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都が「青少年ケータイ」推奨・フィルタリング強化 青少年育成条例改正案 / 2010年03月14日(日)
 東京都が都議会に提出した「東京都青少年の健全な育成に関する条例」(青少年育成条例)の改正案に盛り込まれている、青少年のインターネット・携帯電話利用に関する内容について、業界関係者や専門家から懸念する声が挙がっている。

 改正案に「都が青少年のネット利用についての指針を定める」といった内容や、フィルタリングを厳格化するための規定が含まれるためだ。

 改正案は、都青少年問題協議会が1月14日に知事に提出した答申「メディア社会が拡がる中での青少年の健全育成について」を受けたものだ。答申では、フィルタリングされていないコミュニティーサイトなどで犯罪やトラブルに巻き込まれる子どもが増えているとした上で、フィルタリングの厳格化などが必要と提言している。

 改正案は3月30日に本会議で採決が行われる予定で、可決されれば、10月1日から施行される。都で施行された場合、全国に影響が広がる可能性もある。

●知事による端末推奨が可能に ネット啓発、都による指針策定も

 改正案では、都知事が携帯電話・PHS端末について、「青少年の健全な育成に配慮した機能を備えていると認めるもの」を推奨することができるという規定を新設した。

 「都は、青少年のネット利用に関する啓発についての指針を定める」という規定も、新たに盛り込まれている。

●「被害を誘発することを容易にする情報」もフィルタリング

 現行の条例ではフィルタリングの対象を「青少年の健全な育成を阻害するおそれがある情報」と表現するにとどめているが、改正案ではさらに踏み込み、「青少年がネットを利用して自己もしくは他人の尊厳を傷つけ、違法もしくは有害な行為を行い、または犯罪もしくは被害を誘発することを容易にする情報」と定義。青少年がそういった情報を閲覧する機会を最小限にとどめるよう、ISPや通信事業者、フィルタリングソフト事業者に努力義務を課している。

●フィルタリングを使わない場合、保護者は理由を書面で提出

 フィルタリングの実効性を高めるための規定も新設。青少年が使う携帯電話端末について、フィルタリングを外すと保護者が申し出た場合、その「正当な理由」を事業者に書面で提出しなければならないとしている。正当な理由は「東京都規則で定める」としており、例として、ログ閲覧サービスなどを使って保護者が子どものネット利用を監督することが挙げられている。

 事業者に対しても、フィルタリングの説明書を青少年や保護者に交付する義務などを課し、違反した場合、知事は必要な措置を勧告できると規定。知事が指定した職員は、「必要な限度において、事業所に立ち入って調査をしたり、資料の提出を求めることができる」としている。

●保護者には、青少年のネット利用の把握・管理を求める

 保護者に対しては、(1)青少年にフィルタリングソフトを使わせること、(2)青少年のネット利用状況を把握・管理すること、(3)保護者自身も、ネット利用に伴う危険性などを知識の習得に努めること――を求めている。

 また行政機関は、青少年がネットを利用して自分や他人の尊厳を傷つけたり、違法・有害行為をしたり、犯罪や被害を誘発したと認めた際、知事に通報できると規定。知事は保護者に対し、(1)再発防止に必要な措置をとる、(2)指導・助言できる、(3)必要な場合は、説明や資料の提出を求めたり、調査できる――と定めている。

●「民間の取り組みを後退させる」 業界団体など意見書提出

 改正案を受け3月12日、民間で携帯向けサイトの審査を行うモバイルコンテンツ審査・運用監視機構(EMA)など関連業界団体が連名で都議会に意見書を提出した。

 意見書では、改正案が「憲法の保障する表現の自由、通信の秘密を侵害する恐れがあるばかりか、青少年ネット環境整備法との齟齬(そご)がある」「地方行政の不当な制限により、学校や家庭、民間団体で進められている自主的な取り組みを後退させることになる」などとして懸念を表明。法律の範囲内での条例改正や、民間の組織や活動が認められる条例とすることなどを求めている。

