黎明 / 2010.09.13.月


夜はもうすぐ、明ける

どうか

どうか僕に、

永遠の黎明を














僕は立ち尽くしていた

そこは街を見渡せる小高い丘だった
どうやって辿り着いたのかは覚えていない

ただ僕はがむしゃらに走った
冬が死んで間もないこの時期は夜になるとまだまだ肌寒く、充分過ぎる熱を持った身体の深い部分を覆う表面的な皮膚は冷え切っていた

耳の奥が痛い
膝の震えが止まらない

自分の日頃からの運動不足を呪ったが、
それでも僕は走らなくてはならなかった

もうじき、夜が明ける















その訪れは余りにも唐突で、
そして全くの無音だった

じわじわとしかし確実に地平線は白くなり
やがて空が薄水色と群青色と
オレンジ色に色づく
それは眠りから醒めて瞼をゆっくりと開くような穏やかさで街を染めていった

僕は胸いっぱいに空気を吸い込んだ
その刺すようにひんやりとした空気は肺の細胞ひとつひとつに取り込まれ、靄がかかった脳内をクリアにさせる

夜が終わり
朝がくる

それは終わりを暗示しているようで
キラキラと光を乱反射する景色は余りにも残酷で

僕は泣いた






気づいてたよ、
本当は全部
ごめんね。
何も言えなかった

あの時
君、も

泣いていたのに














夜はもうじき明ける

泣きつづけた僕はやはりそこに立ち尽くしたまま

あと少しで無口なグレーの群れとなる街をただ呆然と眺めている



 
   

Posted at 16:34 / 脳内 / この記事のURL

あおいしずく、ひとつ / 2009.08.03.月


続く空は限りなく低い。
グレーの空も街も、水分を含んでぼんやりとしている。

「だい、じょうぶ?」

僕の喉からボタリと落ちたその余りにも無神経な言葉はアスファルトの地面に叩きつけられてぐちゃぐちゃになった。

「……」

マナブは何も言わない。
僕の声はきっと届いていない。
いつでも。

視線だけが何かを見つめているように、ジ、と一点から動かない。
それでも僕には感情の色が読み取れない。
飽くまで真っさらな表情。

君は今悲しんでいる?
絶望している?
若しくは諦観しているの
おしえて

ポツ、

その瞬間
空から落ちてきた一滴の雨粒が君のその病的に白い頬に落ちた。
僕は決して見逃さなかった。
だってそれは酷く涙に似ていて、君が泣いているように見えたから。

(でも本当は泣いてなんかいないんだってこと、すぐに解ったんだ)
(いつだってそうだもの)
(僕は君の泣き顔なんて見たことがない)
(一度も)



**************************

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Posted at 01:34 / 小ネタ / この記事のURL

グッドバイ・マイワールド / 2008.09.16.火


最後の、

これが最後で唯一の、

残された、 自己主張。









【 グ ッ ド バ イ ・ マ イ ワ ー ル ド 】








天気は、晴れ
絶好の自殺日和です

窓から見える景色は変わることなく
この部屋も変わらない
僕も変わることはないし、
僕を取り巻く環境も変わることはない

最初っから最後まで、ぜんぶ、たぶん、僕はひとりだった
知ってたんだ、結構前から
いや、きっと、最初から

モヤモヤとしたなにかに埋もれて息が出来なくて
頭の中ではずっと声が聞こえた
それはとても耳障りで、だけど安心出来た

頭痛、吐き気、過呼吸、さよなら
僕は僕じゃないような気がしたけどやっぱり僕は僕でしかなくてどう頑張っても僕だったから

世界よ、さよなら








狙った銃口は、喉
弾はひとつ
口ずさんだ唄は、讃美歌

(さよなら)
引金に指をかける
(さよなら)
力をこめて
(さよなら)
一瞬聞こえたカチ、という音
(さよなら)
視界は暗転。

あかくあかくあかくあかくあかくあかくあかく染まっていく景色のはじっこに飛び立つ蝶の翅がみえた
きっと、胸にいた蝶はやっと自由になれたのだろう
停止寸前の意識で思った







僕を飲み込もうとした世界へ
もう悲しむのはやめたんだ
もう泣くのは終わりにしよう
いつも負けてばっかりだったけど、僕は今日、反撃する
ほんのちょっとの抵抗、そして

最初で最後の自己主張


僕を飲み込もうとした世界へ

最後に、

ありがとう、


バイバイ。

end.

