些細なコト、で。 

September 10 [Wed], 2008, 21:50

「で?何が目当てなんだ?」

「クレープにフランクフルトに焼き鳥!」

「……見事に食い物ばっかだな」

「浴衣の女の子も目当てだぜ?だけど祭りの時って花火大会とかと違ってギャルギャルしい馬鹿っぽいの多いからあんま期待しねーの」

「お前ああいう女嫌いだもんな」

「嫌いー」


悪びれもせずに、…本当に邪気の無い笑顔でそう言った後、マイセンは踵を返して弾むような足取りで人混みの中に入っていった。

 街灯に照らされたマイセンの薬指で指輪が光る。


「(女眺めるくらいなら赦してやるか…)」


 揃いの指輪を見下ろした後、俺も後に続いた。




〔職場の隣の神社でお祭りやってたからそのネタ(´∀` ∩←タイトry〕



「金魚すくいとか亀すくいって昔と変わらないんだな」

「俺達が学生の頃もあったか」

「あったあった。お前と部活帰りに行った時も金魚持ってる人いたもん」


 直ぐ隣で自分を見上げながら、懐かしそうに目を細めて笑むその様子が眩しい。
ザワザワ、ガヤガヤと周りで楽しそうにカップルや親子連れが話しをしているこの場所で、マイセンの姿だけが浮かび上がってるように見えるのは惚れた欲目というやつか。

つい触れたくなって手を伸ばして、直ぐにハッと正気に戻る。

馬鹿か俺は。こんなに他人が多い場所で、男同士で何を。


「お?ターイロン?」

「…いや。本当に祭り好きだと思ってよ」

「ん、好き。楽しいだろ、周りも皆楽しそうだし。俺は騒がしいの好き」


ニコニコと終始本当に楽しそうにしている姿を見ていると、つられてこっちまでもが笑顔になる。


「それにさ、」


 不意にちょいちょいと指を振られて首を傾げる。引き寄せるその仕草は顔を寄せろと言うことか。


「どうした?」

「…お前が一緒に過ごしてくれるんなら、どこで何してても楽しいんだぜ」


 少し小声で告げられたその言葉と、そして薄く色づいた頬。

 指摘をすれば、顔が紅くなっていたのは街灯の加減のせいだと嘯かれた。




短。

突発その2 

August 26 [Tue], 2008, 21:11

「おとーさん、おなかすいたー」
「もうそんな時間か?ロベルタに何か作ってもらえ」
「ロベルトおにーさん?」
「…いや、あいつそこまで器用じゃねぇだろ」

 ロベルトが器用不器用の話じゃなくて、メイドのロベルタだってツッコめよ。
娘のボケにボケたツッコミをする父親。…うん、中々に平和な光景だ。

 俺の隣では口をぽかーんと開けて二人を眺めている息子の姿がある。こいつは俺に似ててどこかツッコミ気質(?)なところがあるから、目の前で繰り広げられている父娘の漫才のようなやり取りを呆れて見てるんだろう。

「イクスイクス、口開いてる。呆れすぎ」
「…あっ」

慌てて口を閉じて両手で口元を覆うのが可愛らしい。バツが悪そうに見上げてくるのをニヤリと見返す。

「うちのおとーさんと娘は可愛い可愛い天然さんでいらっしゃるからな」
「ぼくとパパがかわいくないだけだよきっと」
「こんにゃろ」

やっぱり俺に似ちゃったらしく、年齢よりも大人びたことを言う息子を抱き上げてぐりぐりと頭同士を押し付けあえば、高めの笑い声が響く。
うちは娘も息子も可愛いんだぜー、羨ましいだろー。…って誰に自慢してんだ俺は。

*

 楽しそうな笑い声に視線を向ければ、じゃれ合うマイセンとイクスの姿があった。
ふと斜めに見下ろすと羨ましそうにそれを見つめる娘の横顔。黙って抱き上げると一瞬驚いた顔をした後に嬉しそうに破顔するのが愛らしい。

「マイセン」
「ん?おー、クレアも交じるか?おいで」

笑顔でマイセンが腕を差し出せばクレアは素直にマイセンの腕の中に納まった。
俺はといえば、今度はイクスを抱き上げてそのまま肩車をしてやる。小さな両手で俺の頭に掴まりながらバランスを取る息子を見上げるマイセンの表情は穏やかだ。生み育てた分、母親らしい愛情がこいつにはある。

