引き剥がす 

December 20 [Mon], 2010, 20:11
毛利が彼らを引き剥がしてやろうと思ったのは出会ってすぐの事であった。
元々彼らの名を聞き及んでいたと共に、どのような人物であるかというのは必要な情報としてしっかり得ていた。
だが、百聞は一見に如かずといった言葉の通りやはり実際は会って見ないとその人となりというのはわからないもので、彼らも当然といってはやや語弊があるのだが聞いただけで漠然と抱いていた人物像とは異なっていた。
その二人、というのは石田軍の二人である。
軍の実際の頂点になっているその者達の一人は石田三成という。
彼は予想よりほんの少し違うだけの人物であった。
聞いていた以上の小物であると、毛利は判断した。
あれはただ目の前の現実を受け入れられずに喚き散らしているだけである。
軍の上に立つ者としての器としては当然なく、卑下すべき者であった。
そしてその石田の小物加減を上手く隠してなかなかの物に表向き仕立て上げているのは常に傍らにいる大谷吉継という男であった。
少々気はひねくれておるが、それさえも含めてあれは良いものと毛利は評価した。
自然と、あれが欲しいと思ったのも仕方がない事である。
あれは石田の元では沈んでいくのみ。我が毛利の元につけば更に才を生かす事が可能だ。
そう思い、決意を促したのはあの時あのような光景を目撃したからであろう。

ある日の事である。
毛利は西軍を束ねている大谷と文のやり取りだけでは足りぬ子細の打ち合わせをすべく彼らの拠点に向かった。
かつては豊臣がいたその城を彼らはそっくり受け取る形で当時のまま使っている。
大谷は城の一際奥にある、日もよく当たらぬ陰った隅の部屋にあてがわれていた。
聞けば当人自らそれを望んだというのだから毛利にしてみれば信じられない事である。
日輪の加護を受けぬ場所などで寝起きなどありえぬ、という所だ。
勿論彼が病持ちだという事を忘れてはいない。
だがあのようにじめじめした陰気くさい場所にいて英気など養える筈がないだろうし益々滅入っていくであろう。
愚かな、と毛利は思った。真大谷は愚かだ。

引き剥がす 

December 08 [Wed], 2010, 19:35
毛利が彼らを引き剥がしてやろうと思ったのは出会ってすぐの事であった。
元々彼らの名を聞き及んでいたと共に、どのような人物であるかというのは必要な情報としてしっかり得ていた。
だが、百聞は一見に如かずといった言葉の通りやはり実際は会って見ないとその人となりというのはわからないもので、彼らも当然といってはやや語弊があるのだが聞いただけで漠然と抱いていた人物像とは異なっていた。
その二人、というのは石田軍の二人である。
軍の実際の頂点になっているその者達の一人は石田三成という。
彼は予想よりほんの少し違うだけの人物であった。
聞いていた以上の小物であると、毛利は判断した。
あれはただ目の前の現実を受け入れられずに喚き散らしているだけである。
軍の上に立つ者としての器としては卑下すべき者であった。
そしてその石田の小物加減を上手く隠してなかなかの物に仕立て上げているのは常に傍らにいる大谷吉継という男であった。
少々気はひねくれておるが、それさえ覗けばあれは良いものと毛利は評価した。
自然と、あれが欲しいと思ったのも仕方がない事である。
あれは石田の元では沈んでいくのみ。我が毛利の元につけば更に才を生かす事が可能だ。

(無題) 

November 23 [Tue], 2010, 20:07
「主には個があらぬ」

そう言い吉継はにやりと笑む。
目の前に座す毛利は彼の発言が気に障ったのか、体こそ微動だにはしなかったものの目だけをほんの僅かにピクリと動かした。
正座した毛利の姿勢は酷く真っ直ぐで、己の友でありまた主にもあたる彼の常のそれと比べてみればあまりにも違うそれは吉継にしてみればかなり目新しいような、新鮮なものに見える。
だからと言ってそれをよく評価するかと言えばそうではない、と吉継は思った。
もし目の前に座る彼が猫背であろうともそれは大して気にとめるものではなかったし、また胡座をかいていようともそれは同じである。
まあ毛利には似合わんな、とは思うかもしれないが彼らしくないとは思わない。
要するに彼にしてみれば毛利という男はただそれだけなのである。
それ以上気にとめる必要がないというのもあるし、また興味を抱く対象には値していない。
毛利にそこまで価値があるとは、と考え吉継は答えを簡単に下した。

