不定期小説 「コンビニ・ヒーロー キャットマン」 その一 

2007年10月11日(木) 23時01分
誰でも一度はヒーローに憧れるときが有ります。でも、大人になると、現実に支配されそんな想いもどこかへ消えてしまいます。
だけど、大人になってもそんな夢を見ても良いじゃないですか?ある日突然、自分がヒーローになってしまったら・・・そんな思い出この物語が始まりました。

その一 「キャットマン誕生」(1)

 新宿の郊外をくたびれた男がふらふらと家に向かって歩いていた。この男名前は猫田弘志という。絵に描いたようについてない男であった。
 人並みに、学校を出て人並みに大手企業に就職し、人並みに職場結婚。このときが人生の絶頂であった。人が良いのが徒となり、友人に騙され多額の借金を背負い込み、おまけに上司の失敗の尻ぬぐいで会社をクビになった。妻とも大げんかの末離婚、20年のローンで建てた家は妻のモノとなり、その負債だけが彼の資産に付け加えられた。
 両親は心労のため他界、頼る身内もなくすきま風の吹く安アパートに住み、日雇いの仕事で負債を細々と払いながらぎりぎりの生活をしていた。
せめてもの救いは、ホームレスにならない事だった。
しかしそれも何時まで続くか・・・一日18時間の仕事は、30を過ぎた男にとってそろそろ体力の限界になっていた。
仕事が出来る以上、負債は返す。これが彼の信念であった。実は、全ての元凶は彼の並はずれた正義感にあったのだ。自分が負債を踏み倒せば、どこかで困る人が出来る。これが彼をここまで追いつめた思いなのであった。
 この日の仕事は特にきつく、ぼうっとしていたので、帰り道の路地を一本間違って曲がってしまった。
路地は行き止まりになっていて初めてそれに気がっいた。
「何だょ!」舌打ちしながら、戻ろうとしたそのとき行き止まりの路地になにやら明かりが見えた。
何か近づいてみると、見た事もない自動販売機だった。今にも消えそうなランプにてらされ、「この一本で貴方も直ぐにHERO回復」の文字が目に留まった。「栄養ドリンクの販売機か妙なところにあるなぁ。直ぐに疲労回復ね・・・何で披露だけローマ字なんだ?しかもこれじゃ疲労じゃなくて『へろう』だよ」
そう思いながら、財布を取り出し一本買い求める事にした。千円札を取り出し札の受け口に入れ吸い込まれるのを確認する。2秒程で3ヶ所のボタンに青いランプが点灯した。
ボタンを押して栄養ドリンクを取り出し、おつりレバーを回すがおつりが出てこない。
「こわれてるのか?」戻し口辺りを軽くたたいたが反応はない。ふと、料金表を見ると1本千円と書いてあった。
「まじかよ」今更気が付いても返品は出来ない。仕方なくビンをポケットに入れ道を戻った。
やっと家にたどり着き、ベッドの上に倒れ込んだ。
「後何日くらい持つかな・・・」襲い来る疲労感と戦いながら上着を脱ごうとすると何かが手に当たった。
ポケットに手を入れると、指先に瓶が振れた。「そうだあれを買ったんだっけ」
ポケットからビンを取り出し、封を開ける。
こんなモノに旨い物はない、口上通り効けばいいがと思いながら一気に煽った
「うっ!!!」
思わずはき出してしまいたくなるまずさだった。しかし大枚千円も払った者をはき出すにはもったい
ない。涙を流しながら何とか飲み込む。
思わず賞味期限を確認するが、まだ一年も先だった。
段々胸が熱くなり息が苦しくなる。毒でも入っていたのか?薄れゆく意識の中でそんな考えが頭をよぎった。
 彼はいきなり目覚めた。何時の間に眠っていたのだろう?時計を見るとまだ帰宅から1時間もたっていない。なぜか妙に身が軽く、あんなに重くのしかかっていた疲労感も全くなくなっていた。
どうしたんだ?ふと、気づくと右手にビンを似きっていた。ラベルの部分が黒く変色しており、もう文字は見えなかった。ここでやっと記憶が戻った。
「たまげたなぁ、一時は死ぬかと想ったが、本当に疲労が回復したんだ。」しかしそれだけではなかった。
なぜか気分が高揚しており、外へ出たくて溜まらなかった。もっと正確に言えば、大声で叫びながらところ構わず走り回りたい気分であった。
 このままでは眠れそうにもない、しばらく外を歩く事にした。
自然と足は明るい方へ向いてしまう。中心部ではないが、人通りのそこそこ有る通りに出た。
ここで妙な事に気づいた。通り過ぎる人があからさまに彼を見つめるのである。彼が顔を向けると誰もが目をそらし、足早に去っていく。それに、町が昼間のように明るく感じるのはなぜなのだろう?
 そんなとき、女性の悲鳴が聞こえた。 [ つづく ]
P R
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