Eアニマル探検隊

November 15 [Sun], 2009, 13:50
Eアニマル探検隊

みんな覚えているだろうか。
町中の動物を探し歩いていた小さな女の子3人組を。
「すみませ〜ん!お宅の犬の名前と性別と種類と特技を教えてくださ〜い」
なんて言いながら、突然訪ねて来る小さな女の子3人組。
誰か覚えていてくれているだろうか。
アニマル探険隊を。

 あれは確か私が小学校5年生の時。犬が好きで好きでたまらなかったあの時代、同じく犬が大好きな友達2人と私との3人組で結成した。
田んぼだらけの帰り道、私達は庭先に繋がれている人様の犬と遊ぶのが楽しみだった。犬が大好きだった私達は、犬の種類も博士並に知っていた。何といっても小学生は吸収が早いのだ。
「あっちにパグのおる!」「あそこの家、ポインターのおるらしかばい!」なんて言いながらちょっと珍しい犬種がいると、飛びついてそこの家まで見に行った。今考えるとかなりの犬オタクだ。

 そんな時、都合のいい話を思いついた。「ねえ、夏休みの自由研究にせん?町中の犬ば調べると!」 全く都合のいい話だ。3人で遊び同然にうろうろしながら町の犬を調べていくなんて。私の都合のいいひらめきに他の2人も賛成し、アニマル探険隊が結成されたのだ。

 私達は毎日のように町中の犬を見つけ出しては、名前と性別、種類や特技を聞きまわってノートにメモしていった。
今日はあの地区、明日は向こうの地区。休みの日は、1日中町中を歩き回った。朝早くから集合し、昼は空き地でお母さんが作ってくれた弁当を食べ、日が暮れるまで歩き回った。犬を見つける―ただそれだけの事があんなに楽しかったのだ。
 時には親切な人からお菓子を頂いたり、暑い暑い夏のある日には枯れ果てそうな私達にオレンジジュースを振る舞ってくれる人もいた。「どこから来たとね?」から始まり色々な話をして長居したり、私達のお気に入りの犬を飼っていたおじいちゃんの家には何度も遊びに行ったりした。3人でも色々な話をした。 
 アニマル探検隊だ!なんて言いながら街を歩くと、馴染みの風景の中でも冒険しているような気分になった。
合宿だ!なんて名目でただのお泊まり会をしたり、幼稚園の運動場に忍び込んで遊んだり。6年生の夏の自由研究として提出する予定だったので時間はたっぷりあった。そんな時間の中で、私達はかけがえのない思い出を作った気がする。

 20歳になった今、記憶は曖昧だがぼんやりと思いだす事がある。ゴールデンレトリーバーを飼っていたおじいちゃんの事だ。おじいちゃんとゴールデンレトリーバーはいつも一緒だった。
おじいちゃんとは色々な話をした。学校は楽しいとか、先生が嫌いだとか、今ネリケシを集めてる…とか。優しいおじいちゃんとおとなしいゴールデンレトリーバーが、私たちは大好きだった。

 アニマル探険隊は小学校卒業と共に解散した。中学校へ入学した私は、おじいちゃんともゴールデンレトリーバーともすっかり会うことはなくなっていた。
 中学校3年生。私は受験生になっていた。学校と塾で忙しく、おじいちゃんのこともレトリーバーのことも忘れかけていた。
 そんなある日のこと…。私は学校の帰りに久々におじいちゃんとレトリーバーを見かけた。「こんにちは!」と声を掛けるとおじいちゃんは優しい笑顔で私を見つめ「久し振りだね。元気にしとったね?」と昔と何にも変わらない、優しい声で語りかけてくれた。高校受験に追われていた私は、懐かしい笑顔に何だか胸が詰まった。おじいちゃんの事を忘れかけていた自分は、すごく大事なものを忘れていた気がした。そして、今行きたい高校があるけどそこに行くには少し点が足りないから頑張って勉強してるって事や、ピアノの発表会で難しい曲を弾くようになってまだ全然弾けないなどと、とりとめもない近況報告をした。おじいちゃんは何も言わず、ただ笑顔で話を聞いてくれた。レトリーバーはすごく眠たそうにおじいちゃんに寄り添っていた。私はその時何だかすごく心地よくて、あの時の懐かしい匂いを思い出して、おじいちゃんと再会した帰り道、鼻歌を歌いながら帰ったんだ。
 おじいちゃんとはそれきり会っていない。3人とも別々の高校に進学し、私は部活に勉強にと忙しい毎日を送った。

 あれから5年・・・。おじいちゃんの事を思い出したのは、今日が久しぶりだ。おじいちゃんは私達の事を覚えていてくれるだろうか。そして、相棒2人はおじいちゃんのこと、覚えているだろうか・・・忘れるはずがない。
成人式で再会した時にでも、また3人であの時の思い出を語り合いたい。思い出は生き続ける。それぞれの記憶の中で。

 アニマル探険隊で私達3人が調べ上げた犬の数は約200頭。町内で登録されている犬の数が当時777頭だったから、私達は町内の約1/4の犬を調べたことになる。小学生のガキんちょにしては随分な快挙だ。

 いつかまたあの町を歩いていたら、小さな女の子3人組に出会うかもしれない。
「すみませ〜ん!犬の名前と性別と、種類と特技を教えてくださ〜い!」
屈託のない笑顔は眩しすぎて、大人になった私は少々苦笑しながら声を掛けるんだ。
「オレンジジュースでも飲んでいかない?」
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