見当たらないのだ、この男には。

やれ毛利よ、と吉継は沈黙したままの男にゆっくりと持ち上げた指を指す。
薄暗い室の中、ゆらゆらと唯一の灯りが開けた雨戸から漏れ入る風で揺れる度に照らされた毛利の顔の影も変わる。
だが毛利は僅かな反応を今度は見せなかった。
容貌は冷たいまま、鋭い目線でもって吉継を射るばかりである。
「主には毛利しかない」
そうであろ?と吉継は撫でるような声で毛利に問いかけ、ひっそりと笑う。
「主の全ては『毛利』という殻で形成されておる。そこに主の個はどこにもあらぬ」
ヒッヒッと吉継は引きつった笑いを漏らす。
「だからどうした」
そろり、と吉継の降ろされた指先を追うように目先をふらと動かした毛利が淡々とした声音で答える。
問うような、肯定するようなその響きは広くもなく、さりとて二人で座しても狭いという印象を与えぬ室内の中に冴えるように響き渡った。
「いや、何。大した事ではない」
ただなあ、と吉継は言葉を続けた。
そうしてたっぷりと間を含み、戯れのように手の中にある空の湯呑みを右へ左へ移動させる。
そうして吉継は湯呑みへ落としていた目線を毛利へと移動させて包帯の下で唇をひそりと吊り上げた。
気配ではそうとは伺わせないものの、毛利の目が先程と比べて若干変化している。

「哀れ、そう思ったまでよ」

「……くだらぬ戯れ言よ」
フン、と毛利は小さく息をついた。
勿体ぶって話を長引かせるのはこの男の悪い癖だ、と毛利は判断している。
それも話術の一つとして有効ではあるが、この男はどうでもいい些細な事ですらそうする。
それが何度も何度も繰り返されれば価値のある筈の対話も普段のそれで重要性は帯びている会話ですら、価値が下がってしまう。
わざとそう思わせてふとした瞬間こちらが聞き流して逃すのを伺っているのかもしれぬ、と最初危ぶんだ己が今では無駄な危惧を抱いていたとあったと一蹴せざるをえない。
刑部、と呼ばれている男のそれを、毛利は好いていなかった。
これさえなければ毛利の駒として使えるかもしれぬ、と一度思った事がある。

(無題) 

October 31 [Sun], 2010, 22:16
なのでうっすらと灰色がかったレンズを中に入れていた。
普段からパソコンを使うので、そのレンズは電磁波対策としての本来の用途もきちんと果たしている。

行くぞ、との一言と共に背を向けた毛利に倣いゆっくりと歩きだす。
毛利の歩調は遅く、吉継の足でも楽に追いつく事ができた。
「そういえば」、と並んだ吉継に思い出した、とでもいうかのように毛利が口を開く。
「何ぞ」
「一つ下に、銀色の頭をした男がいるらしいぞ」
「…は?」
ピタリ、と目を見開き足を止めた吉継に毛利がククっと喉を鳴らし目を細める。

銀色

そう言われて吉継が思い浮かべる顔は様々あれと、真っ先に思い出すのはただ一人だった。

「………三成、か?」

そう問う声は震えが混じってしまい、吉継は顔を反らした。
ザワリ、と胸の奥底から這い上がってくる何か。
名を呼ぶだけでこうも心が震えるのか。
三成。

「名までは聞いておらぬ」
「…………さよ、か」

(無題) 

