆な濡れ場と平井堅さんの♪その手で その手で 私を 汚して〜の耳に残るフレーズが気になって公開初日に鑑賞することにしました。評判になっている割にはお客さんの数はいまいちの感じだったんですが(518席のスクリーンだから余計少なく感じるんでしょうが)、それでも似たように濡れ場が話題になっていた「TANNKA 短歌」の時よりは入ってましたね。
映画の冒頭で寺島しのぶさん演じる入江冬香が死んでしまうので、以後のストーリーは村尾菊治と冬香の回想的なシーンと殺人犯として逮捕された菊治の聴取や裁判となります。最初に象徴的な激しい情事とその行き着いた先としての“死”という結果を観客に見せ、その後、佐藤浩市さん演じる脇田刑事の「何で殺しちゃったのよ?」という問いかけに対して答えるかのように、共通の友人から紹介されたふたりがいかにして出会い、そして、愛し合い、冬香の“死”という結末を迎えたのかを丁寧に追いかけていきます。時系列が逆になっていることにより、何故SEXの最中に「本当に愛しているなら、私を殺して」と冬香が懇願し、絶頂を迎えながら笑顔を浮かべたような表情で死んでいったのか。更には、冬香が望んだこととはいえ、菊治もまた何故に彼女の首を絞め死に至らしめてしまったのかが効果的に描けていたんではないでしょうかね。
話題にもなっていましたが、喘ぎ声から始まるオープニングが象徴するように全体を通して確かに濡れ場は多いです。しかも、R-15だけのことはあってかなり濃厚な絡みやバストトップが見えるようなシーンもあります。しかし、このSEXシーンがふたりの愛の深さや絆の強さを描くツールのような役割を担っているので“いやらしさ”というものをあまり感じなかったんですよね、デポは。菊治は別居中ではありますが妻と高校生になる娘がいますし、冬香の方はエリートサラリーマンの夫と3人の子供がいる一見すれば幸福な家庭の妻です。そんな、ふたりが心から愛し合えるパートナーを得たことにより心身ともに充実していく様子がこのSEXシーンを通じて表現されているんです。ですから、冬香は夫とのSEXでは感じ得なかった絶頂を体験しどんどんと美しくなっていきますし、菊治はスランプだった執筆活動に好影響が現れ、新作を書くことが出来ています。共に家庭を持ち、いわゆる不倫の関係のふたりがここまで純粋に愛し合い、身体を重ねることによって変わっていくものかと感心してしまいます。特に冬香に関しては、初めは菊治の顔を真っ直ぐ見られないような恥じらいと奥ゆかしさを醸し出す女性だったのに、情事を重ねるに連れて積極的で激しい情熱的な美しい女性へと変貌していきます。勿論、これは冬香が生まれ変わったというよりは、内に秘めていた“本当の冬香”の姿が菊治との愛の中で表面に出てきたものだと思うんですが、彼女に「先生が私を作り変えてしまった」と言わせてしまう菊治って凄いですね。デポも一度でいいからこんな言葉言わせてみたいです。
物語と共に菊治に対する裁判も進んでいくんですが、このようなふたりの愛の軌跡を見せられてしまうとこの裁判自体に何の意味も感じなくなってしまうんですよね。勿論、人ひとりの命が奪われ、そこには親と夫、そして、3人の子供という被害者家族がいるんですから意味がないという言葉には語弊があるのかもしれませんが、ふたりの愛の形を法律や裁判などでは裁けるものではないと思ってしまうんです。ですから、「何もかもが違う!こんな裁判はおかしい!愛は裁けない!」と絶叫する菊治の姿は正にデポの思っていることを言葉にしてくれたような感じで何か嬉しかったですね。冬香は菊治を心から愛してしまったことと夫を、子供たちを裏切り家庭を犠牲にしたことで、もう後戻りすることは出来ないと判っていたのでしょう。だからこそ、最高に幸せである菊治とのSEXの中で最愛の人である彼の手によって死を迎えることが冬香の望みだったんだと思います。そして、それを菊治も受け入れた。こんなふたりの愛をやっぱり裁けるはずはないんですよ、他の人間などにはね。濡れ場が多い作品なのに“純愛”ってどういうこと?って鑑賞前は疑問に思っていたんですが、はっきりと判りましたよ。これは正真正銘“純愛”映画です。
この映画の成功の大きな要因はやはり主演ふたりの好演だと思います。体当たりの濡れ場が凄い!なんてそんな薄っぺらなものではなく、本当に愛し愛される運命的な相手と出会い、全身全霊を懸けて一途に愛する喜びと素晴らしさ、そして、美しさを見事に演じているからです。菊治役の豊川悦司さんはドラマ「愛していると言ってくれ」の頃から結構好きな役者さんだったんですが、今回も静かさと激しさを併せ持ち、表情ひとつですべてを語ってしまうような難しい役を見事に演じていましたね。映画の中で「私は選ばれた殺人者なのです」というセリフがありましたが、豊川さんは正に村尾菊治として選ばれた役者なんだと思います。そして、それ以上に強く存在感を出しているのが入江冬香役の寺島しのぶさんです。寺島さんの作品というのははっきり言ってあまり観た印象が無いんですが、この冬香という役で一気に寺島ワールドに引き込まれてしまったような気がします。映画を観た後では寺島さん以外に冬香は考えられないし、彼女なくして“愛ルケ”は語れない。ドラマ化されるようなんですが、キャスティングは大変だと思いますよ。はっきり言って…。
また、脇を固める個性的な俳優陣も実に見事。登場シーンとしては少ないものの津川雅彦さんや佐藤浩市さん、陣内孝則さんなどは味のある演技で物語に深みを与えていますし、冬香の夫、入江徹を演じた仲村トオルさんは僅かなセリフと表情だけで家族の姿と夫としての自分の存在というものをしっかりと表現してくれました。中でも存在として面白かったのが長谷川京子さん演じる検事、織部美雪。過去に冬香と同じような経験を持つ彼女の存在と心の動きが裁判の流れの中では結構みどころとなるかもしれませんね。また、彼女の検事らしからぬ挑発的なファッションもある意味彼女を象徴しているかのようで興味深いものです。胸の大きく開いた服で容疑者と対峙する検事なんて現実的ではないような気がしますが…。もっとも、年中テレビに出演していて、ジーンズで法廷に出るという弁護士もいるぐらいだからそんなに変でもないのかなぁ。
鑑賞前は濡れ場のことばかりがデポの中ではひとり歩きしてたんですが、実際に観てみると大人の純愛映画という感じで見応えありました。精神的な愛から更に一段上の高みに上ったような、肉体的にも深い愛情で結ばれたこんな恋愛いいですね。
| 愛の流刑地 | |
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