越えたい壁03

September 25 [Sun], 2011, 15:14
「なんであんなに勝てないんだろ」
 そう口に出さないともうやってらんね。練習再開してからは15対0で押し切られるし。それからまたもう一ゲームやっても駄目だった。向こうも今まで以上にシビアなコースに打とうとしてるのが分かった。なら、ミスしてもおかしくないじゃないか。なんでノーミスで更に取れないところにばかり打てるんだ。
「今、竹内が考えてること当ててやろうか。やってらんねー」
「分かるならなんとかしろよー」
 家が逆方向なのに田野は俺についてくる。こういう時の俺の行き先が分かってるからだろうけど。今回はこいつも行くんだろうか。
「お前も行くの?」
「ん。あそこのスペシャルドリンク美味しいから」
 スペシャルドリンクがどんなだったかを思い出そうとしたら、目指す店が見えた。
 桃華堂。
 多分、この街で一番繁盛してる喫茶店だと思う。中心街の過疎化とか、郊外の大型スーパーに負けないくらい毎日毎日、人が入ってるし。
「今の時間だと少し空いてるみたいだな」
 田野の言葉で携帯をポケットから取り出す。時刻を見ると、午後四時。昼十二時から練習してさっき終わったのにこれだけ疲れてんだなと思うと更にだるくなった。
「まあまあ。美味いものでも食べて元気出せ」
「お前は飲むんだよな」
「ああ」
 自転車置き場に自転車立てかけて、田野を置いて入り口に入る。さっさといい席取らないとゆっくり出来ないし。
 でも入り口のドアを開けて中に入ったところで、いきなり名前を呼ばれて止まってしまった。
「竹内ー。ここ!」
 見てみると、寺坂が一人でイチゴパフェを食べていた。ここの名物のジャンボイチゴパフェ……更にでかいのだとビールジョッキくらいあるらしい。今は大き目のパフェ皿に乗ってるけれど。
 てか、あいつ。俺らより少し前に帰ったはずなのになんですぐ食べれてんだ? 時間的におかしくないか?
「あ、寺坂」
「田野も! こっち空いてるからどうぞ」
「お二人ですか?」
「じゃああっちと一緒で」
 ようやく店員が来たところで田野が俺より先に言った。あんまり気分じゃないんだが。
「いいじゃん。座ろうぜ」
「……分かったよ」
 別に一緒の席で悪いわけじゃないし。かまわないけど何かもやもやする。何か忘れてる気がする。寺坂の顔を見て何か連想できるものがあったような。
 考えてる間に席について、田野は桃華堂スペシャルドリンク。俺はチョコレートパフェを頼む。店員が行った後で、寺坂がくすくす笑ってきた。
「竹内、パフェとか好きなんだ」
「……疲れたら甘いものが食べたくなる」
 事実だったから特に怒りもしない。なんか男子が甘いもの食べると馬鹿にされるのも気にしない。ていうか、それで怒る体力がないわけだけど。
「ごめん。怒った?」
「怒る気力もないわ。……て、ようやく思い出した」
 寺坂と話してたら、思い出した。休憩時間中に寺坂に「なんで頑張れんの?」とか聞いたんだっけか。覚えてるんだろうか。
「そういえば、休憩時間、何で頑張れるのとか聞かれたけど、なんでそんな質問?」
「そんなこと聞いたのかー」
 田野はメニューを眺めながら生返事。こいつ、バドミントン以外は少し抜けてるんじゃないか。外面いいから去年のバレンタインはチョコたくさん貰ってたけど、本性はこんなんかよ。
「あ、ああ。言ったけど。忘れてくれ。頑張るのは当たり前だ」
「二週間前は練習あるのみとか言ってたのにどうした?」
 そう言えばそんなことも言った。全然勝てないから、市民体育館で秘密特訓しようとしたら、清華の小島さんがいたんだった。それを見て、どんどん駄目な点を指摘しあおうとか決めたのに。今のやる気のなさはなんだろう。
「良く分からないけど、悩んでるみたいだね」
「そっちもなんか悩んでそうだな」
 田野はメニューから顔を上げずに寺坂へと言った。聞いたとたん固まったところを見ると、図星か。なんかいろいろあるな。そして田野は超能力者かなんかか?
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