人界へ 

March 27 [Tue], 2007, 18:33
あっという間に傲潤は崑崙山頂上の西王母の身を置く宮殿に足を踏み入れていた。
夜だというのに珍しく煌々と明かりを灯した宮殿内を進み西王母のいるであろう部屋に行き着く。
ドアをノックしようとした瞬間どうぞという聞き覚えのある声が中から聞こえた。
傲潤は驚くこともなく、扉に手をかけた。
そこにはにこやかな笑みをたたえている西王母と側近の九天玄女その娘たちが勢ぞろいしていた。
一斉に注目を浴びる形になり、頭をかく。
「夜分遅くに申し訳ございません。西王母様にご連絡をしないままこの宮殿に足を踏み入れたこと
 深くお詫びを致します。」
途端に末娘である太真王夫人が傲潤に駆け寄る。
「傲潤様。お久しぶりです。」
傲潤の腰にしかっと抱きつくと爛々とした瞳で傲潤をみあげる。
それを長女である華林がたしなめた。
「よいのですよ。でも太真様今宵は戦地でのお話は出来かねるのです。」
申し訳なさそうに太真の頭を撫でると再び西王母に向き直る。
「ご存知のことと思いますが、死生山に侵入者を発見いたしました。見た目は私と同じくらいの年端のようでした。
 仙界の者でない事は確かです。しかし一瞬にして西王母様の結界にひずみをつくり人界で逃亡いたしました。」
黙って聞いていた華林がため息を吐く。
「お母様。何故隠していらっしゃったのです。その者が侵入した際に感知していたはず。
 それなのに何故やすやすと野放しにしたのですか・・・。」
怒りというよりは呆れの含まれている声であった。
西王母はそのにこやかな笑顔を絶やさずに口を扇で覆った。
「悪い気を感じなかったので様子を見ていたのです。侵入の際もとても素晴らしい速さで結界にひずみを形成しすぐに閉じたのですよ。
 とても素晴らしい術でした。」

出会い 

March 26 [Mon], 2007, 12:40
四季の変動の少なく穏やかな世界。仙界。
仙界には仙骨の覚醒した仙女や仙人が身をおいている。
それに限られたわけでもなくここ崑崙山には崑崙山の頂に住まう女仙と道姑の長、西王母が許しを出した者も住まいを置いている。

崑崙山の中腹。危険な場所の少ない仙界だが、ここは仙女に至らない道姑や西王母の許可のない者は立ち入ることを禁止されている区域である。
そこには、人界に多く存在するような、草花のよく茂った森が影を落としていた。ここの名は死生山(しせいざん)。
今宵は仙界でも珍しく西王母の娘達が誰一人として任務に足を運ぶことなく穏やかな夜を迎えていた。
いつも任務に追われている仙界一の美女にして西王母の長女である華林公主も、今夜は妹達と銘酒の数々を交わしていた。

満月を愛でている娘達を見守る西王母が珍しく表情を変えた。
といっても長女である華林や側近で昔からの親友である九天玄女が見落とさなかったくらいの変化でしかない。他の娘達からしたらなんら変化ないいつものにこやかな母の笑顔であった。
そんな妹達に心配をかけまいと長女である華林はそっと席を立ち母の前に身を寄せる。九天玄女も傍らから西王母の様子を確認する。
「お母様。なにかございましたか?」
小声でも凛とした声がその美しさをより確かなものにさせる。
「いいえ。なんでもありませんよ。」
いつも通りのにこやかな返事に狼狽する。西王母はいつもなにか感知してもこのように穏やかさを崩さないから手に負えないのだ。
華林からしてみれば大事が発生する前になにか感知したのであればしっておきたい。九天玄女も口を開こうとするが西王母の穏やかな制止に押し黙る。
「本当に何事もありませんよ。心配しすぎは体に毒です。さぁさ妹達にいつもして上げられない分人界のことなど聞かせておやりなさいな。」
P R
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