強さを追い求める男 <102番道路〜トウカシティ>

August 16 [Thu], 2012, 1:27
「ハッハァ!! どうよ、アゲハ!!
 俺の言ったとおりだろうが!!」

『………。』

手を叩いて歓喜する俺を見上げるアゲハは無言。
まぁ、カラサリスに進化したんだ。
喋れはしねぇよなぁ。
カラサリスに進化しちまえば後はアゲハントに一直線だ。
俺はアゲハを撫でた後にキキを抱きあげる。

「キキもありがとな。コイツがレベルアップ出来たのはお前のおかげだ。」

『キー。』

嬉しそうに笑うキキ。
最初の頃はアゲハを出しちゃキキに交代しての繰り返しだったし。
キキもアゲハが進化できたのが嬉しいらしくて上機嫌だ。

……ん?

妙な気配がして振り向いた。

「…進化したのか、おめでとう。」

…妙に迫力のある、おっさんがいた。
視線を合わせただけでビリビリと威圧感が走った。
うわ…背中がヤバい。ぐっちょりだ。

「…アゲハ、というのか君のカラサリス。」

「あ、ああ…。」

思わず、キキとアゲハより前に出る。
なんとなく、わかるぜ。
キキもアゲハもビビッてる。
俺がビビってるせいだ。
ああ、チクショウ情けねェな。

「何故、アゲハというニックネームにしたんだ?」

「は?」

なんだそれ。
名前がどうかしたってのか?

「こいつがアゲハントにあこがれてるからだよ。
 名は体を現わすんだよ。」

「では、マユルドに進化したら、どうするつもりだったんだ。」

「…は? 何言ってんだ、アンタ。
 こいつがカラサリスになりたくて頑張ったのに、マユルドになる訳ねぇだろ。」

当たり前のことを返したら驚いたような顔をされた。

「こういうのは理屈じゃねぇだろ。おっさん。
 コイツが信じられなくっても俺が馬鹿みてぇに信じてやんだよ。
 でなきゃなれるもんにもなれねぇだろ。」

よし、怖いのに慣れてきたな。
さっさと立ちあがる。

「もういいか、おっさん。
 俺は急いでんだよ。夜になる前にトウカに着きてぇんだ。」

アゲハとキキをモンスターボールに戻して俺は歩き出すと。
……なんでかおっさんもついてきた。

「なんだよ、おっさん。」

「私もトウカに用がある。」

「…じゃあ、後ろじゃなくて横歩いてくれよ」

「ああ」

「………」

「………」

「………」

「………」

あ、ヤバい。
隣に並んだら並んだで空気重っ。
こういう場合俺が話振るべきか?

「私はセンリだ。」

お、自己紹介されちまった。
…どっかで聞いたことあるような。
ま、いいか。その内思いだすだろ。

「センリさんな。センリさんはトレーナーなのか?」

「ああ。ユウキ君もそうなのか?」

「おう、駆けだしだけどな。
 トレーナーは親父の研究手伝いの成り行きだけどよ。
 でも、俺はトレーナーのが性に合ってるぜ。」

「…羨ましいな。」

「は?」

「いや、何時かお父さんの研究を継ぐのか?」

「まっさか、ゴメンだな。 そういうのに興味があんのは妹の方さ。
 研究とかそういう難しいのは俺には駄目だ。
 親父の何十年を俺のせいで無駄にしちまったら親父に申し訳が立たねぇよ。
 俺はその手伝いついでに全国回れりゃ言うことねぇよ。」

なんで俺、自分の身の上話してんだ?
うわ、すっげーハズ。
いや、それより、俺名前言ったか?
まぁ、いいか。
センリさんが知ってんなら言ったんだろ。

「センリさんもなんか話せよ。 家族はいねぇの?」

「いる。息子と妻が。」

「へぇ、それなのに一人でフラフラ。あんたアレだ。悪い大人だ。」

揶揄するように笑ってやると…おっさんの顔が曇った。

「…そうだな。おかげで息子にも嫌われている。」

ヤベッ! 家庭の事情のド真ん中イッちまったか!?

「センリさん?」

「私のいないところでは私を「あの人」呼ばわりしているらしい。」

マジかよ!!ガッチガチだなオイ!!
嫌いにもほどがあるな!!

「妻は気にすることはないというが…。」

気にしてンな。アンタめっちゃ気にしてンな!!
アンタの周りすっげー暗っ!!