October 29 [Fri], 2010, 20:16
三成という男は非常に気難しい性質である。
そう思われ評価を下されるのは彼が愚かなまでに真っ直ぐであり、どこか潔癖なまでのその気概が時折子供の癇癪のように爆発するからである。
爆発する対象は物ではなく、人。
容赦のない烈火の如く、だが静かに怒りを散らす男に反目する者達の数は少なくない。
有能ではあるが人としては大変宜しくない。
一度そう思われてしまえば印象というものは大変拭いづらいもの。
次第に三成の周りには人がいなくなっていた。
遠巻きに戦々恐々と顔色を伺う。
そんな者達だけが残った。

その三成に対し全てとまではいかないものの、それなりに理解しているのはやはり昔からの付き合いである吉継に他ならない。
彼は三成の癇癪を宥めすかし、またあやす事を長年の経験で習得していた。
その上癇癪を起こした時はめっきり口数の減る彼の少ないポツリポツリと漏れる単語を繋ぎ合わせるのを得意としていたが故に、三成に何かがあった際に彼の名が呼ばれ三成の元に人身御供のように差し出されるのは仕方がない事であり、いつしか西軍にとっては当然のようになっていた。

佐吉が喚けば蛾を放れ。

今回も人々の間であがったその台詞と共に吉継は襖の向こうから慌てた兵の声によって呼び出しを受けた。
「やれ、面倒よの」
ふぅと一つ溜め息をつきコトリと硯に筆を置き、書きかけの文に背を向け吉継は

(無題) 

October 12 [Tue], 2010, 23:58
ルイコは男を睨みつけた。

暗闇の中、自分の上にのしかかる何倍もの巨躯を誇る男の肉体は涙で見えない視界もあってぼんやりとしか映らない。
はあ、はあと互いの荒い吐息とルイコが上げる痛みの声、寝台の軋みと生々しい肉体から発せられる厭らしい水音。
その全てが受け入れがたく、ルイコは頭を振って男の肩を押した。

嫌、やめて、お願い。

そう否定の言葉を何度もルイコは上げたが男には欠片も届いていないのか、無言でルイコを苛むだけだった。
どうして、と声にならない声を漏らす。
どうしてこんな事になったの嫌だ嫌だ痛いやめてお願い痛い痛いやめて
ルイコのしゃくりあげながらの訴えも懇願も男には届かない。
男は一つ身じろぎをして両の肩にある手をグイと引いた。
途端、部屋の中に響き渡る音と体に走る痛み。
導かれるままにすがりついた首にルイコは爪を立て泣いた。
「ごめんな、ルイコ」
ごめんなあ、と男は 荒い息を吐きながらルイコに謝罪をする。
ちゅ、ちゅと音を立てて顔中に吸い付かれルイコはポロポロと涙を零す。
「俺はお前を手放せない」
「ひっ…あ…っ!」
グチャ、とまた淫らな音と体の奥を抉られる痛みに悲鳴が漏れる。
ルイコの新たな涙を男が舌で拭い取った。
「誰よりも大事にする、愛しんでやるから」
なあ、と男は言って目を細めた。
暗がりの中でも光るそれに、ひゅうと息が漏れ抱え込まれた足がビクっとシーツを凪いだ。
「あ…ぁっ…やだあっ!」
「俺を愛しんでくれ」

俺の字。

熱に浮かされたように男は囁き、ルイコを抱き締める。
骨を砕きそうなほどの腕の強さと、触れ合っている肌の暖かさに身を捩りかけたルイコは激しい突き上げに切れ切れに悲鳴を漏らした。