 
   

Posted at 01:04/ この記事のURL

おわらないあくむ / 2007.09.10.月


「駄目だ」

「幾ら追い払おうとしても駄目なんだ」

「ずっと夢の中に居るみたいで」

「ずっと怖いんだよ」

「助けて」

「助けてよ」

「柩、」






咲人が泣いて、

僕にしがみつく



その飢餓児童みたいな背中を摩って、

僕は、






「大丈夫」


無責任かな、

いや、ちがう


「大丈夫だよ、咲人」





これは確信だ。








「怖い夢に怯えさせられるのはもう終わりだ」







「僕達が見せてやろう、」









「終わりのない悪夢を。」







start of "NIGHTMARE"


 
   

Posted at 18:41 / 小ネタ / この記事のURL

体温 / 2007.09.06.木

徐々に体温が下がって行くのが解った。

真っ赤な、

真っ赤なてのひらで感じた。



世界はあとほんの少しで終わる。

僕には其れが嘲笑に見えた。






- 体温 -





 
   

Posted at 18:51 / 小ネタ / この記事のURL

夜明けの病的な光と車の走る音とネオン / 2007.08.26.日


ああ、

また、だ。







完璧に遮断された空間、白い壁。

開け放した窓から聞こえる車の走行音と揺れるレースのカーテンが作る空気の流れと自分の呼吸音が支配するこの部屋。

自己嫌悪のかたまり。




時刻はam03:51
人工的な光が充満する部屋、ベッドの上で新弥は考える。

嫌なこと
怖いこと
疎外感
自分の何が悪いのか
どうして皆辛くあたるの
自分のせいで
解らない
嫌わないで
愛してるのに
ごめんなさい
相手のため?
結局は







……瑠樺さん。







そこまで考えて、新弥は止めた。
涙も出ない事に気付いた。

臆病
不安
他人の目
ケロイドの腕
自己満足


愛してるだって?
馬鹿みたい。
結局全ては自分のためだ。
自分の幸せのために必要なもの。






でも、
自分の幸せのために他人が幸せになるなんて、そんな素晴らしいことってないんじゃない?
その方法を、今度は探していけばいいんだ。









ごめんね、瑠樺さん。
愛してるよ。
瑠樺さんが幸せだと、俺も幸せだよ。
だから、これからも、二人が幸せになるように、俺も幸せになるよ。
あんたもそう思っててくれると、いいんだけど。








ふと見た窓の外の切り取られた景色はとうに明るくなっていて、それでも光続ける店のネオンが不自然だと思った。
朝の風が冷たい。



「…いい加減寝るか」



今日のために。

そして

自己嫌悪が大好きな、馬鹿でどうしようもない、

自分のために。




end.

 
   

Posted at 04:35 / 脳内 / この記事のURL

あの日壊そうとした世界へ(4) / 2007.08.21.火


夢を見た。


とても田舎のこの街は、テレビで見るような高い建物は一つも無くて、不便で、でも皆が優しくて、そして空が高い。

気が付くと隣には瑠樺さんが居て、僕はこの人が大好きだった。

強くて、優しくて、僕なんかより全然大人で、そして僕なんかより寂しそうな人。

この人が、瑠樺さんが幸せならそれで良いんだ。

瑠樺さんと一緒なら、僕は幸せだ。


何時か僕らが大人に成る時が来ても、そう、思って居たい。












「あさ、か、」

瞼を開くと其処には真っ白な光。
隣には瑠樺が眠って居て、新弥は何処か夢の続きのようだと思った。
内容は憶えて居ないけれど。

幸せで、悲しいような、
そんな感覚だけが残って居た。









よし、と一言呟いて、新弥は瑠樺を揺すった。

「るーかーさーん!起きろー!」
「んー…」
「朝だよ!支度しなきゃ!」
「今日出発するんでしょー!」


希望も全て消えて仕舞いそうな、そんな朝だった。


next.

 
   

Posted at 00:23 / 小ネタ / この記事のURL

あの日壊そうとした世界へ(3) / 2007.08.21.火


何時からだろう。

もう随分と遠い日のような気がする。


何時から僕は、瑠樺さんと二人きりなんだろう。










空は完全な暗闇色で、何処からか虫の音が聞こえる。


二人は必要と思われるものを自分の部屋から持って来た。
家に居る人間に見つかるとまずいので、こっそり窓から入った。

少しの着替えと
お菓子と
貯めていたお小遣い。
大好きだったタオルケットを持って来ようと新弥は思ったが、荷物に成るので諦めた。

瑠樺が一緒なら、タオルケットが無くても眠れると思った。





何処にいこっか

遠い所が良いな

どうやって行くの?

