越えたい壁02

September 25 [Sun], 2011, 14:23
 この差は、なんなんだろう。
 なんとか水飲み場にたどり着いたら、後からやってきた杉田先輩が颯爽と水飲んで帰っていく。時間を少しでも無駄にしたくないって感じだ。あの人も、中学から始めたのに多分シングルスは勝てない。
 体格の差とかあるけれど、それでも成長度が半端じゃない。それに比べて、俺は成長してるんだろうか。
 目の前で蛇口から出ている水。垂れ流されてるそれに顔をつけて、しばらく息を止めてみた。
 火照った顔が痛くなってきたところで上げる。
「ぷはぁ」
「少しは疲れ取れた?」
 かけられた声のほうを見ると、隣には寺坂がいた。俺よりも少し身長が低いくらいの、同学年。
 実力も一番。こっちは、田野とどっこいどっこいだな。同じような立ち位置なわけだ。
 だから、あまり弱みは見せたくない。
「疲れなんて。田野とか他の一年がぐだってたから合わせただけさ」
「誰に言い訳してるの?」
「……いや、お前に」
「ばればれでしょ」
 寺坂は両サイドで結んでた髪を解いて軽く手で梳くと、水を出して顔をつける。さっきの俺と同じように。
 しばらくして上げた顔はとても気持ちよさそうだった。
「ぷはぁ」
「気持ちよかったか?」
「うん。後もう少し。体調管理も選手の仕事だし、頑張らないと」
 選手といっても、自分達には出番はないだろうに。夏休みがあけた頃にあるジュニア大会の予選は、おそらく先輩達の年代がしのぎを削るだろうし。俺らがいくら頑張っても、代表にもなれない。
「なあ。なんでそんな頑張れんの?」
 寺坂に思わず、尋ねていた。何を言われたのか良く分かってないのか、寺坂はきょとんとした顔で俺を見てる。なんか俺が馬鹿みたいじゃないか。もう一度尋ねようとしたけど、そこに田野が割り込んでくる。
「あ、いた。そろそろ休憩終わりだぞ。どれだけ水飲んでるん?」
「すまん! いまいくわー!」
 そういや、次は試合だった。ここで話し込んでるわけにもいかないし、今は部活終わるまで集中すっか。
「ごめん寺坂。なんでもないわ。んじゃ!」
「あ……」
 何か言いたそうな寺坂を置いて走る。あれだけ疲れてた体が水分とって休むだけでこれだけ動ける。
 でも、体育館の中に入れば、別世界。
 扉を開けるとむわっとした空気にむせそうになる。
「来たかー。やるぞー」
 相沢先輩が気の抜けたような声を出してくる。隣にいる吉田先輩もどこかだるそうだ。
 ――俺らなんて相手にならんってことかな。
「すいません! お願いします!」
 それならそれでいい。舐めてる相手に噛み付いてやる。
「行くぞ、田野!」
「おう……って、遅れてきたのそっちだし」
 苦笑する田野を引き連れてコートに入る。ここから、練習再開。絶対先輩達に一泡吹かせる。
「お願いします!」
 シャトルを貰って、挨拶。サーブの構え。
「一本!」
 ショートサーブを眼前に吉田先輩へと打ち込んで、 試合をスタートさせた――
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