「こわ、い」

助けてと呟いて闇に伸ばした手は、男のそれが覆いシーツに埋まる。

絡んだ指先の優しさにルイコはきつく目を閉じた。

2 

October 08 [Fri], 2010, 22:11
最近の彼の気に入りは上に乗っかる事らしい。

昔の趣味だ、と言う彼は読みかけの本を片手に靴をその場に脱ぎ捨てると

裸足で鱗の上に立つ。

時折足の裏が切れるのではないかとその度に危惧するこちらのそれも気に留めず、

彼は遠慮なく背の上まで辿り着くと仰向けにごろりと寝転がった。

落ちる、という心配など微塵も無いらしい。

背の上でもぞもぞと軽く身じろぎをし、やがて落ち着く場所を見つけたのか

手の中の本を頭の上で掲げるようにしてペラリとカイムはページを開く。

彼の思考が中に書かれているらしい本の内容で埋まっていき、思念という

形をとって時折それがこちらにまで届いてくる。

中身は小説か、と人物の名前と台詞を聞いてアンヘルはふうと息をついた。

背中に乗る彼が揺れる事ないようそろそろと身を動かし、頭を地に伏せる。

そうして目を閉じだらりと体を弛緩させるとアンヘルの頭の中はカイムの思念で

一杯になった。


少年がいる、外見は恐らくカイムが小説の描写で想像したであろう姿だ。

まだ若いとしか言えぬの少し後ろを、人の顔を模した白い装丁の本が浮かんでいた。

少年は人語を理解しまた叡智を治めているというその本を手に入れ、

大陸を少しずつ旅していく。

出会うマモノと呼ばれる異形。病弱な妹。

依頼を進めると判る選び難い結末。

つらつらと、器用に文字と想像上の映像をカイムは伝えてくる。

少年にはどうやら、妹しか肉親がいないらしいというのを聞きまるで自分の背で

寝ている読み手のようだなとアンヘルは思った。

フム、と息をつくとそれは違うぞ、と小説の続きを中断したカイムが言う。

「何が違うというのだ」

ぶつり、と唐突に途切れた物語から思考を切り替え問うと仰向けの彼は

少しばかり笑った。

背中に預けている暖かい肉体が時折揺れる。

カイムが本を閉じたのであろう、パタンという乾いた音が響いた。

少年には本がいる。俺にはお前がいる。

だから違う、とカイムは言った。

「…求めは、せぬのか」

求める?とカイムから疑問が飛んできた。

アンヘルはゆっくりと頭をもたげ、ぐるりと喉を鳴らす。

「人の営み、交わりをだ。確かにお主には我がおろう。だが我は人に非ず、

お主には何も残せぬよ」

カイムよ、とアンヘルは彼の名を呼んだ。

お主は、と続けたアンヘルの言葉はカイムの唐突なそれで阻まれた。

要らない、と必要最低限のそれ。

間髪入れずの言葉にアンヘルは閉じていた目を開く。

バサ、と腹の脇で音がした。そちらに目をやると先程までカイムが読んでいた

本が中途半端なページを開いた形で放り投げられていた。

俺にはもう何もいらない。

シュル、という衣擦れの音と共に動く熱。

カイムが背の上で体を反転させてずるずると移動すると熱の塊は角に触れ、

頭に留まった。

頭から首にかけて感じる熱にアンヘルの喉が自然にルルルと鳴る。

アンヘル、と名を呼ばれ角を撫でられる感覚にアンヘルは目を閉じた。

優しい声音と共に手が動き、冷えている訳ではない体が温もっていくのを

自覚せずにはいられなかった。

「カイム」

俺にはお前がいる。お前以外に求める物も、失う物ももう何もない。

そうだろう?とカイムが問いかけてくる。

「……後悔は、せぬか?」

そう問いかけると頭の上でフっとどこか小馬鹿にするような笑いを

吐き出す吐息が聞こえた。

お前と離れてした後悔以上の後悔はない。

「…………………愚問であったか」

ああとアンヘルは吐息を漏らした。

そうして再び頭を降ろし、体を丸めると「すまぬな」と半身に謝罪を述べる。

「我もだ、カイム」

と少しの沈黙の後に告げれば頭上のカイムが柔らかく笑んだ気配が届く。

ほどなくして届いた寝息に、引きずられるようにアンヘルの意識もまた

闇に沈んだ。

01 

October 07 [Thu], 2010, 23:03
この男が立ち止まる時。

この男が後ろを振り返る時。

恐らくそれは。





アンヘルはちらりと意識を背に集中させた。

正しくは、自分の背に乗せた男の事を。

自分の契約者であり、命を共有した者。

