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【肥田美佐子のNYリポート】原油流出事故で試される日本の「国際度」 / 2010年07月09日(金)
 「Gulf Oil Spill Day 77, July 5(メキシコ湾原油流出77日目、7月5日)――総流出量200万強バレルのうち約43万バレルを回収、または焼却。1日の作業コストは、事故当時の600万ドルから約1億ドルにはね上がり、BPの負担総額は26億5000万ドル(約2300億円)に――」

 4月20日、米南部ルイジアナ州沖のメキシコ湾で、国際石油メジャー3番手の英BPがオペレートするリグ(石油採掘施設)1基が爆発炎上し、11人の命を奪った「米国史上最悪の原油関連災害」(オバマ大統領)。BPが、水深1500メートルの深海での事故処理に手間取るなか、米メディアは、最新情勢や回収・清掃作業のアップデートなどを事細かに報じてきた。刻一刻と変わる原油流出量のカルキュレーターをウェブに載せている報道機関もあるほどだ。

 米民間世論調査機関ピュー・リサーチ・センターによれば、原油流出事故のニュースが全報道の44%を占めていた6月14~20日の1週間をピークに量は減っているものの、直近の週(6月28日~7月4日)でも、同事故関連の報道は全体の15%を占めていたという。事故から約80日。二番底懸念がにわかに復活しつつある今も、原油流出報道は、経済危機関連のニュースを押さえ、トップの座を保っている。オンラインメディアも含めれば、1時間に何十本という記事が配信されることも珍しくない。

 市民は、原油まみれの野鳥の映像に胸を痛めては、「広大な海に比べれば、流れ出た原油の量など微々たるもの」といったトニー・ヘイワードBP最高経営責任者(CEO)の数々の失言に怒りを募らせてきた。放任主義の石油採掘政策や油田開発の監督庁である内務省鉱物資源管理局と石油業界との癒着も報じられるなか、オバマ大統領は、11月の中間選挙をにらみ、国民からの批判をかわそうと必死だ。7月6日現在、大統領やバイデン副大統領、労働長官など、政府高官の現地視察は62回に上り、7日には、回収作業の進行具合などを知らせる「Restore the Gulf」(メキシコ湾再生)サイトを立ち上げた。

 なかでも特筆すべきなのは、ヘイワードCEOをホワイトハウスに呼び寄せ、「特別預託口座」の設置を迫り、湾岸諸州や漁民などへの補償金200億ドルを拠出させたことだ。また、原油回収作業や住民への補償で31億2000万ドルを負担し(7日現在)、経営破たんも取りざたされるBPに対し、資産売却などの事前告知を求めているのも注目に値する。ヘイワードCEOは難渋しているものの、米政府の圧力に屈して首を縦に振ったとしても驚くに当たらないと、英『フィナンシャル・タイムズ紙』(7日付電子版)は分析する。今やBPは、米国の「パブリック・エネミー(社会共通の敵)」なのだ。

 史上最悪の原油事故といわれたアラスカ沖でのタンカー座礁事故(1989年)を大きく上回る今回の惨事は、今も事故原因がはっきりしていない。当初は、リグの所有者であるスイスの掘削請負会社トランスオーシャン、セメント工事に当たっていた米多国籍企業ハリバートン、そして、BPが責任をなすり付け合っていたと報じられている。だが、人員削減など、BPの大規模リストラによる安全対策軽視を指摘する声は多い。

 米労働省の職業安全衛生管理局(OSHA)の統計によれば、同社は、この3年間で760回もの安全基準違反を犯したという。15人の死者と170人を超える負傷者を出したテキサス州での製油所爆発事故(2005年)では5000万ドルを、07年にアラスカ州で発生したパイプライン原油流出事故では1600万ドルの罰金を支払うなど、BPが安全性の面で問題を抱えていた様子がうかがえる。一方、国際石油メジャー最大手の米エクソンモービルは、たった1度の違反にとどまっている。

 こうした事実が明るみに出るなか、BP株は急落。同社の格付けはジャンク(投資不適格)級近くにまで引き下げられ、事故以来、時価総額は、ほぼ半減した(7日現在)。また、オバマ大統領の要請を受け、今後3四半期にわたる配当金給付凍結にも踏み切った。「oil spill=原油流出」で検索するとトップに登場するBPのウェブサイトによると、7日現在、同社になされた賠償金請求は9万8600件。そのうち4万9700件が支払われ、補償総額は1億5350万ドルに上るという。事故処理や補償、今後起こされるであろう訴訟の対策費や賠償金なども合わせれば、BPの最終負担額は400億ドルに上るという声も聞かれる。

 政府によれば、これまで事故処理作業に投入されたマンパワーは4万5000人以上、船舶は6900隻を超える。8月には2本の救助井が完成し、事故処理のめどが立つといわれるものの、BPが、財政的にもイメージ的にも、企業生命が危うくなるほどの甚大なダメージを被ったのは間違いない。持続可能な経済成長やグローバルな企業活動などの問題に詳しいマサチューセッツ・ローウェル大学の地域経済・社会発展学部教授、ウィリアム・ラゾニック氏(同大学産業競争力センター所長)は、次のように警鐘を鳴らす。

 「こうした惨事は、世界のどこでも無作為に起こりうる。この事故から得られる真の教訓は、われわれが、グローバル化した企業にサービスやモノを頼っているという事実である。われわれは、国際企業が、『クリーンな』代替(エネルギー)製品の開発に投資し、『クリーンでない』製品から消費者を守ってくれるよう、影響力を行使していかねばならない」

 日本メディアの控えめな報道ぶりについては、「地理的・政治的・経済的に距離感があり、災害による実質的・精神的影響をほとんど受けない人たちは、事故に対してさほど反応も示さないことが多い」と、同教授は分析する。

 とはいえ、7月3日、BPが、メキシコ湾の油田権益の10%を持つ三井石油開発に対し、約1億1100万ドルの資金負担を求めている事実が判明。原油流出事故は、日本にとっても決して対岸の火事とはいえないことが明らかになった。報道によれば、BPからの請求額は、さらに増える可能性もあるという。

 また、エネルギー政策の点でもさまざまな疑問を投げかけた今回の事故は、国を問わず、「万人にとって重要な問題だ」と、ベストセラー作家兼環境問題専門コンサルタントのアンドルー・ウィンストン氏は警告する。

 「原油流出は、石油採掘が困難さと危険さを増し、より高くつくものになっている事実をかいま見せてくれた。化石燃料の使用は、人類にとって長期的な解決策といえるのか。いったい何にエネルギーを依存すべきなのか。BP問題は、再生可能燃料への移行について、地球規模の対話を促す転換点になるだろう」

 そして、こうした惨事を激減させるためにも、「企業が環境問題を基本的な事業命題として見なすようグローバルガバナンスを構築する必要がある」と、ラゾニック教授は言う。米国のはるか先をいく「環境先進国」日本の出番は多そうだ。

【7月9日10時37分配信 ウォール・ストリート・ジャーナル
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20100709-00000013-wsj-int
 
   
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