「昼は外で食べたい人ー」
「「はぁーい!」」
「だ、そうだぜタイロン。中庭まで出発進行!」
「しんこー!」

掛け声をかけて歩き出したマイセンとクレアの後を、俺とイクスもゆっくりと追いかけた。



**

日本語ちょっと変な話←

突発。 

August 23 [Sat], 2008, 19:40
お盆時期過ぎたのにプチ怪談ですYO。



 「なぁ、タイロン。お前『ナニ』を連れてきた?」

 スタジオに入って直ぐに掛けられた言葉はそんなものだった。





 少し怒ったような表情のマイセン=ヒルデガルドは、俺の方を見てこう言った。

 俺の方―――正確には、俺の左肩の少し上を見ている。

「連れてきた?虫でも付いてきてたか?」

慌ててマイセンの視線を追って振り返るもののそこには何も無い。俺がさっき開けて入ってきたスタジオの扉があるだけだ。

「虫…だったら良かったな」

今度はにっこりと、女を口説く時に良く浮かべる笑みを口元に乗せて目を細める。
小奇麗な顔をしたこの男にそれをされて一瞬ドキリとするが、けれどマイセンが見ているのはやはり俺の左肩辺り。
ここには未だ俺とこいつしか居ない筈なのに、マイセンは何を見ているというのか。

「来る時にさ、」
「ん?」
「来る時、●●通りの陸橋のところ歩いてきたのか?」

 通ってきた道を思い出す。普段は使わない道なのだが、今日は買い物をしてからここに向かったというのもあって確かにその道を通ってきた。

「良く分かったな」
「…普段お前、あの道使わないから安心してたってのに」
「……は?」

 今度は盛大に肩を落として溜め息を吐かれた。

 話が見えてこない。俺にとっては全く要領の得ないこの会話に、生来短気な俺は少しむっとする。

「さっきから意味が分からねぇ。何だってんだよ」




「…知りたいなら教えてやる。でも聞いてから後悔するなよ」

 挑発的な、どこか蠱惑的でさえある表情でマイセンはそう言った。





「……手、だ」
「…は?」
「手。白い女の手。赤いマニキュア塗ってる」
「…おい、もう怪談時期過ぎてるぜ」

 急にこいつは何を言い出すのか。人を驚かせたり笑わせたりというのが好きらしいこいつは、良く俺やスタッフにも悪戯を仕掛けてくる。
だけど驚かせることはあっても、本気で怖がらせるようなことを言ったりするような人間じゃない。

「何の冗談だよ」
「冗談言うかよ。あそこの陸橋、出るって有名なんだぜ。あそこに縛られてる女の一部をお前が連れてきてる」
「お、おい…」
「手招きしてる。お前の首筋撫でたり、肩掴んだりもな。…タイロン。お前は否定するかもしれないけど、お前って優しいんだよ。魂があったかい。だから救いを求めてこういう奴らが集まってくる」
「…金縛りにすらあったことないぜ?」

事実だ。俺は今まで怪談現象なんてものを体験したことがない。幽霊、なんてものに出会ったこともだ。

「そりゃお前が鈍感すぎるからだ。」
「……おい」
「本当だぜ?寄って来てる奴らは居ても、救って欲しいのにお前に気付かれないんじゃしょーがない。だからいつの間にかこいつらもそばを離れる」
「………」

…少し、悪いことをしてたなと思ってしまった。後でこう思ったことをマイセンに告げたら、そういう風に思ってしまうことが悪いんだと怒られたが。

「だから今までは俺も視えてても放っておいたんだけどな。…この女はちょーっとタチ悪いから、ミハでも呼ぶかぁ」
「ミハエルさん?何でだ?」
「俺は昔から視えるだけ。でも、ミハは業界人の常らしくて簡単になら祓ったりも出来る。寺の知り合いもいるし…だからな」
「…本当に多いんだな、このテのことって」

 芸能界というのは人の色々な想いが集まるためか、心霊話を良く聞く。感じる人間・視える人間…さらにはもっと力が強い人間もいる。話には聞いていたが、本当にこういう業界らしい。

「他人事だと思ってたぜ…」
「普通はそう思うよなー」

ケラケラと笑いながらマイセンは俺に近寄ってきて、左肩の上の辺り…マイセンが言うには女の手がある辺りを払った。

「俺の大事〜なタイロンが引っ張られてったら殺しても飽きたらないし、今回はちゃんと祓ってもらおうぜ」
「殺しても…って死んでる奴相手なんだろ」
「はは、まぁな。…死人が生きてる人間に勝てると思うなよ、…クソ女」

 空中を睨み付けてそう言い放つマイセンは、俺の知る男とは別の顔をしてるようだった。





女の子大好きなくせにね。

現実逃避的な。 

August 21 [Thu], 2008, 17:32
凹んでると書く話すら暗くて笑える。



秘めて隠して、押し殺して




 自分にとって『片想い』なんていう言葉は滑稽以外の何者でもなかった。
馬鹿馬鹿しい。報われない想いを抱いて何になる?その相手が自分じゃない誰かを見詰めるのを見て悲嘆にくれて、そして自分はなんて可哀想なんだろうと悲劇のなんとかを演じるだけのものじゃないか。
究極の自虐行為。極度のMな人間が被害妄想の上で可哀想な自分に自己陶酔するための手段のようなもの。


 ずっとずっと、そう思ってきたこの俺がこんな役を演じるなんて。皮肉にも程がある。




「俺ってさぁー、一方通行の愛って嫌いなんだよなー」

 台本の読み合わせの最中、急に目の前の人物にそう言われてタイロンは顔を上げた。
以前TV番組で競演したのを切欠に仲良くなった目の前の友人は、今は再度競演することになったドラマの打ち合わせを自分としてるところだ。読み合わせている目の前の台本にこんな台詞は存在しない。