「母親がそういうんだろ!?
 だったら気にすんな!!」

「……ありがとう。」

「…いや…ども」

うわーうわーうわー…俺、コレから口の聞き方気ぃつけよ。
にしても…。

「なんでアンタの息子、そんなにアンタを嫌うんだ?」

「………。」

…俺、5秒前に反省したばっかだったよなー!?
センリさんついに止まっちまったよ!! ぜったい今俺きゅうしょついたよ!!

「…よかれと思ってしたことで怖い思いをさせてしまってな。
 息子は才能があるのに、そのことに対して全く興味を持たなくなってしまった」

お、稼働しだした。
…いやに抽象的な言い方だな。
こりゃ100%自分に非がありますっていっちまってるようなもんだ。

「だが…私にはとても勿体なく思えるんだ。」

「………。」

「だから、どうしても…納得が出来ない。私はそれを会得することが出来ない。
 半ばあきらめている。だが、あの子は物心ついたばかりの時に簡単に出来てしまった。
 勿体ないし、歯痒く思える。
 だが、それをどう伝えたらいいかわからない。
 今まであの子と話をしていなかったツケが回ってきたんだ。」

自嘲気味に笑うセンリさんにどう声をかけたらいいもんか。

「要するにアレだ。センリさんは昔、息子さんになんか後ろめたいことやっちまった。
 でもその後ろめたさと天瓶にかけても「うわー、勿体ねー」って思えるほどの才能が有る訳だ。
 で、センリさんは今まポケモンにかまけて息子と全然話してねーから。
 どう伝えたらいいのかわっかんねーっていうことか。」

「…まぁ、そういうことだな。平たく言えば。」

「平たくどころか、ド直球にそうじゃね?」

あ、また動かなくなっちまった。
意外と繊細で面倒臭ェなこの人。

「まぁ、嘆いても始まんねぇんじゃねー?」

「………。」

「すんげー昔に息子を傷つけちまったってのも事実だしよ。
 もうイイ親父ぶる必要もねぇし。息子もアンタに遠慮もしねぇだろうし。
 男同士なら、いつかぶつかることもあんだろ? そん時話したって遅かねぇんじゃね?」

…親子ほど年離れたおっさんに何したり顔でアドバイスしてんの俺。
怒られても仕方ねぇな、こりゃ。

「君は妻に似てるな。」

「あ゛?」

「決して私を甘やかさない。キツイことも平気で言う。」

「…そりゃ、男甘やかしてもなぁ。しかも俺より年上。」

俺は男は谷に突き落とす派なんだよ。
女は駄目だ。ハルしかまともに相手したことねぇから、どう扱ったもんだか。
気が付いたら、トウカシティの入口どころか、トウカシティを通り過ぎようとしていた。

「…うわ、ヤベ。俺此処のジムに挑戦するんだった。」

そういって引き返そうとした俺に。

「今の君ではバランスバッジをまだ渡せないな。」

…は?

「君がそうだな…ジムバッジを4つ、手に入れるほどの実力を身に付けたらお相手しよう。
 普通なら参加資格など示さないんだが、本気で相手をしないと失礼にあたるだろう。」

…思いだした…。

「親父がよろしく言ってたぜ。たまにはミシロに顔出せってよ。センリさん。」

「オダマキがよく自慢していたよ。夢はチャンピオンだそうじゃないか、ユウキ君。」

親父の親友、トウカシティジムリーダー・センリ。「強さを追い求める男」。
ニヤリと笑って俺はそのままトウカシティをスルーして104番道路へ飛び出した。

「4つだな、直ぐに集めて来っからクビ洗って待ってろよ! センリさん!!」

…にしても、「才能を持ってる息子」ねぇ…どんな奴なんだかな。

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プロフィール
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    ・音楽。-ボカロなのは言うまでもなく。
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好きな曲は合唱とか歌ってみた関係。
このブログを打ってる時は「家に帰ると妻が必ず死んだ振りをしています」か
「家の裏でマンボウが死んでる」か「パラジクロロベンゼン」を聞いてます。
おかげさまで世間様の流行曲は知りません←

ポケモンが好き過ぎて現実を生きてるのが辛い。
いつかオーキド博士にポケモン図鑑を貰いたい。

現実に適応出来ているか最近不安です。
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