「…カイム」

今までにない覇気の失せた男の名を呼ぶ。

「カイム」

ただ背に跨っているだけ、としか思えぬ男を気遣いアンヘルは背にかかる衝撃をできるだけ

少ないものにしようと細心の注意を払う。

恐らくはそう配慮をせねば今の男は簡単にこの背から落ちてしまう。

ただそう予感と、確信があった。

カイムはただ、呆然としていた。

彼から伝わってくるのは虚無のみ。


人は縋るものを失うと空虚になるという。

脆い存在なのだ。


そうだという事をアンヘルは長年の経験により下等な存在のその特性を知ってはいたが、

まさか自分の契約者にもそれが当てはまると思っていなかった。


この男は強い。


いつからかそう認めていたのが正直な所だ。

そして同時に当初から知っていたのはこの男の歪み。

「妹」と「女神」、「復讐」を建前に狂気に走っていた男。

人を殺し、死体を踏みしめる時だけ心底楽しそうに笑みを浮かべるカイム。

アンヘルにしてみれば彼のそれは当然であったし、それをせぬ男がカイムという人間に

当てはまるかと言われれば逆に想像するのが容易ではなかった。

『狂った強い男』

それがアンヘルから見たカイムという男なのだ。

だが今自分の背にいる男は常日頃知っている男かと問われれば外見から言えばまさしくそうで

あったが、次に内面がそうであるかと問われれば否を返す。

其れほどまでの変化は正直驚きであったが、だが同時になるほどとも納得ができた。

人間はいくつもの仮面を持つ、らしい。

ようするに今までアンヘルが知っていたカイムというのは結局はその男の仮面のほんの一部だったらしい。

こちらのカイムもまた、ただ単にアンヘルが今まで見る機会がなかっただけであり

これもまたカイムなのであろう。

フム、とアンヘルは自身の中でそう納得すると速度をグンと上げた。

背にいるカイムの体が僅かに傾いだが、それに今度は注意を払う事無くただ前のみを見つめる。


「カイムよ、水遊びを好む幼子のように人を斬る男よ」


遥か遠くにある、黒いぽつんとした点を目指しアンヘルはカイムは声をかける。

当然のように声での返事はない。

代わりに思念で飛んでくる筈の返事もないが、アンヘルは言葉を続けた。


「お主が声を失った意味、我にはようやくわかった気がするぞ」


妹であり女神である彼女を守るのは彼の中で人を殺すに価値がある建前であり、

そして紛れもなく本音でもあったのだ。

フリアエが彼に依存しているように、彼もまた彼女に依存していた。

彼にとっては彼女と、親友が最早残されていた拠り所であったのだろうと今ならば判る。

その拠り所である彼女は彼の目の前で息絶え、親友はアンヘルよりも遥か先を飛んでいる。

アンヘルは目を細めた。

「お主は立ち止まってはならぬ、振り返ってはならぬ。

今はただ前を向くだけにせよ、そうせねばお主のような赤子は立ち止まる以外術を持たぬ。

お主には我がおる、それで良いではないか」

そうであろう、とアンヘルは言いぐっと左に反れた黒い飛翔物に倣い体を傾ける。

ごうごうと翼で切った風が大きな音を立てた。

「女神の死、封印の崩壊。それを止めるのが先決であり賢明であるというもの。

動ける内に動いておかねば人間と言うのはやがて後悔する。

お主、妹の死を無駄にする気か?」

暫くしてから否、と返事が返って来た。

弱々しいそれではあったが、けれども意思は込められているそれにアンヘルは息を付く。

イウヴァルトを止める、というカイムの思念と共に背の熱が少しばかり身じろぎするのを感じ

アンヘルは目を細めた。

「それで良い」

行くぞ、というカイムの声に答え徐々に近づいていたドラゴンへ一気に距離を詰める。

咆哮を上げ、黒いドラゴンに向けてブレスを吐き出す。

それをさらりと回避したドラゴンもまた咆哮を上げるのにカイムが笑う気配に少しばかりの安堵を

漏らさずにはいられなかった。





どうか立ち止まるな、幼子よ。

どうか振り返るな、愚かな人の子よ。
P R
2010年12月
« 前の月  |  次の月 »
1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31
最新コメント
プロフィール
  • プロフィール画像
  • アイコン画像 ニックネーム:c1986
読者になる
Yapme!一覧
読者になる