何より一方通行の愛を自覚した上で実の妹を愛している男を演じるのに、「嫌い」とは何事だろう。

「マイセン=ヒルデガルドのことか?」

不機嫌そうな顔で台本をペラペラと捲るその伏せた顔に問い掛ければ、こちらを見ようともしないでただ黙って頷く。その様子に、付き合いの長くなってきた男は、マイセンが本当に心底嫌悪を抱いているのを感じ取った。

「本気で嫌みてぇだな」
「本気で嫌なんだよ。こういう奴」

はー、と盛大に息を吐いてマイセンは顔を上げた。射抜くようにタイロンを見据えてから再度口を開く。

「お前嫌になんないの?タイロン=ベイルもものっすごい片想いだぜ。ちっこい頃から大事に大事にしてきた女を、ぽっと出の変態に掻っ攫われるのに」
「変態…なぁ」
「カーティスは好きだけどカーティス=ナイルは嫌い。マイセン=ヒルデガルドがこいつを毛嫌いしてるのだけは共感できるぜ」

今日は何故かイライラしてるらしい。この不機嫌の理由が、本当にマイセン曰くの『一方通行の愛』故なのかはタイロンには分からなかった。

「お嬢が本当に好きな奴と結ばれるんなら、タイロンはそれを祝福して喜んで身を引くんじゃねぇか?」
「っかー!片想いで失恋した奴の常套句言いやがって!」
「………お前だってあんだろ、片想いの一つや二つ」

逆上してぎゃーぎゃー騒ぐのを落ち着かせるのにこう言えばマイセンは急に押し黙った。らしくないその行動に違和感を感じ取って様子を伺っていると、目の前の男は目を伏せる。

「マイセン?」



 呟いた言葉は、タイロンの耳には届かなかった。


「…同じ状況だから、こいつ見てるとイライラすんだよ」






ドラマ版アラロス(マイセン→アリシア)中の役者設定。ドラマ1期くらい。
珍しくマイセン→タイロンな感じ。

事故らないように運転しなさい← 

August 14 [Thu], 2008, 19:07
因みに馬鹿な話っすよ。



「おとーさん、タイロンとーさん」
「どうした?クレア」
「パパが起きて来ないの」
「……ぁー…」
「なんかね、体痛いんだって。お腰のところ。…パパ、怪我しちゃったのかなぁ…」
「……今日は寝かせておいてやろうぜ」

 しょんぼりと不安気に目を伏せる愛娘の頭を撫でる。マイセンの不調が子供に余計な心配を掛けさせることになって少し反省した。
いや、反省自体は毎回してるんだ。本当に毎回。前にマイセンにも怒られたことがあるし、自分の体力とあいつの体力の差を全く考えてないわけじゃないんだが、いざとなると頭からンなことすっぽり抜けるから仕方無い。

……仕方無いとか言っちまったらただの言い訳なのはわかるんだが、アレはマイセン(の躯)も悪いだろ。
だって俺を誘う。俺を夢中にさせる。一度味わったらもう二度と手放せないし、何より離れたくない。
一度入り込めばもう二度と出たいと思わない。思わせてくれない。それは、俺のせいじゃねぇ…よな。

「おとーさん…パパ、お医者さんにみてもらわなくて大丈夫かな…」
「病気や怪我じゃねぇから大丈夫だ。あんま心配するな」
「でも…」
「クレアが悲しそうな顔してたらパパまで悲しくなるだろ?もう直ぐ起きてくるだろうし、いつもの元気なクレアでお早うの挨拶しような」
「……うんッ!」

 元気良く返事をしてイクスのいる中庭へと駆けていく背中を見送る。そろそろ昼だ。…怒られるのを覚悟してマイセン起こしに行くか…。



「少し良くなったか?」
「…誰のせいだよ誰の。うー…腰ダルい…」

ベッドの上でシーツに包まって俺を恨めしげに見上げる仕草に苦笑が漏れる。

「…俺のせいだな」
「そーだよお前のせいだよ馬鹿タイロン!もーちょっと手加減しろよなー…まだなかにお前入ってそうな感じする」
「っ!?日の高いうちにンなこと言うんじゃねぇ!」
「お前が容赦も遠慮も無くがっつくからだろ!?どんだけ俺んなかにいたと思ってんだ馬鹿!!」

顔を覗き込むようにして屈んでいたから、マイセンが伸ばしてきた腕にまんまと捕まった。片頬を引っ張られて顔が歪む。

「…いふぁい(痛い)」
「お、良く伸びるなお前。流石にほっぺたまでは筋肉隆々じゃないか」

ケラケラと笑顔になるその顔を見ていると、本気で怒ってないのが分かって少し安堵した。
…夫婦の営みが離婚の原因だとか、笑い話にもならねぇよ…。




馬鹿ふーふ。
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