金はあんまり使いたくないから、最初はやっぱり歩きだろ

えーだいじょぶかなぁ

なんだお前、無理なの?

瑠樺さんよりはましだよ

あーそうかい

なるべく人が居ないとこが良いよね

じゃあこの線路沿いにでも歩いてみるか

何処に着くかな

ここじゃなきゃ何処でも良いよ

瑠樺さん、

ん?

すきだよ

…ん。





すき、だなんて

初めて言ったな










その夜二人は寄り添って眠った。
二人がこの秘密の場所で過ごす、最後の夜だった。


next.

 
   

Posted at 00:20 / 小ネタ / この記事のURL

あの日壊そうとした世界へ(2) / 2007.08.21.火


「遅いなぁ、るかさん…」

辺りは大分薄暗く成って居て、空が紫色を帯びて居た。
約束の時間はとうに過ぎて居る。

瑠樺さん、約束忘れてんのかな。
何か有ったのかな。
俺の事がどうでも良く成ってたらどうしよう、
瑠樺さんに嫌われたのかな。

新弥の瞳は段々と潤んで、膝を抱いて居た拳は固く結ばれていく。
(余談だが、何かと言っては直ぐ被害妄想をしたり、『愛されて居ないかも知れない』と言う強迫観念に囚われる事が新弥の悪い癖だった。殊瑠樺に対しては特に。)




夜の帳は確実に降りて行った。
名残惜し気に太陽が顔を覗かせて居る。

いよいよ新弥が声をあげて泣き出しそうに成った、その時、

「、新弥…ッ!」

ガサガサと茂みを掻き分けて瑠樺が現れた。
その端正な顔にびっしりと汗を張り付けて。

「る、かさん…」

新弥の瞳から、一筋涙が溢れた。










二人は地面に座り込んだ。
瑠樺の視線は宙をさ迷って居る。

「に、いや…新弥…ッ」

肩で息をして、囈の様に呟いた。
濃紺へと色を変えて行く、空のグラデーションが綺麗だ。



「逃げよう、」









―――嗚呼、僕らの世界は。




僕らが少しずつ構築した小さな世界は、余りにも簡単に、音を立てて壊れ始めた。

その崩れ落ちていく音は、頭の片隅で僅かに反響する。





新弥は少し息を飲んで、それから小さく頷いた。


next.

 
   

Posted at 00:19 / 小ネタ / この記事のURL

あの日壊そうとした世界へ(1) / 2007.08.21.火

「逃げよう、」

瑠樺さんが言った。

何から、とか
何処に、とか

そんなことを聞こうとする考えは、頭を擦りもしなかった。










[ あの日壊そうとした世界へ ]










日差しが容赦なく網膜を刺激する。
夏だ。

新弥は約束の場所で瑠樺を待って居る。
此処はもう使われなく成った線路の傍のフェンスの向こう側に有る小さな空き地だ。
フェンスに開いた、人が一人通れる位の大きさの穴をくぐると背の高い草が密生して居る。
更にその茂みを掻き分けると視界が開け、丁度6畳位のスペースが有る。

ここは新弥と瑠樺が見つけた秘密の場所だ。
二人だけしか知らない。
新弥が物心ついた頃から、二人はよくこの場所で共に過ごした。
何をする訳でも無く、二人は唯一緒に居た。
廻りの景色から断絶されたこの秘密を共有する事で満足して居たのかも知れない。


新弥と瑠樺は所謂幼馴染みで、小さな頃から一緒だった。
寝る間も惜しんで遊ぶこともよく有った程だ。

此処までならよく有る話、で済まされるのだが、如何せんこの二人は異常だった。
新弥と瑠樺は二人だけの時間、空間を過剰なまでに優先させるのだ。
それは新弥が12歳、瑠樺が14歳に成る現在まで続いて居た。
二人はお互いに依存しあって居たのだ。
それが愛や恋などと言う感情に分類されるのかも、既に解らなく成って居た。


next.

 
   

Posted at 00:08 / 小ネタ / この記事のURL

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