 意見書にはEMAのほか、通信事業者の業界団体・電気通信事業者協会(TCA)、ITの業界団体・テレコムサービス協会、携帯向けコンテンツの業界団体モバイル・コンテンツ・フォーラム、ISPの業界団体・日本インターネットプロバイダー協会、EC関連のトラブルなどの相談を受け付けるECネットワーク、ネットやITを使った表現教育などを行うNPO・CANVAS、東京大学大学院の長谷部恭男教授、ネット教育アナリストの尾花紀子さん、東京都地域婦人団体連盟が名を連ねた。

 東京都地婦連はネットとの縁は薄いが、「第2次世界大戦に向かう空気を知っている高齢の会員も多い。表現の自由や通信の秘密は何より守りたいという考え」(地婦連事務局次長の長田三紀さん)で、意見書に賛同したという。

●「きわめて漠然とした規定ぶり」

 EMAの岸原孝昌さんは、フィルタリング対象の規定が青少年ネット環境整備法を超えていると指摘する。長谷部教授も「『犯罪もしくは被害を誘発することを容易にする情報』はきわめて漠然とした規定ぶりで、何が該当するのか判断が難しく、表現を萎縮させる恐れがある」と懸念する。

 青少年ネット環境整備法にはフィルタリングを必要最低限にとどめることを求める規定もあるが、条例改正案にはそのような規定がないことも問題だと岸原さんは指摘する。

●「ネットは現実社会と同じ」

 条例案のベースとなった答申では、EMAが認定した「健全サイト」でも青少年が事件に巻き込まれていることを前提に、フィルタリングの実効性の強化が必要と指摘している。

 EMAの上沼紫野さんはこういった指摘に対し、「問題が起きていることは把握をしており、さらに努力はしていきたい」としながらも、「コミュニティーサイト全般で被害が起きているというとらえ方には懸念を覚えている」と話す。

 岸原さんは「ネットを使わない方々には誤解も多いが、ネットは現実社会と同じ。渋谷や新宿で青少年犯罪が多いからといって立ち入り禁止にしていいのか。事件をゼロにするための対策はネットを利用させないことだが、それでいいのか」と問題提起する。

●「迷惑行為に税務調査並みの権限」

 「都が青少年のネット利用に関する啓発についての指針を定める」とする規定も批判。「変化の激しいネット環境に対応した指針を都が示すことは不可能で、民間の自主的な努力を損なう」(岸原さん)と指摘する。

 青少年がネットを利用して問題を起こした際、知事が保護者を調査できるという規定についても、「違法・有害行為にも至らない迷惑行為に対し、税務調査並みの権限を与えている」(岸原さん)と批判した。

●端末推奨は「的外れ」 千葉大藤川准教授

 ネット上でも、有識者が改正案の問題点を指摘している。千葉大学教育学部の藤川大祐准教授は、15日に都議会民主党に対して表明する予定の意見案をブログに掲載した。

 藤川准教授は、フィルタリングの厳格化の方向性は支持するとしながらも、書面での理由提出に関しては「面倒を嫌う保護者が保護者名義で契約してしまえば無意味」と指摘。「都が認めた事情でなければ解除させないとか、解除関係の管理を事業者に委ねるといったことを定めても混乱するだけ。まして、都が事業者に立ち入り検査を行うというのは、不当な介入」と批判している。

 都による携帯電話端末の推奨は「的外れ」とも。「子ども向けの端末でもネット機能があれば、フィルタリングを解除すれば有害情報にアクセス可能。都が推奨した端末が事件に使われたら、都の威信は地に落ち、状況は大きく混乱する」

 インターネットユーザー協会(MIAU)の小寺信良さんもブログで問題点を指摘。フィルタリング解除の「正当な事由」の例として挙げられている、保護者による子どものログ参照は、子どものプライバシー侵害につながるなど懸念を表明している。【岡田有花】 3月13日16時14分配信 ITmedia News
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20100313-00000003-zdn_n-sci

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