はじめの一歩01

October 05 [Wed], 2011, 23:52
 初めて手に取ったラケットの重さは、意外と軽かった。相沢武は右腕に収まったラケットグリップを軽く回してみる。くるくるとラケット全体が回って楽しくなったが、すぐに手から離れて床に大きな音を立てて落ちた。

「こら! 大事に使いなさい!」
「ごめんなさいー」

 強くはないが大声で怒られて、武は萎縮する。自分の他にも思い思いにラケットを持って振ったり膝にガット部分をぶつけたりと好き勝手に動いている同年代がいた。誰もが自分と同じように小学校一年になって町内会のスポーツ活動に強制参加させられたのだろう。

(サッカーとバトミントンなら……やっぱりはしらないバトミントンだよね)

 親に選択させられた時、武は迷った末にバドミントンを取った。小学校に入って三ヶ月。休み時間に外でサッカーをするようになったが、上手くボールを蹴れないからとゴールキーパーになり、よく顔を狙われるのに防いでいた。痛い思いをバドミントンならしないだろうと思ったのだ。

(バトミントンならいたくないよね)
「はーい、集合ー」

 武達に声をかけたのは先ほど武を怒った女性だった。家の裏に住んでいる寺坂という家のおばさんだというくらいの認識はある。だが、実際には話したことはほとんど無い。いつも親や祖母が話しているのを横につれられて聞いてたくらいだ。

「はい。じゃあ、これからバドミントンを始めます。よく、バトミントンって言い間違えるんだけれど、バドミントンですからね。覚えておいてね。じゃあ、一人ずつ自己紹介してもらいましょうか」

 少し早口で紡がれる言葉に武達は一斉に返事をする。隣の子よりも大きく。何故かそんなことに張り合いたくなる。

「ちゅうおうしょうがっこう。いちねんいちくみ、はしもとなおきです!」
「いちねんさんくみ。はやさかゆきこです」

 初めて眼にする、他の組の男子や女子に武は緊張と一緒に競りあがってくる何かがある。初めて見るからこそ萎縮せずに勝りたいと思うのか、自分の出番が来たところで思い切り大きな声で叫んだ。

「いちねんごくみ! あいざわた――げほげほっ!」

 大きな声で叫びすぎて、咳き込んでしまう。武は口を押さえながら何度か大きく咳をした。すると咳き込みも収まり、息をつく。周りも笑いながら武を見ており、武は体をちぢ込ませた。

「あらあら。元気すぎるのもいいけど落ち着いてね。お名前は?」
「あいざわ、たけしです」

 はい。良く出来ました。
 そう言って寺坂のおばさんは次以降に話題を振っていく。武は情けなくなってため息を付いた。せっかく目立つチャンスだったのにと。

「いちねんごくみ。かわさきゆなです」

 その名前に反応して振り向くと、視線の先には見知った顔があった。
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